ウティアスの覇気で自爆する血袋はやはりバグでしたね
じゃ、硬血式グローブもらってくね…
雪が積もっていた。
葉が散った木々、所々に散った、赤。
「タルラ……あなたは誰も憎まない……そうよね?」
「そんなの無理だ!」
「憎しみに、囚われないで……。」
林の中に、二人の少女がいた。
一人はドラコ、もう一人はエラフィア。
負傷したエラフィアを、ドラコは担いで歩いていた。
エラフィアの負った傷は誰が見ても致命傷であり、即座に適切な処置を取らなければ死ぬだろう。
「暖かい……雪って、暖かいのね……。」
「駄目だアリーナ、目を閉じちゃ駄目だ!もう少し、後少しで着くから!」
歩んできた道のりは長い。
落ちていく血は、規則正しく雪を赤黒く染めていく。
直に止まるであろう流れを、林の中から歩み出た
「御機嫌ようお嬢様。ちょっと道を聞きたいんだけど、いいかな?」
「退け、邪魔だ……!」
それ以上は続かなかった。
立ちはだかる者が剣を抜いたから?違う。
その構えがあまりにも美しく見惚れたから?違う。
視線は、相手の背後にある簡易テントの中へ向いていた。
十分な医療器具、大量の血液パックがあった。
「その子、助けてあげてもいいよ。勿論条件はあるけどね。」
「何でもする!何だってしてやる!だから、だからどうか……アリーナを救ってくれ……。お願いだ……大切な、友達なんだ……。」
「泣かせるね、早く運びな。医療の心得はあるのさ、まだ間に合うよ。」
「頼む……!」
都合よく医療器具が揃えられ、都合よく扱える者がいる。
罠か、それとも未来を知る悪魔か。ドラコはどっちだっていいと思った。
未来は変わる。
世界を相手にした時、一人の力は微力だが、無力ではない。
運命の歯車に小石を投じた結果が、ここにある。
「タ……ルラ?」
「アリーナ!」
「まだ絶対安静だよ。本職じゃないんだ、落ち着いたらちゃんと診てもらいな。」
変化した流れは、ありうべからざる世界を生み出す。
歪んでいようとも、世界を動かそうとする力が世界を再度規定する。
———
「こんにちは、小指の
「……はぁ、お前の仕業か?腹黒狐。」
「こんこ〜ん……残念なことに、私にも予測できないのさ。流れに沿って溺れないよう藻掻いてる途中だよ。」
所と時は変わり、ある場所にて。
本来は衝突することのない虎と蛇が睨み合っていた。
その場所は、新しく生み出された鉱石病感染者にとっての家。
「それじゃあ、退場してもらおうかね。」
「吐かせ、お前が落ちろや。」
平穏は破砕を伴う爆炎と、空間さえも斬り裂く絶技によって壊れる。
都市の色が動けば斬れて、都市の指が動けば数を持って炎を上げる。
ドラコ、白いコータス、レプロバ、リーベリとフィディアの子供、純血のウェンディゴ……。
家を守るために守護者たちが現れてもなお、虎は死力を尽くして抗い続ける。
「言い遺すことはあるかい?」
「…くたばれや。」
ドラコの炎が弾丸に引火し、裂傷だらけの虎は爆発とともに散る。
最後まで破壊を続け、己を狩ろうとした者たちに傷を負わせ続けた。
「……終わりかな、ここにもないか。」
「どうしたんだ、イオリ。こいつらの事か?」
命令に従い、あらゆる障害と苦難を乗り越え、感染者の家を作り上げたドラコが問う。
それを無視して、蛇は可能性を求めて剣を収めた。
「ままならないね。」
「———なっ。」
切り拓かれたのは空間ではなく、次元。そして時間。
姿が消える。
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数多の軍勢が、一つの種族を滅ぼさんと迫る。
立ち向かう者たちの顔には疲弊が浮かんでおり、抗い続けるのにも限界があった。
後に英雄と呼ばれる者たちの1名を除き、それは例外ではない。
いかなる強者であろうと数には勝てないのだ。
しかし、定めに縛られない都市の訪問者が参戦したのなら。
結果は変わらず、ここにある。
「怖いねぇ、有象無象なら話は早いんだけど、アンタはそうもいかなそうなんだよ。」
「……何者だ。」
見るものが見れば唖然とするだろう。
リターニアの高塔術師、ヴィクトリアの蒸気騎士……この世界で猛者と呼ばれる者たちの亡骸が、一箇所に集まっていた。
一人遺された指導者の前には、4人の戦士が殺意を向け、満身創痍で立っている。
「名乗る名はないさ。」
「彼らの足止め、主な戦闘を担ったのはそこのサルカズ達だろう。だが、決定打を与えたのは君であると私は見ている。少なくとも私には、彼らの連携を超え、未来を見ているかのように隙を突き、あらゆるものを問答無用で断つ君は名乗るに値すると思えたな。」
「長々と語る場では、なかろうよ。」
「……ラケラマリン。気を付けて。テレシス。」
「問題ない。」
「彼らの死に敬意を表し、私もこの命を投げうち、お前たちを殺すため全力を尽くすべきなのだろう。」
フェリーンの側から、鉱物のような何かで構成された化物が生み出され———
「♪———」
「今よ、テレシス。」
「……。」
「無駄だ、君たちでは届かな———」
挽歌が奏でられ、アーツの球体が怪物たちの動きを阻害し、テレシスと呼ばれた男の剣が振るわれた。
怪物の尾に弾かれた剣。フェリーンは言の葉を紡ごうとして———最大の脅威の姿を見失った。
「いつの、間に……。」
「次があるなら、瞬間移動する相手も想定しておくことだね。」
怪物ごと斬り伏せた蛇は、主を求める王冠を懐から取り出す。
そして自分には扱えないものだと知っているため、大人しく未来の英雄
「さて、この王冠だけど……アンタたち
「そなたがそこまで言うのなら、妾には手に余るだろうよ。」
疲れた表情で顔を横に振るバンシーに、蛇は笑顔で返した。
恐る恐る、二人のサルカズが王冠を手に取る。
瞬間、王冠は2つに別れ、兄妹の頭上に浮かんだ。
二人の魔王の誕生という前代未聞の事態を見届け、蛇は微笑み、姿を消した。
求めるものはあるのか、かすかな期待を抱いて探し続ける。
出会いと別れ、数多の英雄と共に歩み、果てに見たものは———
「プリースティスはどこだ。」
「……駄目そうだね。」
動きが狂った歯車は、狂った原因が消えても回り続ける。
枝が分かれ続けるだけで、成長は止まらない。
「源石……。あの子を源石に喰わせられたのなら、何らかの方法で抽出できたのかもねぇ。」
未来、既に起こっている事象。擬似的な死者蘇生とも言える。
源石の森より生ずる者たちは、同一の情報を持ってはいるが、本人ではない。
それすらも予測した蛇は、求めているものはないと悟り剣を抜いた。
「馬鹿弟子たちは来てないみたいだし、特に未練もないかな。」
そうして光は
残されたものは何も無い。ただ、可能性を見る者たちだけが、突如現れる存在を知っていた。
時には異種族の魔王として大陸を治め
時には海より来たる災厄との交流を可能にし
時には複数の獣主の手綱を握った。
畏敬の念を込めて、彼らは蛇が名乗ったとおりに呼ぶ。
紫の涙、と。
ウティアスのイリワラもいいけど
やはり本家のイリワラの方が好き