稲荷様は平穏に暮らしたい2199   作:名無しのペロリスト

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亜空間ゲート

 ガミラス本星を目指す私たちは、待ち構えていたガミラス艦隊と遭遇する。

 中性子星に進路が歪められた影響で、敵の罠に飛び込んでしまったのだ。

 

 全方位を囲まれていて、しかも間隔を広く取られている。

 螺旋砲を警戒してのことだろうが、これでは迎撃するのも包囲を突破するのも困難だ。

 

 沖田艦長ならば死中に活を求めて、一点突破を指示するだろう。

 だが、私は違う。

 

「全艦! 急速潜航! 亜空間に逃げ込みなさい!」

「了解! ヤマト! 亜空間に潜航します!」

「きゅーそくせんこー!」

 

 地球連邦が次元潜航艇を所有していることは、ガミラスは知っている。

 だが私たちがその気になれば、全艦いつでも潜れることは、まだ知られてはいなかった。

 

 今が切り札を使うときだと判断した。

 

 恐らくガミラス艦隊を指揮する司令官は、歴戦の猛者だ。

 負けはしないが、今ここで正面からやり合うのは避けたほうが賢明だろう。

 

 あくまで私の直感で、根拠はない。

 しかしヤバい予感は、過去に一度も外れたことがなかった。

 

 なので乗員も自分の突発的な行動には慣れており、疑問に思うことなく素直に指示に従ってくれた。

 

 全艦隊が、亜空間の海に沈んでいく。

 そうはさせまいと敵の一斉砲撃が始まったが、少しだけ遅かった。

 

 おかげで損害を出すことなく亜空間に逃げ込めたが、敵も次元潜航艇の対処は心得ている。

 ひょっとしたら向こうも潜航してくるかも知れない。

 

 もしくはソナーを使って位置を特定されるかもだし、準備が整う前に急ぎ戦闘宙域を離脱しないといけない。

 

「全艦、今すぐ現宙域から離脱しなさい!」

 

 手を打たれる前に急ぎ指示を出して、戦闘宙域からの離脱を図る。

 おかげで今回は何とかなったが、次は恐らく戦闘は避けられない。

 

 だが味方だけでなく、これから停戦するガミラスの犠牲も、できれば避けたいところだ。

 

 理由は色々あるが、少しでも心象を良くするためなのが大きい。

 

 イスカンダルとガミラスは仲が良く、そのやんごとなき王族がヤマトに乗っている。

 人質として使う気は毛頭ないが、向かってくる艦隊を全部返り討ちにするのも、あまりよろしくない。

 

 地球連邦が異星文明と敵対するのは、できれば避けたかった。

 ユリーシャさんとはお忍びでスイーツを食べ歩く友人なので、あまり悲しませたくもない。

 

 私や地球連邦としては、飛んできた火の粉を払っているだけだ。

 しかし面倒で危険な戦いは、避けるに越したことはないのだった。

 

 

 

 

 

 

 敵地なので仕方ないが、常に気を張っているのは疲れるものだ。

 時には休むことも必要なので、途中の惑星に降下して物資を調達することになった。

 

 大気中に人体に有害な物質はなく、水が豊富らしい。

 もしかすると人類も移住できるかも知れないが、ここはガミラスの支配宙域だ。

 発見されたら絶対面倒なことになるので、あくまで候補止まりである。

 

 それはそれとして未開の惑星にしては不自然な金属反応があったので、調査を行うことになった。

 

 暇を持て余していた私は、せっかくなので同行させてもらう。

 何故かセットでユリーシャさんも付いて来たけど、どうも妙に懐かれている気がする。

 

 若い女性の友人ができるのは良いことだし、仲は悪くないので別に構わない。

 

 とにかく古代さんを中心に調査隊を編成し、私はお世話係の桜さんと近衛二名、あとはおまけでユリーシャさんも同行する。

 

 念の為にメンタルモデルや近衛には、コンバットフレームに搭乗してもらう。

 私を除く全員が、強化外骨格を着用済みなのは言うまでもない。

 

 ユリーシャさんは慣れていないのもあって渋い顔だったが、どんな原生生物が居るかわからない惑星を調べるのだ。

 強化服だけでは危険すぎる。

 

 とにかく私たちは小型艇で目的地に近い場所まで移動して、そこからは徒歩で向かうことになった。

 

 やたらと巨大な木々が生い茂っているので、コンバットフレームでなぎ倒しながら前進する。

 

 途中で奇妙な鳴き声が聞こえ、そちらに振り向く。

 巨大な昆虫らしき生き物が喉を鳴らして、私たちを見下ろしていた。

 

「うちは地球防衛軍ですが、これは流石に」

「凄ーい!」

 

 ヤマトが所属しているのは地球連邦防衛軍だ。なので、一応合ってはいる。

 そして私とユリーシャさん以外、未知との遭遇に驚き固まっていた。

 

 しかし、巨大昆虫は待ってはくれない。

 美味しそうな餌を見つけたと思ったのか、いきなり襲いかかってくる。

 

「……はっ!」

 

 なので、私も問答無用で飛び蹴りを叩き込む。

 ドゴオと重い音が響いたあと、木々をなぎ倒して吹き飛んでいった。

 

 加減したので死んではいなくても、そこそこのダメージを与えたはずだ。

 もう追っては来られないだろう。

 

「虫さん、大丈夫ですか?」

「手加減したので、死んではいませんよ。しばらくは、まともに動けませんが。

 しかしあんな巨大生物がいるようでは、移住は難しそうですね」

 

 大気は問題なく、水も豊富だ。

 しかし、原生生物が危険すぎる。

 少なくとも軍レベルの装備がなければ、対処も駆除も難しいだろう。

 

 とにかく私たちは調査に戻り、正体不明の金属反応を目指して歩き出すのだった。

 

 

 

 やがて森の奥に進むと、開けた場所に出る。

 植物に覆われた宇宙船の残骸らしき物を発見して、感心しながら下から眺める。

 

 その際にユリーシャさんが、イスカンダルのもので間違いないと教えてくれた。

 しかし着陸してから約四百年が経過しているようなので、一体何があったのやらだ。

 

「遥か、遥か昔、イスカンダルがやって来た。

 ……その使命は、救済」

 

 何だか知らないが、ユリーシャさんが語りだした。

 

「あまねく星々、その知的生命体の救済。

 それがイスカンダルの進む道」

 

 私は内心で、自分にはとても無理そうだし、絶対にやりたくないなと思った。

 ユリーシャさんの説明に耳を傾ける。

 

「そして、それが私たち一族の使命」

 

 地球の救済もその一つで、困っている人を助けるのは私も賛成だが、試練はいらない。

 救う対象を余計に苦しめてどうするねんと、心の中でツッコミを入れる。

 

 選別や資格や成長のためだとしても、自分はそこまで非情になりきれない。

 やっぱり神様には向いてないので、致命的な失敗をする前に早く退位すべきだと思った。

 

 ちなみに、地球に来たときにも説明されて知ってはいる。

 だが個人的にあまり興味はなかったので、話半分に聞き流していた。

 

 今回改めて説明してくれて、そう言えばそうだったわと思い出す。

 

「じゃあ君は、ここに知的生命体が居るっていうのか?」

 

 疑問に思った古代さんが、ユリーシャさんに率直に尋ねる。

 

「居た。……居たのよ。ずっと昔に」

 

 つまり昔は知的生命体が居たけど、今はもう滅びたか、別の星に移動したということだろう。

 

 だがここでメンタルモデルが別の金属反応を検知したので、会話を打ち切ってそちらに向かう。

 

 

 

 しばらく歩くと、今度は古びた巨大な遺跡を見つける。

 私たちは、調査のために中に入っていく。

 

「この星の文明は、どうやら滅びてしまったようです。

 推定滅亡時期、三百三十年前」

 

 メンタルモデルが説明してくれるが、風化した死体があちこちに転がっている。

 浪漫を感じている場合ではなく、私は心の中で冥福を祈った。

 

 さらに奥に進むと、大広間に出る。

 そこには祭壇らしきモノの上に、波動コアが置かれていた。

 

 墓荒らしをするのもどうかと思うが、滅びた文明にはもはや不要だろう。

 

 それでも最低限の礼儀として鎮魂の儀を行い、異星人の魂たちを呼び出して、波動コアを使わせてもらうことを伝えておく。

 

 相手が何を言っているかはわからないが、身振り手振りでOKなのはわかった。

 その後は彼らにお礼を言って成仏してもらい、波動コアをヤマトに持ち帰って詳しく分析する。

 

 おかげで未発見の亜空間ゲートの位置が判明して、日程の大幅な短縮が可能になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 地球連邦艦隊は亜空間ゲートに向かうと、元はガミラスが利用していたようだが、今はもう稼働していないようだ。

 

 何らかの理由で放棄したのだろう。

 再起動するためには、施設内に入って直接操作するしかない。

 

 すんなりいくとは思えず、危険が予想される。

 なので私が乗り込むのが一番手っ取り早く、あとは科学技術に詳しい人が同行してくれればありがたい。

 

 腕っぷしには自信はあっても、脳筋で頭が悪いので、補助はどうしても必要だ。

 直感的に操作すれば一応起動はするだろうが、何で動いているのか当人にもわからないのだ。

 色んな意味で困ってしまう。

 

 そういうことで、亜空間ゲートの施設内部に入る。

 番犬代わりの巨大ロボットを、一発殴ってバラバラに破壊する。

 

 その後は制御室を見つけて中に入って調べると、再起動すると大量の中性子が数秒間放出されることがわかった。

 ここは私が残り、真田さんに指示を受けながら操作することになる。

 

 宇宙空間やマグマの海でも生存できる狐っ娘なら、中性子ぐらいどうということはない。

 

 それより自分の頭はあまり良くないため、異星文明の言語のタッチパネルを操作することのほうが大変で神経を使う。

 真田さんの解説や的確な指示があっても、なかなか苦労したのだった。

 

 

 

 そんなこんなで異空間ゲートの再起動が完了し、日程の大幅な短縮が可能になる。

 しかしワープ先には何があるかはわからないため、念の為に艦載機を飛ばして様子を見てくることになった。

 

 

 

 やがて出発から三時間が経過する。

 偵察に出た艦載機が帰ってきたが、かなりボロボロだ。

 

 こんなこともあろうかと、積み込んでいたガミラスの機体である。

 地球連邦よりも性能が低く、自動操縦機能がついていなかった。

 改修する時間がなかったので、パイロットが直接操縦する必要があった。

 

 しかし当初は味方だと勘違いして攻撃されないはずが、無事な帰還とはいかなかったようだ。

 

 何があったかはこれから調べるとして、とても危険な任務を無事にやり遂げた。

 航空隊の副隊長を務めている篠原さんを、表彰して褒め称える。

 大怪我をして医務室のベッドに横になっていたが、それでも喜んでくれた。

 

 おかげで亜空間ゲートの向こうに、ガミラスの大軍勢が駐留していることがわかる。

 考えなしに飛び込まなくて良かったと、胸を撫で下ろす。

 

 

 

 ちなみに地球連邦の艦載機は、敵が電磁パルス攻撃や電子戦を行ってきた場合に備えて、人工知能だけでなく手動操作も行えるようになっている。

 そのために、腕の良いパイロットに待機してもらっていた。

 

 今のところは出番はないけれど、いつ必要になるかわからないため、備えは必要なのだ。

 

 

 

 

 

 

 それはそれとして、ガミラスとの関係が拗れるのは困る。

 ワープ先の大軍勢をボコボコにした場合、地球連邦の印象が悪くなるのは予想できた。

 

 八年も戦争をしているので今さらだが、面倒事は避けるに越したことはなかった。

 

 そのことについて沖田艦長やヤマトのクルーに相談すると、仮に大軍勢を避けて先に進んでも、背後から襲われる可能性がある。

 

 なので、もう一つの亜空間ゲートに突入して破壊し、追撃を防いで時間を稼いではどうかという案が出た。

 

 確かに前回の罠に嵌めての不意打ちと違って、今回は敵の情報を得ている。

 たとえ戦いを避けられても、追いつかれて背後から撃たれては意味がない。

 余計に状況が悪化していると言えた。

 

 なので私は足りない頭で考えて、突入作戦の許可を出すのだった。




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