決して負けない七星剣王   作:」(UWU)「

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地獄は壁一重

 

 

 今回も負けて戻って来てしまった。

 いくら何でも俺の伐刀絶技って産廃すぎないか?

 

 

 また負けて戻ってきた。

 気分はまるで人生ゲームの振り出しマス。でも自分の努力次第で回避できる分マシか?

 

 

 負けて入学式に再び戻ってきた。

 あー、マジで俺才能無いな。魔力操作ってどうすんの? あ、元からほとんど無いから無理? さいですか。

 

 

 やっぱり負けて振り出しに戻る。

 さて、対策を講じよう。大丈夫、まだ勝てる範疇だ。

 

 

 負けた! 戻った!!

 負けるのは良いけど、友好関係の再構築が思ったより面倒だな。

 

 

 

 ――――

 ――――

 ――――

 

 

 

 負けてしまった。入学式初日に戻った。

 いい加減少し慣れてきた。でもまだ騎士になれていないから再挑戦を選ぶぞ俺は。

 

 

 負けてしまった。入学式に戻った。

 相手の速度がかなり速かったために負けた。次は相手の行動パターンから攻撃箇所を割り出そう。

 

 

 負けてしまった。また入学式に戻った。

 今回は頭では理解できても体がついてこなかった。体を鍛えないといけない。

 

 

 負けてしまった。初日に戻った。

 剣士として自分が及第点に達していないと判断。もっと多くの自己鍛錬を追加しよう。

 

 

 負けてしまった。初日に戻る。

 つい友人……友人だった人に前のループを引きずって親し気に話しかけてしまった。頭でも狂ったかのように扱われた。これでは弱点を探れない。次は気をつけよう。

 

 

 負けた。初日に戻った。

 ちょっと疲れてきた。このループぐらいは休んでも良いよね。

 

 

 逃げた。戻って来た。

 この徒労はいつ終わりを迎えるのだろうか。もう入学式の言葉を一言一句違えず言えるようになってしまった。

 

 

 負け。初日に戻った。

 勝ち負けなんてどうでもいい。まだ終わらないのか。

 

 

 負けた。戻って来た。

 特殊なあまり理解できない伐刀絶技だった為に後れを取った。次は無い。

 

 

 負けてしまった。戻った。

 つい出来心で自殺してしまった。それでも俺の伐刀絶技は発動した。もしかしたらこのループにゴールは無いのでは。

 

 

 逃げた。戻った。

 同情心からか勝ちを譲ってしまった。次は切り捨てる。

 

 

 負けた。戻った。

 本当に「比翼」に勝てるのだろうか。あの女強すぎだろ。俺もダイエットするか。

 

 

 負けた。戻った。

 魔人になった。でも戻った瞬間に魔人ではなくなった。最短ルートで魔人を目指してもまる一年はかかると思われる。

 

 

 負けた。戻った。

 敵の弱点を探れ。行動理念を把握し、偶然すらも必然として扱え。

 

 

 負けた。戻った。

 足りないなら人間性を捨てろ。せめて情報を持ち帰るべきだ。

 

 

 負けた。戻った。

 時間が圧倒的に足りない。チャートの組み直しを進言。

 

 

 負けた。戻った。

 合理性を取り、感情論を捨てる。最短で駆け抜けろ。

 

 

 負けた。戻った。

 解析、理解、共感、把握、支配。無駄は不要。

 

 

 負けた。戻った。

 ただ、明日を迎えるために。

 

 

 負けた。戻った。

 

 

 負けた。戻った。

 

 

 負けた。戻った。

 

 

 負けた。戻った。

 

 

 ……。

 

 ――――

 ――――――

 ――――――――――

 

 

 負けた。戻った。

 ……あれ、そう言えばなんで騎士を志したんだっけ?

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 四月の早朝からトレーニングを行う二つの影があった。

 広大な敷地を有する破軍学園の正門へ向かう道。汗と疲労で淑女のしの字もない状態でなんとか根性で食らいつくジャージ姿のステラ・ヴァーミリオンと、ちょっとした近所のランニングぐらいの息使いの同じくジャージ姿の黒鉄一輝は彼女の当分先を行く。

 

 二〇キロほどのランニングコース。

 元々は一輝の日課であったのだが彼の同部屋であり、紆余曲折あって彼をいたく気に入っているステラが負けず嫌いでついて来ているという背景だった。

 

「それなりにキツイ筈なんだけど大丈夫かい?」

「あだじを、誰だとオエー!」

 

 吐いた。

 これまで有酸素運動を常識の範囲でしかこなして来なかった彼女の体には酷な話だったようだ。

 

「うわあああ、だ、大丈夫かい!?」

 

 慌てながらステラに近寄り、持ってきていたスポーツドリンクを渡しながら彼女の背中をさすった。

 それでも昨日は途中で倒れたのだからまだマシだった。

 

 

 なんだかんだ途中で小休憩を挟んだものの、最後まで完走した二人。

 世界でも有数の魔力の才能を持ちながら、肉体面でも一輝のトレーニングについてこようとする気概を持つステラに感心した。

 これでも一輝は魔力の才能に乏しく、それが原因で留年している。だからこそ常人よりもはるかに厳しいトレーニングを己に課していた。この日課のランニングにしたって二〇キロのハードなランニングでありながら、全力疾走とジョギングで緩急をつけて走っている。

 

 軽く息を整えながら、談笑する二人。

 破軍学園の大きな校門が見えてくるところで、異物を見つけたのはステラだった。

 

「どんな神経してる訳? 破軍学園は校門前にホームレスが居ても何もしないなんて」

 

 大胆にも道端で、うつ伏せの大の字で寝ている人影。

 

「ああ、彼は――」

 

 一輝が説明するより先にステラはその顔を覗いた。

 

「七星、……剣王!?」

 

 いくら箱入り娘で外国の出身であったとしても彼のことは知っていた。

 歴代最強の七星剣王の名前は伊達じゃない。他国にその姿を認識させる程度には著名人だった。

 

「え、なに、襲撃? てかなんで全裸!?」

「まあ、実のところよくある事なんだけどね」

 

 混乱するステラをよそに一輝は苦笑するしかなかった。

 

「七星剣王に休みは無いよ。起きたらそのまま剣の練習をして最低限の補給と授業だけ受けて、その後は気を失って倒れるまで練習を続ける。それを毎日続けているよ彼は。だから時たまジョギング中に倒れている彼を介抱する事もあるんだ」

「ほんとに同じ人間なの、それ……」

 

 軽くドン引いていた。

 彼女も人のことを言えない程度には努力家ではあるのだが、常軌を逸した剣王の努力には顔を顰めるしかない。一体何がそこまで彼を駆り立てるのか。

 

「一度だけお邪魔させてもらった事もあるけど、情けない事に疲れてしまってその日の授業はほとんど寝ていたよ。その次の日は昨夜の練習で靱帯断裂に筋肉破裂と骨折、疲労困憊で授業にすら出られなかった」

 

 この学園でも有数の努力家を完全に置いてきぼりにした狂気の練習、いや拷問。その内容が気にならない訳ではないが、きっと後悔するという確信めいた何かがあった。

 

「ねぇ、イッキ。彼を起こさなくて良いの?」

「えっと、今が六時だから……。あと三〇分もしたら起きるからそれまで寝かせてあげよう」

「なんで三〇分?」

「彼、どうやら体内時計が正確らしくて体が最低限動くようになったら勝手に起きるんだよ」

 

 余計人間かどうか怪しくなってきたがステラは、とりあえずこの状況が異常な物じゃない事に安堵した。

 

 全裸のまま倒れている彼をそのまま見ているのも目に毒なので視線をずらし、正門の方向を見つめた。

 着々と機材がスタジアムに向けて運び込まれており、選抜戦の始まり時期を告げる。

 

「……そっか、ようやく選抜戦になるのか」

 

 隣で感慨深げに一輝は呟いた。

 一年目は最低限のチャンスこそあったが、七星剣王という大きな壁に阻まれて過ぎ去った。何のチャンスも与えられずに終わるよりかはまだマシだが、それでも後悔は残る。

 だが、今年からは理事長を含め経営陣の一部がすり替わり、新体制の新宮司黒乃新理事長率いる「全生徒にチャンスを与える」という理念が前面に押し出された。

 それならば、卒業はおろか選抜戦を勝ち残り、もう一度七星剣王と戦うことができるのでは、と一輝は期待する。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

「あれぇ? 絢瀬ちゃんじゃん」

 

 倉敷蔵人。貪狼学園の三年生。

 昨年の七星剣舞祭でベスト8入りを果たした実力者。そう前までの自分はきっと認識している事だろう。

 

 

 ある日の午後、いつもつるんでいる不良と共にファミレスで暇つぶしでもしようとして立ち寄った時にそれは起こった。

 何を思ったのか、何を見たのかツレが勝手に絡みに行った事から始まった。

 別にこいつらがどこのどいつに手を出そうが勝手だが、思いのほか懐かしい顔を見た。

 

 綾辻絢瀬。

 

 二年程前に道場破りを行っていた際に、ちょっかいかけた綾辻海斗の一人娘だったと記憶している。

 もうかれこれ一年は顔を合わせていなかったはずだ。

 

 その絢瀬が黒髪の少年と赤色の少女と共にファミレスの席に座って談笑していた。

 声を掛けられたことでビクン、と跳ねるようにして顔を真っ青にする絢瀬に、嫌がらせをするようヘラヘラと笑ながらツレが話出す。

 

「随分と懐かしい顔じゃない?」

「当分見て無かったもんなぁ。蔵人が急に出てぐんだから」

「クラウド、誰? この子ぉ」

「いやあ、つい声かけちゃってよぉ。ごめんねって、ぎゃはは」

 

 しかし、絢瀬の方はこちらの方向を見ようとせずただ俯くばかり。未だトラウマの跡は深いようだった。

 

「オイ、お前ら辞めろ」

 

 みっともない、とまで言おうとして。

 

「でもよぉ蔵人。こいつの親父はあんたに負けたんだろ?」

 

 二年前、伝説の剣豪と名高い綾辻海斗に挑んだ。

 結果は蔵人の勝ちだった。

 

 と言っても当時の綾辻海斗は随分と老齢であった。年老いた体であるために一線を退き、後進育成のために道場に専念していた。

 だから挑んだ当初は、本調子でないのは理解していたし、それでも憧れたラストサムライの異名で知られる剣豪は必ずや答えてくれると信じていた。

 だが、結末は奥義失敗による敗北。不完全燃焼も良いところだった。

 

「だが、そのオレが負けたんだ。敗者風情がイキってんじゃねぇって話だ」

 

 そんな状況でお山の大将を決め込んでいた蔵人を叩きのめし、再び闘争と剣の道に戻した存在もいた。

 それは自分を七星剣舞祭でベスト8どまりにした相手だった。

 

「良いから辞めろっつってんだよ。制服見ろ。兄貴に示しがつかねぇ。わかってんだろ?」

「え、ええ、そりゃあ」

「浅草の旦那にはいつもそりゃあお世話になってますんで……」

 

 浅草の旦那。とまで言って黒髪の少年、黒鉄一輝が声をあげた。

 

「浅草の旦那って、まさか浅草再蔵の事かい?」

「ん? ああ、その通りだが」

 

 勿論、再蔵の方が後輩だ。

 だが七星剣舞祭にて彼と戦った蔵人はその惚れ惚れする剣技に納得し、緻密に作り上げられた戦術に感嘆した。故に兄貴と勝手に呼び慕っている。本人はそんな蔵人を知ってか知らずか無視を決め込んでいる為、内情は計り知れないが。

 

「まあ、いい。ツレが悪かったな。行くぞお前ら」

 

 吐き捨てるようにしてツレが何か言っていたが、特に気にしない。

 今は来るべき七星剣王との勝負の為に英気を養うと決めているからだ。

 

 

 

 

 ……彼との戦いを今でも蔵人は覚えている。

 七星剣舞祭での舞台の上、自分の関係者も応援に駆けつけてボルテージもマックス。その上、自分でもわかるぐらいに最高に調子が良かった。おまけに対戦相手は蔵人が特に得意とする純粋な剣技を扱うタイプの相手。はっきり言ってカモだった。

 

 

『オレの神速反射(マージナルカウンター)に死角はねぇ。オレの大蛇丸の間合いに着いて来れる奴も居ねぇ。剣技だけで勝ち上がってきた奴の天敵なのさ、俺は!!』

 

 嘘偽りのない本当の事だった。

 常人の倍以上の反射神経を持った蔵人はありとあらゆる行動に後だしじゃんけんが可能だった。それと同時に伸縮自在の蛇腹剣によって相手の間合いを削るようにして戦う。その二つを掛け合わせるだけで「剣士殺し(ソードイーター)」の二つ名を授かったほどだ。相性有利をこれでもかと詰め込んだ試合。

 

 この力で壁が厚い七星剣舞祭にまで上り詰めたのだ。純粋な剣術タイプの再蔵では勝ち目はない、はずだった。

 

『――っは』

 

 そこで先ほどからまるで攻撃が当たっていないことに気が付いた。あたかも自分のように一瞬にして状況判断と体の操作を可能としている、と。

 間違いなく、己の常人の倍以上の反射神経。その倍以上の物を持っている。その考えに至るには時間はかからなかった。

 

 

『極・神速反射。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。言ってみれば簡単だが、そうじゃねぇな。それはもう未来視の次元だ。伐刀絶技だと言ってくれた方がまだ信憑性がある。人には不可能な動きを平然としてやがる』

 

 

 同じ力を魔力関係なく振う。にも関わらず素の力で置いてけぼりにされている。そう否が応にでも理解する。

 だから同じ土俵に立って負けるのならば、そう考えた蔵人は大蛇丸によるロングレンジ攻撃に打って出た。

 

 それでも届かなかった。

 掠りもしない剣の頂を、伐刀者の頂点を見た気がした。

 

 蔵人にとって相手がまるで手の届かない高みに居ると感じるのは久々の事だった。それこそ幼い頃に見た綾辻海斗のように遥か遠くに鎮座していた。

 

 

 決着は三手で決まった。

 右斜め下に振り下ろした蔵人の剣を再蔵は大剣の柄で逸らし、大剣の面で蔵人の剣を弾き飛ばす。そのまま美しい所作で左から袈裟切りにして通り過ぎ決着。

 

 

 ぐうの音も出ない素晴らしい剣術。それまでは不良の喧嘩殺法のような出鱈目な剣を振ってきた蔵人から見ても明らかだった。

 

 最後に蔵人を徹底的に打ちのめした彼は一言。

 

 

『――()()()()()()()()()

 

 

 その一言で目が覚めた。

 自分が今まで行ってきた事の不出来さが。

 自らが未だ途上ですらない己の未熟さが。

 

 天狗になっていた鼻っ柱を木っ端みじんに吹き飛ばされたのだ。

 だから蔵人は彼を兄貴と慕う。いつだって彼は蔵人の遥か先を歩むからだ。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 朝起きたら、芝生を無意識下で食べてた。何を言ってるかわからねぇと思うが俺にもわからねぇ。多分体が食物繊維を欲していたんだな。そうに違いない。

 

 とりあえず口に入っている分はもしゃもしゃと食べる。うーん、まずい。

 日課の「レッツ・倒れるまでトレーニング(ただの拷問)」で倒れてしまったのだろう。正直、三日三晩ぐらいは何のことは無く素振りできればいいのだが、まだ体が未熟過ぎて無理なようだ。情けない。

 

 

「お、兄貴、目ェ覚ましましたか」

 

 

 あれま、クラウドくんじゃないか。

 コンビニの袋を持った彼がやってくる。

 そこでようやく枕代わりになっていた彼の制服の上着に気が付く。

 

「ああ、気にしないでください。勝手にやったことっすから」

 

 うわー借りを作っちゃったか~。ミスったな。次のループは気をつけるか。そこまで気を回せればだけど。

 借りには恩を返す。自分の理想とする騎士ならばきっとそうするのだろう。だから後程何かしら考えなければな。

 それが例え相手が覚えてなかったとしてもだ。面倒な事この上ない。

 

 そのままクラウドくんはがさごそと袋を漁って中身を取り出す。

 

「そうだ、さっきそこのコンビニでおにぎり買ってきたんすよ。良かったらどうぞ。味は何が良いっすか? 鮭、梅、おかか、好みわかんないんで適当に買ってきただけっすけど」

 

 興味ないね。(クラウド違い)

 とでも言えれば良いのだろうが、生憎そこら辺に生えている芝を食べるぐらいには空腹だ。

 

 まともな食事とか何万ループぶりぐらいだろうか。結局、新宮寺先生の奢る宣言で奢ってもらったのって自販機のジュースだったし。

 ここ最近は食堂の自販機で買える薄味のなんちゃらスティックしか食べてないから味とかわっかんねぇなコレもう。

 

「すま、ない。助かった」

「――――! いえ、勝手に舎弟やらせてもらってるだけなんで!」

 

 うまい!!テーレッテレー ガッツリ、ガツガツ! 喰らう!

 

 




破軍学園壁新聞
キャラクタートピックス 文責・日下部加々美

SAIZOU ASAKUSA
浅草再蔵

■PROFILE
所属:破軍学園二年一組
伐刀者ランク:A
伐刀絶技:不明
二つ名:七星剣王
人物概要:決して負けない常勝不敗の騎士

身体能力:A+ 魔力制御:A+ 魔力量:F 防御力:A+ 攻撃力:A+ 運:F

かがみんチェック!
最早誰もが知っている我らが七星剣王。でも恥ずかしがり屋さんなのか一切のインタビュー記事が出てきません!
弱点らしい弱点も無く、圧倒的な技量と洞察眼でどんな相手でも初戦から完封するストロングスタイル!
たまに熊を山で狩って来て生で食べている、との目撃情報が届いております。
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