短編   作:しきょーかい

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ヴァレンチーナロージャ、火傷振動でしたね。
タグを定義するパッシブが恥なの本当に恥だと思いました。

しかし人格ストーリーは、いいぞ……
前作してる人は喜ぶ代物となっております……



シラクーザ 1997年 煙

 

 

「———ここに居たか。」

 

「……何の用だ。」

 

 ぶっきらぼうに帰ってくる言葉。

 ここシラクーザは、昼も夜も曇りの日が多い。ウルサスから吹く湿気った冷たい風と、炎国の暑さの狭間に位置している以上、仕方がないことだ。

 しかし今日は珍しく、夜でも晴れて、月がよく見える日だった。

 

 治める人が変わっても、人はそう簡単に戻ってこない。未だ少ない大通りに立ち、月明かりの届かない、暗黒の路地を見つめた。

 

「俺に、技術を教えてくれた、恩人に会いに来た。」

 

「…………本当にそれだけか?」

 

「あぁ。」

 

 長い沈黙の果てに疑いの言葉がかけられたが、即答する。そしてようやく、影が歩み出た。

 路地の地面近く、煙が空気に溶ける。アーツを使ったらしい。

 

「私は遂に、首を獲りに来たのかと思ったんだがな。昔のお前ならまだしも、今のお前は手に余る。……久しぶりだな、ファウスト。」

 

「———買い被りすぎだ、クラウンスレイヤー。それとも、リュドミラと呼ぶべきか?」

 

「何故その名を……クラウンスレイヤーでいい。……自覚がないのか、それとも謙遜か。どちらにせよ、それも強さだ。」

 

 再び沈黙が場を支配する。

 ふと、路地から吹いた風に乗って、鉄錆の匂いがした。

 

 困惑が表情に出ていたのか、一人納得するように頷いたクラウンスレイヤー。

 ———影の中から、統一感のある赤い服を着た男が3人転がってきた。

 

「少し、顔を見せたい相手がいてな。道中襲ってきたから返り討ちにした。殺してはいない。」

 

「……。」

 

 面倒なことを。

 心の中で呟いた言葉が漏れていたのか、彼女が睨みつけてくる。

 

「どういうことだ?」

 

「都市の法は……先日変わったばかりだが、施行日は過ぎている。」

 

「あの理想を語ったような法律……まさか、本当に暴力が禁止されたのか?」

 

「そうだ。そしてこの男たち……手は出さなかったんじゃないか?」

 

 転がった男たちを見たところ、全員ループスだった。

 しかも龍門から加入した、シラクーザに染まっていない者たち。

 ループスの人口が多いだけあって、シラクーザではループスに合わせたルール、暗黙の了解がある。例えば———

 

「確かにそうだが、私の目の前で『今日はいい天気』と言いながら、尻尾を振った奴らだぞ?」

 

「はぁ……。」

 

 どちらも、シラクーザでしか伝わらない意味がある。

 「今日はいい天気」というのは、曇りの多いシラクーザでは"普通”の意味で使う機会が滅多にない言葉だ。

 「雲より高く()昇ったお前()の魂なら、青()空が見える()んじゃないか?()」……喧嘩前の売り文句として、そこそこ有名らしい。

 ちなみに買い文句は「明日の太陽は拝めそうにない」だ。

 意味は「私は明日も曇り空を見るよ(返り討ちにしてやるよ)」……大体そんな感じだと、親切な一人狼が教えてくれた。シラクーザでの一人狼は、かなりの皮肉や侮辱に使うらしい。

 

 人前で尾を振るのは、シラクーザでなくともあまりいい顔はされない。

 良くも悪くも、感情を表してしまう部位だからだ。無邪気な子どもがやるのなら問題はないだろうが……。

 

 シラクーザで尾を振るのはカモを見つけた時が多く、その次に尻の軽い女を見つけた時らしい。

 勿論、男たちにそんな気があったのかは分からない。だが、違う土地に来て馴染むような努力を怠った点に関しては、間違いなく男たちが悪いだろう。

 それでも、クラウンスレイヤーが手を出したという結果には変わりないのだが。

 

「こいつらは……俺の部下だが、管轄外だ。」

 

「部下?随分と妙なやつを……親指のレイホンだったか。あいつらそっくりの服そ、う……。」

 

 そこでようやく思い至ったらしい。赤いコートを羽織り、胸元に付けられた一つの勲章を持つ自分の姿と転がる男の姿を見返し、慌てて距離を取られた。

 

「……先に言っておくが、この件は俺が、どうにかしておく。」

 

「……何?」

 

「懐かしい相手、かつての仲間、そして師に対する恩を忘れるほど、俺は腐っていない。……はずだ。」

 

 倒れる男たちの首に触れる。口に手を近づけた。

 脈もある、呼吸もしている。気絶しているだけだ。出血もあるが、どれも浅く死ぬことはないだろう。

 煙を生み出されて逃げられる前に、一つ聞いておくことがあった。

 

「クラウンスレイヤー、もしよければだが……。」

 

「断る。私にはまだ、やるべきことがある。」

 

 即答されたが、沈む煙が路地に満ちる前に告げる。

 

「……それが何かは知らないが、ロドスに関することなら、力になれる。この都市……シラクーザでも、ある程度の融通が効くようにできる、はずだ。」

 

「…………悔しいことに、私にとって最悪のカードを切ったな。」

 

「なら、俺は最高のカードを切れた。……そういう事だ。」

 

 煙が晴れた。

 クラウンスレイヤーがフードに次いでマスクを外す。

 

「対価は。」

 

「俺があいつと……イーノと、共に進めなくなった時———」

 

「分かった、これは私の手に余る。」

 

「いいや、お前ならできる。」

 

 断言する。

 レイホンでも、一人狼(ラップランド)でも、部下(テルツォ)でも、ロドスでも……。

 使えるものはすべて使って、二度とあいつが道を踏み外さないようにする。

 

「……。」

 

「……。」

 

 クラウンスレイヤーがナイフを取り出したのに合わせ、クロスボウを構える。

 どれだけ速くても、姿が見えなくとも、確実に打ち込む。薄っすらと、全身から気が立ち昇った。

 

 数秒ほど経ち、刃が鞘に収まった。

 

「やめだ。私はお前みたいな子どもに刃を向けはしない。」

 

「……先に取り出したのに?」

 

「お前があまりにも強情だから、少し脅そうとしただけだ。例の件も……はぁ、飲ませてもらう。」

 

「助かる。」

 

 その言葉を聞き届け、懐から冊子を取り出して渡す。

 

「何だ、これは。」

 

 戸惑う彼女を横目に、レイホンへ新しく1名加入すると伝えた。すぐに返事が来る。

 冊子を開き、ぎっしりと書かれた礼儀、規律、階級、それぞれの一例に目を回している彼女に訪ねた。

 

俺たち(・・・)のカポIIII(クァルト)からだ、コードネームはどうする?」

 

「コードネーム?はっ、ロドスの奴らの真似か?」

 

 嘲るように笑った。そして笑みを消し、冷静に言い放つ。

 

「クラウンスレイヤー。もしこの組織が腐っているのなら……はたまた腐り始めているのなら。———私がこの名で名乗った意味が分かる時が来るだろう。」

 

「伝えておく。一句一言、漏らさずな。」

 

「それは止めてくれ。」

 

「……それなら、まずは敬語から覚えていくといい。」

 

 右手を差し伸べ、差し出された右手を握る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちなみに左手の握手は駄目だ。」

 

「…………細かいな。」

 

 





クラウンスレイヤーさん可愛いよねという話
サルカズローグでは序盤の救世主、今日もまた落ちていく。

ルチオヒースにはおめでとうの言葉を送ります
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