AKUMA退治はティータイムと共に   作:ホワイトチャペルの青年

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第九話

「全く、私に旅をする趣味は無いのですが」

 

 

 結局ロードは、俺を適当なところに飛ばしてしまった。

 あの屋敷から出してもらえた点と、必要な荷物が戻ってきたことには感謝しないとだが。

 

 

「……」

 

 

 最後まで俺を『あっち側』へと誘い続けていたな、ロードは。

 特筆して神に何ら思うことなんざないと言うのに。

 

 俺は信仰を持ち合わせていないが、怒りや恨みもまた持ち合わせてはいないのだから。

 神の使徒のセリフじゃないな。

 

 

「どうされたのかしらお兄さん」

 

「ん」

 

 

 ふと、正面から声をかけられた。

 幼い声だ。

 

 

「……こんにちは、リトル・レディ」

 

「あら、見かけによらず紳士なのね!」

 

「お褒めに預かり光栄です」

 

 

 小さい子に声をかけられていた、子供は度胸があるな。

 ぼーっと立っていることで不審がられてしまったか。

 

 

「どうもしてはいませんよ」

 

「そうなの?」

 

「ええ、少々考え事をしていました」

 

「最近は何かと寒いから、気を付けてね!」

 

「ありがとう、貴女もお気を付けて」

 

 

 ばいばい、と手を振り去っていく少女。

 さてこれからどうするかな。

 

 教団に戻ろうにも、おそらく関係者から1番遠いところへ飛ばされているだろう。

 ファインダーに会うことすら困難か。

 

 

「どこへ向かうべきだ?」

 

 

 ふむ。

 ……ああそうだ。

 

 

「この前クロス元帥から送られて来た書物は確か、アジアの方からでしたかね」

 

 

 じゃあアジアへ行くか、アジア支部になら知人もいるからな。

 

 

 

 


 

 

 

 

「あんた、クロス様のお知り合いなんだろう?」

 

「ええ、まあ」

 

 

 アジアへと向かう道中のこと。

 クロス元帥からの使いだという一団に、馬車へ乗せてもらっていた。

 ……。

 

 

「あの方が言ってたんだ、こんな感じのつり目のジルって男が東の方に行きたがってたら乗せてやってくれって」

 

「はは、そうでしたか」

 

 

 クロス元帥?

 え、どう言うことだ。

 

 

「あの方には命を助けて頂いたからなぁ、恩人のお知り合いとご一緒できるなんてありがたい話だぁ」

 

「ふふ、こちらとしてもありがたい限りですよ」

 

 

 理由も経緯も分からないが、どうやらクロス元帥にお呼ばれしているみたいである。

 ……さて、どうしたものかな。

 

 

「あっしらは途中で別れることになんだけども、それでよかったかぁ?」

 

「十分です、こうやって乗せていただけるだけでもありがたい限りですから」

 

 

 

 

 ……というのが、この旅路が狂い始めた最初の出来事だった。

 

 

 

 

「あんたジルさんだよね!?」

 

「え、ええ、はいそうですが」

 

「ひゃー、噂通りのイケメンだわねぇ! これ、差し入れさ!」

 

「はい?」

 

 

 途中で訪れる小さな街や村、そこらで偶に差し入れと称する何かを貰うことが起き始めたのだ。

 しかも、それらは決まって    

 

 

「クロス様からだよ!」

 

「……なるほど、ありがとうございます」

 

 

 いや、とてもありがたい配慮ではあるのだが。

 本当に、俺がここまでされる様なことをした覚えはないし。

 

 

『世話になった人に似てんだよ、おめーはな』

 

 

 すごく酔っ払った時の彼は、そう愚痴っていたか。

 ……似ているから、という理由だけでここまでするのか?

 俺や女性以外からは悪評が付き纏うような御仁が。

 

 

「訳がわからないな、本当に」

 

 

 俺を見る時の、あの物悲しげな色。

 あれには、俺の方まで心が痛くなる。

 

 

『口調までそっくりだぜ、全くよ。……変えてみたらどうだ』

 

「ッ……」

 

 

 アレンには言わなかったが、あの人がどうしようもなく悲しむ姿は、どうにも心に重くのしかかるのだ。

 

 だからああ、変えたとも。

 あの人がそう言って、ああまで悲しむのなら変えてしまおうではないか。

 そう、思うほどに。

 

 嫌いなのも、嘘ではないのだが。

 

 

「何だ」

 

 

 俺は、何を忘れている    

 

 

「……違う」

 

 

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 生まれてこの方19年、スラムで育ちエクソシストになるまでのことはしっかりと覚えているから。

 

 

「俺の知らぬ、俺が似ている誰か」

 

 

 その人の何が、クロス元帥を突き動かすんだ。

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