Exist of If Dream[Limited] 作:一般通過みゅーたいぱー
「やっぱり、何かがおかしい」
隕石を破壊したとき、この場所には1つもかけらが落ちてこなかった。
そこまで近い距離じゃないとはいえ、1つぐらい掠るべきだった。
それが、1つもない。
まるで、何かに守られているかのように。
「想像できることは...実現する」
誰かのセリフを借りながら、軽くジャンプをする。
同時に、肩甲骨のあたりから翅が生えているイメージを浮かべ、小刻みに動かす。
あとは...。
「...っ、あんた、次のジャンプのタイミングで、俺の背中を思いっきりどついてくれ!」
『えぇっ!?』
「早く!ケガしたとてあんたを恨む気はない!」
『そ、そういうことなら...とりゃあ!!』
背中にものすごい勢いで叩き込まれる触手。
その衝撃で軽く吹っ飛び――宙に舞い上がる。
(動かせ、もっと、もっと!!)
羽を動かすイメージを生み出しては実現していく。
ここは現実ではない、かといって夢でもない。
だが、ベースの完全模倣召喚ができたのなら、できるはず。
幼いころから空を飛ぶことが一番の夢だった俺の心を思い出せ!
「――っ...!!」
新幹線ぐらいのスピードを身に受けながら、空へと飛んでいく。
が、突然。
「がっ...!?」
伸ばした右手が何かに触れて、そんなことを感じる間もなく、その何かに全身で突撃した。
その場所には何もないのに、まるで壁があるかのように、硬かった。
「っ...てぇ...――っ!!」
頭を押さえようと右腕を動かした途端、とんでもない激痛に襲われた。
確実に折れている、直感でそう思った。
確か小学生だかのとき、校庭に生えていた大きな木に登ろうとして、しっかりとした根っこに腕を思いっきりぶつけた感覚と一緒だ。
その時の診断は骨折ですねぇといわれたのをよく覚えている。
「...っ、ふ...ぐ...ぅ」
痛みをこらえるために息を整える。
痛みを感じなくなる呼吸法があった気がするが、我慢してるだけじゃんと大冷笑をした記憶がある。
しかし、息を整えた結果冷静になった頭でよく考えた。
そもそも飛べることがおかしいこの世界で、骨折なんて起きようもない。
物凄い勢いでぶつかったうえで、右腕をクッションに全身を強打したという認識が、幻肢痛に近いものを発生させていると考えられる。
だとするならば、動かしても問題はない。
「折れてない、折れてない...」
つぶやきながら腕を動かせば、すんなり動いた。
当たり前だ。元から折れていないのだから。
ようやく合点がいった。
ここは現実に限りなく近い、しかし夢ではない。
仮想現実が一番近いだろうか。
何でもできる、何にだってなれる。
だったら、できるはず。
人は思い込みで感覚の制御ができるのだという。
では、感覚が直結するこの世界ではどうなるか。
さっきは壁があるかもしれない、という思い込みから壁に激突したわけだが、今度はそうはいかない。
最初から壁などない。
だから、俺はこの空を自由に飛んでいける。
再び、羽を動かす。
見えない壁に足を置く――いや、今俺が生み出した足場に足を置く。
そして、強く蹴り出す。
「この空は、自由だ!!」
見えない壁をすり抜けた。
その先は宇宙だった。
ゆめみた星と同じような惑星がいくつも並んでいる。
その中に一つだけ、ノイズがかって見えない星があった。
「...いけるか」
一直線に突っ込むと、ノイズに飲み込まれた俺の体は急速にスピードを落としていく。
そして、意識も一緒に落ちていった。