短編   作:しきょーかい

7 / 10

レーヴァテイン復刻ですって。俺ロッシで爆死したんですけど。
超美しいドーセントロージャですって。俺薬指ホンルで爆死したんですけど。

俺ってバッドエンドとか悲しい物語書けるのかな、と思ったので挑戦。
時系列は死んだ。(n度目)



*ビープ音*

 

 

存在を消し去り、世界を超えて、時間をも斬り刻む。

完成された一本の刀。完成したはずの一本の刀(愛しい娘)

不治の傷を抱えて歩む道は、終わりなく、歩を進めるたびに痛みを伴う。

 

誰の仕業か…いや、御業か。

消え去った傷以外の全ては元通りだった。

捨てた仮面も、ここにある。

 

返事のない端末機を仕舞い込み、ただ歩き続けた。

急かすようなビープ音が消えても尚、早まる鼓動は変わらず。

予想できない武器も、変わらない。

 

行く宛は、ない。

終点が存在していては、不可能を可能だと間違えるだろうから。

 

リアン(Rian)

名の意味は、『何も無い』。

Lian()」では、ない。

 

「私はテレジア、貴方の名前は?」

 

だから、この出会いは、断ち切られて終わるのだろう。

 

 

 

———

 

 

 

日が昇り、真上に立つまで約2時間といった所だろうか。

味気のない硬いパンと、塩味の湯を腹に入れ終わった頃だった。

 

「リアン、テレシスと外に出る間、アスカロンに読み聞かせをお願いしたいのだけれど…頼めるかしら。」

 

「あぁ、問題ない。」

 

突如与えられた日常は、幸せであり、苦痛だった。

懐かしく、暖かく、それでいて、俺が喪ったものを彷彿とさせるから。

指令に導かれるまま、あらゆる憎悪と感謝と共に歩んだ道は、果たして断ち切れているのだろうか。

簡単には、断ち切れない。

 

何度も、娘に読み聞かせた物語。

何度も、(ヨシヒデ)に読み聞かせた物語。

 

蜘蛛の糸から出ようと望んだ、蜘蛛の話。

風の吹くままに砂の城を壊し、悲しむ波の話。

どんな話だろうとしてあげよう。友達の蛙を呑み込む、蛇の話もあったな。

都市との繋がりがあってこそ、俺は俺で在れる。

 

「アスカロン、リアンのそばから離れちゃ駄目よ。リアン、アスカロンをよろしくね。」

 

そう言ったテレジアの背後から、幼子と言うには成長し、大人と言うにはまだ早い少女が歩み出る。

短く、雑に切ってある赤紫色の髪が揺れて、徐々に近づいてきた。

テレジアが退出し、部屋を沈黙が支配する。

数十秒、数分、はたまた、十数分。沈黙を破って問いかけた。

 

「さて、聞きたい話はあるか?」

 

「……なんでお前は、私を見る度に泣きそうな顔をするんだ?」

 

「……ふむ。」

 

感情のコントロールが下手になってしまったか。

いつもなら、押し殺していたもの。ちっぽけな、それでいて痛みを覚えたくないもの。

指令に従う上で必須の"それ”は、いつの間にか失われつつあったらしい。

改めて、引き締めるとしよう。

 

この世界にいる者が、心に入り込んでしまってはならない。

空いた穴を、埋めようと考えてはならない。

この苦しみに耐えて、自分の幸せを願わない事こそが、回り回って自分のためになる。

 

「そうやって、仮面を被り続けるのか。」

 

「初めから…俺が存在してから、仮面はずっと着けているんだ。今更外した所で、何も変わらない。———中途半端になるのが一番いけないんだ、アスカロン。一度道を逸れたなら、戻ってはならないように…世界は、都市はそれを許しはしないだろうからな。」

 

「……。」

 

アスカロンは何も答えない。

俺はどうやら、長く話しすぎたようだ。余計なことも話してしまった。

再び沈黙が訪れる。

だが、今度の沈黙の間は短く、破ったのはアスカロンだった。

 

「リアン。」

 

「どうした、アスカロン。」

 

「波は、砂の城(最愛)を壊したんだな。」

 

「そうだ。もう変わる事はない、事実(過去)だ。」

 

(お前)はもう一度、砂の城(未来)を作れると思うか?」

 

「……。」

 

その問いに、俺は答えなかった。答えられなかった。

俺は一切、望んでいないと知っているから。

過度に期待して、幸せを求めて、裏切られて、失って。

望むだけ辛くなると、知っているから。

 

「いや、いい。今まで世話になったな。」

 

「何処に、行くんだ?」

 

「修行だ。師匠の…テレシスの元で学んでくる。当分会うことはないだろう。」

 

「そうか。」

 

いつの間にか、日は沈み始めていた。

直に迎えが来て、彼女とも別れるのだろう。

 

「風と波、砂の城の話。」

 

「……。」

 

「聞かせてくれ。お前の声は、殿下ほどではないが落ち着くからな。」

 

「……あぁ、分かった。」

 

目を閉じるアスカロン。椅子に座り、全てを背もたれに預ける。

まるで眠るかのように、しかし、確信を持って起きてると言える彼女が、望んだ物語を紡ぎ出した。

 

 

 

———

 

 

 

時が経ち、テレジアとテレシスが別れ、バベルという名の組織が生まれ、沢山の人が集まった。

テレジアの掲げる物へと邁進する彼らは、俺のような存在に気をつける心配がないから。

しかし彼女は、俺を忘れることはないらしい。優しさが、激痛を伴って染み込む。

 

 

 

ドクターという人物がやってきて、数ヶ月。

軍事委員会との衝突が増え、俺の心が満たされていく日々に耐えかねて壊れる寸前だった頃、気付いた。

 

互角に見える戦況は、ただの張りぼて。ドクターの天才的な手腕によって、どうにか食らいついている事。

 

日々摩耗していくドクターを、誰も見ていない。

褒め称えこそすれど、本質に潜む苦しみを押し殺していることに気付かない。

テレジアでさえも気付かない。もっとも、ドクターが押し殺す方が上手だった可能性もある。

 

だが、俺は気付いた。

誰も気づかなかったであろうその姿に、本来なら聞く者はいない独り言に。

 

「く……ぅ、私は、どうすればいいんだ……分かっている、分かっているんだ……。」

 

「———ドクター、話があるんだ。」

 

「ッ!?誰だ!!」

 

ピピピッ。

鳴らない筈の端末機から、音が鳴った気がした。

 

 

 

———

 

 

 

惨劇の中(都市)にこそ、俺がいる。

赤黒い液体の上を歩けども、足取りは羽獣のように軽やかに。

死んだ鱗獣のような目を開いたまま倒れる、バベルの者たちの目を閉じて進む。

 

終わりを与えに進む。終幕を望んで歩く。

扉を開けば、死屍累々。血溜まりに沈むサルカズの英雄たち。

何かを守るようにして立つ彼女は、まだ余裕がありそうに見えた。

 

「ふむ、潜んでいる者たちに伝えておく。俺と、彼女の戦いに割り込めば殺す。例外はない。」

 

「リアン…貴方は……。」

 

彼女へと向き合い、カドゥケウスを取り出す。

黒い液体金属は、都市から離れても変わらず予測不可能なまま、武器を生み出してくれる。

それは、俺が今も尚、都市との繋がりを断てていないという事。

 

「———ここでお前を殺せば、俺は再び喪失を味わうだろう。」

「お前が俺に与えた優しさは本物で、お前の仲間たちとの繋がりは、俺に絡みついているから。」

「でも、一人嘆いたあいつに、俺くらいは味方してやってもいいんじゃないかな?」

 

ピピピッ。

ドクターに頼んで、連絡時の音を変えてもらったが、やはり馴染む。

伝えられた言葉は『戦闘開始』。

 

カドゥケウスから黒色の液体が漏れ出し、武器を模り始める。

テレジアの周囲に、高密度のアーツが漂い始めた。

 

「……。」

 

「はっ。よし、始めようじゃないか。」

 

 

 

———

 

 

 

「一。」

 

最初は手斧。ハズレだが、これから運が良くなっていくと信じよう。

背後に周り、斬りつける。

 

「二。」

 

レイピア。当たり。

肩を貫き通し、鮮血が舞い散る。

アーツが俺の体に触れるよりも早く、下がって次の武器が構築されるのを待つ。

 

トロワ(trois)。」

 

スティレット。どうやらあまり、運は良くないみたいだ。

いや、この世界でも、カドゥケウスが使えている時点で運は良いのかもしれない。

手の甲に穴を開けた。

 

「無我夢中。」

 

テレジアはアーツの弾を操りこそすれど、どれも防御の域を出ない程度だった。

致命傷は躱しているが、それだけ。

攻撃に回せば、俺の命など吹くように消えるだろうに。

 

じわりと、スーツの下、シャツに血が滲みていくのを感じる。

重くなる体は、出血によるものか、それとも罪悪感か。

 

「リアン、貴方は……。」

 

「それ以上口を開くな、テレジア。」

 

お前が何かを言えば、揺らいでしまう。

指令に従うことで保ってきた心は、標を失えば壊れて堕ちていくだけだ。

そして、俺の標は、お前じゃない。

 

「お前は俺を殺して、今回の作戦を遂行させることだけを考えるんだ、テレジア。俺もお前を殺して、あいつがどんな道を歩むかを見届け、最後に俺を殺す事を考えている。」

 

「なんで、ドクターに協力したの?」

 

知っていたのか。

そう思ったが、驚きを押し殺す。

 

「過度な期待、不安、板挟み。俺が決断できずに、切り捨ててきた()たち。切り捨てる事を選び、先に進んだものが何処へ行くのか、答えが知りたかった。———その結末が、幸せかどうかも。」

 

「……。」

 

「もし、指令に従わず妻と娘を守っていれば。今になってやっと、気になるな。」

 

ハンマー。ハズレ寄りだが、手斧よりかマシだ。

黒い壁。突如生み出されたそれに阻まれた。

 

「四。五。」

 

「まだ話は終わってないわ。」

 

「いいや、終わりだ。楽しい話はここまでなんだ、テレジア。」

 

突然重みを増したカドゥケウス。見るまでもない、大剣だ。

遠心力を活かし、回りつつ振るう。滅多にしない戦い方だが、即席にしてはやったほうだろう。

 

シス(six)。阿鼻叫喚。」

 

ランス。当たり。

大剣が衝突した場所を狙い、加速して突撃する。

周囲のアーツが寄ってくるよりも早く、次の武器が構築された。

 

「フッ、七。」

 

俺ごと、テレジアを殺そうと現れた残りの英雄たち。

鞭を振り回し、肉を削ぐ。数人避けたが、体勢を崩した彼らはテレジアのアーツに巻き込まれて肉塊と化す。

 

「八。」

 

バスタードソード。

汎用な武器と得意な武器が、最後の方に固まっていたな。

黒い結界にヒビが入る。

 

ヌフ(Neuf)……完了。」

 

鎌。

2つの望を纏わせる。

精神が削れる、次元を越えて、結界を切り裂き、息のある英雄たちを斬り刻む。

血の雨が降った。

 

結界は壊れて、青ざめたテレジアの姿が顕になる。

どうやら、結界はかなりの負担を伴うようだ。

 

「支離滅裂。」

 

「はぁ…、はぁ…。リアン、貴方、仮面が……。」

 

「……あぁ、取れていたのか。」

 

この傷は、隠し続ける必要があった。

1度でも見せてしまえば、俺へ関心を向けてしまうだろうから。

感情が向けば、否応なく感情が向ける事になる。

……情が湧けば、別れる時惜しくも、悲しくもなるだろうに。

 

「だから、仮面を被り続けていたんだ。」

 

「まるで…私を殺すのが惜しいみたいな言い方ね。」

 

ふふっ、テレジアは笑った。

苦笑とも、嘲笑とも受け取れる笑み。

傷口から垂れてきた血を拭う。

 

「血…まるで涙を流しているように見えるわ。心も、体も……。」

 

「テレジア。俺の表面()を撫ぜたところで、今更は変わりはしないだろう。」

 

癒えない傷が熱を帯びる。

顔と、肩から腰へ斬られた、新しい傷。

 

「ここがお前と俺が留まるべき奈落だ。彼は巡行し、新たな地獄へと向かうことを選んだ。」

 

「……一つ聞かせて。貴方は、幸せになれるのかしら?」

 

「……。」

 

「貴方からは、ずっと悲しんでいるのが伝わってきた。自分だけが取り残されて、一人は嫌だと叫ぶ子供みたいに。……私は、貴方が一人ではないと気付けるまで…待つつもりだったのよ。」

 

そう言うテレジアの周りには、もうアーツは浮かんでいない。

カドゥケウスは、鎌の状態から一切変化しない。

……俺もまた、あの時から変わっていない。

 

「……Furioso-Replica.」

 

今まで、打ち、斬り、貫き。いくら攻撃しても、軽傷でしかない。

サルカズの魔王は、この程度で死にはしない。

俺が攻撃した所で、致命傷に届かない。……最後の、この一撃以外は。

 

「苦しまずに殺そう。それが"仲間”への、最大の礼儀だから。」

 

「……。」

 

テレジアは、そっと目を閉じた。

二望。

鎌を持ち上げる腕は重く、それでいて軽い。

何処までも最適化され、何処までも斬り裂く事を目的とした斬撃。

記憶の線をなぞるように、振り下ろす。

 

テレジアの背後から、何かに包まれている者が歩み出た。

黒ではなく、白色の結界。

テレジアの胸元を切り裂き、結界を切り裂こうとした瞬間、俺は見た。

 

「———リアン……さん?」

「———はっ、目を閉じてくれ、アーミヤ。」

 

不安げに耳を曲げた、黒いコータス(アーミヤ)の姿。

空間を斬り裂く一撃がブレる。攻撃の手が止まる。

テレジアの手の中から放たれた黒色の線が、俺の心臓を貫いた。

 

勢いの乗った鎌は、そのまま振り下ろされ続けて。

更にもう一歩踏み込み、体を捻った俺の動きに従って、アーミヤごと狙った刺客を二つに切り分ける。

 

ピピピッ。

 

「……寂しいけれど、お別れの時間みたいね。」

 

「そのようだ。」

 

「また、会えるかしら。」

 

「次はないだろうな。だから、ここでお別れだ、テレジア。」

 

ゆっくりと、しかし確実に、傷口からは血が溢れ出している。

俺が死ぬ場所はここではない。

ここではない何処かを目指して、歩き始めた。

 

 

 

———

 

 

 

「ドクター。…………あの"詩”を、読んでくれないか?」

 

部屋から出る前に、ドクターへ頼んだ。

血溜まりの中で話しているテレジアは、俺へ何も返さない。

 

『……私には、苦痛しかありません。それ以外の何物も望みませんでした———』

 

部屋を出た。

惨劇が行われた廊下を進む。

この部屋から、もっとも近い出口を目指した。

 

「ああ、苦痛よ。お前は……この上なく愛する恋人より優しい。」

 

『私は知っている。』

 

ドクターの声に、乱れた呼吸音が混じる。

扉が開く音も、足音も聞こえる。

 

「私が、ゴホッ、死に就く日にも」

 

視界がぼやけてきた。

カドゥケウスは、何の形を取っている?

 

『……汝は私の心の、奥深くに入り。』

 

『「私と共に整然と横たわらんことを。」』

 

 

 

===

 

 

 

「……。」

 

「……遅かったな。」

 

目の前で、壁にもたれかかる一人の男。

黒いスーツには大量の血が染み込んでいるのが分かり、胸に空いた傷からしてもう助からないだろう。

 

「お前なら……もう少し、早く帰って、来れたんじゃないか?」

 

「……。」

 

「……裏切った者たちのリスト。俺の部屋の、机の上に置いてある。上手く使え。」

 

既に持っている。

あの惨状を見てから、一番最初に向かった場所がそこだから。

 

「お前は……いや。」

 

「……ははっ、ようやく…声を聞かせてくれたな。」

 

「お前にとって、ここは———砂の城に、なれたのか?」

 

俯いていた男が、顔を上げる。

そこには、いつもあったはずの仮面がなかった。

代わりに右目から流れる水と、左目から流れる血があった。

 

「……。」

 

男は答えない。

ただ、男が行動したという事実が物語っていた。

 

「……波の音が、聞こえるな。」

 

「———どう聞こえる?」

 

「……い。」

 

次の言葉を待った。

顔は再び下を向いた。

男の握られた手が開いた。

一本の食器がこぼれ落ちた。

 

それでも、答えを待ち続けた。

ただ、待ち続けた。

 

そして今も、私は答えを待ち続けている。

 

 






『黒色の先割れスプーン』
既に亡き者が持っていたという武器。
たった一つの資料によると、様々な形へ変化したらしい。
『スフォーク?あぁ、フォプーンの事か。』
『最後、これが武器として出てきた時、俺は———』
宿舎と活動室に飾れば、雰囲気を良くする

『返事のない端末機』
既に亡き者が持っていたという端末。
資料によると、今は飾りでしかないが、かつては"指令"を紡ぎ出していたという。
『たとえ指令が途絶えても、これがある限り俺は俺でいられる。』
『……この話はここまでにしようか、アスカロン。今日はどんな話が聞きたい?』
宿舎と活動室に飾れば、雰囲気を良くする

『印のつけられた書類』
赤い印で、顔が塗りつぶされた者たちが載っている書類。
印は全ての書類に付けられている。
『生者が死者に縛られないよう、終わりを用意することにした。』
『終わりが訪れたなら、次は新しく踏み出せるだろ?』
『あの子なら、上手く使ってくれる。』
宿舎と活動室に飾れば、雰囲気を良くする

『壊れた白い仮面』
既に亡き者が着けていたという仮面。
元からこの形であり、"壊れた"というのは正しくないとされている。
『この仮面は、俺とお前達を隔てるたった1枚の、分厚い壁だ。』
「……仮面を外せば、お前は"私"を見てくれるのか?」
『それは……。……お前が俺と同じくらい大きくなってから、外しに来てくれ。』
『お前が無事に育ったなら、俺から仮面を奪えるだろう。』

その下に浮かべていた表情は、今でも鮮明に覚えている。それは———
恋しさ。
宿舎と活動室に飾れば、雰囲気を良くする
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