Exist of If Dream[Limited] 作:一般通過みゅーたいぱー
「は?星を救えって...なに?」
『あの隕石を壊してくれ!その楽器で!』
「無理無理!!第一楽器を床に叩きつけるのはよくないしやるとして演出用だからな!?」
人の身一つで何ができるっていうんだ!?
人の可能性検知できる金属付けてるならまだしも、俺はただの一般人だぞ!?
『違う違う!音で壊すんだ!』
「は?音?」
素人からすれば「ベースって正直いらなくない?」と思われても仕方がない。
実際、音だけを聴いても派手に前へ出る楽器ではないし、ギターやボーカルほど耳に残ることも少ない。
ぶっちゃけ、始める前の俺もそう思っていた。今でも曲によっては「本当に鳴ってる?」と思うくらい、目立たないことがある。
...でも、それはベースの音が重要じゃないという意味じゃない。
ベースはドラムと並ぶリズム隊だ。目立たない低音で曲全体を支え、グルーヴを生み出し、ほかの楽器が気持ちよく鳴る土台を作っている。
つまり、ベースは聴こえない音じゃない。意識されにくいのに、なくなった瞬間に誰もが違和感を覚える音なのだ。
手元のベースを見る。
赤いボディがケミカルな色の空を反射して、少し紫がかって見える。
「やれるか?」
答えるわけもないが、そう問いかけた。
心なしか、ボディが一瞬光った気がした。光の反射かもしれない。
「...力を貸してほしい」
『俺たちはあんまり戦力にならないぞ?』
「ベースは単体じゃそこまで目立たない。バンドに囲まれて初めて存在を認識できると言っていい」
少々暴論かもしれないが、ベースのソロパートはそういうものだと思っている。
あまり目立つ機会がないからこそ、目立つときは集団の中にいるときだけ...と、持論ではあるが。
「...よし、やるぞ」
『OK!!』
ちゃんとしたバンドでもなければ、リズムの要であるドラムもいない。
けど、バンドの体をしてれば、ベースが目立つのに十分な条件は揃ってる。
「...っ」
集団から一歩前へ。
ベースのヘッドを隕石のほうに向け、ひたすらに弦を弾く。
スラップとも言えない奏法。カッコよさのかけらもない。
「...届け...っ!」
空気が乱れた、そんな気がした。
その感覚の直後、隕石のスピードが少しだけ遅くなった。
届けと願うたび、歪んだ空気が隕石と衝突して、隕石が減速し、さらには隕石を押し返し始める。
やがて、とてつもない轟音とともに隕石が破裂した。
その欠片は一つも星に落ちることなく、ゆめみた星は未曽有の危機を脱したのだった。
「この世界は...何かがおかしい」