稲荷様は平穏に暮らしたい2199 作:名無しのペロリスト
隊列を組んで亜空間ゲートに突入する。
通常空間に出ると、情報通りガミラスの大軍勢が集結していた。
その数は一万を越えており、こっちはたったの十隻である。
まともに戦ったら潰されるのは避けられないため、全速力で中央突破を行う。
幸い敵は密集していて、迂闊に発砲すると同士討ちの危険がある。
なので、攻撃は散発的だ。
私たちはヤマトを中心にして、一本の槍のように集まる。
全方位をショックカノンやミサイルや魚雷で薙ぎ払いながら、真っ直ぐバラン星に向かって突っ込んでいく。
螺旋のように回転しているので、まるで巨大なドリルである。
宇宙は上も下もなく、艦隊は人工重力が発生しているので、グルグル回っても三半規管に負担をかける以外は大丈夫だ。
やっぱりグレンラガンじゃないかと心の中でツッコミを入れ、ノーノー宇宙戦艦ヤマトと否定する私が二人居る。
少なくとも自分が存在している世界はヤマトだし、現時点では巨大ロボットに変形していない。ママエアロとしておく。
とにかく敵が多すぎて、何処に撃っても必ず当たる。爆発が途切れることがない。
また螺旋防壁の消耗具合を見て、前列と後列を入れ替えて対処する。
艦隊の被害を、できる限り減らす。
螺旋力も加算されているので、早々破られることはない。それでも、念には念を入れて損はない。
だが流石に戦いは数だよ兄貴と言うだけはあり、エネルギーの消耗が激しい。
当たりどころが悪かったり、たまたま攻撃の激しかったりと、運がない艦もいるようだ。
それでも、左舷に被弾の報告は入っていない。
犠牲もなくバラン星に辿り着いて、作戦目標は達成した。ヨシとしておく。
その後はバラン星に突っ込み、沈んだと思わせて敵艦隊を油断させる。
頃合いを見て急速浮上し、近くにあったもう一つの亜空間ゲートに全速力で向かう。
最後に方向転換を行って重力アンカーで固定し、螺旋砲をバラン星のコアに撃ち込んだ。
その際にアンカーを解除し、反動でゲートに勢い良く飛び込むのだった。
何と言うか、滅茶苦茶やりおるだ。
しかし、おかげで大マゼラン銀河まで来られた。
ユリーシャさんは、ようやく故郷に帰ってきたのだ。
亜空間ゲートも破壊したことで、ガミラス艦隊も当分の間は足止めされて動けない。
これで、悠々と停戦交渉を進めることができると喜びたい。
だがまだ、ガミラス本星には到着していないため、決して油断はできなかった。
このあとはブリーフィングルームで作戦会議を行うが、この先の進路で七色星団を通ることに決まりかける。
だが私はここで、ビシッと手を挙げる。
「嫌な予感がするので迂回ルートにしましょう。
船足が速い艦が揃っているので、この距離なら敵が気づいて追いつく前に、ガミラス本星に到着するはずです」
鶴の一声ならぬ、狐の一声でルートが変更された。
七色星団を通った際に、何が起こるかは知らない。
だが、十中八九でろくなことにはならないだろう。
場合によっては敵の待ち伏せに遭い、味方艦隊に被害が出る。
しかし、別の道に行く私たちにはどうでも良いことだ。
私の直感は一度も外れたことがない。
なので意見もすんなり通り、敵が追いつくより先にデスラー総統をわからせれば勝ちということになる。
七色星団を迂回して、ガミラス本星を目指すことになった。
その後の航海は順調に進む。
やがてガミラス本星に近づき、最後のワープに入る。
私以外の全員が宇宙服を着用し、総員第一種戦闘配置のまま、殴り込みという停戦交渉に備える。
通常空間に戻ると、ガミラス本星とイスカンダルが視界に入った。
だがここで嫌な予感がした私は、大声で叫ぶ。
「全艦! 防御陣形! 螺旋防壁を最大出力! 前方に集中させてください!」
「了解! 防御陣形を取り、螺旋防壁を前方に集中させます!」
私の突然の行動には慣れているので、すぐに全艦がヤマトを中心に集まってくる。
そして複数の波動防壁が前方に重ねがけされ、分厚い盾のようになった。
「ガミラス! イスカンダルのポイントA1に高エネルギー反応!」
こちらの準備が整った直後に、オペレーターが異常を感知して報告した。
そしてガミラスが放った波動砲らしきモノが高速で飛んできて、凄まじいエネルギーの奔流と螺旋防壁がぶつかり合う。
衝撃で艦が揺れたが、盾が破られることはなかった。
先に向こうのエネルギーが尽きたようだ。
攻撃が止んだので、螺旋防壁を解除するように指示を出す。
「アレはそう何度も、連発できるものではないでしょう!
次弾が装填される前に、ガミラス本星のデスラー総統府を抑えます!」
沖田艦長も同意見のようだ。
全速力でガミラス本星を目指すことに決まったのだった。
だが当然、敵も本土防衛の戦力を用意している。
艦載機を出撃させて時間を稼ぐつもりのようだ。
こちらも同じく無人機を展開して、追撃を防ぐ。
さらに護衛艦隊に殿を任せ、ヤマトは惑星に降下していく。
目指すはデスラー総統府だ。
一直線に突き進み、やがて首都に侵入する。
ヤマトを止めようと駆けつけた艦隊を、51センチショックカノンで薙ぎ払っていく。
螺旋防壁を前方に集中させ、進路妨害を行う敵艦の横っ腹をブチ抜く。
そのままの勢いで総統府の壁を破って、艦首が突き刺さる。
螺旋エンジンは波動エンジンを純粋に強化する以外に、ドリル的な意味で突破力や貫通力が底上げされるのだ。
並大抵の手段では止められない。
本当に真田さんはとんでもないモノを作ってくれた。
私の毛のせいもあるし、地球連邦には必要で役に立っているのでヨシとする。
とにかく突入隊を編成してデスラー総統を捕縛しようと動くが、一歩遅かった。
総統府の上部が分離して、ロケットのように加速して大気圏外に飛んでいったのだ。
直感ではデスラー総統はアレに乗っているので、突入しても無意味だろう。
しかも、巨大構造物を遠隔操作で降下させて、ヤマトを葬ろうしてきた。
首都が壊滅するのもお構いなしとは、覚悟が決まりすぎている。
もはやガミラスも戦いどころではなく、誰もが急いで避難しようして大混乱に陥っていた。
しかし、残念ながら間に合うはずがない。
「構造物の落着まで、あと二十分!」
ヤマトのメンタルモデルが警告を発し、すかさず沖田艦長が命令を出す。
「螺旋砲、発射準備!
バレラスに落下する質量を破壊できるのは、螺旋砲をおいて他にない!」
言葉ではなく行動によって示す。
そして今は誰もが、最善を尽くすときだ。
ヤマトはヤマトのやるべきことをやるために、すぐさま螺旋砲の発射準備を行う。
狙いを定めて、アンカーで艦体を固定してエネルギーを充填し、発射する。
青い光が螺旋軌道を描いて突き進み、上空の巨大質量建造物を残骸も残さずに破壊し尽くした。
だが、それだけでは済まない。
螺旋砲は、さらに突き進んでいく。
そしてデスラー総統が乗っていると思われる巨大宇宙船を貫き、大爆発を起こした。
停戦交渉がご破綻になってしまったが、敵の高エネルギー反応を感知したのだ。
敵もヤマトに向けて、再び波動砲を撃とうとしていたのは間違いなかった。
殺らなきゃ殺られるので、先手必勝も仕方ない。
色々あったが結果的に、ヤマトはガミラスの首都を守った功績により、講和を有利に進められることになったのだった。
その後はガミラスが神として崇める聖地、イスカンダル星に向かう。
そこで講和会議を行うことになった。
デスラー総統に置いていかれた青い肌の偉い人たちが勢揃いし、こっちは基本的に行き当たりばったり頭が悪い地球連邦大統領が出席する。
発言権はあっても政治に関しては素人なので、何も喋らずにニコニコしているだけで、ぶっちゃけ置物にしかならない。
だが他にも沖田さんや他の艦隊の艦長さんや、この日のためについて来てくれた地球連邦の役人たちに参加してくれるので、問題はないだろう。
双方が意見を出し合って進めていき、調整役としてイスカンダルの女王様であるスターシャさんが取りまとめる。
何故かこの場で一番偉い私が最終チェックを行うという、変な会議になった。
取りあえず全ての項目に目を通して確認して、問題はなかったのでヨシとしておく。
ガミラスにも、神様の前で嘘偽りのないことを誓ってもらった。
講和の契約が破られることは、当分の間はないだろう。
絶対とは言えないけど、その時はその時に考えればいい。
(難しいことを考えるのは苦手だし、餅は餅屋に任せよう)
この八年で返還が行われなかった、捕虜についても交渉を進める。
しかし膨大な人数なので、事前に資料を用意はしてきたが目を通すのも一苦労だ。
一朝一夕で決められるものではないので、また後日となった。
とにかく、こうして地球連邦とガミラスは停戦して講和し、同盟国となる。
仲良く握手をして会議を終えるのだった。
ようやくめでたしめでたしで、あとは地球に帰るだけだ。
そう思ったのだが、スターシャさんは何か言いたいことがあるようだ。
これまで調整役の職務を全うしていたが、私を真っ直ぐに見つめて悲しそうな表情で口を開く。
「貴方がたは、波動エネルギーを兵器に転用してしまった」
確かに波動砲を撃っていた時代もあったけど、今は螺旋力に切り替えている。
兵器に対してクリーンで安全とは決して言えないが、少なくとも宇宙を破壊することはなくなった。
そのことについて私が発言する前に、妹のユリーシャさんが前に出る。
「でも、そうしなければ地球連邦はガミラスに滅ぼされていたかも知れない」
十隻全てに大口径の螺旋砲が積まれているため、イスカンダルの女王としては納得出来ないのもわかる。
しかし、ユリーシャさんは違うようだ。
「それに彼らは、波動エネルギーを進化させた。新たに螺旋力を創り出している。
私たちイスカンダルには、決してできなかったこと。
兵器に転用しているのは変わらないけど、イナリなら正しい道を選んでくれる」
何だから知らないうちに、めっちゃ信頼されていた。
東京観光や食べ歩きなどに付き合ったりと、女友達的なポジションだし、地球連邦大統領だからかも知れない。
「変わりましたね。ユリーシャ」
「私が変われたのは、イナリや皆のおかげ。
そのことにも感謝している」
不思議ちゃんなのは前からだが、今はイスカンダルの使命を果たすだけではなく、ちゃんと自分の意志で行動している。
今回の航海でもヤマトクルーと親睦を深めたし、ユリーシャさんは前より明るくなった。
「それに我々を救ったのは、螺旋エネルギーを使った大砲であったと、申し添えておきます」
講和会議に参加してくれた大ガミラス帝星の副総督、レドフ・ヒスさんが恭しく補足してくれた。
そのような意見を聞いて、スターシャさんは驚きと共に喜びも感じているようだ。
彼女は少しだけ迷ったあと、真剣な表情で私に話しかけてくる。
「わかりました。イナリ、貴方を信じます」
どうやらスターシャさんが、これ以上口を挟むことはないようだ。
私も姿勢を正して、はっきりと発言する。
「私も、地球連邦大統領を務めている間は、螺旋砲を悪用しないことを誓います」
元から悪用する気は全くないし、螺旋力や螺旋砲は自衛のための力だ。
侵略や支配のために使う気など毛頭ない。
他の異星文明は領土拡大や戦争行為に熱心なようだ。
しかし私からすれば、仕事が増えるので百害あって一利なしである。
それでも増え続ける国民の受け入れ先や、資源確保は必要だ。
けれど宇宙は広いので、どの国の領土でもない惑星など、文字通り星の数ほど存在する。
なので未開の宙域を調査開拓して地球連邦を広げていくのが、一番気楽であった。
今回もガミラスと同盟を結んで、八年に及んだ戦争の賠償のために地球連邦の領土に隣接する無人惑星を、結構な数もらうことになった。
私としてはそんなにいらないが、うちの偉い人たちはもらえるもんはもらっとけなので、そういうことならと渋々承諾する。
(私は平穏に暮らしたいだけだし、面倒な仕事が増えるのは勘弁して欲しいんだけど)
早いとこ地球連邦大統領を辞めたい。
民意で続けているが、ガミラスとは同盟を結んだのだ。
一応、戦争は終わったと言える。
しかし、まだガトランティスとボラー連邦が残っている。
万が一に備えた軍拡は、まだまだ止められなさそうだ。
取りあえず周囲の異星文明が戦争を辞めない限り、私が地球連邦大統領を辞めさせてもらえる日は、多分来ないだろう。
民意なので、しょうがないのはわかっている。
それでも頭があまり良くない元女子高生の私には、明らかに荷が重い。
いつか致命的な失敗をする前に、さっさと辞めたいのが本音なのだった。
その後はガミラスだけでなく、イスカンダルとも正式に同盟を結ぶ。
住民が王族だけの星とはいえ、一応は超文明国だ。
それにユリーシャさんとは友人なので、縁は大切にしたい。
あとはガミラスとの交渉や仲介も通信越しだけでは不便なので、地球連邦軍のブルーノアを五隻残して、彼らと希望者と政府関係者に任せる。
重要な役目なので給料は高いが、責任重大だ。
古代守艦長が代表として、今後は地球連邦とイスカンダルとガミラスの架け橋になってもらう。
なお、弟さんのほうはいつの間にか森雪さんと仲良くなっていたようで、結婚するのも時間の問題だろう。
他にも航海中に仲良くなった人が大勢居て、私は素直に祝福の言葉を送る。
しかし同盟に関しても大雑把には決めたが、細かいところまでは手が回らない。
これから色々詰めていく必要があるため、やはり地球連邦の交渉役は必要だ。
幸い地球とはいつでも通信を繋げるし、共同の亜空間ゲートを建造すれば行き来が楽になる。
不便なのは最初だけだし、大規模プロジェクトは既に動き始めている。
もし停戦が叶ったら、最初から残る人が出るつもりで人員を編成していたので問題はない。
ガミラス本星かイスカンダルに大使館や基地を作られせてもらい、当面はそちらで暮らすことになった。
そういうことで、私たちは地球に同盟締結の連絡を入れる。
あとは胸を張って帰るだけだ。
ちなみにユリーシャさんが付いて来たが、彼女が言うにはイスカンダルに残っても退屈だし、仲の良い友人と離れるのは寂しいらしい。
あとは強大な軍事力を持つ地球連邦が暴走しないように見張るとは言っているが、食べ歩きをしたいのが一番の理由だろう。
まあ地球は平和で人が多くて娯楽に溢れているし、便利で快適で食べ物もとても美味しい。
高度な文明ではあるが、何もない殺風景なイスカンダルで育ったユリーシャさんにとって、地球で過ごした日々はとても刺激的だっただろう。
例えるなら、ド田舎から都会に出てきたお嬢様である。
すぐ隣のガミラスでは度重なる領土拡大や軍国主義。差別や圧政や監視で人心が荒んでいる酷い有様だし、それも含めてイスカンダルは良い環境とは言い難い。
あとは、命がけの救済の使命が重すぎる。
とにかく講和会議を終えたあとは、補給と修理点検のためにイスカンダルで一泊する。
講和会議に参加しなかった乗員には、体を休めたり海水浴などを楽しんでもらい、次の日の夕方にヤマトと護衛艦隊は地球を目指して、再び出発したのだった。