サブキャラクター、鑑識のミラちゃん登場!
トリニティ→SRT→ヴァルキューレという独特な経歴を持つ二年生だ!怒ると定規を振り回し、鳩尾を的確に叩いてくるぞ!
▶ヴァルキューレ警察学校・鑑識課
カチャ…カチ…
時計と、何か硬いものが触れ合う音だけが聞こえる。
「…時は、止まったまま」
深夜の鑑識課。
薬品とコーヒーの混じった匂いが漂う静かな部屋で、鑑識課の2年生、
「…君たちにとっては、私は未来の存在。安心して、私が祈りに応えてみせるから」
その視線の先にあるのは、先ほどの事件でクロエが解除するも、再起動の後に爆散した…アタッシュケースに仕込まれた爆弾の基盤だ。
とは言っても、爆散した影響でバラバラになり、ただの焦げた欠片と成り果てていたが。
「来ましたね、クロエさん」
ミラは顔を上げず、手元の計測機器でミリ単位の計測を続けながら声をかけた。
「流石に、察しの良さは一流ですね」
入口ではベージュのコートを羽織ったクロエが、ドア枠に寄りかかっていた。
「ご要件は?」
「上への報告前に『数字』の裏付けが欲しいんで「数字はこちらに。全てでは無いですが、受理される十分量は満たしています」
「…私が来るの、分かってましたね?」
すぐ目の前のデスクに、書類が積まれていた。
それを見たクロエは額を押さえ、大袈裟に頭を振った。
「ええもちろん」
「相変わらずの性格の悪さ、『主』を信仰している学園の出身なんですから、教皇くらいご立派な志を持った方が良いのでは?」
「私は没落者ですよ、今はそんなものより給料を求めます」
ミラはため息をつき、ピンセットで小さな欠片を摘み上げた。
「ですが今の言葉に感銘を受けました。そうですね、この数分だけはあなたの望む『教皇』となり、あなたに天啓を授けましょう」
「それはそれは、ありがとうございます教皇様」
ミラの隣のデスクに、クロエはドカッと腰を下ろした。
「感謝しますよ」
「そうしてください。では…まずこちら、爆発の衝撃で大半は消し飛びましたが、信管の結線と火薬の燃焼残留物。これらは嘘をつきません」
ミラがモニターに、復元された回路図を表示する。
それは市販のものではなく、極めて特殊な──
「結論から申し上げると、これは間違いなく『専門』の作り方です」
──軍事用にカスタムされた配列だった。
「導火線のピッチ、基盤の作り方、そして何より…この『無駄に殺傷能力を高めるためだけの添加物』に『再起動回路』…」
「はっきり言ってもらって構いませんよぉ」
ミラは眼鏡の位置を中指で直し、冷徹な声で告げた。
その声音には、かつてSRTの情報部で培ったプロフェッショナルの緊張感が宿っていた。
「覚えてますよね?あなたがかつて潰した、あの組織」
「…
キヴォトスの裏社会にかつて存在した、爆発物専門の闇シンジケート組織。
構成員は爆弾魔、違法建築業者、そして悪徳地上げ屋で構成されており、当時のあらゆる爆破テロの支援元であったとされている。
彼らは爆破テロを利用した「マッチポンプ方式」により莫大な土地の利益を上げていたが、その過程で多くの一般市民や建物が巻き込まれ、キヴォトス全域の治安を著しく悪化させていた。
そして、かつてのSRT特殊学園の特殊部隊『CROW小隊』の手によって製造プラント全てを潰され壊滅。歴史にも記されることなく消えていった。
「…」
ちゃきん。
クロエはハサミを取り出し、意味もなく空を切った。
その深紅の瞳が、モニターの無機質な光を反射して鋭く光る。
「えぇ、嫌なほど覚えていますよ。あの安っぽい火薬の臭いは」
「組織は最近になって復活の兆しを見せています」
「…」
クロエは自嘲気味に口角を歪めた。
「SRTの正義の…『消費期限切れ』ってところでしょうかね」
かつて彼女が「正義」の名の下に断ち切ったはずの悪。
SRTが廃校となり、CROWという抑止力が消えた今、腐った根が再び芽吹き、キヴォトスに毒を撒き散らそうとしている。
そしてその毒は、間違いなく「小隊長」だったクロエにも向けられている。
「…今回のイホー社長の事件は、恐らく『観測気球』です」
ミラが淡々と分析を続ける。
「W.D.Aの残党が、貴女の腕が錆びついていないか試した…そして貴女は期待通りに『切ってしまった』」
「……悔しいですが、完全に油断をしていました」
「今回でデータを取られましたね、次はもっと測りしれない規模で来ますよ」
「…上等です」
ぱちん!
ハサミを閉じる強い音が、ラボに響いた。
「長さも深さも重さも関係ない。私の前に現れるなら、全部まとめて『切断』してやるだけです」
「あなた自身も危ないということは覚えていてくださいね」
「…フフ、心に留めておきますよ」
クロエは背を向け、ひらりと手を振る。
そして積まれた書類を抱え、器用に足で扉を開けて出ていった。
「鑑識結果、感謝しますね。ミラ」
足音が遠ざかる。
一人残されたミラは、再び顕微鏡に目を落とし小さく呟いた。
「…クロエさん。貴女が背負っている荷物は、いつ下ろすことが出来るのでしょうか」
「それとも、それが正義の代償なのでしょうか」
ラボの明かりだけが、焦げた回路を照らし続けていた。
世界爆破連合ってなんだよ…
つづく!
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