出会い
空座町 午後七時十三分 金曜日
「何だァ!?イキナリ出てきて山ちゃん蹴倒しといて何考えてんだてめぇら?死ぬか?あァ!?」
見るからに不良の連中の一人を蹴り飛ばした男の名前は黒崎一護。15歳。髪の色はオレンジ。瞳の色はブラウン。職業は高校生。特技は…って、あ、また一人蹴り飛ばしてる。
その隣にいる目つきの悪いくせっ毛の俺の名前は白宮双葉。髪の色は黒。瞳の色はブラウン。職業は同じく高校生。特技は…ってまた蹴り飛ばされてる。
「あぁッ!トシりんがやられた!」
「なんだか知らんがヤベェ…。」
「あんなのと闘ったら確実に殺られる…!」
「ギャーギャーうるせぇ!お前らアレ見ろ!」
黒崎が指さした方向には、元々は花が生けてあったと思われる花瓶が、電柱の足元に割れた状態で転がっていた。思われるって言うか、俺達がちょっと前に置いてた花瓶なんだけどね。
「どうしてあの花瓶が倒れているんでしょーか?」
「そ、それは…俺達がスケボーで倒しちゃった…から…?」
「そうか…それじゃあ…」
あ、そうそう、俺と黒崎の特技を言いそびれてたな。特技というか能力というか、気づいた頃には既に”なっていた”だけだけど、俺達2人は…
’’ユウレイが見える’’
「コイツに謝んなきゃなぁ!?」
黒崎が親指でビシッと指さす背後には、うっすらと少女の幽霊のようなものが現れていた。おい、脅しの道具に幽霊使うなよ。というか不良連中には見えないでしょ。見えてたら花瓶割ったりしないでしょ。
「きゃぁぁぁぁぁあ!?!?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
少女の幽霊の姿を見て恐怖したのか、はたまた黒崎の鬼の形相に恐怖したのか、不良達は怯えながら一目散に逃げていった。まぁ間違いなく後者ではあると思うけど…
「ふー…。こんだけ脅しときゃもう寄り付かんだろ。」
「他に方法があっただろ…。暴力で解決しちまったらまた変な噂が立つぞ?」
「アイツらに『そこは女の子のユウレイが居るから別の場所で遊んでくれ』って言って話が通じると思うか?」
「いい歳してユウレイ信じてる変な奴が来たと思われるだけか…」
ユウレイが見える。なんて話をした所で信じる人間は殆どいない。俺も去年の春に黒崎に出会うまでは誰にも信じて貰えなかった。子供の頃は皆が見えている物だと思っていたから、当然小学校時代は周りから変人扱いを受けていた。
「悪かったな、こんな風に使って。」
「大丈夫!追っ払ってってお願いしたのはわたしだもん。」
「やかましい連中にギャーギャー騒がれたら落ち着かねぇよな…。ただでさえ死んじまってメンタルキツイ時に。」
数週間前、小学生の少女を巻き込んだトラック事故の現場で出会った少女のユウレイに、『不良達が毎日騒いでて落ち着かないから助けて欲しい。』との要望を受け、不良達が現れる時間帯を聞いて先回りし追っ払ったという訳だ。
ユウレイってのはやっぱり人間に干渉する事は出来ないんだな。呪い殺したり体を乗っ取ったり、みたいなホラー映画のようなファンタジー要素は無いみたいだ。
ユウレイの存在自体がファンタジーではあるのだが、俺と黒崎で同じユウレイが同じ言葉を喋っているのが聞こえて、更に会話ができている時点で『ユウレイ』という存在は確実に存在しているものだと思う。
「さてと、それじゃな。新しい花は近いうちに持ってきてやるよ」
「…うん。ありがとうおにいちゃん達。これで静かに暮らせるよ」
「また来るよ。別のトラブルがあったらスグに教えろよ。黒崎に。」
「俺にかよっ!んで?今日は飯食ってくのか?」
「ああ。よろしく頼むわ。」
またねー、と笑顔で手を振る少女のユウレイに別れを告げ、黒崎と俺は黒崎の自宅に歩き出した。今日のユズちゃんの作る晩御飯が楽しみだ。
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黒崎の家は独特で、夜七時に家族全員で揃って飯を食うという決まりがある。一人暮らしの俺は黒崎の提案で週2~3日ほど晩御飯を頂いているが、俺が漫画読んでたら寝落ちして時間に遅れた時も全員が食事に手をつけて居なかった。
あの時は妹の夏梨ちゃんにめちゃくちゃ睨まれたな…。以来、俺は三十分前には到着するように家を出るようにした。カリンチャンコワイ。などと考えている間に気がつくと黒崎の自宅に到着していた。
帰宅時間を一時間も過ぎていたこともあり、一心さんのドロップキックの刑が黒崎に執行&夏梨ちゃんが不機嫌になったりと色々あった夕食の時間を終えて今は黒崎の部屋にいる。夕食を終えた後は、いつも小一時間ほど黒崎の部屋で雑談をするか勉強をしている。こう見えて黒崎は頭が良いし優しい。
課題で詰んで唸っていたら解き方を教えてくれる。気がついたら毎回ホットココアを出してくれてる。さっきのユウレイの女の子の件もそうだ。年の離れた妹二人の面倒を見ていたからなのだろうか。
「…黒崎ってなんでそんなに優しいんだ?」
「な、なんだよ急に。恥ずかしいな~。」
「いや、ちょっと気になっただけだ…。何かきっかけでもあんのかなって。」
唐突に褒めるような聞き方をしたからなのか、褒められる事に慣れていないのか分からないが、露骨に照れていた黒崎が、ホットココアを少し啜ってから口を開いた。
「…母親が小さい頃に亡くなって、その時に二度と大切な者を失いたくないって思っただけだ。俺の力で助けられる人を助けてるだけだ。」
「…すまん。あんまり喋ってて気持ち良い話題じゃなかったな」
「気にすんなよ。というか時間大丈夫か?。そろそろ十時回るけど。」
部屋の時計を見ると時刻は九時五十五分。気にした事はないが、高校生が補導される時間ギリギリだ。夕食の時間が普段より一時間後ろにズレ込んだ事を忘れていた。テーブルの上に出し広げていた勉強道具を乱雑にカバンに詰め込んで帰り支度をする。
「補導されてもめんどいし早急に帰るわ。飯、毎回ありがとな。あとココアも。」
「それ毎回言って帰るつもりか?。気にすんなよ。暗いから気をつけて帰れよ。」
扉を開けて廊下に出ようとした時、黒い蝶のような生き物が右肩の辺りを通り部屋に入ってきた。
「蝶々…?こんな綺麗な真っ黒の蝶々って─」
「…?黒揚羽?なんだコイツ?どこから入って―」
部屋の中をヒラヒラと飛んでいる蝶々を目で追っていた黒崎と俺の言葉が途中で止まった。
それもそうだ、
黒い揚羽蝶が向かった先、
さっきまで俺が勉強をしていたテーブルの上に、
腰に日本刀のようなものを携えた、
黒い和服を着たサムライ姿の女性が立っていた。
初めまして。あんバターと申します。 初執筆なのでお手柔らかに。
1月26日編集※主人公の名前を白宮一から白宮双葉に変更しております