指令『青の中へ入り、先生となること。期限は無期限』 作:一般通過遂行者
とある星が郊外へと放逐されて少し経った頃。
今日も都市の震えが編んだ指令は伝令によって代行者へ、遂行者へ、その庇護を受ける人々へと渡される。
『青の中へ入り、先生となること』
代行者の1人、グローリアに渡された指令はかなりの解釈が必要な曖昧なものだった。
「ねぇエスター、今回のこの指令だけどさ〜」
難解な指令を受け取った時は、共に行動することが多いエスターに聞きに行くのがある種のルーティン。
「グローリアか。ちょうど4時33分、これを」
時間を確認していたエスターから布に包まれた1枚の板を受け取ったグローリア。
数日前に、エスターも1つの指令を受け取っていた。
『4時33分に自分の元を訪れた代行者に布で包まれた板を渡す。板は右から3番目の人間の髄液に4時間浸すこと』
突如板が発光し出すと、その光はグローリアを飲み込んでいく。
「うわっ、眩し。エスター、この板はなんなの〜!?」
「俺が用意したのは鉄板だ。指令の通り下拵えはしたが」
「指令なら間違いないか〜」
───────
「先生……先生ですよね?」
七神リンは困惑していた。光とともに現れた謎の大人、大人……? 2mを超える巨体に一つ眼、首元? からは蒸気が出ており、手も見えているだけで3本ある。ロボットや獣人、羽の生えた生徒などはよく見るが、これは本当に人なのか?
「うーん…………はっ、ここはもしかして指令にあった青の中!」
リンのことは全く気にせずキョロキョロと周囲を見回すグローリア。窓に映るのは都市では中々見られない青空。これはまさに青の中と言っていいだろう。残る指令は先生になること。となれば、視界に映り込んでいた少女にまずは話を聞くのが早いだろう。
「ねぇそこの君! 私、先生になりたいんだけど」
「や、やはり先生だったのですね……よかった」
目の前の女性? が先生であったことに安堵したリンは一つ息を吐き、この世界、キヴォトスについての説明を始めた。
グローリアはそういえばあの発光した板はどこに行ったんだろ〜と考えながら話半分に聞いていた。
「リンちゃんは私に先生をして欲しいんだよね?」
そして、エレベーターはグローリアが巨体すぎた為、渋々階段での移動中、思い出したかのように問いかける。
「はい。私が、というよりは、全て連邦生徒会長が決められたことですので」
「リンちゃんにも指令があったんだ、いい事だね〜。私も指令に従ってここに来たからね」
「何か噛み合ってないような気もしますが、まあ、そうですね」
自分の発言を言葉通りには捉えられていないようなグローリアの返事に違和感を持ちつつも階段を降りていく。
リンが階段とメインフロアを繋ぐ扉を開けると、エレベーターの前で屯している生徒立ちを発見し、とても面倒な気持ちになりつつも近づいていく。
「あー! 見つけたわよ代行! 連邦生徒会長を呼んできて!」
「リンちゃんも代行者なの? 親近感湧くな〜」
リンはすこぶる面倒そうな表情を浮かべつつも、グローリアの発言に少しだけ気を良くしていた。
が、ユウカに続いてハスミ、チナツ、スズミに詰められ、どんどんと機嫌を悪くしていく。
とはいえ仕事を放棄する訳にも行かないので、連邦生徒会長の失踪と、サンクトゥムタワーの制御権を失っていたことを説明した。
「では今はサンクトゥムタワーの制御権を取り戻すすべがある、ということですか、首席行政官?」
「はい、このこの先生こそが、フィクサーになってくれるはずです」
「私はフィクサーじゃないよ〜? 人差し指の代行者、グローリアだよ〜、よろしくね!」
「話が噛み合ってないように見えますが……」
「そういえば君たちは銃を持ってるんだね〜。一応聞いておくけど、君たちは親指?」
「親指ですか……? 手の指のこと、ではなくて、何か別のものを指してるなら、わかりません」
ジロリ、と単眼が4人を見下ろす。
装いからそれぞれ所属が違いそうな4人ではあるが、全員が親指であった場合、抗争になりかねない。
とはいえ、親指であればグローリアが人差し指の代行である事は見れば分かるだろうし、その時点での反応から、限りなくそうでは無いだろうと考えてはいた。
結果は全員恐らくシロ。親指も人差し指もよく理解していないようで、同時にここが完全に都市の外だろうとも推測できた。
「思ったよりも収穫はあったね〜。で、リンちゃん、私はこれから『シャーレ』の部室に向かわなきゃいけないんだよね?」
「良かった、ちゃんと聞いていたんですね。直行のヘリコプターを、と思っていたんですが少々問題が発生して……ただ、ちょうどここに暇そうで優秀な人達がいるので、心強いです」
「えっ!?」
リンは4人にニコリと微笑んだ後、出口へとスタスタ向かっていく。
待って〜とグローリアも後に続き、その後ろを4人の生徒も追いかけていった。
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