CROW小隊結成!
卑屈!陰キャ!イキリ!
ろくな奴がいねぇぞ!!
遅くなりました!
何話か追加もしているので良ければ読み返して見てください。
「はぁ…はぁ…」
烏丸クロエは、夢を見ていた。
コンクリートと冷たい雨の匂いがする、ひどく懐かしくて、吐き気のする夢だ。
今はただ一人、自室のベットに横たわっていた。
カーテンを閉め切り、光を遮断した室内。
静寂の中で、彼女は聞こえてもいない声を聞く。
『CROW1』
『烏丸小隊長』
見たくもない、聞きたくもない現実から逃げるように目を閉じると、黒い泥のような記憶が底から這い上がってくる。
───それは、彼女がまだ『カラス』として生を受けていなかった頃。
SRT特殊学園に入学し、あの真っ黒な部隊へと組み込まれた最初の日のことだった。
SRT特殊学園、第三訓練棟のブリーフィング室。
そこには重苦しい沈黙…ではなく、耳を塞ぎたくなるような不毛な口論が響き渡っていた。
「…はぁ」
部屋の隅で腕を組んでいた担当教官───後輩の教導を任された三年生の生徒は、今日だけで何度目か分からない深い溜息をついた。
彼女の手元には、新設される特殊工作部隊『CROW小隊』のメンバー候補として集められた、三人の一年生のデータがある。
「…」
一人目。
入試において満点を取るだけにとどまらず、出題者に対して問題の改訂案まで提示した前代未聞の秀才、
二人目。
情報処理、電子戦、妨害工作のタイムアタックで歴代記録を塗り替え、かつドローン操縦試験において『一人』で白熱の戦いを演じてみせた鬼才、
そして三人目。
運動能力、射撃精度、CQC…さらには何故か医療と化学の知識においても突出した成果と成績を叩き出した奇才、
個々の技術は、間違いなく超一流。エリート揃いのSRTの中でも特筆すべき才能だった。
しかし。
「だーかーらー!あんたは頭が固いって言ってんの!その扉のロック私なら三秒で解除できるんだけど?!なんでわざわざ物理的に配線を切る事にこだわるわけ?」
生意気な口調で机をバンと叩いたのは喜瀬川チドリだ。 彼女はタブレットを片手に、向かいの席に座る黒髪の少女を鋭く睨みつけていた。
「はぁあ?三秒?遅すぎますね」
睨まれた烏丸クロエは、手元の分厚い教本から視線を上げることなく、冷淡に言い放つ。
「貴女のタイプのクラッキングは、システム側に検知されるリスクを伴います。痕跡を残さず、物理的な干渉で強制的にエラーを吐かせる私のロジックの方が、確実かつ安全です」
「全く…システムを過信している時点で、三流ハッカーの浅知恵ですね…おや、難しかったですか?今の言葉理解できますか?」
「はぁ?!!アタシのコードが検知されるわけないじゃん!あんたのその古臭いアナログ信奉マジで終わってんだけど!おばあちゃんなわけ?!」
チドリが噛み付くが、クロエは「ふん」と鼻で笑ってページをめくるだけだ。
その態度が、さらにチドリの神経を逆撫でする。
「おいおい、どっちもチマチマしててダリィな!」
そこに割り込んできたのは、机の上に両足を乗せ、ふんぞり返っていたヒタキだった。
彼女は先端が赤く染まったツインテールの髪を揺らしながら、二人を鼻で笑う。
「ロックだの配線だの、チマチマやってるから時間がかかるんだよ。ウチが扉ごと狙撃で吹き飛ばして、煙に紛れて中の奴らを全員沈めれば全部で五秒で終わる!ウチのスピードに追いつけないトロい奴らは、後ろで隠れてればいいんだよ!」
ヒタキの自信満々な発言に、今度はクロエとチドリの冷ややかな視線が同時に彼女へと突き刺さった。
「……なんて単細胞の脳筋理論。私たちは『特殊工作部隊』です。扉を吹き飛ばす音で、どれだけの増援を呼ぶか計算もできないのですか?」
「マジそれな。作戦の前提も理解してないとか、体力測定だけの一発屋はこれだから困るのよねー」
クロエの容赦ない論理的否定と、チドリの辛辣なダメ出し。
ヒタキはカチンと来たように机から足を下ろし、二人を睨み返した。
「あぁ!?テメェらウチに喧嘩売ってんの?!だったら今すぐこの場でどっちが上かハッキリさせてやろうか?!」
「野蛮ですね。サル山のボス決めですか?私の知能と貴女の筋肉を比べること自体が、比較対象として破綻しているのですが。まぁ負けませんけど」
「いいよ?やってやろーじゃん。ハッカーが力で勝てないとでも思ってんの?鼻血ダラダラにして泣かせてあげるわよ!」
「上等だコラ!!」
ガシャーン!とパイプ椅子が蹴り飛ばされる音が響く。
三人は互いに一歩も引かず、今にも胸倉を掴み合いそうな距離で火花を散らした。
これがCROW小隊である。
「……お前たち、いい加減にしろ」
「「「!」」」
見かねた教官が、ついに声を荒らげた。
教官の威圧感に、三人は渋々といった様子で動きを止める。
「烏丸。お前の知識と工作技術は評価している。だが、他者を見下すその態度は小隊の連携を乱す」
「はぁ」
「喜瀬川。お前の電子戦能力は認める。だが、自分の技術を過信しすぎて他者の意見を聞かないのは致命的だ」
「はぁ?!」
「何羽。お前の身体能力はトップクラスだ。だが、作戦行動において暴力に頼りすぎる短絡さは部隊を全滅させるぞ」
「はい?!」
誰もマトモに話を聞く気が無い。
教官は頭痛を堪えるようにこめかみを押さえた。
「『CROW』はお前たち三人でチームとして動く。互いの弱点を補い合うのが小隊の…」
「「「補う弱点なんてありません(ないし)(ない!)」」」
三人の声が見事にハモった。
クロエは不遜に。チドリは生意気に。ヒタキは強気に。
それぞれが全く別の方向を向きながら、自分こそが最も優れていると疑っていない。
(…ダメだこいつら)
教官は深い絶望を覚えた。
彼女ら一人一人は間違いなく天才だ。
だが、自己主張が強すぎて、全く噛み合わない。
クロエは他者の技術を信用せず、すべてを自分の理論でコントロールしようとする。
チドリは他者を見下し、自分のペースで場を支配しようとする。
ヒタキは実力行使で他者を黙らせ、自分が一番目立とうとする。
水と油、いや、三種類の異なる爆薬を同じ箱に詰めたようなものだ。
少しでも摩擦が起きれば、敵ではなく味方同士で大爆発を起こすだろう。
(荒療治が必要だな)
「…いいだろう。そこまで言うなら、明日の模擬戦で証明してもらおうか」
教官はバインダーを閉じ、冷たく言い放った。
「お前たち三人で、指定した防衛区画の制圧を行ってもらう。誰が一番有能か、結果で示せ」
「ただし、チームとしてクリアできなければ、CROW小隊の話は無し、1年生の間は宙ぶらりんになる事を覚悟しておくんだな」
教官が部屋を出ていくと、再び三人の間に冷ややかな沈黙が降りた。
「足だけは引っ張らないでくださいよ、お二人とも。私の完璧なスコアに傷がついたら許しませんからね」
クロエが教本を閉じながら立ち上がる。
「はっ。あんたこそ、アタシのハッキングの邪魔しないでよね。トロいことしてたらまとめてぶっ潰してやるから」
チドリがタブレットを回しながら鼻で笑う。
「ウチの射線に入っても躊躇しないからな!」
ヒタキが親指で自分を指差し、自信満々に笑った。
最悪の初顔合わせ。
これが後に裏社会を震え上がらせるカラス達の、血で血を洗うようなギスギスした日常の始まりだった。
■教官
SRTの三年生。
その実力と面倒見の良さから問題児揃いのCROW小隊の教官に抜擢された。
調子に乗っていた
現代基準でも化け物側の実力者。
とある鳥の名を持つ小隊の小隊長も務めている。
次回『烏合の衆』
どの話が見たい?
-
クロエ
-
サザナ
-
イキハ
-
モナカ
-
ミラ(鑑識課)
-
レイン(交通安全局長)
-
まだ見ぬオリキャラ
-
既存生徒との関わり