短編   作:しきょーかい

11 / 14

ウティアスの覇気で自爆する血袋はやはりバグでしたね
じゃ、硬血式グローブもらってくね…





 

雪が積もっていた。

葉が散った木々、所々に散った、赤。

 

「タルラ……あなたは誰も憎まない……そうよね?」

 

「そんなの無理だ!」

 

「憎しみに、囚われないで……。」

 

林の中に、二人の少女がいた。

一人はドラコ、もう一人はエラフィア。

負傷したエラフィアを、ドラコは担いで歩いていた。

エラフィアの負った傷は誰が見ても致命傷であり、即座に適切な処置を取らなければ死ぬだろう。

 

「暖かい……雪って、暖かいのね……。」

 

「駄目だアリーナ、目を閉じちゃ駄目だ!もう少し、後少しで着くから!」

 

歩んできた道のりは長い。

落ちていく血は、規則正しく雪を赤黒く染めていく。

直に止まるであろう流れを、林の中から歩み出た()は見ていた。

 

「御機嫌ようお嬢様。ちょっと道を聞きたいんだけど、いいかな?」

 

「退け、邪魔だ……!」

 

それ以上は続かなかった。

立ちはだかる者が剣を抜いたから?違う。

その構えがあまりにも美しく見惚れたから?違う。

視線は、相手の背後にある簡易テントの中へ向いていた。

 

十分な医療器具、大量の血液パックがあった。

 

「その子、助けてあげてもいいよ。勿論条件はあるけどね。」

 

「何でもする!何だってしてやる!だから、だからどうか……アリーナを救ってくれ……。お願いだ……大切な、友達なんだ……。」

 

「泣かせるね、早く運びな。医療の心得はあるのさ、まだ間に合うよ。」

 

「頼む……!」

 

都合よく医療器具が揃えられ、都合よく扱える者がいる。

罠か、それとも未来を知る悪魔か。ドラコはどっちだっていいと思った。

 

未来は変わる。

世界を相手にした時、一人の力は微力だが、無力ではない。

運命の歯車に小石を投じた結果が、ここにある。

 

「タ……ルラ?」

 

「アリーナ!」

 

「まだ絶対安静だよ。本職じゃないんだ、落ち着いたらちゃんと診てもらいな。」

 

変化した流れは、ありうべからざる世界を生み出す。

歪んでいようとも、世界を動かそうとする力が世界を再度規定する。

 

 

 

———

 

 

 

「こんにちは、小指の挿翅虎(天退星)さん。」

 

「……はぁ、お前の仕業か?腹黒狐。」

 

「こんこ〜ん……残念なことに、私にも予測できないのさ。流れに沿って溺れないよう藻掻いてる途中だよ。」

 

所と時は変わり、ある場所にて。

本来は衝突することのない虎と蛇が睨み合っていた。

その場所は、新しく生み出された鉱石病感染者にとっての家。

 

「それじゃあ、退場してもらおうかね。」

 

「吐かせ、お前が落ちろや。」

 

平穏は破砕を伴う爆炎と、空間さえも斬り裂く絶技によって壊れる。

都市の色が動けば斬れて、都市の指が動けば数を持って炎を上げる。

 

ドラコ、白いコータス、レプロバ、リーベリとフィディアの子供、純血のウェンディゴ……。

家を守るために守護者たちが現れてもなお、虎は死力を尽くして抗い続ける。

 

「言い遺すことはあるかい?」

 

「…くたばれや。」

 

ドラコの炎が弾丸に引火し、裂傷だらけの虎は爆発とともに散る。

最後まで破壊を続け、己を狩ろうとした者たちに傷を負わせ続けた。

 

「……終わりかな、ここにもないか。」

 

「どうしたんだ、イオリ。こいつらの事か?」

 

命令に従い、あらゆる障害と苦難を乗り越え、感染者の家を作り上げたドラコが問う。

それを無視して、蛇は可能性を求めて剣を収めた。

 

「ままならないね。」

 

「———なっ。」

 

切り拓かれたのは空間ではなく、次元。そして時間。

姿が消える。

 

 

 

==========================================

==========================================

==========================================

 

 

 

数多の軍勢が、一つの種族を滅ぼさんと迫る。

立ち向かう者たちの顔には疲弊が浮かんでおり、抗い続けるのにも限界があった。

後に英雄と呼ばれる者たちの1名を除き、それは例外ではない。

いかなる強者であろうと数には勝てないのだ。

 

しかし、定めに縛られない都市の訪問者が参戦したのなら。

結果は変わらず、ここにある。

 

「怖いねぇ、有象無象なら話は早いんだけど、アンタはそうもいかなそうなんだよ。」

 

「……何者だ。」

 

見るものが見れば唖然とするだろう。

リターニアの高塔術師、ヴィクトリアの蒸気騎士……この世界で猛者と呼ばれる者たちの亡骸が、一箇所に集まっていた。

一人遺された指導者の前には、4人の戦士が殺意を向け、満身創痍で立っている。

 

「名乗る名はないさ。」

 

「彼らの足止め、主な戦闘を担ったのはそこのサルカズ達だろう。だが、決定打を与えたのは君であると私は見ている。少なくとも私には、彼らの連携を超え、未来を見ているかのように隙を突き、あらゆるものを問答無用で断つ君は名乗るに値すると思えたな。」

 

「長々と語る場では、なかろうよ。」

 

「……ラケラマリン。気を付けて。テレシス。」

 

「問題ない。」

 

「彼らの死に敬意を表し、私もこの命を投げうち、お前たちを殺すため全力を尽くすべきなのだろう。」

 

フェリーンの側から、鉱物のような何かで構成された化物が生み出され———

 

「♪———」

 

「今よ、テレシス。」

 

「……。」

 

「無駄だ、君たちでは届かな———」

 

挽歌が奏でられ、アーツの球体が怪物たちの動きを阻害し、テレシスと呼ばれた男の剣が振るわれた。

怪物の尾に弾かれた剣。フェリーンは言の葉を紡ごうとして———最大の脅威の姿を見失った。

 

「いつの、間に……。」

 

「次があるなら、瞬間移動する相手も想定しておくことだね。」

 

怪物ごと斬り伏せた蛇は、主を求める王冠を懐から取り出す。

そして自分には扱えないものだと知っているため、大人しく未来の英雄たち(・・)へと授けた。

 

「さて、この王冠だけど……アンタたち二人(・・)で持つのが良いだろうね。一人で持てば碌なことにならない。貴方たちもそれでいいだろう?興味があるなら、話し合ってもいいよ。」

 

「そなたがそこまで言うのなら、妾には手に余るだろうよ。」

 

疲れた表情で顔を横に振るバンシーに、蛇は笑顔で返した。

恐る恐る、二人のサルカズが王冠を手に取る。

瞬間、王冠は2つに別れ、兄妹の頭上に浮かんだ。

二人の魔王の誕生という前代未聞の事態を見届け、蛇は微笑み、姿を消した。

 

 

 

求めるものはあるのか、かすかな期待を抱いて探し続ける。

出会いと別れ、数多の英雄と共に歩み、果てに見たものは———

 

「プリースティスはどこだ。」

 

「……駄目そうだね。」

 

動きが狂った歯車は、狂った原因が消えても回り続ける。

枝が分かれ続けるだけで、成長は止まらない。

 

「源石……。あの子を源石に喰わせられたのなら、何らかの方法で抽出できたのかもねぇ。」

 

未来、既に起こっている事象。擬似的な死者蘇生とも言える。

源石の森より生ずる者たちは、同一の情報を持ってはいるが、本人ではない。

それすらも予測した蛇は、求めているものはないと悟り剣を抜いた。

 

「馬鹿弟子たちは来てないみたいだし、特に未練もないかな。」

 

そうして光は空に昇る(都市に戻る)

残されたものは何も無い。ただ、可能性を見る者たちだけが、突如現れる存在を知っていた。

 

時には異種族の魔王として大陸を治め

時には海より来たる災厄との交流を可能にし

時には複数の獣主の手綱を握った。

 

畏敬の念を込めて、彼らは蛇が名乗ったとおりに呼ぶ。

紫の涙、と。

 





ウティアスのイリワラもいいけど
やはり本家のイリワラの方が好き
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。