ティーパーティーに潜む、忠実な駒   作:KuRoNia

65 / 106
鏡を通して ~下~

 世界を滅ぼした。その言葉の重さは、時間が経っても薄れることはなかった。

 むしろ、じわじわと遅れて現実感を伴い始める。

 その場に立つ誰もが、すぐに何かを言うことができなかった。

 沈黙は長く、そして深かった。

 

 鏡の中の三人は、ただ静かにこちらを見ている。

 いや、見ている、というよりも“観察している”に近い。

 ナギサは微動だにせず、ミカはわずかに口元を緩め、セイアは表情の変化をほとんど見せない。

 その視線にさらされながら、黒夜はわずかに息を整える。

 

(……このまま黙っていても意味はない)

 

 そう判断するまでに、時間はかからなかった。

 黒夜は一歩、前に出る。

 手鏡を持つ手を少しだけ持ち上げ、視線をまっすぐに鏡へと向ける。

 

「……そちらの世界を」

 

 一度、言葉を切る。

 

「ナギサ様、ミカ様、セイア様が滅ぼした、というのは理解しました」

 

 淡々と、しかし言葉を選びながら続ける。

 

「ですが、少し引っかかっている事があります」

 

 その場の空気が、わずかに動く。

 ナギサとミカ、セイアも黒夜へ視線を向ける。

 こちら側の三人も、同じ疑問に思い至ったのだろう。

 

「この手鏡を、どこで手に入れたのか」

 

 黒夜の声は落ち着いていた。

 

「そして、なぜそれをこちらの世界に届けたのか」

 

 問いは簡潔だった。

 余計な感情を挟まない。

 ただ、事実を求める言葉。

 

 その瞬間、鏡の中の三人が、同時に笑った。

 

『ふふ……』

 

『あははっ』

 

『くく……』

 

 乾いた、しかしどこか楽しげな笑い。

 それは、先ほどまで語っていた“終末”の話とはあまりにも温度が違っていた。

 黒夜の背後で、ミカが小さく眉をひそめる。

 ナギサの指先が僅かに震える。

 セイアはただ、目を細めて鏡の中の三人を見つめていた。

 

『流石ですね』

 

 鏡の中のナギサが、柔らかく言う。

 

『黒夜さんは、いつだって私たちの欲しい反応をしてくれますね』

 

 その言葉は賞賛のようでいて、どこか“試されている”ような響きがあった。

 

『黒夜はどの世界でも私たちの護衛ってことだよ☆』

 

 鏡の中のミカが、楽しそうに言う。

 軽い口調だが、その奥にあるものは軽くない。

 

『どうやらそうみたいだね』

 

『どの世界の黒夜も変わりないことが分かって、本当に嬉しいよ』

 

 その言葉に、黒夜はわずかに視線を落とす。

 

(……変わらない、か)

 

 それが肯定なのか、否定なのか、自分でも分からなかった。

 鏡の中のナギサが、わずかに姿勢を正す。

 

『それで、黒夜さんが聞きたいことは』

 

 一度言葉を整える。

 

『手鏡の入手手段と、どうしてそちらの世界に送ったか、でしたね』

 

 黒夜は黙って頷く。

 ナギサは、すぐに答えた。

 

『手鏡の方は簡単です』

 

 迷いのない声。

 

『ゲマトリアという組織を滅ぼした時に手に入れたのですよ』

 

 その名前に、こちらの三人の空気がわずかに変わる。

 黒夜もまた、その単語を知っている。

 

(……ゲマトリア)

 

 だが、それ以上に。

 “滅ぼした”という言葉が、あまりにも自然に使われていることに違和感が残る。

 その時、ナギサの背後で、ミカが笑った。

 

『あいつらの最後は呆気なかったよね!』

 

『ベアトリーチェとかいうおばさんの手綱も握れないんじゃ同罪だよね』

 

 まるで世間話をしているかのように肩をすくめる。

 

『滅ぼされても文句言えないじゃんね☆』

 

 そうして放たれた言葉はあまりにも軽い。

 だが、その内容は重すぎる。

 黒夜の指が、わずかに強く手鏡を握る。

 

(……本当に、やったのか)

 

 疑問はもう、疑問ではなかった。

 次に口を開いたのはセイアだった。

 

『そして、そちらに送った経緯だが』

 

 少しだけ間を置く。

 

『話すと長くなるよ』

 

 前置きのように言う。

 その声は淡々としているが、どこか“記憶を辿る”ような響きがあった。

 

『最初はね』

 

 静かに語り始める。

 

『私たちがこの鏡を使って、色んな世界を見て回っていたんだ』

 

『黒夜が平和に生きている世界が、どこかにあるんじゃないかと思ってね』

 

『それこそ、血眼になって探したんだよ』

 

 その言葉に嘘は感じられない。

 むしろ、執着のようなものが滲んでいる。

 

『だが、現実はそんなに甘くなかった』

 

 その一言で、空気がわずかに冷える。

 ナギサが続ける。

 

『先に結果から申し上げますと――』

 

 わずかに視線をこちらへ戻す。

 

『黒夜さん、貴方はこのキヴォトスにおける“イレギュラー”だったのですよ』

 

 黒夜の呼吸が、ほんのわずかに止まる。

 

『どこの世界を探しても』

 

 静かに、しかし確実に言い切る。

 

『貴方は、どこにも居なかった』

 

 その言葉が、静かに落ちる。

 否定も肯定もできない。

 ただ、その事実だけがそこにある。

 

 ミカが、ふっと溜息を吐く。

 

『あの時は絶望したよね……』

 

 遠くを見るような目。

 先ほどまでの軽さは、そこにはなかった。

 

『それでも諦めきれなかった』

 

 セイアが続ける。

 言葉は短いが、その中にある執念は明確だった。

 

『探し続けた結果――』

 

 わずかに、口元が歪む。

 

『とうとう見つけたんだよ』

 

 黒夜の視線が上がる。

 

『その世界は黒夜が私を殺してしまい、精神が壊れてしまった世界だったがね』

 

 その言葉に。

 こちら側の空気が、一瞬で凍る。

 誰も、すぐには反応できない。

 

 “黒夜がセイアを殺した”

 

 その言葉が、あまりにも唐突で、そして重すぎた。

 黒夜は内心あの時に止まれなかった世界も存在したのかと恐怖した。

 だが鏡の中のセイアは、まったく気にしていない様子だった。

 

 むしろそんな事よりも――

 

 “黒夜を見つけたこと”の方が重要だとでも言うように。

 その温度差に、背筋が冷たくなる。

 

(……これは)

 

 黒夜は無意識に思う。

 

(本当に、同一人物なのか?)

 

『他の世界にも低確率ながら黒夜さんが居るという確認ができたことで』

 

 ナギサがこちらを気にせずに静かに言う。

 

『私たちは、アプローチを変えることにしたのです』

 

『自分たちで探すのではなくて――』

 

 ミカが続く。

 

『黒夜が無事で平和に過ごしてる世界から、こっちを見てもらおうってね』

 

 その発想が、あまりにも自然に語られる。

 だが、それは普通ではない。

 黒夜はゆっくりと息を吐く。

 

(……なるほど)

 

 筋は通っている。

 理解はできる。

 だが、納得はできない。

 それでも黒夜はもう一つの疑問を口にする。

 

「……ありがとうございます」

 

 一度、礼を述べる。

 

「ですが、もう一つだけ答えてください。どうやって、この手鏡をこちらの世界に送ったのですか?」

 

 その問いが落ちた瞬間。

 鏡の中の三人の表情が、わずかに固まる。

 

 ほんの一瞬だが、確かに。

 

 空気が変わる。

 ナギサが、わずかに目を伏せる。

 

『……』

 

 しばしの沈黙の後――渋々、といった様子で。

 懐から、何かを取り出した。

 それを、黒夜達にも見える様に掲げる。

 

『この奇跡の遺物の力を使いました』

 

 その言葉と共に見せられたもの。

 それは、カードだった。

 黒夜はミカ達から聞かされていたからすぐに正体が分かった。

 

(……これは)

 

 見覚えがある。あるはずのない、見覚え。

 それは“先生”が持っていたもの。

 

 大人のカード

 

 だがそのカードには乾いた血が、こびりついていた。

 拭っても落ちない、黒ずんだ痕。

 それが、何よりも雄弁だった。

 黒夜の背後で、誰かが息を呑む。

 ナギサか、ミカか、それともセイアか。

 分からないが、その意味は全員が理解していた。

 

(……先生は)

 

 鏡の中のナギサが、静かに言う。

 

『あなた達が考えている通りです』

 

 その声には、わずかな沈みがあった。

 

『ゲヘナとの戦争の時に』

 

 一度、言葉を切る。

 

『私たちの破壊の余波を受けて意図的ではありませんが』

 

 そして淡々と。

 

『結果的には、私たちが先生を殺してしまいました』

 

 静寂が、落ちる。

 逃げ場のない、事実。

 

『その時に形見代わりに回収したものです』

 

 その言葉に、感情はほとんど乗っていない。

 だが、それが逆に重い。

 

『詳しい使い方はゲマトリアを滅ぼした時に学びました』

 

 そしてセイアが引き継ぐ。

 

『このカードで条件を指定し手鏡を世界を越えて送る、という奇跡として使ったのだよ』

 

 その言葉が、静かに部屋に広がる。

 

 奇跡。

 

 その言葉が、これほど重く感じられたことはなかった。

 黒夜は、何も言えなかった。

 ただ、目の前の鏡と――

 そこに映る“世界の終わり”を、見つめるしかなかった。

 

 沈黙は、先ほどまでのそれとは質が違っていた。

 語られた内容の重さに押し潰されるような沈黙ではなく、何かが“見えてしまった”後の、言葉を選ぶための静けさ。

 

 黒夜は、手鏡を握る指先の感覚に意識を戻す。

 冷たいはずの金属が、なぜかぬるく感じられた。

 

 その横で、ナギサが一歩前に出る。

 ほんのわずかな動きだったが、その場の空気が変わる。

 黒夜は、その変化の理由を理解できなかった。だが、ナギサの背中から伝わってくるものが、ただならぬものであることだけは分かる。

 ナギサは鏡の中の三人をまっすぐ見据えたまま、静かに口を開いた。

 

「話はわかりました。それであなた達は、何を隠しているんですか?」

 

 その言葉は、柔らかく発されたにもかかわらず、空気を切り裂くような鋭さを持っていた。

 黒夜は思わずナギサの横顔を見る。

 

 そこにあったのは、先ほどまでの戸惑いではない。

 研ぎ澄まされた、判断のための顔だった。

 

(……なぜ、そう思った?)

 

 疑問は浮かぶが、口には出さない。

 ミカもまた、一歩踏み出す。

 その足取りは軽くない。

 鏡を睨むようにして、言葉を落とす。

 

「正直に言って。何を企んでいるの?」

 

 その声には、いつもの軽さはなかった。

 感情を押し殺しているのではない。

 むしろ、抑えきれない何かを、無理やり押し留めているような響き。

 

 セイアも、わずかに顎を引く。

 

「話の筋は通っている。だが――」

 

「君たちの“目的”が見えてこない」

 

 静かに、しかし確実に問い詰める。

 

「滅んだ世界と共にする最後の慰めとして、別世界の黒夜と語りたかったのかい?」

 

 その問いは、仮定の形をしていながら、実質的には否定だった。

 黒夜はそのやり取りを見ながら、ようやく理解する。

 

(……ああ、そうか)

 

 三人は、すでに“話の外側”を見ている。

 語られた内容ではなく、その裏にある“意図”を。

 その指摘を受けた鏡の中の三人はわずかに、口元を緩めた。

 

 ナギサが、ゆっくりと首を傾ける。

 

『はい?』

 

 その声音は、あまりにも軽い。

 

『そこまでして私たちに疑いを掛けるというのなら――』

 

『何か根拠はあるんでしょうか?』

 

 逆に問い返してくる。その余裕に、黒夜の胸の奥がざわつく。

 

 ミカが、一歩前に出る。

 息を吸い込み、吐き出すように言葉を紡ぐ。

 

「根拠?そんなの決まってるじゃん」

 

 視線は逸らさない。

 

「もし私が、あなた達の立場だったなら――」

 

 拳が、わずかに握られる。

 

「もっと感情が爆発してるはず」

 

 言葉が、少しずつ熱を帯びていく。

 

「黒夜が死んで、それでも諦めきれなくて」

 

 呼吸が荒くなる。

 

「やっと別世界の黒夜と会話できるなんて状況で――」

 

 そこで、声が跳ね上がる。

 

「あなた達は、冷静すぎるの!!」

 

 その叫びは、抑えきれなかった。

 一瞬、部屋の空気が震える。

 ミカはさらに言葉を重ねる。

 

「あなた達の態度は――まるでここが通過点みたいに感じるの!!」

 

 最後の言葉は、ほとんど吐き出すようだった。

 その声には、恐怖が混じっていた。

 だがそれは、後ろに下がるためのものではない。

 前に踏みとどまるための、ぎりぎりの均衡。

 黒夜はその背中を見て、わずかに目を細める。

 

(……ミカ様)

 

 単純な強さではない。

 崩れそうなものを、踏みとどまらせる強さ。

 その指摘を受けた鏡の中の三人は相変わらず、涼しい顔をしていた。

 

 セイアが、わずかに肩をすくめる。

 

『そっちのミカも、なかなか鋭いね』

 

 口元が緩む。

 

『流石は自分たち、といったところかな?』

 

 ミカが楽しそうに笑う。

 

『そうだね~☆流石私だね、褒めてあげるよ』

 

 ナギサが、ゆっくりと目を細める。

 

『いいでしょう』

 

 わずかに顎を引く。

 

『優秀な私たちに敬意を表して、本当の目的を話してあげましょう』

 

 その言葉が落ちた瞬間。

 黒夜達に緊張が走り、自然と指先に力が入る。

 

 ナギサは、何でもないことのように言った。

 

『私たちは――この、自分たちで滅ぼした世界を捨てて』

 

 視線をまっすぐ向ける。

 

『黒夜さんが生存している世界に、行こうと思いつきまして』

 

 その一言で、すべてが繋がる。

 黒夜の思考が、一瞬だけ止まる。

 

 ミカが続ける。

 

『そのために手鏡をそっちに送る必要があったんだよね☆』

 

 セイアが、淡々と補足する。

 

『私たちが先生のカードを使って、そちらの世界に行くときの“道しるべ”としてね…』

 

 その説明は、あまりにも簡潔で。

 そして、あまりにも致命的だった。

 ミカが、反射的に動いて黒夜の手から手鏡を奪い取る。

 一切の躊躇なく、そのまま、床へと叩きつけた。

 乾いた音が、室内に響く。

 

 だが――鏡は、壊れなかった。

 

 傷一つ付かない。

 ミカの表情が歪む。

 

 もう一度。

 

 今度は力任せに叩きつける。

 それでも、変わらない。

 

『ふふふ』

 

 鏡の中から、声が響く。

 

『無駄だよ、こっちのミカでさえ壊せなかった代物だ』

 

『君たちがどうにかできるものじゃないよ』

 

 ミカは、その言葉を無視する。

 そのまま、踏みつける。

 一度、二度、三度。

 力任せに、だが壊せない。

 

 その間ずっと――

 

 鏡の向こうから、笑い声が聞こえていた。

 

『『『あはははははは!』』』

 

 それは、愉快そうで。

 まるで、分かりきった結末をなぞる遊びのように。

 黒夜は、その音を聞きながら、目を閉じる。

 

(……そうか)

 

 壊せないのではない。

 壊せる“段階”ではない。

 ミカが、やがて動きを止める。

 荒い呼吸を隠そうともせず、ゆっくりと、鏡を拾い上げる。

 その顔は、怒りと悔しさで強張っていた。

 

『おや?もういいのかい?』

 

 セイアが、わざとらしく言う。

 ミカは何も答えない。

 ただ、奥歯を噛みしめる音だけが、わずかに聞こえた。

 

 ナギサが、穏やかに言う。

 

『まぁまぁ、セイアさん。あんまり向こうのミカさんをいじめないであげて下さい』

 

 ミカが笑う。

 

『そーそー。向こうの私は弱いんだからさ☆』

 

 その言葉に、ナギサとセイアの空気が変わる。

 怒りを表に出さないまま、温度だけが下がる。

 ナギサが静かに問う。

 

「……それで」

 

 視線は逸らさない。

 

「こちらの世界に来て、一体何をするつもりですか?」

 

 短く、核心だけを突く。

 ナギサは、迷いなく答えた。

 

『決まってます』

 

 柔らかな声。

 

『黒夜さんと、ただ一緒に過ごしたいだけですよ』

 

 ミカが肩をすくめる。

 

『それ以外に目的なんてないしね~』

 

 セイアが、わずかに黒夜を見る。

 

『ああ、でも』

 

 静かに付け加える。

 

『その左目のことは、詳しく聞きたいと思っているよ』

 

 黒夜の指先が、わずかに止まる。

 ナギサが続ける。

 

「つまりこちらの世界に来ても、私たちや黒夜さん、周囲の人々に危害を加えるつもりはない、と?」

 

 一瞬の間。

 ミカが、楽しそうに笑う。

 

『ん~、それはまだ断言できないかな~?』

 

 少し考えるような仕草。

 

 ナギサが、静かに続ける。

 

『そちらに行ってからのお楽しみですね』

 

セイアが、結論のように言う。

 

『問題がなければ、何もしないさ』

 

 その言葉は、保証ではない。

 条件付きの、猶予。

 黒夜は、喉の奥で何かが引っかかるのを感じながら、口を開く。

 

「……では」

 

 声が、わずかに低くなる。

 

「もし、問題があった場合はどうなりますか……?」

 

 その問いに。

 三人は、同時に視線を外した。

 

 テラスの向こう。

 

 人の気配のない、滅んだ世界。

 その光景へと、顔を向ける。

 

 それだけで答えは、十分だった。

 言葉にしなくても。

 理解させるには、十分すぎるほどに。

 

 そしてミカが、穏やかに付け加える。

 

『大丈夫だよ。何があっても、私たちは黒夜には決して手を出さないからさ!』

 

 セイアが軽く笑う。

 

『滅んだ世界でも、黒夜がいるなら耐えられる』

 

 ナギサが、静かに締める。

 

『黒夜さんの命は、保証しますよ』

 

 その言葉は、救いではなかった。

 むしろそれ以外のすべてが、保証されていないことの裏返し。

 

 そしてナギサが、わずかに微笑む。

 

『お互い、同じ顔同じ名前では不便でしょう』

 

『ですので私たちのことは、名前の後に“テラー”と付けてください』

 

 ミカが指を鳴らす。

 

『ゲマトリアの黒服って人が言ってたんだよね☆』

 

 セイアが続ける。

 

『私たちのような状態を、“テラー化”と呼ぶらしい』

 

 その後、ほんの一瞬の間を挟んで三人が改めて名乗る。

 

『私のことは、ナギサ*テラーと』

 

『私はミカ*テラーだよ☆』

 

『私はセイア*テラーと呼んでくれ』

 

 名乗り終えたナギサ*テラーが言う。

 

『私たちにも準備があるので、すぐにはそちらに行けませんが…またお会いできることを願っていますよ』

 

 ミカ*テラーが、軽く手を振る。

 

『じゃ、またね~☆』

 

 セイア*テラーが、最後に黒夜を見る。

 

『ではな、黒夜元気でいてくれよ…』

 

 ――その瞬間。

 

 鏡の光が、ふっと消えた。

 何事もなかったかのように。

 ただの、手鏡へと戻る。

 

 そこに映っているのは。

 

 四人の姿。

 

 だが、その表情は。

 誰一人として、同じではなかった。

 言葉にできないものを抱えたまま。

 ただ、鏡越しに自分たちを見つめ返していた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。