ティーパーティーに潜む、忠実な駒   作:KuRoNia

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勇者と魔王 ~1~

 ミレニアムへの短期留学それは、あまりにも唐突に決まった出来事だった。

 あの会議の場で、流れに押し出されるようにして決定されたそれは、誰かが事前に用意していたものではなく、状況が収束するための“最適解”として選ばれた結果に過ぎない。

 だが、その結果を引き受けることになった黒夜にとっては、紛れもなく現実であり、避けようのない未来だった。

 

 数日間の準備期間を経て、ようやく住居の手配が整ったとリオから連絡が入ったのが昨日のこと。

 

そして――今日

 

「……今日からミレニアムに留学か」

 

 静かな室内に、ぽつりと漏れた独り言。

 

 まだ朝の光が柔らかく差し込む部屋の中で、黒夜は荷物の最終確認を終えたところだった。必要なものはすでにまとめてある。

 持ち物は多くない。元々、彼は環境に依存しない生活をしてきた。場所が変わっても、自分がやるべきことは変わらない。

 

 だが、それでも。

 

「新しい環境に適応できるだろうか…」

 

 小さく息を吐く。

 不安がないわけではない。

 ゲヘナから始まり、トリニティへと移り、そして今度はミレニアム。

 普通の生徒であれば一度も経験しないような経歴を、短期間で踏み抜いている。

 

「……まぁ今さらか」

 

 不安を取り払うように首を軽く振りながら。そう呟くと同時に、気持ちを切り替える。

 

 クローゼットを開け、見慣れた服に手を伸ばす。

 黒を基調とした執事服。

 手触りは滑らかで、無駄のないシルエット。装飾は最小限だが、その分だけ洗練されている。これが、彼にとっての“いつもの姿”だった。

 袖を通し、襟を整える。

 

 次に取り出したのは、黒い手袋。ゲヘナの校章が刻まれているそれを、指先まで丁寧に装着する。布地が肌に馴染む感覚が、どこか安心感を与えてくる。

 

 そして最後に純白の眼帯。

 トリニティの校章が刻まれたそれを、左目へと装着する。

 

 鏡の前に立つ。

 姿見に映るのは、見慣れた自分。

 黒と白の対比が、どこか象徴的だった。

 

「ゲヘナから始まり、トリニティへ、そしてミレニアムか……」

 

 ゆっくりと、鏡の中の自分へ問いかける。

 

「人生何が起こるか分からないと言うが……これは予想できたか?」

 

 当然、返事はない。

 ただ、そこにいるのは“自分自身”だけ。

 黒夜は、ほんの一瞬だけ目を閉じる。

 その時だった。

 

『“予想できる未来程つまらない物は無い、予測できないから希望を持てるのさ”』

 

 背後から、聞き覚えのある声が掛けられる。

 静かで、どこか楽しげな響き。

 

『こっちの私から言われなかったかい?』

 

 黒夜は目を閉じたまま、口元だけで笑う。

 

「……随分昔に言われましたね」

 

 ゆっくりと振り返ることなく答える。

 

「まさに今この状況にぴったりな言葉ですね…」

 

 そして、わずかに声色を変える。

 

「“黒セイア様”」

 

『ふふ…最初は躊躇していたが、黒夜もその呼び方に随分慣れてきたね?』

 

 その言葉に、黒夜は肩をすくめる。

 確かに、以前は違った。

 “ナギサテラー”“ミカテラー”“セイアテラー”と、律義に呼んでいた。

 だが、“テラー”という言葉が持つ意味が恐怖だと知ってから、どうにもその呼び方に違和感が生まれた。 

 そんな時、ミカが軽い調子で言ったのだ。

 

「全員黒っぽいし、色で呼べばいいんじゃない?黒ナギサ、黒ミカ、黒セイアみたいにさ~」

 

 あまりにも雑な提案だった。

 だが、当の本人たちがそれを面白がって受け入れてしまったことで、その呼び方は定着した。

 

「……正直、未だにしっくり来てはいませんが」

 

 小さく苦笑する。

 

「皆さんが気に入っているのなら、それでいいかと」

 

 そう言いながら、わずかに振り返る。

 そこにいたのはセイア*テラーだった。

 壁にもたれかかるように立ち、どこか楽しそうにこちらを見ている。

 その存在は、まるで最初からそこにいたかのように自然だった。

 

「それはそうと」

 

 黒夜が鏡越しにセイア*テラーに視線を向ける。

 

「また勝手に私の家に入ってきたんですか?」

 

 瞳を閉じて困ったように首を振りながら。

 

「黒ナギサ様と黒ミカ様にバレたら、また尻尾を掴まれて振り回されますよ?」

 

 その言葉を聞いた瞬間。

 セイア*テラーの気配が消えた。

 まるで最初からいなかったかのように。

 

「……まったく」

 

 黒夜は軽く肩を落とす。

 

「黒セイア様の侵入癖には困りものですね……」

 

 ため息を一つ。

 それ以上は追わない。どうせ、捕まる時は捕まるのだから。

 気を取り直し、最後の準備に取り掛かる事にして新調した装備を手に取る。

 純白の折り畳み式バリスティックシールドと漆黒のピースメーカー。

 手に馴染む重みが、妙に落ち着く。

 それらを装備し、玄関へ向かい扉を開け外に出る。

 

 外の空気が、少しだけひんやりとしていた。

 するとそこに、見慣れた三人の姿があった。

 

 ナギサ、ミカ、セイア。

 

 ティーパーティーの三人が、並んで立っている。

 

「……」

 

 驚きで一瞬、言葉が遅れる。

 

「ナギサ様、ミカ様、セイア様」

 

 すぐに姿勢を正す。

 

「見送りに来てくれたんですか?ありがとうございます」

 

「黒夜さん」

 

 その声は、いつもより少しだけ柔らかい。

 

「急遽決まったこととはいえ、苦労を掛けてしまって申し訳ありません」

 

「いいえ、今は“予想できない未来”を楽しむことにしたので、大丈夫ですよ」

 

 そう言いながら、視線をセイアへ向け軽くウィンクする。

 その仕草に、セイアの動きが止まる。

 

「……っ」

 

 わずかに頬が赤くなる。

 

「以前君に送った言葉が、今の君を支えている様で嬉しいよ……」

 

 言葉は平静を装っているが、声の奥にほんの少し揺れがあった。

 その様子を見ていたミカが、むっとした顔をする。

 

「んー?なんか黒夜とセイアちゃんだけで通じ合っててズルい!」

 

 頬を膨らませる。

 黒夜はくすりと笑う。

 

「そんな事はありませんよ」

 

 視線をミカへ向ける。

 

「ミカ様の元気な笑顔にも、毎回助けられていますよ」

 

 その一言で、ミカの動きが止まる。

 

「……え」

 

 顔が赤くなる。

 視線を逸らし、小さく呟く。

 

「それなら……よかった……」

 

 そして最後に。

 ナギサが一歩踏み出す。

 

「こ、黒夜さん?」

 

 少しだけ強引に視線を合わせる。

 

「私にも、何か伝えたい事があるんじゃないですか?」

 

 期待、それを隠そうともしていない目。

 黒夜は、ほんの一瞬だけ考えた。

 

 そして――

 

「ナギサ様は普段からしっかりしているので、特に伝えたい事はありませんよ?」

 

「……え?」

 

 その一言で、ナギサの表情が固まる。

 次の瞬間、泣きそうな顔になる。

 それを見て、黒夜は、少しだけ笑った。

 

「すいません。あんなに期待した目をされてしまって、少し意地悪してしまいました」

 

 ナギサの頬が赤くなる。

 

「もう!黒夜さんは私に対して少し辛辣です!」

 

 本気で怒っているのか、照れているのか分からない声音。

 揶揄いすぎたかなと反省した黒夜はナギサの前に、膝をついた。

 そして自然に右手を取りその手の甲へ――軽く口づける。

 

「これで許してください」

 

 わずかに顔を上げる。

 

「私の大事な主様」

 

 時間が止まる。

 ナギサは完全にフリーズしていた。

 顔は真っ赤で言葉が出ないのかパクパクと口を開閉させていた。

 

 その隙に、黒夜は立ち上がる。

 

「おっと、もうあまり時間が無いので私は行きますね!」

 

 軽く手を振る。

 

「皆様、見送りありがとうございました!」

 

 そのまま、背を向けながら歩き出し三人の元を離れていく。

 

(……この間ナギサ様から借りて読んだ小説に、同じようなシーンがあったから真似してみたが、忠誠と敬愛の表現としては、適切なはずだよな?その割には止まっていたけど…)

 

 少し考える。

 

(……少しキザだったかな? まぁ、大丈夫だろう)

 

 完全に、ズレていた。

 そして黒夜が去った後。

 

「……ねぇナギちゃん…今の何?」

 

 ミカのハイライトが死んだ瞳。

 セイアの不機嫌そうな視線。

 両者の無言の圧は強烈だった。

 ナギサは、まだ固まったままだった。

 その後、何が起きたのかは少なくとも、黒夜の知るところではなかった。

 

 

 

 電車の揺れは規則正しく、一定のリズムで体を預けてくる。

 その単調さが、かえって思考を整えてくれるそんな時間だった。

 黒夜は座席に腰を下ろし、片手に持ったスマートフォンの画面を静かに見つめていた。画面にはモモトークの通知がいくつも並び、未読のまま残っている名前の列が、妙に賑やかに見える。

 

 指で一つ開く。

 

 マコトからのメッセージだった。

 軽口混じりの文面。だが、その奥にあるのは明確な気遣いだ。「無事に戻ってこい」「面白い話を持って帰ってこい」――そんな言葉が並んでいる。

 小さく息を吐き、短く返信を打つ。

 

 次に開いたのはヒナ。

 簡潔で、余計な言葉は一切ない。ただ、「無理をしないで」「何かあればすぐ連絡して」とだけ書かれている。それだけで、十分だった。 

 

 カヨコ、ミネ、ヒフミ、アズサ。

 サオリ、ミサキ、ヒヨリ、アツコ。

 

 スクロールするたびに、知っている名前が現れる。その一つ一つに、黒夜は丁寧に目を通し、言葉を選びながら返信を返していく。

 

「……ありがたいですね」

 

 ぽつりと漏れた声は、車内の音に紛れて誰にも届かない。

 温かい言葉ばかりだった。

 送り出す側の、少しの寂しさと、それ以上の期待と信頼。

 それらが、メッセージから自然と滲んでいる。

 黒夜は画面を見つめたまま、ほんの少しだけ目を細める。

 

(帰る場所がある、か……)

 

 その実感は、思っていたよりも重かった。

 かつては、そんなものを意識する余裕すらなかったはずなのに。

 

「――次は、ミレニアムサイエンススクール前~」

 

 アナウンスが流れる。

 黒夜は、ゆっくりとスマートフォンを閉じた。

 返信はまだ残っているが、続きは後でもいい。

 立ち上がり、軽く衣服を整える。

 

 電車が減速し、やがて停止する。

 ドアが開く。

 外の空気が流れ込んでくる。

 

 黒夜は一歩、外へ踏み出した。

 改札を抜け、足を踏み入れる。

 

 ミレニアム自治区。

 

 視界に広がったのは、これまで見てきたどの学園とも違う光景だった。

 高層ビルが林立している。

 ガラス張りの外壁が朝の光を反射し、無機質でありながらどこか洗練された印象を与える。道路は整備され、空間には無駄がない。

 あらゆるものが“機能的に配置されている”ように見えた。

 

 トリニティのような気品ある整然さとも違う。

 

 ゲヘナのような混沌とした活気とも違う。

 

「……これは」

 

 思わず立ち止まる。

 

「ミレニアムは技術が進んでいるとは聞いていましたが……これは想像以上ですね」

 

 自然と視線があちこちへ動く。

 上へ、横へ、奥へ。

 その度に新しい発見がある。

 

 そうしていると唐突に声を掛けられた。

 

「そんなにキョロキョロ見回していると、田舎者だと笑われてしまいますよ?」

 

 柔らかく、それでいてどこか自信に満ちた響き。

 黒夜が振り向くと、そこにいたのは。

 車椅子に座った少女ヒマリだった。

 

「ヒマリさん」

 

 思わず表情が緩む。

 

「もしかして……ヒマリさんが案内の方ですか?」

 

 ヒマリは微笑む。

 

「そうですよ。黒夜さんも、超天才清楚系病弱美少女ハッカーの私に案内された方が嬉しいでしょう?」

 

「そうですね」

 

 黒夜は素直に頷く。

 

「知っている人で安心しましたよ」

 

 一歩近づき、自然な動作で車椅子に手をかけようとする。

 

「あっ、車椅子押しましょうか?」

 

 だが、ヒマリは首を振る。

 

「この車椅子は自分で操作できますので問題ありません」

 

 軽く操作レバーに触れると、滑らかに前進する。

 

「では、早速行きましょうか?」

 

「そうですね」

 

 黒夜はその後ろに続く。

 歩きながら、ヒマリの話が始まる。

 ミレニアムの構造、施設の配置、研究区画の特徴、そして当然のように混ざる自画自賛の延長線。

 

 黒夜は相槌を打ちながら、それを聞いていた。

 途中で何度か話が“ヒマリの偉大さ”に戻るが、それも含めて自然な流れのように感じてくるのが不思議だった。

 そうしてしばらく歩いていると視界の端に、賑やかな光が映る。

 

 それはゲームセンターだった。

 派手なネオンと音、電子音と歓声が入り混じる空間。

 黒夜の足が、ほんのわずかに止まる。

 視線が、そこに吸い寄せられる。

 

 ヒマリがそれに気付く。

 

「黒夜さんは、ゲームがお好きなのですか?」

 

「ええ」

 

 少しだけ照れたように答える。

 

「ただ……あまり上手くはないですね。下手の横好き、というやつです」

 

 ヒマリは一瞬考え、そして言う。

 

「まだ時間もありますし、少し寄って行きましょうか?」

 

 黒夜の表情が、はっきりと変わる。

 

「いいんですか!?」

 

 声に明確な期待が混じる。

 

「では、是非お願いします!」

 

 そのまま、少し早足で中へ入っていく。

 ヒマリはその背を見ながら、ふっと微笑んだ。

 

(……こういう顔もするのですね)

 

 会議で見た、冷静で隙のない姿とは違う。

 年相応の、無邪気さ。

 それが妙に新鮮だった。

 

 ゲームセンターの中は活気に満ちていた。

 様々なゲーム機が並び、人の声と音が絶えない。

 黒夜は興味深そうに見て回る。

 その中で足を止めたのがガンシューティングゲーム。

 ゾンビを撃ち倒すタイプのものだった。

 

「やってみますか」

 

 そう言ってコインを入れる。

 銃を手に取り構えた瞬間、動きが変わる。

 無駄がなく、自然体でどこか優雅だった。

 ヒマリがそれを見て、静かに隣に並ぶ。

 2P側にコインを投入する。

 

「ヒマリさんもやるんですか!?」

 

「もちろんです。私の華麗な射撃テクニックをお見せしましょう」

 

 ゲームが始まる。

 ゾンビが現れ、二人で撃ち倒していく。

 時に取りこぼし、時に被弾しながらも、進んでいく。

 そうして何度もコンテニューを重ねながら、ようやく最後のボスを撃破する。

 そうして流れるエンドロール。

 黒夜は大きく息を吐く。

 

「倒せた……!」

 

 満足そうに笑う。

 

「最高に楽しかったですね」

 

 ヒマリは腕を組む。

 

「ゲームでも天才でしたでしょう?」

 

「え?」

 

 黒夜は画面を見る。

 スコア表示。

 

「でも最終スコアは私の方が……」

 

「さぁ!」

 

 ヒマリが即座に話題を変える。

 

「そろそろ時間が迫って来ていますし、行きましょう!」

 

「……はい」

 

 黒夜はそれ以上追及しなかった。

 振り返ると周囲に人だかりが出来ていた。

 その中に、見覚えのある顔を見つけた。

 先生、ネル、そしてアリス。

 

「あっ、やっぱり黒夜だった」

 

 先生が笑う。

 

「珍しい組み合わせだね。それに随分楽しんでいたようだね?」

 

「いや~お恥ずかしい」

 

 頭をかく。

 

「昔からゲームは結構好きなんですよ」

 

 ネルが前に出る。

 

「オイ!黒夜!次はあたしと対戦ゲームするぞ!」

 

「やりたいのは山々なのですが……」

 

 少し困ったように笑う。

 

「予定がありまして。また次の機会でいいですか?」

 

「チッ!仕方ねぇな……約束だからな!」

 

「はい」

 

 ネルと約束をした黒夜は視線をアリスへ向ける。

 アリスの目は、キラキラと輝いていた。

 

「お久しぶりですね、小さな勇者さん」

 

 その言葉に、アリスはぱっと顔を明るくする。

 

「久しぶりですね!隻眼のタンク!

 それで、あの時の約束覚えていますか?」

 

「ええ、もちろんです」

 

 そして少しだけ姿勢を正して約束を果たす。

 

「隻眼のタンク改め――私の名前は月城黒夜と申します。

 これからよろしくお願いしますね」

 

「はい!」

 

 アリスも胸を張る。

 

「よろしくお願いします!黒夜!」

 

 そのやり取りを見ていたネルとヒマリが、先生に視線を向ける。

 

「あの二人、どういう関係なんだ?」

 

 先生は軽く笑う。

 

「アリスが、黒夜の心を救った勇者って事だよ」

 

 それ以上、先生は語らなかった。

 

 そうしてアリス達と別れ、再び歩き出す。

 今度は寄り道せずに進み、やがて一つの高層ビルの前に辿り着く。

 中に入り、エレベーターで上へ行き、案内された一室。

 

「留学中はここが黒夜さんの家という事になります」

 

 ヒマリがカードキーを差し出す。

 黒夜はそれを受け取り、扉を開ける。

 視界に広がるのはハイテク機器が並ぶ室内。

 

 整然とした空間。

 

 明らかに高級な設備。

 

「……」

 

 一歩踏み込む。

 

「こんな豪華な一室を使っていいんですか?」

 

 ヒマリはあっさりと言う。

 

「問題ありません」

 

 さらっと続ける。

 

「お金の事は気にしないでください。あの下水道に流れている水の様な女が自腹で負担した様ですし」

 

「げ、下水……?」

 

「そこも気にしなくていいですよ」

 

 にっこりと笑っているが妙に迫力がある。

 それ以上は触れない方が良さそうだった。

 一通り説明を受け、ヒマリが帰る準備をする。

 

「本日はありがとうございました」

 

 黒夜が頭を下げる。

 

「いえいえ」

 

 ヒマリは微笑む。

 

「それでは、明日からよろしくお願いしますね」

 

 そう言って部屋を出ていく。

 静寂が部屋を満たした。

 黒夜はリビングへ戻るとそこにはナギサ*テラー、ミカ*テラー、セイア*テラーの三人が椅子に座り、こちらを見ていた。

 ニヤニヤとした表情で。

 

「っ……!」

 

 思わず足が止まる。

 

「その……突然現れるの、どうやっているんですか?」

 

『絶対に教えません』

 

 ナギサ*テラーがにべもなく即答する。

 

『それよりもさ~☆』

 

 ミカ*テラーが身を乗り出す。

 

『随分楽しそうだったね?』

 

 セイア*テラーが目を細める。

 

 室内の空気が、少しだけ寒くなる。

 

「……ええ、まぁ」

 

 黒夜は苦笑する。

 

「少し寄り道をしまして…」

 

『ズルいですね』

 

『ズルい』

 

『ズルいな』

 

 三方向からの圧。

 黒夜は一歩後ろに下がる。

 

「い、いや、その……案内の流れでですね……?」

 

 言い訳は、あまり意味をなさなかった。

 その後、ゲームセンターの内容を詳細に説明させられ。

 どんな表情をしていたのかまで問い詰められ。

 

「ズルい」と何度も繰り返されることになる。

 

ミレニアムでの生活初日。

それは黒夜が思っていたよりも、騒がしい始まりだった。

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