AKUMA退治はティータイムと共に 作:ホワイトチャペルの青年
「ヒッヒッヒ、こんな家に護衛がだぁれも居ないなんてなぁ……駄目じゃねぇか、用心しとかねぇとよぉ」
「兄貴ィ、流石っす!」
一般的な貴族の家は、位が高ければ高いほど装飾が豪華に、そして警備が厳重になるものである。
それらが、その家の格を示すからというのが一般的な説だったか。
まぁ、細やかな事情に差異はあるだろうが。
「このまま金目のもんをぜーんぶ頂いちまえば、俺達は大金持ちだ!」
「へっへ、むしろこの家の主を殺しちまえば俺達が貴族になれるかもしれませんぜ」
だからこそ、こういうスラム風味の馬鹿が侵入できる伯爵殿のやり方は異常とも言える。
「誰が、どこの主人を殺すって?」
「ああんっ!?」
奴等がエントランスの大階段を登る直前に来た辺りで、潜めていた存在感と声を発して警戒させる。
……全く、汚ぇ足で踏み込みやがって。
そいつを掃除するミミやメイド達の苦労も考えとけ。
「……んだよ、執事じゃねぇか」
しかし俺が姿を表しても、こいつらは恐れるどころか騎士ではないと調子付く始末。
「その階段」
「ああ?」
「その階段までがお前ら侵入者が入ることを許される最後のラインだ。それ以上踏み入る様なら俺がお前達を始末する」
ルル=ベルから敵対者には威圧感を与えろと厳命された為、渋々だがこの口調で対応することにしている。
これ以上はまじで嫌いなんだって、だから来るな。
「へっ、ただの執事なんかにやられる様な俺達じゃねぇよ!」
「兄貴、やっちまいましょうっ!」
「……」
そうして、奴等の1人が階段の一段目に足を踏み入れ
「ひげぶっ」
情けない声と共に、デカいのが後ろへと倒れ込んだ。
俺は警告したからな。
「カンタラ!? おいどうしたんだお前っ!?」
「……テメェら、スラムの育ちだろう」
俺が言われた圧の掛け方は、段々と口調を荒っぽくしていくやり方。
ぜっったい嫌だったんだが、有無を言わせないルル=ベルの顔の圧に敗北した。
「あ、兄貴! こいつ、し、し、死んでるぜっ!?」
「はぁっ!? 何されたんだ!」
「生きる為の貪欲さは悪かねぇ。だが
袖口に仕込んだコインを一枚、チビの方へと弾き飛ばす。
「逃げようぜあにぎぃっ!!」
チビの声が途中で途切れる。
「……ルーチン? おいどう……ひいいぃぃっ!?」
ノッポのがチビの方に振り向いて……凄惨な現場に恐怖している。
チビの方は当たりどころが悪かったのか頭の一部が吹き飛んでしまった。
やばい、ミミがキレるなこれ。
「 目先の危険、死臭を嗅ぎ取る術を鍛えねぇでいたのはちと不味かったな?」
「ひっ、お、お前何なんだよっ!!」
目の前で仲間が不審な死を遂げ、錯乱してしまったノッポの男がそう叫ぶ。
この程度でそこまで恐怖に駆られるとは、場の空気感ってのは大事だな。
「執事だよ、一応な」
「なんだそぎゅっ!?」
最後の1人も、同じくコインで眉間を撃ち抜いた。
俺は、人殺しに大した善悪を感じてないんだよ。
「もう、掃除する身になって欲しいはこっちのセリフです!」
「すまないな」
「本当ですよっ!」
案の定怒られた。
彼女はルル=ベル直属の
この4ヶ月弱の間、毎日の様にこのやり取りをしている。
こいつが同僚である以上避けられなかった。
「何か?」
「何も」
「……ほら、そっちも手を動かしてください!」
「……かしこまりました」
仕方ないとはいえ汚したのは俺だ、黙って手を動かそう。
「血の汚れなんて一番厄介なのに……!」
「悪かったとは思っている」
「そもそも、なんであなたみたいなのが伯爵様やルル=ベル様に気に入られてるんですかっ!」
「それは俺が知りたいな」
「あの執事口調も聞いてるだけでぞわぞわしますし」
「……手厳しいな」
ミミはルル=ベル大好き人間である為、新参者の俺が目を付けて貰っているのがとても気に入らないらしい。
俺とて気に入られたい訳じゃないんだが?
「俺とてこのままずっと雇ってもらおうなんざ思っていない」
「はぁ?」
「荷物を見つけさえすれば、お前や伯爵様方の邪魔にならない様に去るだけだ」
僅かな暇を貰った時に少しずつ探してはいるのだが。
飛ばされた距離が距離でな、どこかで纏まった暇を貰うなり退職するなりしないといけない。
「……何か、それはそれで腹が立ちますね!」
「俺にどうしろと」
「それはっ……」
それは、と何かを続けようとしてミミは口を噤んだ。
何だ、無礼を働いて打ち首になれとでも言うつもりなのか。
「何でもありませんよ! 無愛想で無礼な阿呆ジル」
「散々な言われ様だな」
無愛想だから態度だけは良くしていたんだろうが。
それを気持ち悪いだのぞわぞわするだのと……。
「まあ良いさ、お前にどれだけ罵られようが執事として働く以上は使わなければならないからな」
「そこも気持ち悪いです」
「……」
……俺の本職がここでなくて本当に良かったよ。