導きのマギと妖精たち   作:心ここにあらず

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12話

 

 

朝の光がやわらかく差し込み、まぶたの裏を淡く照らす。

ゆっくりと目を開けると、まだ静かな部屋の中――隣に、小さく丸まった彼女の姿があった。

 

白いシーツからはその妖艶な体が無防備に晒されており、寝息を立てているその顔は、長い髪が枕に広がり、朝の光を受けてほんのりと輝いていた

 

 

 

「……」

 

 

 

思わず、言葉が出ない。こんな何も幸せなことがあっても良いのだろうか…

 

こんなにも近くで、こんなにも無防備な彼女を見るのは、少しだけ特別な気がして――胸の奥がじんわりと温かくなる。

 

アラジンはそっと手を伸ばし、ミラの髪を指で軽くすくうように整える。

その瞬間、彼女のまつ毛がぴくりと揺れた。

 

 

 

「……ん……アラジン……?」

 

 

 

まだ夢の中にいるような声で、名前を呼ばれる。

 

 

「…起こしちゃったかい?」

 

 

優しく返すと、ミラはゆっくりと目を開けた。

ぼんやりとした瞳が彼を映し、やがてふっと安心したように細められる。

 

 

「……ううん。大丈夫…おはよ」

 

 

小さく微笑むその顔は、どこか照れくさそうで、それでいて嬉しそうで。

 

 

「おはよう、ミラ」

 

 

アラジンも自然と笑みを返す。

 

しばらく見つめ合ったあと、ミラはシーツの中からそっと手を出し、アラジンの袖をつまんだ。

 

 

 

「……もうちょっとだけ、ここにいて」

 

 

 

その声は小さいけれど、しっかりとした甘さを含んでいる。

 

アラジンは少し驚いたように瞬きをしたあと、くすっと笑った。

 

 

 

「あはは…どこにも逃げるつもりなんてないよ」

 

 

 

そう言って、今度は自分からミラの手を包み込む。

彼女の手は少しひんやりしていて、それが逆に心地いい。

 

ミラは安心したように、その手をぎゅっと握り返した。

 

 

「……あったかい」

 

 

「ミラの手が冷たいんだよ」

 

 

「じゃあ……もっとこうしてて」

 

 

 

少しだけ身を寄せるミラ。

距離が縮まると、彼女の柔らかな髪がアラジンの肩に触れた。

 

朝の静けさの中、二人の呼吸だけがゆっくりと重なっていく。

 

言葉はもうほとんどいらない。

 

ただ隣にいること。

触れていること。

 

それだけで十分だと、互いにわかっていた。

 

 

 

「……ねえ、アラジン」

 

 

「なに?」

 

 

「今日も、一緒にいようね?」

 

 

 

少しだけ上目遣いで見つめてくるミラに、アラジンは優しく頷く。

 

 

 

「もちろんさ」

 

 

 

その一言に、ミラはぱっと表情を緩めた。

 

まるでそれだけで一日が満たされたみたいに。

 

朝日は少しずつ強さを増していく。

けれど二人の間に流れる時間は、変わらずゆっくりで、やさしいままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《フィオーレ王国・マグノリア・ギルド名・フェアリーテイル》

 

 

 

そのマスターフロアにてフェアリーテイル・総長(マスター)・マカロフはとある書類を険しい表情で見つめていた。

 

 

 

「…うむ…やはり…アラジンでも厳しかったかの〜」

 

 

 

マカロフが見つめているのはアラジンに課したS級クエストの依頼書類…普段はここまで心配などしていないのだが今回は事が事である…

 

これまで100年以上達成不可能とされていた禁忌のクエスト…それを実力者とはいえ新人のアラジンに託してしまった

 

勿論、アラジンのことを信頼し託した結果ではあるが…マカロフの中の不安は拭えないでいた

 

 

 

「…うむ…」

 

 

「まだ悩んでおられるのですかマスター」

 

 

 

そんなマカロフに声をかけるものがいた。マカロフが顔を上げるとそこには…

 

お盆にコーヒーを乗せたエルザがこちらを見つめていた

 

 

 

「…エルザか」

 

 

「…アラジンの奴なら大丈夫ですよ…同じ任務をこなした贔屓目抜きに見てもアラジンの実力は私より数段上…もしかするとギルターツにすら届きうるかもしれません」

 

 

「…そこまでか」

 

 

 

マカロフはエルザのアラジンに対する評価を聞き驚く。なぜならエルザは自分にも厳しいが他人にも厳しく、滅多にこのように他者を自分より格上と認めることはないからである。

 

 

 

「…しかしのぉ…」

 

 

 

「…マスターのお気持ちも痛いほどに分かります…しかし、今回のクエストを最終的に受諾したのはアラジンの意思です…ならば私達は信じてやりましょう」

 

 

 

「…そうじゃのう」

 

 

 

2人が話し込んでいると、扉の外の大広間が異様に盛り上がっていることに気づいた。

 

 

 

「「なんじゃ(なんだ)??」」

 

 

 

疑問に思った2人が扉を開けるとそこにはーー

 

 

 

「「「アラジン!!!」」」

 

 

 

「おかえりアラジン!!」「怪我は大丈夫かアラジン!」

 

「本当スゲェよお前!!」「クソ!俺も負けてられねぇ!早くクエスト行こうぜハッピー!!」

 

 

 

 

 

中央には仲間たちに揉みくちゃにされながらも、いつもの表情で微笑んでいるアラジンの姿が

 

 

 

 

「「アラジン!!」」

 

 

 

「マスター!それにエルザも!」

 

 

 

 

アラジンに気づいたマカロフとエルザが駆け寄る

 

 

 

 

「よくぞ…よくぞ無事に戻って参った…」

 

 

 

「おかえりアラジン…」

 

 

 

「ただいま…」

 

 

 

「…それで…任務の方はどうじゃったかの〜??」

 

 

 

「「「…」」」

 

 

 

 

皆が固唾を飲んでアラジンの回答に耳を貸す

 

 

 

 

「…勿論!バッチリさ!はいこれ!評議会の受領印!」

 

 

 

「…っ!?おぉ!?コレは!」

 

 

 

マカロフの質問に満面の笑みで答えるアラジンは、持っていた書類をマカロフに提示する。マカロフはその書類を凝視する…そこには確かに依頼人である評議会の任務完了書とその印である受領印が押されているではないか

 

 

 

「…よ、良くやったぞアラジン!!」

 

 

 

そしてマカロフはバーカウンターのテーブルに立つ

 

 

 

「皆の者よく聞け!!」

 

 

 

「「「…」」」

 

 

 

「此度の任務をより!ここにいるアラジンをマスター・マカロフの名のもとフェアリーテイル・"S級魔導士"に任命する!!」

 

 

 

「「「うぉぉぉぉぉ!!!」」」

 

 

 

「号外だぁぁぁぁ!!」「大ニュース大ニュース!!」

 

 

 

「新たな英雄の誕生だぁ!!」

 

 

 

 

 

 

マカロフの大々的な宣言の元、地響きの様な歓声がギルド内にとどまらずマグノリア全土から響き渡る。

 

それだけ、此度のアラジンの偉業がとてつもない事を表してるようだった。

 

 

 

 

「…ちっ……あの程度の依頼…俺でもクリア出来たはずだ…ジジイはなぜ奴を指名したんだ…」

 

 

 

「…ラクサス」

 

 

 

 

 

しかし…必ずしも全員がアラジンを祝福しているわけではなかった

 

 

 

 

「…くそっ…良いぜ…テメェとはとことん最後までケリを付けてやる…それまでは王朝でもなんでも作っておけば良いさ…行くぞテメェら!」

 

 

 

「「「ラクサス!!」」」

 

 

 

 

時として祝福の中にも影が入り込む事もある…そしてそれは…

再び、彼らが合間見える時…フェアリーテイルというギルドの存亡を賭けた争いへと発展していくのかもしれない…しかしこの時点ではまだ誰も分からない事であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーあはは…へぇ〜そうなんだ。ナツもまた無茶やったね〜」

 

 

 

「もう笑い事じゃないのよ!ナツもハッピーも!」

 

 

 

「でも良い事もあったんじゃない?それで救われた人もいるって聞いたし」

 

 

 

「それはそうだけど…」

 

 

 

 

 

アラジンはバーカウンターに座り、ミラからアラジンがフェアリーテイルに居なかった2週間の話を聞いていた

 

 

 

 

「ねぇあの2人って…」

 

 

 

「…うんうん…前から怪しいとは思ってたけどなんか"一線を超えた"様な雰囲気があるよねルーちゃん!」

 

 

 

 

 

2人の変化に気づくものもチラホラと出始めていた。

 

それはそうとアラジンが居ないこの2週間で何があったのか簡潔に説明しておこうと思う。

 

 

まずはアラジンがS級クエストを受諾したその日に、ナツとハッピー…それにルーシィの3人が許可無しにS級クエストの依頼書を強奪し勝手に依頼を受けてしまうと言う事件が発生した。

 

ミラの話によると、結局はいい様に転んだと言う話であったが一歩間違えれば3人…いや、合流したエルザとその場に居合わせたグレイも含めた全員が危なかったかもしれない

 

それほどの相手がそのクエストには現れたらしい

 

 

 

運良くその悪魔を封印することに成功した面々は、その依頼を成功させギルドに戻る事となったのだが、そんな5人を待っていたのは"破壊されたギルド"と"傷つけられた仲間"という悲惨な現実であった。

 

 

 

 

「……へぇ…僕の家族を傷つけた奴らがいるんだ…どこのギルドなんだい…それを起こしたのは」

 

 

 

「「「っ!?」」」

 

 

 

 

家族を傷つけた""家を壊された"…その言葉を聞いたアラジンからは以前のラクサスに与えた時の様なプレッシャーが全身から噴き出していた

 

 

 

 

「あ、もう大丈夫よアラジン!終わった事だもの!」

 

 

 

「…」

 

 

 

 

それを行なったのは、フィオーレ王国でフェアリーテイルと双璧を成すほどのギルド…名を"幽鬼の支配者"(ファントム・ロード)

 

 

そして首謀者はマカロフと同様、聖十大魔導の1人とされる男…ファントム・ロード・総長(マスター)…"ジョゼ・ポーラ"である

 

 

ファントムはルーシィの実家からの依頼でルーシィを強制的に連れ戻す依頼も受けていたらしいがおおむねの目的は目障りなフェアリーテイルを潰す事で間違いないだろう

 

 

無論、仲間をやられて黙っていられる様な面々がフェアリーテイルにいるはずもなくここからフェアリーテイルとファントム・ロードの威信をかけた戦争に発展していく事となった。

 

 

この戦争で、マカロフの離脱やドラゴンスレイヤー同士の衝突…エレメント4対フェアリーテイルなどなど…数多くの激闘が繰り広げられ辛くも勝利したフェアリーテイルの面々

 

 

 

 

「みんなの力が合わさり勝てた勝利なの」

 

 

 

 

「…そうなんだね…ミラに怪我がなくて良かったよ」

 

 

 

 

「…」

 

 

 

アラジンの言葉に何故か、真顔で黙り込むミラ…その様子をアラジンは不思議そうに思い理由を尋ねようとするとーー

 

 

 

 

「テメェアラジン!!姉ちゃんに手を出しやがったな!!姉ちゃんを傷つけられたあの戦争にいなかったくせに!!」

 

 

 

「あ、ちょっ!あの馬鹿!」

 

 

 

「それはダメでしょエルフマン!!」

 

 

 

「まずいまずい!!」

 

 

 

「ん??」

 

 

 

 

自分が吐いた台詞に周りで見ていた皆が顔を青くしエルフマンを咎める。…勿論S級クエストを受けていたアラジンに対する冒涜の意味も込められているが皆が慌てる根本は"そこ"ではない

 

 

 

 

「…ねぇ…ミラ…奴らに何かされたの??」

 

 

 

「だ、大丈夫よ!アラジン!ほら!怪我なんてもう治ったし!昨日アラジンも見たでしょ!」

 

 

 

「…」

 

 

 

 

確かにアラジンの目から見てもミラの体には傷どころかシミ一つ見つからなかった…しかし、それとこれとは別であり根本的な解決には至らないのだ。

 

 

 

「…エルフマン」

 

 

 

「あぁ!?…うおっ!?」

 

 

 

アラジンの声に反応したエルフマンが振り向くとそこには…凄まじいほどの怒気を滲ませたアラジンがエルフマンの首元の襟を掴んでいた

 

 

 

 

「…その話…詳しく聞かせておくれよ」

 

 

 

「っ!?ひっ!?…あ、あぁ…分かったぜ」

 

 

 

 

アラジンの覇気に怖気付いたエルフマンがミラが隠していた事実を全て説明する。

 

まずは幽鬼の支配者のマスターであるジョゼ・ポーラは、妖精の尻尾に圧力をかけるためにギルドメンバーを狙い、その中でも戦闘に出てないが看板娘としてギルドの象徴的な人物であったミラを攫った事

 

更にはその拘束の中で、暴行や圧力を受け軽い打撲や消耗を負わされた事…そして何より

 

 

 

【その幽鬼の支配者のメンバーが新しく妖精の尻尾に仲間になったこと】

 

 

 

その言葉を聞いたアラジンは、エルフマンを解放し辺りを見渡す。そしてアラジンが居た頃にはいなかったメンバーを絞り切る。

 

まず目に入るのは、壁にもたれ掛かる男… 長身で無骨な体つき、肌には無数のピアスが打ち込まれ、目元には常に獰猛な影が差している。口元には牙のように尖った歯が覗き、笑えばそれだけで威圧になる。黒く逆立つ髪は荒々しく粗暴で剥き出しの気配を放つ男

 

 

そして青みがかった長い髪はしっとりと肩を流れ、常にどこか湿った空気をまとっている。瞳は伏せがちで、感情の起伏を外に出さないまま、淡々と周囲を見つめていた。体を包むのは落ち着いた色合いの衣服の女

 

 

 

 

 

「…あぁ…彼らか」

 

 

「あ、アラジンーー」

 

 

 

ミラの声が最後まで届く前に目の前からドンッ!!と言う破裂音と共にアラジンの姿が消え去る

 

そして次の瞬間にはーー

 

 

 

「きゃあ!?」「うぉ!?」「なんだなんだ!喧嘩か!?」

 

 

 

ミラたちがいるカウンターとは反対方向から叫び声が聞こえた。ミラたちが振り向くとそこにはーー

 

 

 

 

「ぐはっ!?…て、てめぇ…」

 

 

「ガジル君!?きゅ、急に何を!?」

 

 

「…うるさいよ…」

 

 

 

それは低く、冷え切った声だった。

 

目の焦点が合っていない――だがその奥にあるのは狂気ではなく、ただ一つの感情。

 

"怒り"

 

ガジル・レッドフォックスの首を掴み、壁へと叩きつけたまま、アラジンはゆっくりと口を開く。

 

 

「君たちが……僕の最も愛する大切な人を傷つけた」

 

 

空気が張り詰める。

誰もが動けない。

 

 

「その罪がどれほど重いか――分かってるのかい?」

 

 

「……っ、はっ…!上等だ…やってみろよ……!!」

 

 

ガジルの口元が歪む。

かつての敵同士――その火種は、まだ燻っている。

 

その瞬間――

 

 

 

「やめろ…アラジン」

 

 

凛とした声が空気を断ち切った。

 

振り返るまでもなく分かる。

エルザ・スカーレットだ。

 

 

 

 

「ここは“妖精の尻尾”だ。私怨で仲間に手を上げる場所じゃない」

 

 

 

「……仲間?」

 

 

 

アラジンの手に、わずかに力がこもる。

 

 

「こいつらが?」

 

 

「そうだ」

 

 

 

迷いのない一言だった。

 

 

「気に入らなくても、納得できなくても……もうギルドの一員だ。マスターがそれを決め受け入れるのが、私たちだ」

 

 

 

「……分かったよ」

 

 

アラジンの手が、ゆっくりと離れる。

 

ドサッ、と床に落ちるガジル。

 

 

「はぁっ……はぁっ……」

 

 

荒く息をつくその姿を一瞥し、アラジンは背を向けた。

 

 

「……勘違いしないでおくれよ」

 

 

低く、しかしはっきりとした声でアラジンが呟く

 

 

「…別に許したわけじゃない」

 

 

その言葉に、場の空気が再び張り詰める。

 

 

「ただ――ミラが…エルザが仲間が望まないことはしたくない」

 

 

その一言で、空気がわずかに緩んだ。

 

カウンターの向こう、ミラジェーン・ストラウスは小さく息を呑む。

 

数秒――いや、もっと長く感じられた時間の後。

 

 

「……アラジン」

 

その視線に気づきながらも、アラジンは振り返らない。

 

代わりに、ぽつりと呟く。

 

 

「でもね」

 

 

ほんの少しだけ、声が柔らぐ。

 

 

「次はないからね」

 

 

その言葉に――

 

ガジルは口元の血を拭いながら、ニヤリと笑った。

 

 

「……上等だ」

 

 

そしてその隣で、ジュビア・ロクサーは静かにそのやり取りを見つめていた。

 

かつて敵だった者同士。

だが今は同じ屋根の下にいる。

 

その事実だけが、この場のすべてを物語っていた。

 

 




おそらく更新は来週の土曜になると思います!土日メインで2.3本ずつ更新していく感じで行きます!
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