壁も巨人も、世界は私のために変われ!   作:an-ryuka

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14.

 

郵便が配られる。

訓練兵団の郵便は、だいたい決まった顔ぶれに届く。

毎回呼ばれる者。呼ばれない者。呼ばれると少しだけ場が動く者。

 

私はたまに。

 

教官の声が通る。

 

「ジラヴェラ=ジェネリンド!」

 

「はい」

 

手紙を受け取る。

紙質は、貴族とも平民とも言えない中間のもの。

ケニーの気遣いだろう。

どちらとでも私が使えるように。あの人はそういう所に頭が回る。

 

私は元いた席へ戻ろうとして歩き出す。

その途中、横から声が刺さった。

 

 

「実家のお貴族様からか?」

 

フロックだ。

嘲るような声。笑ってるふり。

 

私は目を細めて笑い返す。

 

「気になる?」

 

フロックは鼻で笑う。

 

「はっ。どうでもいいね。庶民には関係のない世界だ」

 

決めつけ。欺瞞。嘲り。

閉じるための言葉。

 

……こういう態度は、安心する。

 

私はフロックの横へ滑り込むように座る。

彼が席を立たないギリギリの近さ。

 

フロックが眉をひそめる。

 

「何座ってんだよ」

 

でも自分からは離れない。

言葉とは反対に、案外そこまで嫌われてないことを、私は既に知っている。

 

私は手紙を指で挟んだまま、わざと貴族らしい微笑みを作る。

貴族じゃなくても、こういう顔は何百回とやってきた。

 

 

「読みたいんでしょう」

 

間を置いて、優しく続ける。

 

「一緒に読みましょ?」

 

フロックがため息を吐く。

肘を机に置いて、私の手元へと視線を向ける。

 

私は封を切った。

紙が擦れる音は、妙に大きく聞こえる。

 

中身を引き抜く。

フロックにも見えるように開く。

 

中身はどうだろう。

ケニーが書きなぐった文字ならそれはそれで楽しい。

 

 

手紙には綺麗な文字が並んでいた。

揃った行と無難な言葉。

 

――貴方に用事があります。

――次、帰れそうなのはいつですか?

 

 

(……副官さんが書いたかな)

 

フロックは目だけで文字を追い、小さい声で声を出した。

 

「……面白さも何もねぇな」

 

その普通の言い方に少しだけ不満が滲む。

派手な汚れを期待して、見つからなかったと。

 

私は手紙を折りたたむ。

綺麗に。見せつけるように。

 

「そんなものよ」

 

私は封筒を指で軽く揃える。

 

国から面倒な依頼でもあったかしら。

 

そう思考を飛ばし、

フロックの横顔を見ずに席を立ち上がった。

その時。

 

「なぁ……」

 

フロックが、もの言いたげに口を開く。

 

私は振り向く。

目が合うと、フロックは目を逸らした。

目を逸らすタイミングが早い。逃げ癖がある。

 

「いや、いい。忘れろ」

 

……考えてる顔だ。

言いたいのに言えない顔。

 

私は笑った。今度は、貴族の笑みじゃない。

もう少し雑で、悪意が混じる笑い。

 

「……忘れない」

「言う気になったら教えてね?」

 

フロックの反応を見る前に歩き出した。

 

大丈夫。いつも通り。

私はこれが、いつも通りだ。

 

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