死霊術師でも英雄になれますか?   作:パリスタパリス

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第十五話『死霊術師と対抗戦・参』

「――」

 

 ブラッケンベリーが無言で指先を振るうと、新たな草花が芽吹いていく。

 

 獣、鳥、蛇。

 それらを模した怪物たちが蔓草に編み上げられ――花弁を散らしながら、次々と顕現した。

 生半可な魔獣に引けを取らない威圧感、そして害意に満ちた魔力を孕み、怪物たちは俺の元に殺到する。

 

「オオオオッ!!」

 

 赤鬼(レッドオーガ)が咆哮を轟かせ、迎え撃つように拳を振るった。

 丸太のような豪腕が唸りを上げ、先頭を走っていた獣型を真正面から粉砕する。

 

 樹皮が砕け、茨が千切れ、無数の花弁が爆ぜるように宙へ舞った。

 

――が。

 

 その隙を縫うように、蛇型が音もなく鬼の横合いをすり抜ける。

 狙いは明白。術者()本体だ。

 

「ッ……!」

 

 俺は咄嗟に大盾の骸骨(スケルトン)を呼び出し、眼前へ割り込ませた。

 普通以上の魔力消費を引き換えとした即時召喚。蛇の突進は青錆びた盾に軌道を逸らされ、勢いのままに背後の石柱へ激突する。

 

 しかし、ブラッケンベリーの猛攻はまだ終わらない。

 

 上空から風を切る音。

 反射的に視線を上げると、こちらを目掛けて急降下する鳥の姿。葉の翼が空を裂き、茨の嘴が一直線に迫る。

 

「チッ……!」

 

 咄嗟に地面へ身体を投げ出した。

 直後、先程まで俺がいた空間を鳥型の影が掠め飛ぶ。羽撃きに煽られ、髪が乱れた。

 

 俺は転がる勢いのまま床へ手を付き、体勢を立て直そうとして――

 

「そこッ!」

「――」

 

 少女の鋭い声が響く。

 同時に、彼女の手元から生長した茨の鞭が奔る。

 

 速い。

 避け切れないと判断し、咄嗟に両腕を交差させた。

 

「ぐっ……!!」

 

 魔力を全開に巡らせ、肉体の防御を固める。

 それでもなお、衝撃は殺し切れなかったらしい。棘付きの鞭が腕を打ち据え、焼け付くような激痛が走る。

 制服の裾が裂け、千切れた布片と共に鮮血が舞った。

 

――強い。

 

 赤鬼(レッドオーガ)を攻撃へ回す余裕どころか、一息つく暇すらない。

 あまりにも多彩な攻め筋。そしてあまりにも濃密な攻撃の奔流。どこか悠長で、こちらを見下す余裕すら滲ませていた先刻までとはまるで別人だ。

 

 恐らくは、これが特待生――レイア=ブラッケンベリーという少女が持つ、本来の実力なのだろう。

 

「!」

 

 ふと、背中へ硬い感触が触れた。

 

 石壁だ。

 気付けば、完全に壁際へ追い詰められていたらしい。

 

 逃げ場を潰し、回避方向を制限しながら、少しずつ誘導していたのか。

 これが無意識ではなく計算づくだとしたら――なるほど、大した戦闘センスの持ち主だった。

 

「……」

 

 だが――

 

「終わりッ……!」

 

――詰めが甘いところは、相変わらずか。

 

 勝利を確信した声に、俺は内心で失望する。

 仕留められる(・・・・・・)。彼女がそう確信してしまったのが、手に取るように見て取れたからだ。

 

 人が最も無防備になるのは、まさにそういう瞬間だというのに。

 

今だ(・・)

 

 罠に堕ちた少女の背後(・・)に向かって、俺は呟く。

 

 圧倒的な才能を持ち、自分以外の人間を――少なくとも同世代は殆ど例外なく――取るに足らない弱者と決めつけ、見下し、己が世界から透明化する。

 それを繰り返してきてしまったからこそ、彼女はずっと独りだった。

 

 魔法の練習は独りで出来るが、喧嘩も決闘も独りでは出来ない。

 少なくとも、同格以上の相手と真正面から渡り合った経験など殆ど無いのだろう。

 

 奇妙なことだが――彼女は強力な魔道士であると同時に、戦闘初心者でもあった。

 

 だからこそ、気付けなかったのだ。

 先ほど赤鬼(レッドオーガ)によって投擲された二体の骸骨(スケルトン)それらが(・・・・)背後から忍び寄っていることにすら(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 ……なんとも、つまらない幕切れだ。

 

「な――!?」

 

 異変を察知した瞬間、ブラッケンベリーが弾かれたように振り返る。

 その後、迫る骸骨たちが何ら武器を持っていない(・・・・・・・・・)ことに気付いたのだろう、彼女の横顔から焦りが薄れたのが分かった。

 

 確かに、素手の間合いではまだ届かない。

 彼女ほどの技量があれば、接触される前に茨の鞭で迎撃することは難しくない。その判断自体は、正しい。

 

 正しいからこそ、彼女は思い至ることが出来ない。

 自分は既に――攻撃の射程内(・・・)にいるのだと。

 

「――死の慟哭(スクリーム)

 

 詠唱を紡ぎ、指を鳴らした。

 死体を不死者(アンデッド)たらしめる魔力を熱量に変換し、炸裂させる中級死霊術。

 

 轟音と共に、二体の骸骨が内側から爆ぜる。

 灼熱の衝撃波が荒れ狂い、無数の花弁が玉座の間に舞い散った。

 

 

 

 

 

 

「……脇が甘かったな、特待生」

 

 立ち込める煙の中を歩きながら、嗜めるように言葉を紡ぐ。

 

「演習場で見せた、初見殺しの遠隔召喚とは違う。先ほど投げた骸骨(スケルトン)が何らかの布石であることくらいは、君の視点からでも十分予測できたはずだ」

 

 とりわけ対魔道士戦において、未知の手札による奇襲など珍しくも無い。

 故に相手の一挙手一投足に注意を払い、その狙いを看破すべく思考を巡らせる。少なくとも同格以上の相手とはそのように戦うべきで――しかし彼女は、投げつけられた骸骨を単なる投擲武器に過ぎないと決めつけ、その警戒を怠った。

 

 言い訳の余地などなく。

 この結果は、彼女のくだらない見落とし(・・・・)によるものでしかなかった。

 

 術式の制御を失ったのだろう。

 彼女の生み出した魔獣たちも、いつの間にか消えている。

 

「なあ、ブラッケンベリー。俺は君を、少し買いかぶっていたのか――」

 

 言いかけた、その時。

 白煙の奥で何かが蠢くのが見えた。

 

 俺は目を細め、慎重に煙の向こうを凝視する。

 やがて煙がゆっくりと晴れ、その全貌が露わになった。

 

「……蕾?」

 

――そこにあったのは、人間を丸ごと呑み込めるほどの巨大な蕾。

 

 幾重にも重なった花弁が、硬質な外殻のように閉じ切っている。

 考えるまでもない。これは、彼女が爆発から身を護るために発動した魔法に他ならなかった。

 

 蕾が、ゆっくりと花開く。

 花弁が一枚ずつ展開し――その中心から、レイア=ブラッケンベリーが姿を現した。

 制服の一部こそ煤けているものの、致命傷らしい傷は見当たらない。紫紺の瞳には、未だ衰えぬ戦意を湛えている。

 

「……は」

 

 そう来なくては。

 俺は短く息を漏らし、目の前の少女が為した偉業(・・)に感嘆する。

 

 つまるところ、彼女はあの一瞬で防御魔法を成立させたのだ。

 言葉にすれば簡単だが――爆発を認識し、対応を判断し、術式を構築し、防御を完成させる。その全てを瞬きほどの時間でやってのけるなど、神業と言ってもいい。

 一流と呼ばれる現役の魔道士ですら、同じ芸当を出来る者が果たして何人いるだろうか。

 

 レイア=ブラッケンベリー。

 一人の魔道士として羨望すら覚えるほどに、この少女が持つ才能は規格外だった。

 

――そして。

 

 神々しくも美しい紫紺の瞳が俺を射抜き。

 白磁の如き指先が静かに持ち上げられ――真っ直ぐ、俺へと向けられた。

 

「森羅侵すは花冠の王。万象鎖すは花弁の君――」

 

 厳かに紡がれる詠唱。

 普段の軽薄で粗暴な言動からは想像もつかない神妙な声色。それに呼応するように、彼女の魔力が空間に満ちる。濃密な魔力の重圧に肌が粟立つ。

 

 直感が、警鐘を鳴らした。

 

「やれッ!」

「グオオオオオッ!!」

 

 命令を受けた赤鬼(レッドオーガ)が咆哮を轟かせ、少女に向かって突撃する。

 

 詠唱中を叩く。

 対魔道士戦において、最も基本的かつ有効な定石だ。

 

「ッ!」

 

 しかし、地面から伸びた蔓が巨体の足に絡み付く。

 鬼の怪力で引きちぎれない筈もないが、それには数秒ほどを要するだろう。彼女が詠唱を完成させるまでには間に合わない。

 

 いや、それよりも。

 

「狂い咲く軍勢の暴威を以て、爛漫たる凱歌を此処に捧げん――」

 

 注目すべきは、彼女が詠唱を中断することなく(・・・・・・・・)拘束魔法を発動させたことだった。

 

 恐らくは並列魔法。

 無防備な詠唱中に別の術式を展開し、迎撃・防御を行う高等技術。

 当然ながら、俺のように未熟な魔道士には到底扱えない芸当である。やはりと言うべきか、純粋魔道士としての技量はあちらの方が遥かに上らしい。

 

 ……受けて立つしかない、か。

 

 俺は息を吐き、赤鬼(レッドオーガ)を屈ませる。

 その巨体を盾とするように前へ出し、隆々たる背中に掌を押し付けた。

 

 そして、ありったけの魔力を流し込み、その肉体を強化。

 ブラッケンベリーの攻撃を、真正面から受け止める防壁の構え。

 

「――凶つ黒蓮(ブラック・ロータス)

 

 少女の唇が、結びの一節を静かに紡ぐ。

 

 瞬間。

 白い指先から、漆黒の奔流が放たれた。

 それ――否、それらは一片ごとに濃密な魔力を宿した、無数の黒い花弁による群体。凄まじい勢いで一直線に奔る、空間そのものを蹂躙するかのような花嵐だった。

 

「――」

 

 花弁の濁流が、鬼の半身を容易く吹き飛ばし――その背後で強化を施していた俺の全身に、衝撃の余波が叩きつけられた。

 

 

 

 

 

 

 気付けば、俺の身体は背後の壁まで吹き飛ばされていた。

 

 ほんの一瞬だけ、意識を失っていたらしい。

 少し遅れて、全身の骨が軋む感覚。まともに身体を動かそうとするだけで激痛が走り、視界の端には白い明滅。

 

 赤鬼(レッドオーガ)の方に視線を向ければ、殆ど原形を留めていない肉塊が目に入った。

 ……あそこまで破壊された強力な死体を修復するには、相応の時間が掛かる。この戦闘中に再利用することは不可能だろう。

 ここから先は、鬼抜きで戦うしかないか。

 

 代償は大きかったが――俺が粉々になっていないのは間違いなく、あの巨体が受け止めてくれたお陰だった。

 

「はっ、はぁっ……!」

 

 ブラッケンベリーは荒い呼吸を漏らし、目に見えてふらついている。

 肩を大きく上下させ、額には玉の汗を滲ませ、紫紺の瞳も苦しげに細められていた。

 

 然もあろう。

 あれほどの大魔法を放ったのだ。如何に彼女が規格外の才能を持っていようと、疲労困憊となっていて然るべきである。

 

 事実、満身創痍で隙だらけの俺に追撃は飛んでこない。

 それこそが、彼女の身体に大魔法の反動が残っている証左と言えた。

 

 ……それも、あと十数秒程度の話だろうが。

 

「――なに、まだ立つの」

 

 掠れた声が響く。

 壁へ背を預けながら、それでも立ち上がった俺を見て、ブラッケンベリーが忌々しげに眉を顰めた。

 

「もう、あたしの勝ちだから。諦めて――」

「ブラッケンベリー」

 

 彼女の名を呼び、言葉を遮る。

 壁に背を預けたまま、荒い呼吸を整えながら言葉を続けた。

 

「……今まで、悪かったな」

「はっ」

 

 返ってくるのは、乾いた笑み。

 

「今さら謝罪? もう無駄だけどー……一応、地面に頭でも擦ってみたら? 見るだけ見ててあげるからさ」

 

 そして、皮肉交じりの軽口が続く。

 いつも通りに軽薄ながら、しかしどこか余裕を欠いているような声色。

 

 当然ながら、俺には彼女の言う通りにする気など更々ない。

 

 理由は単純。そんなことをしている体力が惜しいからだ。

 なんせ――本当の勝負(・・・・・)は、まだこれからなのだから。

 

「謝ったのは、君を見縊っていたことに対してだ」

 

 痛みに耐えながら、訥々と続ける。

 

この術(・・・)は制御が難しくてな。君の力量によっては大怪我では済まなくなる危険がある。勿論、対抗戦にはお互いに真剣勝負のつもりで向き合っていることと思うが……学園行事で死人を出すのは、全く以て歓迎すべき事態じゃない」

 

 俺の言葉に、紫紺の瞳が訝しげに細められた。

 

「……何の話?」

「単なる杞憂(・・)の話さ。俺の想像よりも、君はずっと凄い奴だった」

 

 両手を合わせ、体内で魔力を練り上げる。 

 

「出し惜しみして悪かったな。存分に――楽しんで欲しい」

 

 瞬間、空気が変わった。

 

 黒い燐光が靄のように溢れ出す。

 空間に満ちるのは、余りにも濃密な墓土の匂い。

 

 ブラッケンベリーが詠唱を紡ぐ最中に、俺もまた詠唱を終えていたのだ。

 今の俺が持つ中で、最も強力な不死者(・・・・・・・・)を呼び出す詠唱を。

 

「ここからが、俺の全力だ」

 

 床石を突き破るようにして現れたのは、単なる骸骨(スケルトン)とは比較にならないほどの、巨大な()

 丸太の如き白骨の五指が床に食い込み、丘のような頭蓋骨が地中からゆっくりとせり上がる。

 

 やがて完全に姿を現したのは――地面から生えるように佇む、巨大な骸骨の上半身(・・・)

 その眼窩に、どろりと魔力が揺らめいた。

 

 

 

 

 

 

 

 死の越境(フェイタル・クロス)

 教本では、この技術をそう呼んでいた。

 

 曰く――『この術法は、生ける屍に更なる発展性を与えるものなり』。

 

 俺一人では未だ習得し得なかったであろう、死霊術の秘奥の一端。

 複数の死体を素材として組み上げ、通常の不死者(アンデッド)を遥かに上回る性能を持つ不死者(アンデッド)――"改造不死者(ヘテロシス・アンデッド)"を造り出す術法である。

 

 その記念すべき一体目。それが、こいつだ。

 

「出番だ、モーゼ」

 

 巨骸のモーゼ。

 材料は、108体の骸骨(スケルトン)。成人男性の骨格が望ましく、少数ならば女性の骨を混ぜても良いが、子供の骨は使えない。

 

 ……また今度、いつもの墳墓まで骸骨の調達に行かねばならないだろう。

 その手間を思い浮かべて若干億劫になりつつも、俺は巨大な頭骨を見上げる。

 

「ォォ……」

 

 その口からは、地鳴りのような低音の声。

 赤鬼(レッドオーガ)をも遥かに越える巨体ゆえ、歩行どころか満足に直立することも出来ない。

 ここが屋内だから、という理由ではなく、肉体構造的に不可能なのだ。

 ゆえにモーゼは地面から――正確には、地中に開いた"影の霊園(プライベート・セメタリー)"から――生えるように上半身のみを顕現させる必要がある。

 

 機動力に難があるのは、明確な弱点と言えるだろう。

 そして、もう一つの欠点としては――

 

「~♪」

 

 その時。

 モーゼが赤鬼(レッドオーガ)の半身を掴み上げ、おもむろに齧り始めた。

 

 無論、俺は命じていない。

 ばき、めき、と骨肉が砕ける音が響く。

 

「……おい、こら」

 

 俺は眉を顰める。

 生まれたてだからか、あるいは108体分もの残滓が混ざり合っているせいか……こいつは、著しく知性が低い。

 というか、幼い(・・)のだ。幼児のように、なんでも口に入れたがる。

 

「勝手なことをするな」

「ンォ……」

 

 叱られたモーゼが、名残惜しそうに鬼の死体を吐き出した。

 

 ……俺に忠実なのが、唯一の救いか。

 その締まらない姿を見て、思わず溜め息が零れそうになる。

 

「はっ」

 

 その姿を見て、ブラッケンベリーが嘲るように鼻で笑った。

 

「何かと思えば……でかいだけの低能な骸骨が切り札ってワケ? そんなもの――」

 

――瞬間。

 

 空気が爆ぜた。

 

「……ッ!?」

 

 何のことはない。

 モーゼの裏拳(・・)が、ブラッケンベリーの眼前を掠めただけのことだ。

 

 僅かに遅れて衝撃波が炸裂し、その黒髪を吹き乱す。

 彼女は戦慄するように目を見開き、大きく飛び退いた。

 

 ……でかいだけ、か。

 どうやら彼女は、巨大さが齎す暴力を過小に評価しているようだ。

 華奢な女性の身体で幾人もの巨漢を薙ぎ払ってきた、彼女らしい思い上がりだった。

 

「――振り子の原理を知ってるか? その先端速度は、糸の長さに比例する」

 

 俺はモーゼの巨腕を見上げながら言う。

 

 振り子の長さ。

 人の身体に例えれば、それは即ち腕長(・・)だ。

 

「そして、殴打の威力は速さと重さで決まる。至極単純な理論だな……ここから先は分かるだろう」

 

 淡々と、続ける。

 

「でかいだけの骸骨であることは否定しない」

 

 隠された能力など存在しない。

 技巧や技術など介在しない。

 

 あるのは、ただ純粋な質量と膂力だけ。

 

「だが侮るな。正真正銘、こいつが俺の切り札だ」

 

――複数の死体を継ぎ合わせ、一つの強大な不死者を生み出す"死の越境(フェイタル・クロス)"。

 

 言葉にすれば単純だが、不死者(アンデッド)の魔力的構造は複雑だ。

 考えなしに死体を繋いでも、まともに動くことすら出来ない。必然的に先人の死霊術師が遺した設計図(レシピ)が不可欠となる。

 要するに、改造不死者の造成には"死の越境(フェイタル・クロス)"の魔法、材料となる死体、そして設計図の三つが要るということだ。

 

 無論、いつかはオリジナルの設計を見出したいものだが……それはずっと先の話になるだろう。それが出来て、初めて死霊術師は一人前と言えるらしい。

 

 そして、あの教本に載っていたレシピは三つ。

 その中で俺の手持ちを材料に作れたのは、たった一つ。このモーゼだけだった。

 

「死ぬなよ、特待生。死霊術と死者の蘇生は、似ているようで全く違うからな」

 

 巨腕が横薙ぎに振るわれる。

 常人ならば目で追うことすら出来ない速度の一撃が、暴風となって玉座の間を吹き抜けた。

 

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