導きのマギと妖精たち   作:心ここにあらず

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10話

 

 

 

 

仲間に見送られマグノリアを発ってから、およそ一週間――

 

街道はとうに途切れ、踏み固められた道すら消え失せていた。

森は次第に色を失い、緑は濁り、やがて灰色へと変わっていく。

 

風は吹いているはずなのに、葉は揺れない。

音があるのに、“響かない”。

 

 

 

やがてアラジンの視界に、それは現れる。

 

 

 

山々に囲まれた、深い盆地。

その中心に――

 

 

 

朽ち果てた巨大遺跡群。

 

 

 

おそらく過去の戦闘の形跡からか崩れた石柱が幾重にも突き刺さり、まるで墓標のように乱立している。

建造物は本来の形を留めておらず、壁は歪み、天井は裂け、空へと口を開けていた。

 

 

 

足元の石畳には、古代文字が刻まれている。

だがその半分は消えており、意味を成さない。

 

 

 

読もうとすればするほど、文字が欠けていく。

 

 

 

 

 

遺跡の奥――

 

 

 

巨大な門が見える。

 

 

 

高さは数十メートル。

左右非対称で、片側は崩壊し、もう片側は“存在が薄い”。

 

 

 

門の向こうは暗い。

 

アラジンの周囲に、淡く光るルフが現れる。

 

 

 

だが――

 

 

 

一部が、消える。

 

 

 

「……なるほどね」

 

 

 

アラジンが小さく呟く。

 

 

 

「ここが……“ノクス・アビス”」

 

 

 

 

 

その名に応えるかのように――

ズズ……ッ…と遺跡の奥から、何かが現れるのを発見する

 

 

"それ"は異様な速さでアラジンへと迫りくる

 

 

 

「おっと…」

 

 

アラジンはそれ軽く空中へと飛び上がり避ける。すると先ほどまでアラジンが立っていた場所が跡形もなく砕け散っており、何かがぶつかったような痕跡だけ残っている

 

 

 

よく見るとそれは…見たことのない"生命体"であることが分かり、今もなお小さく蠢いている

 

 

そして次の瞬間ーー

 

 

 

ゴゴゴゴッ!と遺跡が暴れ出し、アラジンのいる四方八方からその生物が飛び出し向かってくる

 

 

 

「っ!?"防御魔法(ボルグ)"」

 

 

 

慌てて回避しようと魔法を発生させるが…

 

 

 

「っそう言うことかい!」

 

 

アラジンは魔法が発生しない事実に気づく…そして暴れ飛び散る生物を、後方に飛び上がりバク宙しながら躱していく

 

 

 

「マイヤーズ先生の教えを受けておいて良かったよ!!」

 

 

 

かつてアラジンは魔法学校にて、魔法使いは魔法だけでなく、体術や身体能力をも鍛えるべきという教えを刻む"師"に出会った

 

そしてそれは今もなお頑なに続けておりその成果で躱せたと言っても過言じゃないだろう

 

 

しかし無数の弾丸のような攻撃はそれでも止まらず、アラジンを狙い続ける

 

 

 

 

「しつこいなぁ〜!これならどうだい!!」

 

 

 

 

アラジンは無数の生物を全て引き連れ全速力で走り出す。

 

 

 

「ふっ!!」

 

 

 

そして外壁にぶつかるという寸前…前方には岩で出来た外壁…後方には無数に迫る生物という状況下…

 

 

その刹那の瞬間…アラジンは外壁を駆けるように縦に走り込み空中で一回転する。そうするとアラジンを追いかけて来た生物達は皆一様に外壁に衝突する羽目となり動けなくなってしまったのである

 

 

 

「…やれやれ…どうにかして"魔法がつかえない"現状を打破するしかないねぇ」

 

 

 

アラジンは部屋の更に奥に鎖で繋がれた重厚な扉が存在することに気がついた。そして鎖を杖で叩き折り扉をゆっくりと開けるとそこには

 

 

 

「…」

 

 

 

地下に続く無数の階段が存在したのだった。

 

 

地下へと続く階段は、どこまでも深く――底が見えない。

 

一段、また一段と降りるたびに、空気が変わっていく。

重く、粘つくような圧。まるで世界そのものが拒絶しているかのようだった。

 

足音だけが、やけに大きく響く。

 

――いや、“響いているように錯覚しているだけ”だ。

 

音は確かに発せられているのに、どこにも届いていない。

 

「……完全に“切り離されてる”ね、この空間」

 

アラジンは小さく呟く。

ルフは周囲を漂っているが、その動きは不自然に鈍い。まるで見えない何かに引き剥がされるように、時折ふっと消えていく。

 

やがて――

 

階段の終わりが訪れる。

 

そこは、広大な地下空洞だった。

 

天井は見えないほど高く、壁面には無数の亀裂が走り、黒い瘴気のようなものが滲み出している。

中央には、巨大な“何か”が鎮座していた。

 

否――

 

それは、“鎮座していたものの残骸”だ。

 

鎖に繋がれ、封じられていたであろう“何か”の痕跡。

 

だが――

 

鎖は、既に全て断ち切られていた。

 

 

「……遅かったか」

 

 

その瞬間。

 

ズズズズズ……と、空間そのものが歪む。

 

影が、凝縮する。

 

黒が、形を作り、そしてそれは“現れた”。

 

 

人の形をしているはずなのに、どこかが決定的に“外れている”。

 

まず目に入るのは、その体躯。

一見細い様に見える――だが弱々しさは一切なく、むしろ無駄を削ぎ落とした刃のように鋭い。関節は異様に長く、腕は膝を大きく超えて垂れ下がり、指は節くれ立ちながらも針のように細く尖っている。

 

肌は血の気を失った灰黒色。

滑らかではなく、ひび割れた陶器のように細かな亀裂が全身を走り、その隙間からは仄かに暗い光が滲み出ている。まるで内側に“別の何か”が詰まっているかのようだ。

 

顔は――“整っている”のに、見るほどに不安を掻き立てる。

目は深く落ち窪み、瞳はあるのに焦点が定まらない。視線が合った瞬間、こちらの内側を覗き込まれているような錯覚を覚える。

口元は常にわずかに吊り上がり、笑っているのか、歪んでいるのか判別がつかない。その奥に覗く歯は不揃いで、獣のように鋭い。

 

頭部からは、歪に捻じれた角が生えている。

一本は天を突くように長く伸び、もう一本は途中で折れたのか、短く不格好に残っている。その断面は黒く焼け焦げたように見え、未だに煙のような気配を漂わせている。

 

 

背には、翼の名残のようなものがある。

だがそれは羽ではなく、裂けた皮膜の塊。骨組みだけが浮き出たような構造で、広げるたびに嫌な軋みを上げる。

 

足元は地に触れているはずなのに、完全には接していない。

影が揺らぎ、存在がわずかに“浮いている”。まるでこの世界に完全には属していないかのように。

 

 

 

「…久しぶりの来客か」

 

 

 

掠れた様な声が響き渡る

 

 

 

「…君は…」

 

 

「我が名は"アバドン=ネメシス"…ゼレフ書の悪魔にて原初の理を持つもの也」

 

 

「…君が」

 

 

「汝の名を教えよ」

 

 

「…僕はアラジン…フェアリーテイルの魔導士さ」

 

 

「…フェアリーテイル…何とも虫唾が疾る名だ…」

 

 

 

 

ネメシスは機嫌を悪くしたのか、眉間を上げながら応える

 

 

ネメシスの口元が、さらに歪む。

 

「“繋がり”だの“絆”だの……その名は、いつの時代も同じ臭いを放つ」

 

空気が、重く沈む。

 

見えない圧が、じわりと広がり、床に刻まれた古代文字がパキパキと音を立てて砕けていく。

 

 

 

「気に入らないねぇ」

 

 

 

アラジンは肩をすくめながらも、視線を逸らさない。

 

 

 

「でも――それが世界を動かしてる力でもあるんだ」

 

 

 

「……戯言を」

 

 

 

その瞬間。

 

 

 

ネメシスの姿が、消える。

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

直後、アラジンの背後で“空間が裂けた”。

 

 

 

咄嗟に身を捻る。

 

 

 

――が、僅かに遅い。アラジンの頬が浅く裂け、血が舞う。

 

 

 

「避けたか」

 

 

 

ネメシスは既に別の位置に立っていた。

いや、“立っているように見えるだけ”で、その存在は瞬きの間に位置を変えている。

 

 

 

「だが意味はない。この空間では――“因果”すら、我の思うままだ」

 

 

 

その瞬間、床が、消し飛ぶ。

 

 

 

足場が崩壊し、アラジンの身体が宙に投げ出される。

 

 

 

だが――

 

 

 

「それはさっき見たよ!っと」

 

 

 

アラジンは空中で体勢を整え、そのまま壁を蹴る。

 

 

 

連続で三度、四度と蹴りつけ、落下の軌道をずらす。

 

 

 

直後、先ほどまでいた空間がごっそりと抉り取られた。

 

 

 

「同じ手ばっかりだと、読めちゃうなぁ!」

 

 

 

「……小癪な」

 

 

 

ネメシスの輪郭が揺らぐ。

 

 

 

次の瞬間、攻撃の“密度”が変わる。

 

 

 

今度は一点ではない。

 

 

 

四方八方――

 

 

 

逃げ場そのものが、消される。

 

 

 

「――っ!」

 

 

 

アラジンは歯を食いしばる。

 

 

 

(これはまずい……!)

 

 

 

逃げ場がない。

 

回避では追いつかない。

 

 

 

その刹那――

 

 

 

「――だったら」

 

 

 

彼は、止まった。

 

 

 

迫り来る“消滅”の中で、あえて動きを止める。

 

 

 

「何を――」

 

 

 

ネメシスが僅かに反応した、その一瞬。

 

 

 

アラジンは足元の石片を蹴り上げる。

 

 

 

小さな破片が、宙へ舞う。

 

 

 

そして――

 

 

 

“消えた”。

 

 

 

「やっぱりね!君どこかで僕のことを監視していたんだろ?」

 

 

「…」

 

 

「君の魔法・魔力で消せるのは一定の範囲のみ…それも物体を一瞬で消滅させるほどの威力となると更に範囲が狭くなる…違うかい?」

 

 

「ふん…それを言い当てたからと言って何の解決策にもならないんだよ…何せそれを理解してのスタートラインなのだからな!!」

 

 

 

そういうと同時にネメシスの姿が消え去り、次の瞬間にアラジンの上空より悍ましい殺気を感じる

 

 

 

「っ!?しまっーー」

 

 

 

「遅い!"存在抹消《イレイス》"」

 

 

 

迫る消滅の魔法を左に避けたアラジンであるがその直後、それを予測していたネメシスの魔法を受けてしまい、凄まじい勢いで吹き飛ばされてしまう

 

 

 

 

「…かはっ…」

(な、何が起きたんだい…何かがおかしい…左腕の反応が…無い!?)

 

 

 

倒れたアラジンは自らの左手の感覚が無いことに違和感を覚え急いで確認する…しかし何度確認しても左手はついているのに反応がないかの様に項垂れている

 

 

 

「くっくっく…私のイレイスは何も全てを消滅させるだけではない…その左腕の神経を消滅させたのさ…もはや動かすことすら叶わないだろうな」

 

 

「……なるほど、ね」

 

 

アラジンは荒い呼吸の中で、小さく息を吐いた。

 

ぶらりと垂れ下がる左腕。

感覚はない。だが――“ある”ことは分かる。

 

 

「“存在”そのものじゃなくて、“機能”だけを消した……か」

 

 

「理解が早いな」

 

 

 

ネメシスは愉快そうに喉を鳴らす。

 

 

「だが理解したところで同じだ。その腕はもはや飾りだ。やがて――脳も、心臓も、順に“不要な機能”として削ぎ落としてやろう」

 

 

空間が、再び軋む。

 

 

見えない“削除”が、じわりと広がる。

 

 

 

(まずいな……このままだと押し切られる)

 

 

アラジンの脳裏に、これまでの戦いがよぎる。

 

魔法が使えない空間。

ルフが消える世界。

そして――“観測されたものだけが消される”違和感。

 

 

(あいつは“認識している対象”に干渉してる……?)

 

 

ネメシスの攻撃は正確すぎる。

 

無差別ではない。

必ず、“狙い”がある。

 

 

「……ねぇ、ネメシス」

 

 

アラジンはふらりと立ち上がりながら、口を開いた。

 

 

「一つ、いいかな?」

 

 

「命乞いなら聞く価値もない」

 

 

「違うよ」

 

 

にやり、と笑う。

 

 

「君――“全部は見えてない”でしょ?」

 

 

 

その瞬間。

 

 

空気が、止まる。

 

 

 

ネメシスの目が、僅かに細められる。

 

 

 

「……ほう」

 

 

 

「君の消滅は絶対じゃない。“範囲”と“認識”に依存してる。さっきの石片だって――君が“追えてない瞬間”は消えてなかった」

 

 

アラジンは足元の瓦礫を軽く蹴る。

 

 

今度は、消えない。

 

 

 

「つまり君は――“視ているもの”“捉えているもの”しか消せない」

 

 

 

沈黙。

 

 

 

次の瞬間――

 

 

 

「だからどうしたァ!!」

 

 

 

爆発的な圧が弾ける。

 

 

 

ネメシスの姿が分裂するかのように揺らぎ、空間全体を覆い尽くす。

 

 

 

「ならば“全てを視る”までだッ!!」

 

 

 

 

四方八方――

 

 

 

否、“空間そのもの”が敵になる。

 

 

 

逃げ場は、完全に消えた。

 

 

 

「ははっ……やっぱり怒ると雑になるねぇ!」

 

 

 

アラジンは笑った。

 

 

 

その笑みは、追い詰められた者のものではない。

 

 

 

「だったら――もっと増やしてあげるよ」

 

 

 

 

 

次の瞬間。

 

 

 

アラジンは――自ら足元の地面を蹴り砕いた。

 

 

 

無数の石片が舞い上がる。

 

 

 

さらに、壁を蹴る。

 

 

 

天井を蹴る。

 

 

 

砕く、砕く、砕く――

 

 

 

視界を“物質”で埋め尽くす。

 

 

「なにを――」

 

 

「君の処理能力、どこまで持つかな?」

 

 

 

無数の破片。粉塵。瓦礫。それら全てが、バラバラの軌道で飛び交う。

 

ネメシスの瞳が、一瞬だけ揺らぐ。

 

 

 

 

「……小細工をッ!」

 

 

 

 

だが――

 

 

 

消滅が、追いつかない。

 

 

 

 

一つを消せば、別の軌道。

 

 

二つを消せば、死角。

 

 

三つを追えば、“本体”を見失う。

 

 

 

 

「くっ……!」

 

 

 

 

その僅かな隙。

 

 

 

 

アラジンは、踏み込んだ。

 

 

 

 

「もらった――ッ!!」

 

 

 

 

右腕一本。

 

 

 

全身のバネを使い、一直線に。

 

 

 

 

ネメシスの懐へ。

 

 

 

 

 

だが――

 

 

 

 

「甘い」

 

 

 

 

 

ネメシスの口元が、吊り上がる。

 

 

 

 

「“見えているぞ”」

 

 

 

 

 

アラジンの胸元。そこへ、指先が触れる。

 

 

 

 

「――存在抹消《イレイス》」

 

 

 

 

 

直撃――

 

 

 

 

――しなかった。

 

 

 

 

 

「……なに?」

 

 

 

ネメシスの指先は、“空”を切っていた。

 

 

 

その背後ーー

 

 

 

「残念、そっちは“フェイク”」

 

 

 

アラジンの声。

 

 

いつの間にか、別の位置にいる。

 

 

 

「……分身、だと?」

 

 

 

「いや、“残像”かな」

 

 

 

アラジンは軽く肩を回す。

 

 

 

 

「ルフは完全には消えてない。“薄い”だけだ。だったら――ほんの一瞬、“誤認”させるくらいはできる」

 

 

まぁそれだけじゃないけどね…とアラジンが付け足し応える

ネメシスの眉が、ぴくりと動く。 

 

 

 

「君の敗因は2つだよ」

 

 

 

アラジンの瞳が、静かに光る。

 

 

 

「“完璧に消せる”って思い込んでること」

 

 

 

 

空気が――張り詰める。

 

 

 

 

 

次の一手で、決まる

ネメシスの魔法が先か。

 

 

 

それとも――

 

 

 

 

「…そして僕の武器は何も"ソレ"(魔法)だけじゃない!!」

 

 

 

そう言った瞬間アラジンの姿が消え去る

 

驚いたネメシスは、慌てて構えた。

 

 

 

「ふんっ…ならば見せてみろ。“消えない何か”というものをな」

 

 

 

 

戦いは更に激闘と化していく

 

 

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