千本桜―蛇の目と毒牙—   作:灰色 仔猫

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第2話 石人間と同級生

「親友を殺した犯人を見つけてほしいんです」

 

 神原さんはそう言うと財布の中から1枚の写真を取り出した。

 

「こいつ……天内(あまない)昭一(しょういち)っていうんですど……3日前、死体で発見されたんです」

 

 店長は神原さんじゃら写真を受け取り、天内昭一の顔をじっと見る。写真を机に起き、コーヒーを一口すすると、神原さんの顔を見つめる。

 

「ここに来たってことは普通じゃないんだろ?その死体」

 

 店長の言葉に、神原さんを青い顔をして頷く。

 

「……これ、です」

「どれどれ……っ!」

 

 もう1枚の写真を見た店長の目が細まる。一切驚いた顔はしていないが、額に汗が滲んだのを俺は見逃さなかった。

 

「警察に言っても取り合ってくれなくて……ここなら、こういうおかしな事件の操作をしてくれるって噂で聞いて……だから、お願いします!お願い……します」

 

 涙声になりながら頭を何度も下げる神原さんの肩に、店長が手を置く。顔を上げた神原さんの目を見て、店長は優しく微笑んだ。

 

「あぁ、任せろ。この依頼、引き受けた」

「あ……ありがとうございます!ありがとう……ございます」

 

 

 

 

「涙香さん。これってやっぱり()()使われてますよね?」

「間違いなく使われてるな。じゃなきゃこうはならないだろ」

 

 神腹さんから預かった写真を見た俺は、真っ先に涙香さんにそう書いた。涙香さんは頷くと、ため息を吐いてタバコに火をつけた。

 

「涙香さん、タバコはダメです」

「……ちっ、偶にはいいだろぉ?こんなめんどい案件吸ってなきゃやってられん」

 

 俺の静止を無視して吸い始める。俺はため息を吐くと、写真をもう一度見る。そこに写っていたのは、全身が石になった男、天内昭一の姿だった。

 

「……とりあえず涙香さん。現場見てきますね」

「おう、気をつけて行ってこーい」

 

 店を出て駅に向かう。改札を通りホームで待つこと約10分、路面電車が来た。時間はちょうど帰宅ラッシュ。当然座れず吊り革に掴まる。揺られること約15分。目的地である〝上野公園駅〟に着いた。

 電車を降りると、時刻はすでに19時に近づいていた。歩いて数分、よく見る噴水が目に入る。涙香さんから渡された写真を見て、天内昭一の死体が発見されたベンチを探す。そのベンチはすぐに見つかった。が、当然見ただけで何かがわかる、ということはない。

 

「……ん?なんの音だ?」

 

 少し離れたところから聞こえた音に耳を傾ける。聞こえてきたのは拳銃の発泡の音。それが2回連続で聞こえてきた。音がした方に駆け足で向かうと、2人の人間がいた。片方は暗がりで見えないが、もう片方ははっきりと見えた。

 

「は!?美兎さん!?」

「っ!え!?」

 

 月光に照らされ、くるくると踊りながら銃を撃つ少女、美兎楓だった。俺の声に反応し、振り向いた瞬間もう1人が踵を返して暗闇えと消えて行った。

 

「あ、っくそ!」

 

 ため息を吐きながら拳銃2丁を仕舞いながら近づいてくる。足音は小さく、体幹にブレがない。

 

「あんた……夜刀稲葉か。同じクラスの」

「……もしかして俺のせいで取り逃した?だとしたらごめん」

「謝んなくていい。捕まえるつもりはなかったからな」

 

 近くのベンチまで行き、2人並んで座る。

 

「……で、なんであんたはこんなとこにいんだよ」

「んとね……まぁ、ちょっと色々あってね」

「理由になってねぇ、言え」

 

 およそ女子らしからぬ言葉遣いと噂と違った性格に驚きながらも、圧に負けてここにいる理由を話す。当然石化や依頼人のことは伏せた。

 

「依頼受けて捜査って……あんた探偵なの?」

「あー……まぁそんな感じ。そういう美兎さんはなんでこんな時間にこんなところに?」

「習い事だよ……路面電車使えば30分くらいで帰れんだがな、これ見るためにわざわざ一駅分歩いてる」

 

 上を見上げると、散り始めた桜の花が輝いて見えた。

 

「……ところで美兎さん。その拳銃はどこで手に入れたの?」

 

 さっきまで持っていたM19112丁を見ながら聞く。

 

「銃なんて買おうと思えばどこでも買えるだろ」

「いや買えないと思うけど……まぁいいか……ところで美兎さん」

 

 俺は声のトーンを落として美兎さんの目を見る。黒い綺麗な瞳だとは思うが、その瞳の奥に俺はあるものを感じていた。探偵業(この仕事)を初めてもうすぐ1年経つが、何度か見てきた感じがする。

 

「美兎さん、()()持ってるでしょ?」

 

 魔眼。うちに依頼される怪事件のほとんどの犯人が持つ異能の力。前に見たものだと未来視や固定、時間停止なんてものもあった。そんな特異な力を、美兎さんにも感じた。

 

「魔眼……()()がそうなのかわからないが……まぁ見てな」

 

 ホルスターから銃を1丁だけ抜き、空に見勝手発砲する。すると、真っすぐ進んでいた弾が空中で急に向きを変え、更にそれが何度も繰り返されて最終的に俺の足元に着弾した。

 

「名前を付けるなら……〝定在の魔眼〟ってところか?空間の一部分を固定する能力って感じだな。オレの場合は一時的な物置とか跳弾させたりに使ってるな」

 

 美兎さん曰く、数年前にある日突然この能力が覚醒したらしい。魔眼の覚醒条件は未だわかっていない。だから、納得するしかない。

 

「あ、そういやさっきはなんで戦ってたの?」

「ん?あぁあれか……歩いてたらいきなり襲われてな。だからまぁ抵抗していたわけなんだが……お前に邪魔されたわけだが」

「それは、はい。すみませんでした」

 

 俺は少し考え、ある一つのことを思いつく。

 

「なぁ美兎さん」

「あ?なんだよ」

 

 拳銃を仕舞い、俺の方を見る美兎さんの顔を見て、俺は一つ提案をする。

 

「バイト、してみない?」

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