中学二年も、もう終わりが見えてきた頃だ。
最近、デクの様子がおかしい。
……いや、正確に言えば「前からおかしかった」かもしれねえ。
だが、決定的に変わり始めたのは――
たしか、半年くらい前からだ。
歩き方。
目線。
声の出し方。
一つ一つは些細だ。
だが積み重なると、無視できねえ違和感になる。
もっと言えば、怯えが消えた。
前までのデクは、俺を見る時、必ずどこかで視線を逸らしていた。
それが当たり前だった。
そうあるべきだった。
どうせあいつはいつまで経っても――
『クソナードのまま』
そう、思っていた。
「さて、爆豪くん。君の将来の夢を教えてくれるかな?」
んなもん当然決まってる
「俺は――オールマイトを超えるトップヒーローになる」
迷いはねえ。
才能も、個性も、力もある。
ここにいる連中とは、最初から立ってる場所が違う。
俺は選ばれた側で、
他の連中は背景だ。
デクなんかは、そもそも議論に上げるまでもなく論外
――そのはずだった。
「次は、緑谷くん」
「僕の夢は……」
「―――最強で、最高のヒーローになることです」
一瞬、教室が静まり返った。
……は?
今、なんて言いやがった?
無個性で、才能もなくて、
俺の後ろをちょろちょろついてただけのコイツが?
なんて、言いやがった?
「おいおい緑谷!無個性でヒーローとか無理に決まってんだろ!」
誰かが笑いながら言う。
そう言われて当然だ
あまりにも夢物語すぎる
――なのに
デクは、俯かなかった。
笑われてるのに。
否定されてるのに。
俺を、見てやがった。
真っ直ぐに。
その目が、前に見てきたどんな「クソデク」の目とも違っていた。
「そうかな。やってみなきゃ、分からないよ」
言い訳も、震えもない。
その瞬間、頭の奥で何かが弾けた。
「……ッ、何調子乗ってんだァ!?クソデク!!」
俺は立ち上がり、机を蹴る。
「テメェみたいなモブがヒーローだァ!?
無個性のクソナードが、何で俺と同じ場所に立てると思ってんだ!!」
叫びながら、俺は気付いていた。
――俺は、コイツを黙らせたい。
前みたいに、俯いて、何も言い返せなくさせたい。
「俺とお前じゃ才能が違うんだよ!!
俺は天才!!
テメェは凡人以下だ!!」
その言葉に、デクは一瞬だけ息を吸った。
そして―――
「凡人でも……」
「一生懸命努力すれば、
天才を超えられるかもしれないじゃないか」
……違う。
違う、違う違う。
その言葉自体じゃねえ。
その顔だ。
逃げねえ目。
自分の言葉を信じ切ってる顔。
―――なんでだ。
なんで、テメェがそんな顔をしてやがる。
胸の奥が、ざわつく。
イラつく。
ムカつく。
何より――
『もしも』
そんな言葉が、一瞬だけ頭をよぎった。
もしも。
もしもコイツが、本当に――
ありえねェ。
ありえるはずがねェ
コイツがほざいてることは