烏丸クロエの切断論理   作:四条の利

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先生登場〜


烏の見定め

 

▶ヴァルキューレ警察学校第1校舎 18階 刑事局オフィス

 

”ここが、刑事局…”

 

先生は、ヴァルキューレの校舎の少し奥まった場所にあるドアの前に立っていた。

 

ことの経緯はほんの少し前、シャーレに飛び込んできた救援申請が始まりだった。

 

『建設中のショッピングモールに爆弾を仕掛けたとの予告が入った』

 

『公安局は別件で出動ができないため、『刑事局』と連携を取り事態の解決に協力して欲しい』とのこと。

 

”(物騒だなぁ)”

 

先生がこのキヴォトスに来てから、爆発事故なんて日常茶飯事であった。

だがしかし、こうも『予告』付きで…というのは初めてなのである。

 

という訳で今、ヴァルキューレ警察学校の校舎に訪れていた。

 

”カンナはあんなふうに言ってたけど…”

 

公安局長のカンナからは「えぇ、あのウサギ達の問題を預けている身で申し訳ないのですが…え?あぁ、先生なら問題無いとは思いますが…まぁ、気を付けてください。あそこは公安局や生活安全局とは全くの別物です」と謎の忠告を受けていた。

 

”大丈夫かな…”

 

 

”意を決してドアを開ける”

 

 

「どいてくださーい!うわぁ誰ェ〜?!」

 

ドンッ!!

 

”うわぁ?!”

 

開けた瞬間に飛び出してきたブラウンのポニーテールの少女と正面衝突する。

 

「いったた……あ、すみません!私、急がないとまたお昼食いっぱぐれる予感がして…じゃあ!」

 

少女は土煙を上げて廊下の彼方へと消えていった。

 

”…賑やかだなぁ”

 

気を取り直して中に入ると、そこはカオスと称するに相応しい散らかりっぷりのオフィスだった。

 

「くか〜…」

 

床には巨大な盾を抱いて爆睡するグレーの髪の少女が転がっており、書類が山積みになったデスクの奥ではワイシャツの上にスーツを羽織った長い黒髪の生徒が優雅にお茶を淹れていた。

 

「む、やぁ、ようこそ先生。散らかっていてすまないね」

 

スーツ姿の少女が微笑む、と同時に持っていたお盆を寝ている少女にぶち当てる。

 

「起きろ!お客様だ!」

 

カァンといい音がした。

しかしその少女は身動ぎして終わった。

 

「ぬぇ…」

「全く…まぁ、ここが刑事局だ。私は局長の潮凪サザナ、そこで寝てる阿呆は盾役の八咫黒モナカ。何卒よろしく頼むよ」

 

”よろしくね”

 

挨拶もそこそこに、先生は指定された来客用の椅子に座ろうと手をかけた───

 

───その時。

 

「動かないで」

 

耳元で、冷ややかな声がした。

 

”?!”

 

背筋が凍るような、金属的な響き。

先生が視線を向けると、いつの間にかすぐ隣に、濡れたカラスのような艶やかな黒髪の少女が音もなく滑り出てきていた。

 

「覗いて見てくださいよ…」

 

チキチキ…

 

彼女の手には、鈍く光る無骨なハサミ。

そして先生が座った椅子の裏を覗き込むと、そこにはガムテープで無造作に貼り付けられた『赤い時限装置』があった。

 

「このまま寄りかかれば、感圧スイッチが作動してドカン。このまま手を離してしまうと、水平維持装置がズレてドカン!…あ〜らら、詰んでますねぇ先生?」

 

「そいつはうちの主任捜査官のクロエだ、あんたが今手を焼いている『ウサギちゃん』達と同じSRTの元生徒だよ」

”君も…?”

「今や猟犬崩れのイカれポンチだが、腕は間違いない」

 

クロエはハサミをチャキチャキと鳴らし、楽しそうに先生の顔を覗き込む。

その深紅の瞳は、まるで獲物を品定めするような光を帯びていた。

 

というか焦点が合っていない。

 

「はじめましてシャーレの先生ェ。噂は聞いてますよ」

 

少女は深紅の目をギョロリと先生に向け、ギザギザの真っ白な歯を剥き出しにして笑いかける。

 

「『どんな生徒も差別せず助けるお人好し』で『銃撃戦の中でも平気で指揮を執る変人』だって」

 

クロエはハサミの切っ先を、爆弾の配線にあてがう。

コードは赤と青の2本。タイマーは残り30秒を表示している。

 

「ククク…連邦生徒会も、ヴァルキューレの局長も、どいつもこいつも退屈な『飼い主』ばかりでした」

 

”飼い主?”

 

「…ねぇ先生。貴方はどうですか?私が猟犬になる価値があるか……試させてもらいますよぉ?」

 

クロエの挑発的な笑み。

 

「悪い先生、ちょっくら付き合ってやってくれ」

 

サザナは止めようとせず、面白そうに紅茶を啜っている。

 

これは試練だと直感した先生は、ハサミの少女を真っ直ぐに見つめ返した。

 

”赤を切ろう。君の瞳の色と同じだからね”

”安全な色を選ぼう、青だ!”

 

先生の言葉に、クロエが一瞬だけキョトンとした顔をする。

そして、すぐに堪えきれないといった様子で吹き出した。

 

「ぷっ、あーっはははは!なるほど、キザな口説き文句ですねぇ!いいですよぉ、そういう飼い主は嫌いじゃありません!」

 

パチンッ!

 

迷いなく、彼女は赤いコードを切断した。

 

 

 

 

カウントは止まらないまま、0になる。

 

 

 

 

パンッ!!

 

爆発音の代わりに鳴り響いたのは、クラッカーのような乾いた破裂音。

椅子の下から極彩色の紙吹雪が舞い散り、小さな旗が飛び出した。

旗には、雑な字で『ようこそ刑事局へ♡』と書かれている。

 

「はーい、失敗!!ですが合格で〜す!!」

 

クロエはハサミをクルクルと回して収めると、先生のネクタイについた紙吹雪をつまみ取った。

 

「改めまして、私の名は烏丸クロエ。よろしく頼みますよ、先生?」

 

”よろしく”

 

「ククク…ただし、油断してると……その無防備な背中、私のハサミが切っちゃうかもしれませんけど♪」

「クロエ〜!お客人にイタズラをするなと言っただろう!」

「さっきまで静観してた局長が言います〜?」

 

ようやくサザナが怒鳴り声を上げ、モナカが「うっさいなぁ……」と寝言を漏らす。

 

”これが『刑事局』…”

 

断ち切り屋の刑事・烏丸クロエと、先生の共犯関係の始まりである。

 





「で、この紙吹雪は誰が片付けるんだ?」
「イキハにでもやらせましょうよ」
「お前…」

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  • サザナ
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  • ミラ(鑑識課)
  • レイン(交通安全局長)
  • まだ見ぬオリキャラ
  • 既存生徒との関わり
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