短編   作:しきょーかい

11 / 11

ウティアスの覇気で自爆する血袋はやはりバグでしたね
じゃ、硬血式グローブもらってくね…



第11話

 

雪が積もっていた。

葉が散った木々、所々に散った、赤。

 

「タルラ……あなたは誰も憎まない……そうよね?」

 

「そんなの無理だ!」

 

「憎しみに、囚われないで……。」

 

林の中に、二人の少女がいた。

一人はドラコ、もう一人はエラフィア。

負傷したエラフィアを、ドラコは担いで歩いていた。

エラフィアの負った傷は誰が見ても致命傷であり、即座に適切な処置を取らなければ死ぬだろう。

 

「暖かい……雪って、暖かいのね……。」

 

「駄目だアリーナ、目を閉じちゃ駄目だ!もう少し、後少しで着くから!」

 

歩んできた道のりは長い。

落ちていく血は、規則正しく雪を赤黒く染めていく。

直に止まるであろう流れを、林の中から歩み出た()は見ていた。

 

「御機嫌ようお嬢様。ちょっと道を聞きたいんだけど、いいかな?」

 

「退け、邪魔だ……!」

 

それ以上は続かなかった。

立ちはだかる者が剣を抜いたから?違う。

その構えがあまりにも美しく見惚れたから?違う。

視線は、相手の背後にある簡易テントの中へ向いていた。

 

十分な医療器具、大量の血液パックがあった。

 

「その子、助けてあげてもいいよ。勿論条件はあるけどね。」

 

「何でもする!何だってしてやる!だから、だからどうか……アリーナを救ってくれ……。お願いだ……大切な、友達なんだ……。」

 

「泣かせるね、早く運びな。医療の心得はあるのさ、まだ間に合うよ。」

 

「頼む……!」

 

都合よく医療器具が揃えられ、都合よく扱える者がいる。

罠か、それとも未来を知る悪魔か。ドラコはどっちだっていいと思った。

 

未来は変わる。

世界を相手にした時、一人の力は微力だが、無力ではない。

運命の歯車に小石を投じた結果が、ここにある。

 

「タ……ルラ?」

 

「アリーナ!」

 

「まだ絶対安静だよ。本職じゃないんだ、落ち着いたらちゃんと診てもらいな。」

 

変化した流れは、ありうべからざる世界を生み出す。

歪んでいようとも、世界を動かそうとする力が世界を再度規定する。

 

 

 

———

 

 

 

「こんにちは、小指の挿翅虎(天退星)さん。」

 

「……はぁ、お前の仕業か?腹黒狐。」

 

「こんこ〜ん……残念なことに、私にも予測できないのさ。流れに沿って溺れないよう藻掻いてる途中だよ。」

 

所と時は変わり、ある場所にて。

本来は衝突することのない虎と蛇が睨み合っていた。

その場所は、新しく生み出された鉱石病感染者にとっての家。

 

「それじゃあ、退場してもらおうかね。」

 

「吐かせ、お前が落ちろや。」

 

平穏は破砕を伴う爆炎と、空間さえも斬り裂く絶技によって壊れる。

都市の色が動けば斬れて、都市の指が動けば数を持って炎を上げる。

 

ドラコ、白いコータス、レプロバ、リーベリとフィディアの子供、純血のウェンディゴ……。

家を守るために守護者たちが現れてもなお、虎は死力を尽くして抗い続ける。

 

「言い遺すことはあるかい?」

 

「…くたばれや。」

 

ドラコの炎が弾丸に引火し、裂傷だらけの虎は爆発とともに散る。

最後まで破壊を続け、己を狩ろうとした者たちに傷を負わせ続けた。

 

「……終わりかな、ここにもないか。」

 

「どうしたんだ、イオリ。こいつらの事か?」

 

命令に従い、あらゆる障害と苦難を乗り越え、感染者の家を作り上げたドラコが問う。

それを無視して、蛇は可能性を求めて剣を収めた。

 

「ままならないね。」

 

「———なっ。」

 

切り拓かれたのは空間ではなく、次元。そして時間。

姿が消える。

 

 

 

==========================================

==========================================

==========================================

 

 

 

数多の軍勢が、一つの種族を滅ぼさんと迫る。

立ち向かう者たちの顔には疲弊が浮かんでおり、抗い続けるのにも限界があった。

後に英雄と呼ばれる者たちの1名を除き、それは例外ではない。

いかなる強者であろうと数には勝てないのだ。

 

しかし、定めに縛られない都市の訪問者が参戦したのなら。

結果は変わらず、ここにある。

 

「怖いねぇ、有象無象なら話は早いんだけど、アンタはそうもいかなそうなんだよ。」

 

「……何者だ。」

 

見るものが見れば唖然とするだろう。

リターニアの高塔術師、ヴィクトリアの蒸気騎士……この世界で猛者と呼ばれる者たちの亡骸が、一箇所に集まっていた。

一人遺された指導者の前には、4人の戦士が殺意を向け、満身創痍で立っている。

 

「名乗る名はないさ。」

 

「彼らの足止め、主な戦闘を担ったのはそこのサルカズ達だろう。だが、決定打を与えたのは君であると私は見ている。少なくとも私には、彼らの連携を超え、未来を見ているかのように隙を突き、あらゆるものを問答無用で断つ君は名乗るに値すると思えたな。」

 

「長々と語る場では、なかろうよ。」

 

「……ラケラマリン。気を付けて。テレシス。」

 

「問題ない。」

 

「彼らの死に敬意を表し、私もこの命を投げうち、お前たちを殺すため全力を尽くすべきなのだろう。」

 

フェリーンの側から、鉱物のような何かで構成された化物が生み出され———

 

「♪———」

 

「今よ、テレシス。」

 

「……。」

 

「無駄だ、君たちでは届かな———」

 

挽歌が奏でられ、アーツの球体が怪物たちの動きを阻害し、テレシスと呼ばれた男の剣が振るわれた。

怪物の尾に弾かれた剣。フェリーンは言の葉を紡ごうとして———最大の脅威の姿を見失った。

 

「いつの、間に……。」

 

「次があるなら、瞬間移動する相手も想定しておくことだね。」

 

怪物ごと斬り伏せた蛇は、主を求める王冠を懐から取り出す。

そして自分には扱えないものだと知っているため、大人しく未来の英雄たち(・・)へと授けた。

 

「さて、この王冠だけど……アンタたち二人(・・)で持つのが良いだろうね。一人で持てば碌なことにならない。貴方たちもそれでいいだろう?興味があるなら、話し合ってもいいよ。」

 

「そなたがそこまで言うのなら、妾には手に余るだろうよ。」

 

疲れた表情で顔を横に振るバンシーに、蛇は笑顔で返した。

恐る恐る、二人のサルカズが王冠を手に取る。

瞬間、王冠は2つに別れ、兄妹の頭上に浮かんだ。

二人の魔王の誕生という前代未聞の事態を見届け、蛇は微笑み、姿を消した。

 

 

 

求めるものはあるのか、かすかな期待を抱いて探し続ける。

出会いと別れ、数多の英雄と共に歩み、果てに見たものは———

 

「プリースティスはどこだ。」

 

「……駄目そうだね。」

 

動きが狂った歯車は、狂った原因が消えても回り続ける。

枝が分かれ続けるだけで、成長は止まらない。

 

「源石……。あの子を源石に喰わせられたのなら、何らかの方法で抽出できたのかもねぇ。」

 

未来、既に起こっている事象。擬似的な死者蘇生とも言える。

源石の森より生ずる者たちは、同一の情報を持ってはいるが、本人ではない。

それすらも予測した蛇は、求めているものはないと悟り剣を抜いた。

 

「馬鹿弟子たちは来てないみたいだし、特に未練もないかな。」

 

そうして光は空に昇る(都市に戻る)

残されたものは何も無い。ただ、可能性を見る者たちだけが、突如現れる存在を知っていた。

 

時には異種族の魔王として大陸を治め

時には海より来たる災厄との交流を可能にし

時には複数の獣主の手綱を握った。

 

畏敬の念を込めて、彼らは蛇が名乗ったとおりに呼ぶ。

紫の涙、と。

 





ウティアスのイリワラもいいけど
やはり本家のイリワラの方が好き
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

波は引いて、氷が溶けた(作者:なめなめろう(旧名:ELDERSIGN))(原作:Limbus Company)

▼マジで絶対許さん!!!誰もリアンを救わないって言うなら俺だけはお前を救ってやるからな馬鹿野郎!!!!▼※リアンを救うためだけの逆行もの二次創作です。また、盛大なネタバレを含みますので、リンバスの9章を見終わってから読むことをお勧めします。ご都合主義すぎるのでご了承ください。▼


総合評価:2435/評価:9.26/完結:8話/更新日時:2026年04月04日(土) 04:40 小説情報

都市は都市でも人格ストーリー世界線に来ちゃった(作者:薬指〝笛吹派〝スチューデント)(原作:Limbus Company)

 心の折れた作者による匿名投稿リハビリ作品です、いつでもねじれる準備は出来ているのでどうぞいつでもお越しください暖かい声様。


総合評価:486/評価:8.73/連載:33話/更新日時:2026年06月02日(火) 21:00 小説情報

【急募】『蜘蛛の巣』から生きて脱出する方法(作者:θΟθ)(原作:Limbus Company)

▼『蜘蛛の巣』にぶち込まれてしまった主人公が親方達に絡まれながらも何とか生存の糸口を探しながら必死に生活するお話。▼──尚、その過程で主人公は親方やら子方やらによって死にかけるとする。▼※Limbus Company9章『断ち切れない』のネタバレを含みます。


総合評価:678/評価:8.88/連載:2話/更新日時:2026年06月07日(日) 10:59 小説情報

苦痛を愛せない者の巡礼(作者:プロムン大好きカリジャナリ)(原作:Limbus Company)

現代で精神を病み、自死した女性が地獄を巡り罪と向き合う旅路。▼感想をいただけると励みになります。


総合評価:395/評価:8.92/連載:14話/更新日時:2026年06月08日(月) 19:29 小説情報

アンダーボスはキヴォトスへ(作者:ただの紅茶好き)(原作:ブルーアーカイブ)

都市に転生し、生き残るために親指に所属して死に物狂いで出世したアンダーボスは指令にてW列車に乗り目が覚めるとキヴォトスへ▼アンダーボスは青春都市で平穏に過ごすことができるのか▼本作はLimbus Company9.5章縒り合せ、及びブルーアーカイブ第二部EXロア追跡作戦第一章正午の陽炎までに公開されたストーリーを元に投稿しています。そのため、それ以降のストー…


総合評価:454/評価:8.13/連載:16話/更新日時:2026年05月31日(日) 07:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>