「…そして僕の武器は何も"ソレ"(魔法)だけじゃない!!」
その言葉と同時に――
アラジンの周囲に集まったルフが、ふっと“内側”へ沈んだ。そしてその瞬間ーードンッ!…という衝撃と共にアラジンの姿が消え去る
「なっ――!?」
ネメシスの視界から、完全に消失。
否。
“速すぎて捉えられない”。
直後――横合いから、衝撃が襲う
「がっ――!?」
ネメシスの身体が大きく吹き飛ぶ。壁面に叩きつけられ、遺跡ごとひび割れる。
「……今のは、見えたかい?」
アラジンが、着地する。
その姿は、先ほどまでと明らかに違っていた。
筋肉の輪郭がわずかに際立ち、
全身に薄く光る粒子――ルフが“纏わりついている”。
「魔力は外に出せない。でも――中にはある」
ぐっと拳を握る。
「だったら全部、“身体に回せばいい”」
床が、ミシリと音を立てる。
「僕の友達に昔これと似たような力を持っている人たちがいてね…まぁ僕のは疑似的だけどさ――シンプル故にこれ、"結構強いよ"?」
ネメシスがゆらりと立ち上がる。
その口元が、歪む。
「……なるほど…魔導士でありながら、肉体強化に極振り……」
「酷く滑稽だが――」
次の瞬間ーー
ネメシスの姿が、再び消える。
「面白い」
だが――
「遅い」
アラジンは、振り返りもせずに腕を振るった。
“そこに来る”と分かっていたかのように。
アラジンとネメシスの腕が衝突する。
空間が歪むほどの一撃。
「ぐっ……!?」
ネメシスの腕が、弾かれる。
「見えてないのは――どっちかな」
アラジンの瞳が、鋭く細まる。
「魔法に頼らない戦い方、ちゃんと習ってるんだよ」
アラジンは更に一歩踏み込む
踏み込むだけで、地面が砕ける。
その動きは――もはや人間の域ではない。
「さぁ、第二ラウンドだ…“消すだけ”の君が――どこまで耐えられるかな」
ネメシスの瞳に、初めて“戦慄”が宿った。
ネメシスの能力・魔法は対魔導士には効果抜群の能力であり、これまで幾千もの魔導士を返り討ちにして来たその自負も頷ける力量である。ましてやここイシュガル大陸においては全てのものが魔法に準ずるものであり生活は愚か戦闘でさえ魔法を駆使して戦う魔導士が頂点に君臨している。
とくれば、ネメシスの能力で負けなど考える必要すらなくなる…何せ自らは魔法を使え尚且つ人間を超えた身体能力を有しており相手は魔法なしの平凡な人間なのだから
しかし目の前の男は明らかに"それ"を超越している
「がはっ!?」
肋骨を蹴り折られ、腕の骨にも何本ものヒビを入れられ、最後には顎をかち上げられ吹き飛ばされる
「…はぁ…はぁ…ぎ、きさまは…何者なんだ…」
もはや目の前の人間が人間にはまるで見えなかった…もっと…もっと獰猛で恐ろしい…"巨大な怪物"を相手にしている様な感覚に陥るネメシス
「あはは…僕はタダの魔導士さ…ただ友達にちょっと乱暴な人たちがいてね…"こういうの"はその人達に習ったんだ!」
そう言いながら右腕で力瘤を作るアラジン
アラジンがここまで近接戦闘に強い理由…それはかつて彼が出会った“規格外の種族”にあった。
それが、ファナリス。
人間とは似て非なる存在。
細身の体躯に反して、山を砕き、大地を蹴り割るほどの膂力を秘めた戦闘民族。
その動きは魔法ではない。
理屈でもない。
――ただ純粋な「肉体の極致」。
骨の軋みすら利用し、筋肉を“しならせ”、爆発させる。
踏み込み一つで地面を抉り、振るった四肢は刃にも等しい。
アラジンは、その戦いを間近で見た。
そして――
教えを乞うた。
最初は笑われた。
小柄で、非力で、魔法に頼るしかなかった少年が
その領域に触れようとしたのだから無理もない。
だが、それでもアラジンは引かなかった。
「魔法が封じられたら、僕は何も守れない」
その一言に、彼らは僅かに興味を示した。
――教えられたのは技ではない。
呼吸。
重心。
骨格の連動。
“力を生み出す順番”。
何度も地面に叩きつけられ、
何度も骨が悲鳴を上げ、
立ち上がれなくなるたびに、また立たされた。
“人間のままでは再現できない”
そう言われた領域を、アラジンは――
無理やり“人間の枠の中で”引き出した。
結果として生まれたのが、
ファナリスに“似て非なる”戦闘技術。
魔力で身体を補強し、
その上で叩き込まれた体術を重ねることで、
一瞬だけ――
人間を逸脱した出力を引き出す。
ネメシスの肩が――小さく震えた。
怒りか、興奮か、それとも恐怖か。
その全てを飲み込むように、ゆっくりと顔を上げる。
「……いいだろう」
その声は、先ほどまでとは違う。
低く、重く、底のない闇のように沈んでいた。
「ならば見せてやる……貴様のような“例外”すらも消し去る――俺の“終わり”を」
次の瞬間――
ネメシスの全身から、黒い奔流が溢れ出す。
空気が軋み、遺跡の壁面が“触れてもいないのに”崩れ始める。
魔法ではない。
否――
魔法を“終わらせる”力そのもの。
「触れたもの全てを“無に還す”……これが俺の奥義」
腕を掲げる。
その掌に、黒が収束する。
「――《終極虚無(しゅうきょくきょむ)》」
空間が、消えた。
一直線に伸びる“消失”。
地面も、空気も、光すらも――跡形もなく消し飛ばしながら、アラジンへ迫る。
「……」
アラジンは動かない。
いや――
動けないのではない。
“観察している”。
「……なるほど」
小さく、息を吐く。
「それが君の切り札か」
ルフが、静かに震えた。
外には出せない。ならば――
「ありったけの全部を内側に収束させる」
その瞬間、
アラジンの全身に纏っていたルフが、完全に“沈み切る”。
――ドクン…とアラジンの心臓が、鳴った。
筋繊維が軋み、
骨が悲鳴を上げ、
それでも尚――
「――限界、もう一段」
更に一歩踏み込む。床が、消し飛ぶ。
だがそれすら、ネメシスの“無”に飲み込まれる。
アラジンに迫る終極虚無。触れれば終わり。掠っても消える。
それでも――アラジンは、前へ出た。
「来なよ」
低く、呟く。その姿はもはや――
魔導士ではない。獣でもない。
「――"紅蓮煌破"(ぐれんこうは)」
消失の奔流へ、真正面から突っ込む。
ネメシスの瞳が見開かれる。
「正気か――!?」
触れる寸前――アラジンの身体が、“ずれる”。
最小の動き。極限まで研ぎ澄まされた感覚で、
“消える軌道”を紙一重で外し、
そのまま――
ネメシスの懐へ。
「――なっ……!?」
アラジンとネメシスがゼロ距離になる瞬間ーー
「これで――終わりだよ」
全身の連動。踏み込み、捻り、伝達、
“溜め込んだ全て”を一撃に圧縮する。
「――紅蓮煌破・"白虎"(びゃっこ)」
正面から突き上げる、拳聖の一撃……ソレはドンッ――!!!という衝撃音と共にネメシスの懐を突き破り遺跡全体を揺らす。
あまりの威力にネメシスの身体が、後ろへと吹き飛ばされて幾面もの外壁を突き破りそのまま最奥の瓦礫の中へと埋れててゆく――
その瞬間ーー
「おや?…なるほど…ネメシスの魔法が解除されたからか」
ネメシスが負けた影響からか、魔法が解除されアラジンの全身から本来の魔力が再び溢れ出す。そしてーー
「おっと…早く退散しないといけないね」
この空間自体がネメシスと同化していたのだろう…魔法の解除と共にゴゴゴゴッ!という振動共に崩壊を始める
アラジンは再びネメシスに目を向け
「…次人間に生まれ変わったら…また、遊ぼうね」
それだけ言い残すとアラジンは重力魔法を駆使しこの遺跡を飛び出す。そして飛び出した瞬間に遺跡は完全に陥没し跡形もないほど散りとなって消え失せてしまったのであった
その様子を見届けたアラジンは
「…ふぅ…流石に今回はちょっと疲れたかな…帰っならミラに癒して貰おうっと…」
神経を絶たれたはずの左腕を治療しながら呟くのであった。
100年以上もクリアされなかった筈の“禁忌指定任務"…その伝説は今夜1人の魔導士の手によって終焉が齎され、この号外が世界中に駆け巡ることとなるのはもう少し先の話である
◆
「ふんふん♪」
とあるマンションの一室で、その美しい女性は料理を作っていた。まず目を引くのは、腰のあたりまで流れる長く艶やかな白銀の髪。柔らかく波打つその髪は光を受けると淡く輝き、彼女の穏やかな雰囲気をより引き立てている。
瞳は澄んだ青色で、普段は優しく包み込むような眼差しをしている。だがひとたび戦いに入ると、その目は静かに鋭さを帯び、内に秘めた強さを覗かせる。
肌は透き通るように白く、顔立ちは整いすぎているほど端正。柔らかな笑みを浮かべていることが多く、ギルドでは「看板娘」として誰からも親しまれている存在であり、現在も数多くの男性のハートを撃ち抜いている
"ミラジェーン・ストラウス"
そんな女性が今は"とある1人の男性"を想い恋焦がれていた。ミラは首に掛けたネックレスを手に取り目を瞑る
「…アラジン…早く帰って来て」
ミラが初めて恋に堕ちた男性…アラジン…出会いは初めてアラジンがフェアリーテイルを訪れた時…バーカウンターにいたミラを口説こうとしたのがキッカケである。
初めはその美しい外見とは裏腹にチャラそうな人だと思ったミラだったが、毎日接していくうちにその性格を見極めていく。
アラジンは確かに女性にだらしない面も少なくない…でも初対面で挨拶を済ませた後は基本的にはアラジンからそう言った声掛けをすることはないのだ…現にアラジンの側にはルーシィやエルザそれにカナと言ったそれぞれが系統の違う美女が揃っているにも関わらず、明確に好意を示し続けアピールしているのはミラジェーン唯1人である。
無論、ミラもその事には気づいており、実力もあり、容姿も整っており、お金も持っているアラジンは非常にモテるのだが、実のところは一途でありミラ一筋と言うことに少し優越感に浸っているところもなくは無い
しかし、明確に"それ"…"恋"を理解したのはあの時…アラジンがS級に昇格する為に、S級クエスト…それも"禁忌指定任務"と言った100年クエストに匹敵するレベルの任務を与えられたと知った時である
あの時のことは正直あまり覚えていない。アラジンがその任務に就くと聞いた途端、辺りが真っ暗になり、耳鳴りやノイズが酷くなってしまった…その過程でアラジンについて行きたいなど迷惑を兼ねてしまうことにもなるのだが…それほどアラジンを大切に思っていることに気づけたのも事実である。
もはや、ミラの全てを賭けてでもアラジンと共に行きたい…アラジンの居ない世界など考えられない…そう恋焦がれ…それが"恋"であることに確信を得た
もちろん、アラジンの実力はよく知っているつもりである。なんならギルドで1番アラジンを信用しているのはミラである。
しかし、"ラクサスやエルザと同じS級魔導士"としてミラもこの任務の危険さは十二分に理解していた。並のS級任務ですら単独でのクリアは至難の業であり、フェアリーテイルの面々ですら赴く際はチームでの編成を基本としている。
しかし、今回はそのS級クエストより遥かに難易度が高く、危険であり、恐らくラクサスやミストガンですら攻略は不可能とされる難攻不落のミッションである。最早心配するなと言う方が無理な話である。
アラジンのことを考えるだけで胸が締め付けられる…クエストなど不可能でいい…その代わり…どうか…どうか無事で私の元に帰って来てくれたらそれだけで十分なのだから
「…アラジン」
ミラがそう呟いた瞬間、コンコンッと玄関の扉をノックする音が聞こえた。
「っ!?」
まだそれほど遅く無いこの時間帯…もしかしたら"他の人"の可能性も存在する…しかしミラにはなぜか確信出来るものがあった。きっと"彼"に違いない…と
慌ててミラは玄関の扉を開く…そこに居たのはーー
「ただいま…ミラ」
「…アラジン!!」
「おっと…」
扉の前に立っていたのは、やはりミラの想い人であった。目尻に涙を溜めたミラは勢いよく飛びつき、アラジンが抱きしめる。
「あはは…どうしたんだいミラ」
「…もう…ほんとに…ほんとに心配したのよ」
「…ごめんね…」
抱きしめ合う腕の力が、少しだけ強くなる。
ミラの肩は小さく震えていた。
安堵と、溜め込んでいた不安が一度に溢れたのだろう。
アラジンは何も言わず、その背をゆっくりと撫でる。
「……もう、ほんとに……心配したのよ」
かすれた声のミラ
その言葉の重みが、遅れて胸に沈む。
「……ごめんね」
アラジンはその重みを感じ短く、でも確かに返す。
それ以上の言葉はいらなかった。
ふと、ミラが顔を上げる。
涙で潤んだ瞳が、まっすぐにアラジンを映していた。やがて――視線が絡み
どちらからともなく、ほんのわずかに近づく。
触れるだけの、やさしい口づけ。それでも、確かに心の奥まで届く温もり。
離れたあとも、互いの額が触れそうな距離のまま――
静かな呼吸だけが重なる。
「……好きよ、アラジン」
囁くような声。
アラジンは、少しだけ目を細めて――
「……うん。僕も、ミラのこと愛してる」
今度は、はっきりと。
その言葉に、ミラは小さく微笑んだ。
戦いの余熱も、傷の痛みも、すべてが遠のいていく。
ここが帰る場所だと、改めて実感する。
アラジンはもう一度、ミラを抱き寄せた。
窓の外では、静かな夜が街を包んでいる。
長い戦いの果てに辿り着いたのは――
何よりも、温かい場所だった。
アラジンだから結構あっさり終わってますけどネメシスめっちゃ強いですよ。少なくとも聖十大魔道の10人が束になっても敵わないほどには…肉弾戦も強いギルダーツなら渡り合えるかも