あの戦いからもう数年が経った…
大地を渡る風は、もう血と恐怖の匂いを含んではいなかった。
争いは終わり、理は正され、世界は――静かに、だが確かに前へ進み始めている。
かつて、世界を覆っていた黒いルフの濁流は消え去り、
今はただ、穏やかな光の流れだけが空と大地を満たしている。
まぁ、いきなりこんな始まり方しても分かんないよね?
一旦僕たちの最後の戦いについて経緯を軽く説明するね!
僕たちと…シンドバッドおじさん。
シンドリア国王にして"七海の覇王"とまで言われたシンドバッドおじさんとの対立について…
この世界では昔から、
人の運命や王の誕生は“決められた流れ”に沿って進む仕組みがあったんだ
・誰が王になり統治するのか
・どの国が栄えるか
・誰が堕ちるか
こうした流れを導く存在が「マギ」で、
世界はずっと
「選ばれた道」を進むようにできていた。
そして…シンドバッドおじさんは英雄として…国の王として成功し、
多くの国と人、希望と絶望を見てきた。
その結果、彼はこう考えるようになるんだ。
人に自由を与えるから
欲望が生まれ、争いが起き、
世界は何度も壊れる。
そして
「もう誰かが導く程度では足りない」
と考え、さらに一歩進んだ結論に行き着いた…
"だったら世界そのものを一人が管理すればいい"
・人に自由に選ばせない
・運命も結果もあらかじめ決める
・悲劇が起きない“最善のルート”だけを残す
彼にとってそれは
**支配ではなく「救済」**だったんだ。
シンドバッドおじさん自身は
「自分が悪役になってもいい」
「世界が平和ならそれでいい」
と本気で思っていた。
その一方で僕は世界の仕組みも、
シンドバッドおじさんの考えも、すべて理解した上で対立した…
僕の考えはこうだった。
・人は間違える
・争いも起こす
・でも、だからこそ“選ぶ意味”がある
もし誰かに
最初から答えを決められていたら、
それは生きているとは言えない。
不完全でもいい
人は自分で考え、悩み、選ぶべきだ
これが"マギ"の僕としての信念だったんだ…
だからこの戦いは、
・正義 vs 悪
・主人公 vs ラスボス
こんな簡単に片付けられるレベルではなかった。
「世界は管理されるべきか」
「自由に委ねるべきか」
という
思想そのものの衝突…結果…
殴り合いで勝ったから終わったわけではなく、
僕たちが
「導く存在そのものを終わらせる」
選択をしたことで決着がついた。
そして
・マギという役割は消えた
・世界を選別する仕組みも消えた
・魔法も次第に世界から離れていく
つまり世界は、
誰にも管理されない、
人が自分で未来を選ぶ世界になったのさ
◆
どうだい?分かりやすかったかい?
僕がウーゴくんと2人きりでいたところから初めて外に出て色んなことがあった
色んな人たちにあって楽しいことも…悲しいことも…たくさん経験させてもらったよ
…僕はこれからどこに向かっていくのかな?
◆
夕暮れのバルバッドは、黄金色の光に包まれていた。
港の帆は静かに揺れ、街路には人々の笑い声が遠く溶けていく。
そのすべてを見渡せる丘の上に、アラジンは一人立っていた。
足元には、長い旅で何度も踏みしめてきた土。
背後には、今まさに新しい未来へ歩き出した仲間たちのいる国がある。
――アリババ君とモルさんが結ばれ、生まれ変わった世界で
バルバッドはようやく「争いの終わった国」として息をしている。
「……本当に、いい国になったね」
誰に言うでもなく、アラジンは小さく呟いた。
その声は風に運ばれ、街のざわめきに溶けて消える。
思い返せば、ここに初めて来た頃のバルバッドは混乱の只中だった。義賊による国への強襲…はたまたバルバッドの王子達による悪政…
怒り、欲望、恐怖が少し充満していた気がする。
(まぁ義賊はアリババ君だったんだけどね…)
人の心が渦を巻き、国そのものが壊れかけていた。
それでも――
あれから色々あり再び活気を取り戻したような気がする。
アリババは立ち上がり、モルジアナは寄り添い、
人々は少しずつ前を向いた。
「二人なら……もう大丈夫だよね」
アラジンの表情には、寂しさよりも確かな安堵があった。
しかし同時に、胸の奥で静かに疼くものもある。
自分だけが、ここに留まる理由を失ったという事実。
アラジンは杖を握り直し、空を仰いだ。
雲はゆっくりと流れ、その先にはまだ見ぬ世界が広がっている。
その時
『アラジン!!』
どこか懐かしいような、自分を外の世界へ連れ出してくれた人の…この世界で初めて出来た友達の声が聞こえた
アラジンは声の聞こえた方を振り向くとそこには
金髪の両耳に青緑色と赤いピアスをつけた男性と長い赤髪を左サイドでポニーテールにしている女性が見えた
「アリババ君!それに…モルさんも!」
そこには居たのはアリババとモルジアナの夫妻であり、2人はこちらに向かい歩いてきていた
「あれ?もしかして…」
アラジンはモルジアナの両手に布で包まれているが新しい命が抱かれているのを感じ取った
「そうなんだよ!…俺たちの子供だ!!なモルジアナ!」
「ふふ…ええ」
「やっぱりそうなんだね〜!あはは!アリババ君に似てヤンチャそうだね!」
「そうか?俺はモルジアナに似てると思うけどなぁ〜ほら!この目元なんてそっくりだろ!?」
「あはははは!」
2人と話していると色んなことを忘れて昔みたいに何も考えないでただガムシャラに生きていた頃を思い出すなぁ〜
「…そろそろ行くのか?」
「…気づいていたのかい?」
「…当たり前だろ。…何年友達やってると思ってるんだよ」
「…あははは…やっぱりアリババ君には敵わないなぁ〜」
「「…」」
「ごめんね…うん…そろそろ行こうと思ってたところなんだ」
「…そうか」
アリババ君はどこか予想していたのか特に聞いては来なかった
「なんかしんみりしちゃったね。…ごめんね。そんなつもりじやなかっーーー」
そう言いかけた時アリババ君に抱きつかれたのが分かった
「ありがとう!!…ありがとう!!…アラジン!お前と出会ってから始まった俺の物語だ!お前がいなきゃあ…いなきゃあ…」
「…うんうん…それは違うよ…」
「…」
「アリババ君…君は僕がいなくてもきっと上手くやれた筈さ。…寧ろ助けられたの僕の方で…」
「…アラジン…」
「…それに別にこれっきりって訳でもないさ!とりあえず…世界中を見て周ってまた戻ってくるよ。…だからそれまでの短いお別れさ」
「…あぁ…次会う時までには更に子供が増えてるかもな!」
「「…ぷ…あはははは!」」
「今言うことかいそれ!」
「俺とモルジアナの夫婦仲舐めんなよ!!」
「もうやめてくださいアリババさん!」
そう言い3人で笑い場が和む
「…はぁ〜…そろそろ行くね」
「…おう!…」
「「またね!!(またな!!)」」
そう言い放ち僕たちは別れるのだった
◆
「答えは……まだ全部、見つかってない」
世界は変わった。
シンドバッドが遺したものも、アルマトランの記憶も、
“運命”という言葉の意味さえ、まだ曖昧なままだ。
だから――歩く。
誰かの王としてではなく、
誰かの影でもなく、
ただ一人の“魔法使い”として。
丘の下、バルバッドの街に一瞬だけ視線を落とし、
アラジンは静かに微笑んだ。
「行ってくるよ。……みんな」
返事はない。
それでいいと、アラジンは思った。
次の一歩を踏み出すと、夕風がマントを揺らす。
杖の先が、これから続く無数の道を指し示すように輝いた。
バルバッドの上に、夜が訪れ始める。
その光景を背に、アラジンは一人――
新しい旅へと歩き出した。
◆
それは唐突に巻き起こった
「……ん?」
最初の違和感は、足元だった。
地面が、わずかに――
“軽い”。
重力が消えたわけではないが、
だが、確かに「世界に立っている感覚」が、ほんの少しだけ薄れるような感覚を覚えた
「…なんだいこれは…」
代わりに、視界の端で、光が揺れた。
(……ルフ?)
普段なら見間違えるはずのない流れ。
だが今、アラジンの目に映るルフは、これまでと決定的に違っていた。
色が、定まっていない。
白でも、金でも、黒でもなかった
まるで、世界が“どの色を選ぶか迷っている”かのように。
「……どういうことだい?」
胸の奥が、ひやりと冷える。
魔法ではない。しかし己が魔法の境地に至った今だからこそ解る…
これは――
理そのものが、動いている。
その瞬間…風が、止んだ。
いや――
止んだのではない
世界そのものが、呼吸を止めたかのように静かになる
音が消え、色が薄れ、
アラジンの感覚だけが、異様にはっきりとしていく
足元に、魔法陣が浮かび上がる。
だが、それは
彼が知るどの魔法体系にも属さないものだった
「っ!?」
線は、絶えず書き換わっている。
文様が崩れ、再構築され、また壊れる。
まるで――
“この世界では定義できない”ことを示すかのように
そして…理解する前に――
視界が、歪んだ。
身体が、持ち上がる。
いや、違う。
世界が、彼の下から抜け落ちていく。
「っ……!」
思わず、何かに掴まろうとする。
だが、掴めるものは何もない。
ルフが、悲鳴のように乱れる
世界が、裏返る。
上下も、前後も、意味を失う。
時間が、
「流れるもの」から「重なるもの」に変わる。
過去と現在と未来が、
一瞬だけ、同時に視界に映った。
最後に感じたのは、重力だった。
身体が、確かに“下へ”引かれる。
「――――!」
声にならない叫びとともに、
アラジンの意識は、強制的に現実へ引き戻される。
そして――
石畳の硬さ。
潮の匂い。
耳を打つ、人々のざわめき。
異世界の空の下で、
アラジンは、転がるように地面に落ちたのだった