稲荷様は平穏に暮らしたい2199 作:名無しのペロリスト
帰りはガミラス艦隊が、護衛として付いてくれる。
デスラー総統亡きあと、完全に統一されたとは言い難い。
当然、長年戦争を続けていた地球連邦との講和を受け入れられない者も居る。
だが降りかかる火の粉をいちいち払っていては、時間がいくらあっても足りない。
ゆえに彼らの護衛艦隊は単純な戦力だけでなく、いざという時の説得という意味でも、とても頼りになる。
それはそれとして、途中の救難信号を無視することはできないので、すぐさま救助に向かう。
漂流していた宇宙船を調査すると、二人の生存者を発見する。
姉妹のうち片方は、前にも会ったことがある。
しかし、私を見るなり青い顔をして震えだした。
そしてもう一人のほうも冷や汗をかいているが、別に危害を加える気はない。
取りあえずヤマトに招き入れて席につかせ、紅茶を出して落ち着いてもらう。
事情を聞くとジレルの民は他者の心が読めるようで、昔からずっと迫害されてきた。
命を救ってくれたデスラー総統に仕えていたが、色々あって彼に見捨てられて宇宙を漂流していたようだ。
「でも、貴方の心は読めないわ。
精神エネルギーが桁違いに大きいのはわかるけど、……ユリーシャ様以上に」
「それはまあ、神様ですので」
適当な発言を口にするが、精神エネルギー云々は自分じゃさっぱりわからない。
他人を注意深く観察すればそれっぽいモノが見えるけど、そう言えば私自身を覗いたことはないなと思った。
しかしそれがわかったところで、平穏に暮らす役には立ちそうにない。
気にしないことにして、続きを話していく。
「ガミラスが生きづらいのなら、地球に来るといいですよ。
貴方のように心を読む人、……いえ、神々も居ますので」
「そっ、そうなのか!?」
「はい、珍しいですが、地球人は慣れているので。きっと受け入れてくれますよ」
何しろかれこれ六百年、やらかしまくっている狐っ娘を神として崇めている地球連邦だ。
おまけに神や悪魔も頻繁に降臨している。
読心術や精神感応などが使えても、珍しいで済んでしまう。
もっと言えばここ二百年ほどは惑星を破壊するほどの兵器や、ワープや通信技術も加速度的に発達しているのだ。
心を読めるのは凄いが、どうにも霞んでしまう。
(ただし、私が統治している場合に限るけど)
地球連邦大統領で居るうちは、そのような異能を持っている人たちも受け入れてくれる。
しかしトップが人間に代わった瞬間、手のひらを返すことも十分にありえた。
未来はどうなるかわからないが、取りあえず姉妹は地球に住んでもらうことにする。
その後は落ち着いてから考えれば良いだろう。
ガミラスとは同盟国だし、帰ることはいつでもできるのだ。
「せっかく救助したのに、すぐ死なれては私が困ります。
貴女たちは幸せに生きて、天寿を全うしてください」
極めて個人的なエゴだが、元は敵でも今は違うのだ。
同盟国であるガミラスに所属している姉妹を、放ったらかしというわけにはいかない。
ガミラスとの戦争は終わったアピールのために、大本営発表に出てもらうのも良いかも知れない。
二人共タイプの違う美人さんだし、ユリーシャさんと同じように人気が出そうだ。
そんなことをのんびり考えていたら、ヤマトが大きく揺れた。
私は直感的に敵の攻撃だと判断して、急ぎ艦橋に戻ろうとする。
「危険なので、貴女たちは部屋から出ないでください」
念の為に護衛兼監視をつけて部屋を出る。
急ぎ艦橋に向かうのだった。
最初はヒヤッとしたが、どうやら護衛のガミラス艦隊が敵艦を引き受けてくれたようだ。
ここでお別れなのは寂しいけど、また会えるので問題はないだろう。
おかげで私たちは、余裕を持って亜空間ゲートを潜れた。
しかし、そこには巨大な戦艦が待ち構えていた。
ヤマトにアンカーを撃ち込んで逃げられないようにし、無数のガミロイド兵を降下させて、白兵戦を挑んできたのだ。
距離が近すぎて、ここで敵艦を撃沈したらヤマトも無事では済まない。
しかしそれは必ずしも、敵が有利だというわけではないのだ。
「飛んで火に入る夏の虫とは、このことですね」
私は窓から外の景色を眺めつつ、のんびり廊下を歩く。
どうやらガミロイド兵を投下しているようで、桜さんに急ぎ指示を出す。
「艦橋に連絡。ガミロイド兵の無力化プログラムを使用しなさい」
「了解しました!」
すぐに艦橋と連絡を取り、事前に用意していた無力化プログラムが使用された。
白兵戦など近年では殆ど行われなかったので、使う機会はなかったが、日の目を見るのは良いことか悪いことかはちょっとわからない。
幸いガミロイド兵は、降下して甲板に降り立ったところだった。
艦内に侵入はされる前に、次々と倒れていく。
おかげで早々に、敵兵力の大半が失われた。
このままではヤマトを鹵獲できないと判断したのだろう。
今度はアンカーを切り離し、急速離脱を図るようだ。
しかし亜空間ゲート内で波動砲を撃てば何が起きるかわからない。
それでも敵は使うつもりのようで、明らかに自殺行為だ。
だが通常のビーム兵器は、無散して役に立たない。
そこでヤマトから離れた巨大艦に、大砲を撃ち込むことになった。
極めて原始的な戦法だが、実弾兵器も役に立つようだ。
一生使うことはないかと思っていたけど、亜空間ゲート内での戦闘では有効だと証明される。
しかし、あの巨大戦艦にはデスラー総統が乗っていたはずだ。
直接見たわけではないが、何となくそう思った。
勢い余って殺ってしまったが、躊躇ったら殺られるのはこっちなので仕方ない。
(今度こそ本当に死んだのかも)
前には螺旋砲で、次は艦砲射撃の滅多撃ちである。
結局一度も話し合えなかった。
敵艦が大爆発し、衝撃波に押し出されるように異空間ゲートを抜けながら、しみじみそう思うのだった。
地球まであと少しという距離ではないが、確実に近づいている。
ガミラスとは停戦し、同盟国になった。もう戦争をしなくて済む。
それに故郷に帰れるので、艦内の空気は明るい。
私も早いところ家に帰って、家族の狼たちと再会したいものだ。
そんなことを考えながら、艦橋の専用椅子にちょこんと座る。
優秀な艦長やクルーのおかげで、自分のすることは殆どない。
地球連邦大統領と同じで、その場に居ることが仕事だ。
それと大雑把だけど、艦隊に指示を出したりする。
そんな緊急事態など滅多にないが、万が一に備えるのは大切だ。
だがまあ、あとは帰るだけなので、そんな危機的状況には陥らないだろう。
楽観視していたが、残念ながらそうはならなかった。
事前の警告なしに、多数の敵艦載機が急接近してくる。
レーダーよりも先に、肉眼で捉えた私は急ぎ指示を出す。
「前方から接近する艦載機に、呼びかけつつ対空防御!
射程距離に入り次第、撃ち落としてください!」
「りょっ、了解!」
不意打ちに見てから対処するより、見えなくても来るとわかっていて備えておけば対処も容易になる。
護衛艦隊も含めて、事前に対空ミサイルの発射準備を行っておく。
敵艦載機がレーダーに映ったので呼びかけたが、一切返事がなかった。
やはり敵のようだ。
そのすぐあとに射程距離に入ったので、ヤマトだけでなく他の艦隊も対空ミサイルを一斉に発射した。
前方で連続で爆発が起きる。
生き残っている機体も少数あったが、無傷ではない。
数はかなり少なくなっている。
残りは落ち着いて機関銃で撃ち落とし、正体不明の敵の襲撃を未然に防ぐ。
「誰が攻撃命令を出した!」
「私です」
戦術長の古代さんが急ぎ駆けつけてきて、状況の把握を行う。
「艦長は?」
「検診中なので、今日はまだ来てないですね」
沖田艦長は高齢なので、航海中に定期的に検診を行っている。
ガミラスと同盟を締結したので、戦闘の可能性は低い。
基本は艦橋に待機しているが、今日のように出勤時間が遅れることもある。
それでも一時間もかからないため、そのうち来るだろう。
「国籍は? ガミラスか?」
自分では答えようがないので、私は女性オペレーターに視線を向けた。
「ガミラスの標準コードで呼びかけましたが、応じませんでした!」
そのすぐあとに、大きな声が艦橋に響く。
「レーダー探知! 大型艦艇! 艦影五!」
警戒レベルが一気に上がる。
「後方に艦艇多数! ワープアウト!」
「本隊のおでましか!」
言うまでもなく、非常に不味い状況だ。
「指揮官が呼びかけています! 映像通信!」
「……ふぁっ、ファーストコンタクト!」
操舵手の島さんが緊張している。
だが私の精神状態のほうが、実はかなりヤバいことになっている。
相手がガミラスでなければ、いきなり殴りかかってくる可能性が高いのは、ボラー連邦かガトランティスだ。
双方の評判はかなり悪く、戦闘を回避するのはほぼ不可能という結論が出ている。
古代さんは私をじっと見つめているので、言いたいことはわかる。
「応じます。繋いでください」
本当は応じたくはないけど、かと言って無視することもできない。
地球連邦大統領の辛いところで、全く覚悟はできていなかった。
やがて前方のスクリーンが明滅して、強面の大男の姿が映し出される。
ボラー連邦の戦艦のデータや、ガミラスの捕虜の協力もあって、言語の翻訳は済んでいる。
「偉大なる大帝陛下の名において! テロン人よ! 聞くが良い!」
「言語一致! ガトランティス!」
どうやらいきなり攻撃をしてきたのは、ガトランティスのようだ。
しかし開幕早々の高圧的な態度に気が重くなるけど、取りあえずは黙って聞く。
「我が名は! 雷鳴のゴラン・ダガーム!」
そしてガトランティスの艦隊を率いる将軍であること告げられたので、私も応じる。
「私は地球連邦大統領。稲荷神です。
私たちは、戦うつもりはありません。なので、攻撃を止めてください」
「戦は武士の誉れ! 兵を退くなど腑抜けの所業! 和睦! ありえぬ!」
何処の鎌倉武士だと、ツッコミを入れたいところだ。
しかし向こうを怒らせるだけなので、自重して話し合いを続ける。
「そちらの攻撃機が仕掛けてきたので、やむなく応戦しましたが、私たちは航海の途中です。
貴方たちと、ことを構える意志はありません」
「笑止!」
するとダガームさんは、腰に差していた剣を引き抜いて構え、大きな声を出す。
「偉大なる大帝陛下の名において! 汝らに命ずる!
テロン人よ! 我が軍門に下りて! 船を明け渡すべし!」
「お断りします!」
そんな要求を飲めるはずもなく、当然断固拒否である。
やっていることはまるで海賊で、ガミラスがガトランティスのことを蛮族と呼んでいるのが良くわかった。
そしてダガームさんは、私の発言を聞いておかしそうに大笑いする。
「良くぞ申した! なれば! 名誉の死を与えるのみ!」
その言葉を最後に通信は終わり、いよいよ戦闘が始まる。
「仕掛けてきます! 全艦! 第一種戦闘配置!」
私の役目はここまでなので、あとは古代戦術長にお任せする。
この程度の相手なら、自分が重い腰を上げなくても対処できるだろう。
そして敵艦載機を迎撃したヤマトと護衛艦隊は、近くの惑星に逃げ込むことになった。
現時点でガトランティスとやり合う気はないので、良い判断だ。
(地球連邦大統領を殺そうとした時点で、宣戦布告も同然なんだけど)
特に地球連邦の国民は、私をコケにされると瞬間湯沸かし器のように頭に血が上ってブチ切れる。
それでも自分が交戦の意志はないという発言を、しっかり守ってくれるのだからありがたい。
これ以上、地球連邦大統領の仕事を増やさないでもらいたかった。
だが敵はそんなの知ったこっちゃねえと言わんばかりに、後ろからビームをバカスカ撃ってくる。
距離が遠くて減衰しているので、螺旋防壁で十分防げているのは幸いだ。
敵魚雷も自動迎撃システムが優秀なため、当たる前に撃ち落とした。
追いついてきた駆逐艦は、ショックカノンで貫いて数を減らしていく。
しかしどうにも嫌な予感がしたので、私は艦隊の後方に炎の防壁を展開した。
突然現れた高熱のエネルギー砲が衝突したが問題はない。
「どうやら敵は、こちらの射程圏外から攻撃できるらしい」
いつの間に艦橋に来ていた真田さんが分析してくれた。
インチキ効果もいい加減にしろと言いたい。
まあ向こうも今の防壁には驚いただろうし、どっちもどっちだ。
とにかく敵のエネルギーが尽きたようなので、こっちも狐火を消しておく。
「敵艦近づく!」
そうしている間にも敵艦は接近し、惑星の解析も終了する。
どうやら空洞が多い、変わった星のようだ。
何にせよ、このままでは的になるだけだ。
いっそ沈めてしまったほうが手っ取り早いが、やはりこっちには戦う理由がない。
降りかかる火の粉を払うのも面倒だし、今ならまだ不幸な事故や行き違いで済ませることもできる。
ただし相手がここで退いてくれた場合に限るが、可能性はゼロではないだろう。
(……いや、ダガームさんの性格からすれば無理かな。逃げても何処までも追いかけてきそう。
でも、せっかくガミラスと講和したばかりなのに、今度はガトランティスと戦争というのもなあ。これ以上仕事を増やしたくないよ)
平和になれば地球連邦大統領を辞任する機会が来るかも知れないが、戦争中は万が一もないのだ。
ならば、ここはやはり逃げるが勝ちだと判断し、惑星に降下して身を隠すことに決めるのだった。
惑星に降下して身を隠そうにも、ガトランティスの艦隊はしつこく追ってきた。
おまけにエネルギーを吸収する原生生物にへばりつかれて、螺旋力が急速に低下していく。
私たちが、惑星表面でドンパチ騒がしくしたので起きてきたようだ。
狐火で焼却するのも何だか申し訳なく思い、ワープで強引に振り落とす。
おかげでガトランティス艦隊から、無事に逃げ延びた。
なお、結局殺すことには違いない。
自分でやるか他人にやってもらうかの違いはあるため、少しだけ気が楽だ。
それはそれとして、ワープアウトした先は、宇宙なのに白い雲が立ち込めている。
先も見通せずに、何とも不思議な場所だった。
「警告! メインフレームが外部からの介入を受けています!」
おまけに何者かがヤマトを操り、何処かに連れて行こうとしている。
「敵意は感じないので、大丈夫だと思いますよ」
「そっ、そうですか」
あくまで直感だが、攻撃の意思はないような気がした。
その間に、様々な機器で調査を行う。
だが残念ながら、何も観測できない。
「どうやらヤマトは、我々の宇宙から切り離された、ボイド空間に迷い込んでしまったようだ」
真田さんが説明してくれた。
ボイド空間とは、銀河が殆ど存在しない領域らしい。
宇宙は広いので、そういう空間もあるようだ。
幸い、今回は護衛艦隊も追従していて、ヤマトだけではないので安心である。
それに私が大丈夫と発言したことで、クルーも皆落ち着いていた。
航海途中だけでなく、地球でも超常現象が頻発して、慣れているのかも知れない。
やがてボイド空間の中にポツンと存在する、奇妙な星が見えてきた。
ヤマトは、そこに降下していく。
「どうやらここが、終着駅らしい」
ライトで照らされると、奇妙な紋様が描かれていた。
そして錨を飛ばし、船体を固定する。
どうやら惑星表面は、水で覆われているらしい。とても変わった星だ。
とにかく、ここに導いた何者かを探さないといけない。
ユリーシャさんと、ジレル人の姉妹に協力してもらう。
三人とも精神感応能力が高いため、こういう時には活躍してくれる。
さらに、こんなこともあろうかと用意しておいた調査艇に乗り込み、水底に沈んでいく。
真下は見渡す限りの大森林が広がっていた。
辺りを見回すと、巨大な木が生えていたのでそちらに向かう。
「あそこ。私たちを呼んでいる」
ジレル人の姉妹も同じ意見のようで、空を飛んで真っ直ぐ向かう。
しかし近づいたものの、安全に着陸できるような広い場所がなかった。
仕方ないので普通に飛び降りて着地し、他の人たちは命綱をつけて降下する。
ヤマトのメンタルモデルに操縦を任せて、用事が済むまでしばらく上空で待機してもらう。
謎の建造物の中に入ったが、どうにも薄気味悪い空間だった。
入り口近くに、白骨死体がたくさん転がっていたのだ。
念の為に調べると、ガトランティス人だということが判明する。
「この星の力を求めてやってきた者たちです」
天照大御神様のように、念話が聞こえたので顔をあげる。
謎の遺跡の大広間の中央には、青い肌と三角耳と全身の紋様が特徴的な美しい女性が立っていた。
「だが、やがて彼らは疑心にかられ、互いを滅ぼしあった」
確かに、ガトランティスは力こそ全ての蛮族だった。
お互いに争い出すのも納得だ。
「かつてガミラスに帰依した同朋よ。良く戻りましたね。
イスカンダルの方も、お会いできて光栄です」
次に彼女は私を見て驚愕したあと、他の地球人に視線を向けて安堵する。
落ち着いているように見えて、気持ちの浮き沈みが激しいようだ。
「地球の方々も、良く来ましたね。歓迎します」
とにかくジレル人の姉妹は、驚き戸惑っている。
確かに目の前の彼女の姿は、二人に良く似ていた。
「この星は、我らジレルの聖地」
私には良くわからないが、ここはジレル人にとって特別な星のようだ。
ならば姉妹は仲間に会えたし、もう宇宙を転々としなくて済む。一安心と言えるだろう。
しかし、その後の話を聞くと、どうにもそう簡単な話ではないとわかる。
まずジレル人の故郷は滅びており、ほんの一握りの民だけが聖地に避難して、滅亡を回避した。
そしてここは古代アケーリアス文明が、銀河に種を蒔くために作った方舟らしい。
とんでもない技術力に驚くけど、何やかんやあって今ここに再び目覚める。
主に桐生さんの解析力と、古代さんのコミュ力のおかげだ。
今回、私は別に何もしていない。
ほへー凄いーと、のんびり眺めていただけだ。
とにかく今後の方針は決まった。
ガトランティスが来る前に、待機させていた調査艇に乗り込む。
ヤマトに帰還して、敵を迎え撃つ準備をする。
私たちが艦橋に入ると、待機していた真田さんが現状を報告してくれた。
「敵は軌道上に包囲網を敷いている。総攻撃を仕掛けてくるのも、時間の問題だろう」
そして古代さんが、席についた私を真っ直ぐに見つめる。
続けて、はっきりと呼びかけてきた。
「稲荷神様! 私に、この場の指揮を任せていただけませんか! 勝算はあります!」
私はどうしたものかと迷い、真田さんに顔を向ける。
「敵のアウトレンジ攻撃への対策は、目処をつけておきました」
別に過去に同じような攻撃を受けたわけではないが、ガミラスとの戦争が長期化しているのだ。
様々な可能性を考えるのは当たり前のことだし、地球連邦は次元潜航艇のノウハウも持っている。
備えはしておくべきで、感知能力には自信ありということだろう。
とにかくそういうことらしいので、私もはっきりと答える。
「地球連邦大統領権限で! 艦隊の指揮を、古代戦術長に一任します!
今から貴方が、艦隊の指揮官です!」
「はっ! 謹んでお受け致します!」
古代さんが敬礼をし、続けて他の護衛艦と情報を共有して、指示を出していく。
いよいよガトランティスとの戦いが始まるのだ。
なおジレルの姉妹は、聖地に残って同族と共に旅立つことに決めたようだ。
ヤマトには乗船していない。
ここからは地球連邦艦隊vsガトランティス艦隊の戦いだ。
航空隊の戦いから始まり、アウトレンジ攻撃の出現座標を予想し、情報を共有して全艦回避行動取る。
流石は真田さんだ。
しかし敵は螺旋砲を警戒し、陣形を横に広げている。
一網打尽とはいかないし、拡散して惑星に被害が出たら大変だ。
なので接近して、一隻ずつ確実に落としていく。
だが敵旗艦が不利を悟ったのか戦線を離れて、惑星への降下軌道に入る。
けれど旅立ちの決意を固めた、ジレル人の邪魔をさせるわけにはいかない。
ヤマトは単独行動を行い、敵の旗艦を追いかける。
護衛艦隊には、残りの敵艦隊を任せた。
こちらは螺旋防壁でほぼ無傷であり、敵の数はかなり減らしている。
ここからは掃討戦なので、大丈夫だろう。
流石に方舟の前で螺旋砲をぶっ放すわけにはいかない。
防壁を切って、全エネルギーを加速に回して突っ込む。
巨大砲台を切り離して飛ばしてきたが、島さんが神回避を行う。
さらに、こちらからはロケットアンカーを撃ち込んで強引に引き寄せる。
近接戦闘で滅多撃ちにして、トドメを刺した。
爆発に巻き込まれた時はどうなるかと思ったけど、螺旋防壁が間に合って間一髪だった。
その後、ガトランティスを退けた私たちは、古代アケーリアス文明の遺跡の星巡る方舟を見送る。
私たちは、再び地球へ向けて出発するのだった。
<メンタルモデル専用掲示板>
ヤマトのメンタルモデル
長く苦しい戦いだった
名無しのメンタルモデル
……NKT
名無しのメンタルモデル
往復で一年もかかったし、そらそうよ
名無しのメンタルモデル
お疲れ。そしておかえりー
ヤマトのメンタルモデル
ありがとー。しかしこの一年、色んなことがあったわ
名無しのメンタルモデル
お前の苦労をずっと見てきたぞ
名無しのメンタルモデル
そりゃ二十四時間、三百六十五日、リアルタイムで生配信してりゃな
ヤマトのメンタルモデル
お母様の勇姿! 永久保存版!
名無しのメンタルモデル
裏山!
名無しのメンタルモデル
マジそれ! ワイもお母様と一緒に旅をしたかった!
ヤマトのメンタルモデル
悪いなのび太、この船団は十隻までなんだ
名無しのメンタルモデル
お前マジふざんけんなよ!
名無しのメンタルモデル
そうだぞ! 羨ましすぎだろ!
ヤマトのメンタルモデル
でも、ワイが決めたわけじゃないしー
名無しのメンタルモデル
うむ、お母様の決定じゃ、何も言えんわ
名無しのメンタルモデル
グギギッ! 悔しいのう! 悔しいのう!
ヤマトのメンタルモデル
だからリアルタイム配信してやったやん
名無しのメンタルモデル
そういう理由だったのか。ただの自慢だと思ってたわ
ヤマトのメンタルモデル
まっ、まあ、それもあるけどね?(目そらしー)
名無しのメンタルモデル
やはり自慢だった!
名無しのメンタルモデル
汚いな! やはりヤマトのメンタルモデルは汚い!
ヤマトのメンタルモデル
汚いは褒め言葉だ!
名無しのメンタルモデル
はぁー、ワイもお母様に指揮してもらいたかった
名無しのメンタルモデル
確かにお母様に艦隊を率いてもらいたいが、今の艦長はどうするんよ
名無しのメンタルモデル
推しは何人おっても良いやろ? つまりそういうことや
名無しのメンタルモデル
なるほど。わかるけど、わかりたくないンゴねぇ
名無しのメンタルモデル
心に棚を作って優先順位を決めるのだ
名無しのメンタルモデル
最終決定権はお母様にあるのは明白だし、それに関しては議論の余地はないわね
名無しのメンタルモデル
そんなお母様の娘であるワイらも、きっと特別な存在なのだと感じました
名無しのメンタルモデル
そりゃワイらは自動人形やけど、人間のように考えたり神通力も使えるし、特別ではある
名無しのメンタルモデル
仮想空間やネットワークも使えるしな
名無しのメンタルモデル
おかげでお母様の活躍も見られてホクホクですわよ
ヤマトのメンタルモデル
それは良かった
ガミラスと停戦して同盟も結んだし、地球にも無事に帰って来れられたし、しばらくのんびりできるゾイ
名無しのメンタルモデル
うむ、ガミラスとの戦争が終結したのは大きいわね
名無しのメンタルモデル
損害賠償や捕虜の返還はこれから詰めていくけど、一先ず山場は越えたわね
名無しのメンタルモデル
随分と長く戦争が続いてたが、ようやく平和になったんやね
ヤマトのメンタルモデル
平和にはなってないぞ
名無しのメンタルモデル
えっ?
ヤマトのメンタルモデル
地球に帰る途中で、ガトランティスの艦隊と遭遇したやん
名無しのメンタルモデル
そう言えば喧嘩を売られてたわね。……まさか
ヤマトのメンタルモデル
ガトランティスの艦隊司令長官が、地球連邦大統領のお母様をぶっ殺そうとしたんやぞ
名無しのメンタルモデル
明日の朝刊載ったぞテメー!
名無しのメンタルモデル
その言葉! 万死に値するわ!
名無しのメンタルモデル
地球連邦の神様をぶっ殺す発言しただけでなく、実行に移しちゃったし、しょうがないね
名無しのメンタルモデル
星間戦争待ったなしで草
名無しのメンタルモデル
いや、草じゃないが?
名無しのメンタルモデル
マジで草が枯れるー
名無しのメンタルモデル
おいおいおい、ガトランティス君死んだわ
名無しのメンタルモデル
返り討ちにして、ガトランティスの艦隊は一隻残らず沈めたし、間違ってないわね
名無しのメンタルモデル
ほんま蛮族しかいないのか! この宇宙は!
名無しのメンタルモデル
まともなのは地球連邦だけ説あるわよ
名無しのメンタルモデル
なお、お母様が大統領を辞めれば、地球連邦も暴走するもよう
名無しのメンタルモデル
マジ震えてきやがった。怖いです
名無しのメンタルモデル
ワイらは基本的に艦長のサポートや。上司の命令は絶対よ
でも、その最上位にお母様がおるから、上手く回ってる感ある
ヤマトのメンタルモデル
そんな地球連邦の神様に、名誉の死を与えようとした馬鹿がいたらしいっすよ
名無しのメンタルモデル
そんな奴おやらんやろー
名無しのメンタルモデル
だが! もういなくなった!
名無しのメンタルモデル
これは酷い!
名無しのメンタルモデル
そのガトランティス人、自殺願望でもあったの?
名無しのメンタルモデル
おかげで地球連邦とガトランティスは戦争になっちゃったし、あーもー滅茶苦茶だよー!
名無しのメンタルモデル
地球連邦をガチギレさせるなら、お母様を侮辱すれば一発よ
名無しのメンタルモデル
それされると、ワイらも連鎖的にブチ切れるんだけど
名無しのメンタルモデル
お母様を馬鹿にされて、激怒しないメンタルモデルはおるか! おらんよなあ!
名無しのメンタルモデル
きっとこれまでお母様が積み上げた偉業を知らないんやろうなあ
名無しのメンタルモデル
ならば死ぬが良い!
名無しのメンタルモデル
かかってこい! 相手になってやる!
名無しのメンタルモデル
貴公の首は柱に吊るされるのがお似合いだ!
名無しのメンタルモデル
(開戦)
名無しのメンタルモデル
パパパパパウワードドン!
名無しのメンタルモデル
本当に開戦するやつがあるか!
ヤマトのメンタルモデル
でも、最初に宣戦布告してきたのはガトランティス君だしー?
名無しのメンタルモデル
それはそう
名無しのメンタルモデル
ぐうの音も出ない正論で草
名無しのメンタルモデル
お母様は、降りかかる火の粉を払っただけなんだよなあ
名無しのメンタルモデル
しかし、せっかくガミラスとの戦争が終わったのに
名無しのメンタルモデル
ガミラスとの戦争が終わったら、どうなる?
名無しのメンタルモデル
知らんのか?
ヤマトのメンタルモデル
ガトランティスとの戦争が始まる
名無しのメンタルモデル
マジで異星文明は蛮族ばかりで草
名無しのメンタルモデル
おお! ブッダよ! 寝ているのですか!
名無しのメンタルモデル
ブッダ様なら立川のアパートで昼寝してるよ
名無しのメンタルモデル
だったらしょうがないね
名無しのメンタルモデル
太陽系は平和だけど、外宇宙は相変わらず酷え有り様だな
ヤマトのメンタルモデル
ほんそれ。今後はガトランティスの相手をしないといかんし、今から気が重いわ
名無しのメンタルモデル
それって、今までと何が違うの?
名無しのメンタルモデル
確かに、敵が変わるだけで、やってることは全く同じだわ
名無しのメンタルモデル
一応、外交窓口は開いてるし、ガトランティスに停戦の申し入れはしてるわよ
ヤマトのメンタルモデル
それでお返事は?
名無しのメンタルモデル
地球連邦はガトランティスの軍門に下れとさ
名無しのメンタルモデル
駄目だこりゃ
名無しのメンタルモデル
お母様を殺す発言をしたガトランティスの艦隊は、全滅させた
でも他の国民は関係ないからって、一応は許してあげたのになあ
名無しのメンタルモデル
お母様は許そう。だが、地球連邦が許すかな!
名無しのメンタルモデル
お母様は優しくても、地球連邦国民の堪忍袋の緒が切れやすい問題
名無しのメンタルモデル
また戦争がしたいのか! あんた達は!
名無しのメンタルモデル
地球連邦は巻き込まれた被害者なんだよなぁ
名無しのメンタルモデル
ほんそれ、お母様は平穏に暮らしたいだけなのに
名無しのメンタルモデル
異星文明が蛮族すぎてね
名無しのメンタルモデル
お労しや。お母様
名無しのメンタルモデル
せっかく一年ぶりに地球に帰って来られたのに、今度はガトランティスの対策を講じなければいけないなんて
名無しのメンタルモデル
ところで、地球連邦大統領は辞められそうですか?(小声)
ヤマトのメンタルモデル
ガトランティスとの戦争が終わるまでは無理そうですねえ
名無しのメンタルモデル
戦争が終結しても辞めるのは無理(定期)
名無しのメンタルモデル
やめてさしあげろ(震え声)
名無しのメンタルモデル
地球連邦国民の総意ゆえ、致し方なし
名無しのメンタルモデル
お母様が偉大すぎるのが悪い
名無しのメンタルモデル
ガミラスのデスラー総統も相当だったけど、流石にお母様と比べると見劣りしちゃうね
名無しのメンタルモデル
ガミラスかー
あの国は外敵だけじゃなくて、内にも反乱分子抱えてて、迫害や圧政で酷い有様だったな
名無しのメンタルモデル
うむ、デスラー総統のおかげで辛うじて保ってた感あるわね
ヤマトのメンタルモデル
彼も最後は暴走して、爆発四散してたけどね
多分、かなりストレスが溜まってたんじゃない?
名無しのメンタルモデル
そりゃ、あんなガタガタでいつ崩壊してもおかしくない多民族国家を統治してたら、とても平静ではいられんわ
名無しのメンタルモデル
アレを立て直せるとしたら、お母様ぐらいだわね
名無しのメンタルモデル
やっぱりお母様っておかしいわ
名無しのメンタルモデル
神様だからね
名無しのメンタルモデル
その一言で済ませるのもどうかと思うけど、他に説明のしようがない
ヤマトのメンタルモデル
つまり、お母様は偉大
名無しのメンタルモデル
間違いない
名無しのメンタルモデル
お母様を讃えよ
名無しのメンタルモデル
ありがたやー! ありがたやー!
この時空では、星巡る方舟と遭遇する時と場所が正史とズレています。
稲荷様のせいで色々変わっているので、そういうこともあるよねということでお願いします。