二度目の惑星封鎖機構ちゃん in キヴォトス   作:Seiran

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ストーリーラインに乗ったので考えることが少なくて助かりますね



第7話 ︎︎邂逅 Ⅱ

『行政官と言うことは...ゲヘナのナンバー2ですか...』

 

「あら、実際はそうたいしたものではありません。私の職務はあくまで風紀委員長の補佐する秘書の様なものですから」

 

 こちらを油断させる方便か、あるいは本当に風紀委員長の補佐をしているのか。対策委員会の面々にその判断はつかなかった。

 

「本当にそうなら、そこの風紀委員達がここまで緊張するとは思えない」

 

「成程、素晴らしい洞察力です。砂狼シロコさん...でしたか?」

 

「...ッ」

 

 顔も知らなかった他学園の上層部に名前を知られていることに薄ら寒いものを感じたシロコは静かに引き金に指を掛け、直ぐに発砲出来るように体勢を整えた。

 

「ああ、警戒させてしまいましたか?アビドスには生徒会の面々しか残っていないと聞いているのですが...なるほど、皆さんの事のようですね」

 

 シロコは動かない。ノノミも笑顔を険しいものに変え、セリカは不安げに辺りを見渡していた。

 

「アビドスの生徒会は5名との事でしたが、あと1名はどちらに?」

 

 行政官の声色は、純粋な疑問の色が浮かんでいた。

 

「...今はおりません。それと、我々は生徒会ではなく対策委員会です。行政官」

 

「ふむ、奥空さん...でしたよね?対策委員会と言うことは、皆さんは生徒会では無いのでしょうか。私は生徒会の方と話がしたいのですが」

 

「アビドスの生徒会はとっくの昔に解散したの!事実上、私たち対策委員会が生徒会の代理の様なものだから、言いたいことがあるなら私たちに言いなさい!」

 

「それに、こんなに多くの兵力で包囲して銃を向けたまま、『お話を...』というのは話をする態度としてどうかと思いますけどね?」

 

「ふふ、それもそうですね。失礼しました。全員、銃を下ろしてください」

 

 セリカとノノミが行政官に硬い声で返答を返すと、行政官はその微笑みを若干深めて指示を出した。

 まさか本当に銃を下ろすとは思わなかった2人は驚きを隠せなかった。

 

「先程までの愚行は私の方から謝罪させていただきます。不幸な行き違いとはいえ、ミレニアムのエージェント、それも特記戦力と事を構えたとあっては...外交上大きな問題となり得ます」

 

「なっ...」

 

「ましてやこのような他校の自治区周辺で大規模な作戦を行うなど...改めて謝罪を。私たちゲヘナ風紀委員は、あくまで当校所属の校則違反者を逮捕する為にここに来ました。不幸な出会い方をしてしまいましたが...対策委員会の皆さん、我々の風紀委員としての活動にご協力頂けませんか?」

 

 何処までも真摯な言い分だった。自分たちが間違ったことをしていないと確信しているという自信に満ちた口ぶりは、アヤネが感じていた僅かな違和感を僅かに大きくした。

 

『先程も言いましたか...そうは行きません!』

 

「あら...?」

 

『他の学校が別の学校の敷地内で堂々と戦闘行為を行うことは、自治権の観点から決して容認できません!故に、便利屋の処遇は私たちが決めます!まさかゲヘナ程の学校がこのような暴挙に出るなんて思いませんでしたが、ここは譲れません』

 

「...なるほど、そちらの方々も同じ考えのようですね」

 

 行政官は対策委員会と先生、C&Cを一瞥し、やがて納得したように頷いた。

 

「これだけの兵力を前に怯まないとういのは...特別何かがあるのでしょうか?そう、例えば【信頼できる大人】とか。ねぇ、先生?」

 

「それがなんだって言うのよ!」

 

「C&Cは現在、シャーレの指揮下にあると聞いています。シャーレの先生、そしてC&Cの皆様も、対策委員会と同じご意見ですか?」

 

「”そうだね。ここはアビドスのみんなの土地のはずだから”」

 

「他校の自治区を侵犯する事の方が、私たちC&Cと戦闘したことより余程外交問題だと思いますよ?彼女達(便利屋68)の背後も分かっていませんし、先にお話を聞かせてもらいませんと」

 

『交渉は決裂です!ゲヘナ風紀委員会、あなた方に退去を要求します!!』

 

 行政官は衝撃を受けたのか、顔を少し引き攣らせ、ひとつ咳払いをして口を開いた。

 

「これは困りましたね...うーん......本当はもっと穏便に済ませたかったのですか......ヤるしか無さそうですね?」

 

 行政官が笑顔を深めてそう言い切ったことを呼び水に、緊張した雰囲気がより強まる。その場にいる全員が戦闘態勢に入ろうとしていた。

 

「風紀委員、全隊攻撃用───」

 

 ダンッ!ダンッ!ダンダンダンッッ!!!

 

「───いっ!?」

 

 

「な、なんだ!?」

「うわぁっ!?」

「ぐあっ!?」

 

 行政官が攻撃命令を下そうとしたその時、突如として銃声が響き渡った。

 重たい─ショットガンのものであろうそれは、包囲を形成していた風紀委員達を突き破りながら段々と近づいていた。

 

「許せない許せない許せない許せない許せない許せない......」

 

「はっ!?お前は...!」

 

 やがて姿を見せた紫髪の少女...伊草ハルカに気付いたイオリが声もあげるも、しかしそれが仇となって彼女に襲いかかった。

 

「許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!うあああああああっ!?」

 

「ぐぉっ!?うぁ......」

 

 至近距離でショットガンの連射を受けたイオリが倒れると同時、風穴の空いた包囲網から1人の声がした。

 

「嘘をつかないで、天雨アコ」

 

「カヨコさん...」

 

 白と黒の髪をした少女。行政官にカヨコと呼ばれた少女は、数拍置いて口を開く。

 

「偶然なんかじゃない。寧ろ、あんたはこの状況を望んでいた。ミレニアムのC&Cが居ることは想定外だったみたいだけど... そうでしょ?アコ」

 

「それはそれは...面白い話をしますね?カヨコさん」

 

 まるで心外かのようなリアンションをとる行政官を見据え、彼女は続ける。

 

「...最初はどうしてここに風紀委員会が現れたのか、理解できなかった。風紀委員会が別の自治区にまで追ってくる理由、それも私達程度を狙って?まさか、こんな非効率的な運用は風紀委員会のいつものやり方じゃない。つまり──」

 

「つまり?」

 

「──アコ、これはあんたの独断で起こした行動に違いない」

 

「...ふむ」

 

「それに、私達を相手にするにはあまりにも過剰なこの戦力。他の有力な集団との戦闘を想定していたとすれば、説明がつく。とはいえ全校生徒が5人しか居ないアビドスを相手にするににしてもやっぱり過剰な戦力よね。...ならば、結論はひとつ。アコ、あんたの本当の目的はシャーレ。初めから先生を狙ってここまで来たんだ」

 

「”私?”」

 

 カヨコの推理。それはアビドス、そしてシャーレ側の想像を遥かに超えるものだった。今日何度目かも分からない驚きに、セリカとノノミが声を上げる。

 

「な、なんですって!?」

 

「まさか、先生を...」

 

 行政官にとってもまたこの推理は驚きであったようで、どうにか堪えようと、しかし笑いが漏れ出ていた。

 

「ふ、ふふっ。なるほど、ああ、便利屋にカヨコさんがいることをすっかり忘れていました。ふふっ、呑気に雑談に興じている場合では無かったですね...」

 

「そう。やっぱりね。それで、なんでシャーレの先生を狙っ──「まぁ、構いませんが。」っ!?」

 

 パチンッとアコがひとつ指を鳴らすと、既に形成済みの包囲の更に外側...それも全方位から、一糸の乱れの無い軍靴の音が聞こえてくる。

 

『12時方向、9時方向...3時、6時方向、いえ、全方位から風紀委員会の更なる兵力が接近中です!まさか、まだ居たなんて...』

 

「うーん、本来は予備兵力として後方に残置していたのですが...シャーレとC&Cを相手にするのですから、これくらいはあっても困らないでしょうし... なんなら、もう少し連れてきても良かったかも知れませんね☆」

 

「包囲は抜けたと思ったけど...二重だったか...」

 

「はい、そうです。流石はカヨコさんですね。先程のお話は...えぇ、半分ほど正解です。確かに私はシャーレと衝突する事を最悪のパターンとして想定していましたが...しかし、この状況を意図的に作り出した訳ではありませんよ?とはいえ、信じてはいただけないでしょうが...」

 

「...そうだね。今更言われても、信用出来ない」

 

「仕方ありませんね。事の次第をご説明しましょう」

 

 アコは呼吸を整え、ゆっくりと語る。

 

「きっかけは、ティーパーティーでした。もちろんご存じですよね。ゲヘナ学園と長きにわたって敵対している、三大学園が一角「トリニティ総合学園」その生徒会のことです。そのティーパーティーが、シャーレに関する報告書を手にしている...と。そんな話が、うちの情報部から上がってきました」

 

トリニティの話が出てきたとき。先生の脳裏には一人のペロロ好きな生徒が浮かんでいた。

 

【戻ったら、この事実をティーパーティーに報告します!】

 

まさか、と思ったのは先生だけではないようで。彼女と関わりのある面々は顔を引き攣らせていた。

 

「当初は私も『シャーレ』とは一体何なのか、まったく知りませんでしたが...ティーパーティーが知っている情報となれば、私たちも知る必要があります。それで、チナツさんが描いた報告書を確認しました」

 

チナツは、あたかも必要になったから報告書を確認したかのようないいぶりにドン引きしていたが、アコは目を若干そらしながら話を続けた。

 

「連邦生徒会長が残した正体不明の組織...大人の先生が担当している、超法規的な部活。どう考えてもキヴォトス封鎖機構と同等...いえ、それ以上に怪しいと思いませんか?シャーレという組織は、封鎖機構と同じくとても危険な不確定要素に見えます。これからのトリニティとの条約にも、どんな影響を及ぼすのか分かったものではありません」

 

ふぅ、と一つ息を吐き、ゲヘナの行政官たる彼女はまっすぐに先生を見据えて、言った。

 

「ですからせめて条約が無事締結されるまでは、私たち風紀委員会の庇護下に先生をお迎えさせていただきたいのです。ついでに、居合わせた不良生徒たちも処理して上で...といった形で」

 

誰もが口をつぐむ中、やはりセリカが口火を切った。

 

「...先生を連れて行くって?私たちは既に先生にお世話になってるの。はいそうですかって、言うとでも思った?」

 

「...ふふ、やはりこういう展開になりますか。では仕方ありませんね、奥空アヤネさん?」

 

『何を...』

 

「ゲヘナ風紀委員会は、必要が求める戦力を行使することに躊躇はありません。今までは遠慮をしてきましたが...私たちは一度戦力の行使を決断すれば、一切の遠慮はしません。理性的な判断をお願いしますね?」

 




次回、ゲヘナ風紀委員VSアビドス、便利屋68、シャーレ連合VSダークライ(封鎖機構)
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