導きのマギと妖精たち   作:心ここにあらず

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もう1話だけ!


14話

 

 

《マグノリア・静涙の森(せいるいのもり)》

 

 

 

マグノリアの外れに広がるその森は、昼でもなお薄暗い。

 

空を覆うように枝を広げた古木たちは、互いに絡み合うように伸び、

陽の光は細い筋となって、わずかに地面へと落ちるだけだった。

 

足元には柔らかな苔が広がり、踏みしめるたびに音を吸い込む。

そのため、どれだけ歩いても――不気味なほど静かだ。

 

木々の幹はどれも黒ずんでおり、ところどころに白くひび割れた樹皮が浮かぶ。

まるで、乾いた涙の跡のように。

 

風が吹くと、枝葉がゆっくりと揺れる。

だがその音は、ざわめきではない。

 

——かすかな“嗚咽”に似ている。

 

森の奥へ進むほど、空気は重く、湿り気を帯びていく。

霧が低く漂い、視界は曖昧に歪む。

 

 

その森の中心…少し開けたところにアラジンとミラの姿が存在した

 

 

 

 

「「…」」

 

 

ふっと、空気が沈む。

 

ミラの周囲に、黒い魔力が“滲む”ように広がっていく。

それは荒々しいというより――静かに侵食していく闇。

 

彼女は目を閉じ、小さく息を吐く。

 

そして――

 

 

「……もう、逃げない」

 

 

低く、けれど震えのない声が森に響く

 

足元から黒い紋様が広がり、魔力が身体へと這い上がる。

 

 

「これは……私の力」

 

 

ミラの中で一瞬だけ、リサーナの面影が脳裏をよぎる。

 

 

「だから――全てを受け入れる」

 

 

その瞬間、魔力が弾ける。

 

 

 

「"サタンソウル"——」

 

 

静かに、しかし確かな意思を込めて。

 

 

「"接収(テイクオーバー)"」

 

 

黒い魔力が収束し、ミラの姿が変わる。

 

白かった髪は根元から墨を流したように黒へと染まり、

その先端だけが淡く白を残す――まるで“過去”と“今”の境界のように。

 

額からは滑らかな曲線を描く角が伸び、

瞳は金色に変わり、その奥にわずかな赤が揺れる。

 

背には漆黒の翼。

だが従来の禍々しさだけではなく、どこか“静謐さ”すら帯びている。

 

腕や脚には悪魔の紋様が浮かび上がるが、

それは暴走の証ではなく――制御された力の象徴。

 

全身から放たれる魔力は重く、圧倒的であるのが分かる

けれど以前のような“荒れ狂う気配”はない。

 

ゆっくりと目を開き、前を見据える。

 

 

「……これが、本当の私」

 

 

手を軽く握る。魔力が従順に応える。

 

 

「怖くないって言えば、嘘になる」

 

 

一瞬だけ、表情が柔らぐ。

 

 

「でも――」

 

 

すっと、戦う姿勢へ。

 

 

「それでも私は、この力で守るって決めたの」

 

 

視線が鋭くなる。

 

 

「大切な人も、過去の自分も……全部…」

 

 

それはアラジンならすべてを曝け出してでも受け止めてくれると言う全幅の信頼柄あってこそ

 

そして、それを見せられたアラジンはーー

 

 

「…うん…僕が"ミラを1人にさせない"って言ったのを覚えてる?」

 

 

「…うん」

 

 

「あの言葉は、勿論ずっと一緒にいるって意味も込められているんだけど…"もう一つの意味も込められているんだ"」

 

 

「アラジン??」

 

 

 

 

ミラはアラジンの纏う空気感が先ほどまでとはまるで違うことに気づいた。

 

大地が振動し、森が林が激しく揺れる…天が割れ雷が鳴り響く…

 

そして"それ"は起こった

 

 

 

『来たれ、我が覇道を照らす天雷の王――

 天空を裂き、万象を屈服させる覇威をここに示せ

 

 我が身に宿れ、雷霆の化身――

 "バアル"!!』

 

 

 

 

――その瞬間、空気が張り詰める。

大気が震え、次の刹那、空が裂けるような轟音と共に、極光の雷が一直線にアラジンを貫く

 

ドンッ――と、鼓動のような衝撃。

次の刹那、雷は弾けるのではなく“従う”ように彼の身体へ収束する。

 

 

 

 

「アラジン!?」

 

 

 

 

ミラの悲痛の叫びの後…"それ"は姿を現せる

 

 

 

アラジンの髪は逆立つように浮き、ところどころが稲妻のように青白く発光し蒼銀色へと変貌する。

瞳は黄金色へと変わり、視線だけで相手を圧する“王の威”を帯びる。

 

上半身は半ば露出し、その肌には雷を思わせる紋様が走る。紋様は生きているかのように淡く明滅し、時折王雷を散らす。

 

右腕は完全に“雷の化身”と化し、青白い電撃で構成された異形の腕へと変化。指先からは常に雷光が滴り、握るだけで空気が爆ぜる。

 

背後には王冠を思わせる雷の輪が浮かび、まるで“天空そのものを支配している存在”のような威圧感を放つ。

 

周囲の地面は常に帯電し、足を踏み出すたびにバチバチと火花が走る。近づくだけで肌が痺れるほどの電圧を帯びている。

 

 

有象無象も森羅万象…全てを煤塵と化す問答無用の王の雷…そしてその雷光すら跪かせるように王位に就く者ーー

 

 

 

 

「…アラ…ジンなの?…その姿はーー」

 

 

 

先ほどまではあまりにも違い過ぎる容姿と雰囲気…何よりその"魔力"…自らの魔人の魔力ですら霞んで見えるほど圧倒的な魔力にミラは圧倒される

 

 

「――怖い?」

 

 

静かに、だがよく通るアラジンの声だった。

雷鳴の中にあってなお、不思議なほどはっきりと耳に届く。

 

 

アラジンはゆっくりと一歩、ミラへと歩み寄る。

その足取りに合わせて、大地が微かに軋み、空気が震える。

 

 

けれど――その瞳は、変わらない。

 

 

黄金に染まり、王の威を宿してなお。

そこにあるのは、彼女が知っている“優しさ”だった。

 

 

 

 

「…ううん…怖くないわ」

 

 

 

「…ふふ…ありがとう」

 

 

 

 

2人は"魔人と魔神"の力を手にしてもなお、優しい瞳で微笑んだ

 

 

 

 

「この力はかつて"僕のいた世界"において世界を統べるほどの力を持っていたんだ」

 

 

 

雷を纏ったまま、アラジンは静かに語り出す。

その声音はどこか遠く――過去を見ているようだった。

 

 

 

「それこそ…世界を統べるのも…壊すことも容易な程にね」

 

 

 

「…」

 

 

 

 

アラジンのいた世界において、世の生態系の頂点に近い者達は皆特別な力を有している。それは「金属器」と呼ばれ、それを扱う者を「金属器使い」そしてその完成系…「魔装」は、ダンジョン攻略者=王の器たる存在に深く結びついた力の体系だ。

 

まず――金属器とは何か。

 

これは、ダンジョンを攻略しジンと契約した者――いわゆる「王の器」が、自らの配下に与える“力の分け与え”だ。

本来、ジンの力は一人の王の器にのみ宿る。しかしその膨大な力の一部を切り分け、特定の人物に託したものが金属器である。

 

その形は様々だ。剣、槍、弓といった武器であることもあれば、装飾品や道具に宿る場合もある。だが共通しているのは、それが単なる武器ではなく「ジンの力の欠片」を宿しているという点だ。

 

そして、その金属器を扱う者――それが金属器使いだ。

 

彼らは王の器に忠誠を誓い、その代わりとして力を授かった存在。完全なジンの契約者ではないため、扱える力は限定的だが、それでも常人を遥かに凌駕する戦闘能力を持つ。

また、金属器使いの力は王の器との信頼関係に強く依存している。絆が深ければ深いほど、その力はより強く、より鋭く発現する。

 

いわば彼らは、「王の手足」として戦う戦士たちだ。

 

そして――"魔装"

 

 

"厳密には少し違う"が今のアラジンに最も近い状態であり、これはジンの力を最も直接的に引き出す技術であり、王の器、あるいは一部の金属器使いのみが扱える切り札とも言える。

 

魔装とは、ジンの能力を自らの肉体や装備に“纏う”こと。

その瞬間、使用者の姿は一変する。

 

肌には紋様が浮かび、髪や瞳の色は変質し、時には衣装そのものが異形の鎧へと変わる。

それは単なる強化ではない――ジンそのものに近づく現象だ。

 

魔装には段階があり、基本となる「武器魔装」は金属器使いでも使用可能な場合があるが、真価を発揮するのは王の器のみが到達できる「全身魔装」。

この状態では、ジンの属性――炎、雷、氷、風などを自在に操り、戦場そのものを支配するほどの力を振るう。

 

 

まさに"魔神"の如き悪魔の力である

 

ただし、その代償は軽くない。

膨大な魔力を消費し、精神にも負荷がかかるため、使いこなすには強靭な意志と適性が必要とされる。

 

 

 

 

 

 

「悪魔の如く呪いに縛られているのはミラ…君だけじゃないよ…僕も…僕こそが悪魔の怨念に取り憑かれているのかも知れない」

 

 

 

「…」

 

 

 

アラジンはかつて"マギ"と呼ばれる存在であった

 

マギとは――

世界の“導き手”にして、“王を選ぶ者”である

 

この世界には「ルフ」と呼ばれる生命や運命の流れが存在していて、

マギはそのルフと特別に深く繋がった存在。

いわば、世界の意思を代弁する特別な魔導士みたいな立ち位置だ。

 

 

――そのルフは、本来“白”である。

 

生きとし生けるものの魂は、やがて大いなる流れへ還り、

再び新たな命へと巡る。

それが、この世界の理(ことわり)――“運命”だった。

 

だが。

 

その流れに背く者がいる。

絶望に呑まれ、憎しみに染まり、ルフを“黒”へと堕とす存在――。

 

それが、“堕転(だてん)”。

 

黒く濁ったルフは、周囲を侵し、やがては世界そのものの均衡すら歪めていく。

そしてマギは、本来――その歪みを正し、王を導き、世界をあるべき形へ戻す者のはずだった。

 

 

「……けど」

 

 

アラジンは静かに目を伏せる。

その瞳の奥で、淡く揺れる光がわずかに濁る。

 

 

「もし、その僕自身が――運命に抗おうとしたら?」

 

 

風が止まる。

 

 

「僕は見てしまったんだ……この世界の“流れ”の先を」

 

 

かすかに震える声。だが、それは恐怖ではない。

確信に近い、重い現実だった。どんなに足掻いても世界から争いは絶えず、常に世界の裏側では貧困や病…あらゆる絶望がひしめき合っている

 

 

「どれだけ足掻いても、誰かが救われれば、誰かが堕ちる……

 まるで最初から決められているみたいに」

 

 

 

ゆっくりと、ミラへと視線を向ける。

 

 

「君が呪いに縛られているように見えるのは……きっと、君だけのせいじゃない」

 

 

一歩、近づく。

 

 

「この世界そのものが、“そうなるように”流れているんだ」

 

 

その言葉は、優しさでもあり、同時に残酷な宣告でもあった。

 

 

「だから僕は――」

 

 

アラジンは小さく息を吐き、そして微かに笑う。

どこか、覚悟を決めたような笑みだった。

 

 

「その運命に、抗おうと思うよ」

 

 

空気が、変わる。

 

 

「世界の導き手なんかじゃない……ただの“僕”として」

 

 

その瞬間――

 

彼の周囲に、ふわりとルフが集まり始める。

だがそれは、一色ではない。

 

純白と漆黒が混じり合い、揺らぎ、ぶつかり合いながら――

まるで均衡を保とうとするかのように、静かに渦を巻いていた。

 

アラジンは、白きルフと黒きルフ――

本来決して交わらない二つを、その身に“均衡”させたことで、

器を介さず“ジンの力そのものを再現する領域”に到達した。

 

 

本来ジンと言うものはルフの"集合体"であり、それが意思を持ち巨大な力の塊となったものである。

 

ならばルフに愛された"マギ"であるアラジンがその構造を、再現できないはずがない。

 

 

それが"眷属器を使わず"して再構築したアラジン特有のオリジナルの"魔装"の正体であった

 

 

「……これが、僕の選んだ道だ」

 

 

低く、確かに響く声。

 

 

「たとえそれが――“悪魔に取り憑かれた”選択だとしても…世界がミラ…君を認めなくても」

 

 

ミラの名を、優しく呼ぶ。

 

 

「それでも僕は、君を縛るその呪いごと――断ち切り、何があろうとも君を護ると…僕自身に誓うよ」

 

 

 

その言葉は誓いであり、

同時に、世界そのものへ叩きつける“反逆”だった。

 

 

アラジンがそう口にした瞬間、ミラの変身魔法が崩れ出し瞳から涙が溢れ出す。

 

 

 

「……っ、ずっと……っ!…私…なんかが…生きてて良いのかな…ってっ…」

 

 

 

「僕は勿論、フェアリーテイルの皆んながミラが居なくなったら悲しむよ」

 

 

 

「っ…でもリサーナはっ ……ごめんね……っ…生きたかったよね…もっと色んなことしたかったよね… 私……ちゃんと、守りたかったのに…… ……っ、ひく……」

 

 

 

「…」

 

 

 

アラジンは何も言わずにただミラの事を優しく抱きしめるだけだった。…今はミラが未来に進む為に己に残った、遺恨や後悔を殱海すべき時間…そして全てを受け入れ飲み込んだ時、やっと人は前に進めるのだから

 

 

嵐が沈み、夕陽に照らされた森林の中で慟哭の叫び声がこだまする。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回から新章入ります!
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