デッキが全部いあいあしてる闇のカード   作:いちごの入った大福

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第1話

 

 

「うわああああん!!」

 

 

時刻は夕方。学生が登下校しているころ、女の子が大泣きしていた。

 

 

赤いランドセルを背負った女の子、名前は【天音 アン】。同年代の中では成長が遅くまだ小柄な小学3年生、先日誕生日を迎えて9歳になったばかりである。

 

 

誕生日、両親からのプレゼントとしてついにデュエルモンスターズのデッキを買ってもらえた新米デュエリストでもある。アンは元々デュエルモンスターズに興味を示していたが、両親がデュエルモンスターズに疎いのもあり、同年代の中では遅れてのデュエル参戦となった。

 

 

買ってもらえたのは【スターターデッキ:天使族】。難しいことはせず、モンスターの召喚、魔法・罠の撃ち合い、上級モンスターのルール等を学べる初心者向けデッキだった。簡単に勉強した後、誘ってくれた同級生と一緒にデュエルを経験した。

 

 

流石に始めたばかりの初心者では、経験者には勝てなかった。勝敗は問題ではなく、アンも初めてのデュエルを楽しむことができた。

 

 

ただ、問題はその相手だった。

 

 

 

『アンティルールだからな、デッキぜんぶもらってくぜ』

『えっ!?』

 

 

デュエル前、対戦相手の少年は相手が何も知らない初心者であることを利用して『アンティルール』を提案。アンは何の話か分からないままに了承してしまった。

 

 

アンは知らなかったが、対戦相手の少年はデュエルこそ強いものの、横暴な姿勢でアンティルールを強要してレアカードを奪う、タチの悪い悪ガキだったのだ。

 

 

悪ガキは取り巻きを連れていた。負けるや否や、アンティルールだと囃してられてしまえば、か弱いアンは対抗しようもない。あっさりとデッキを奪われて、最悪な形でデュエル初体験が終わったのである。

 

 

こうなっては泣き寝入りしかない。両親が買ってくれた大切なカード達を失い、大泣きしながら帰路についていた。

 

 

「うわああああん!!」

 

 

 

このまま何も起こらずに事態が進めば、大泣きするアンから事情を聞いた両親が激怒して学校に直訴。禍根を残しながらもデッキを取り戻すも、最悪な経験がトラウマになってしまう。アンは今後デュエルとは一切関係のない人生を送ることになったであろう。

 

 

この時、人気のない路地に進んでいなければ。

 

 

この時、路地に落ちていたカードを見つけなければ。

 

 

人生はきっと異なる展開だったに違いない。

 

 

 

 

 

「ふえ……?」

 

 

ぐずぐずと泣きながら歩いていたアンは、ふと路地裏の入り口にカードが落ちているのに気がついた。デュエルモンスターズにトラウマを抱えかけていたアンは良い感情を抱かなかったが、どうしても落とし物が気になって、つい拾い上げてしまう。

 

 

元々持っていたデッキにはない、紫色の枠を持つカード。それを拾い上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【白痴の魔王 アザトース】

融合モンスター

星12/闇属性/邪神獣族/攻?/守?

レベル11以上の邪神獣族モンスター×4

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

⑴このカードは他のカード効果を受けない。

⑵このカードの攻撃力・守備力は融合素材モンスターの攻撃力・守備力を合計した数値となる。

⑶このカードを融合召喚した時に発動する。このカードに微睡みカウンターを5つ乗せる。その後、自分フィールドの他のカードを全て墓地へ送る。このターン、自分は他のカード効果を発動できない。

⑷相手がカードの効果を発動した時に発動する(同一チェーン中は1度まで)。このカードの微睡みカウンターをひとつ取り除く。

⑸⑷効果で全ての微睡みカウンターが取り除かれた場合、自分はデュエルに勝利する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原初にして終焉

 

 

白痴にして全能

 

 

其れを表現するに、人間の言語では不足が過ぎる

 

 

液体のようで固体でもあり

 

 

粘性があれど壮厳でもあり

 

 

鬱であり躁でもある

 

 

讃えるフルートの音色で永き時を微睡み

 

 

目覚めし時は終焉へ至るであろう

 

 

目覚めさせてはならない

 

 

触れてはならない

 

 

目にしてはならない

 

 

認識してはならない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すっごいカード!!」

 

 

でもしょうがくさんねんせいにむずかしいことわかんないのである。

 

 

アンにとっては、なんか難しいことが書いてあるが、星がいっぱいある強そうなカードという認識である。デュエルモンスターズ初心者なのだから仕方ない。ふと視線を逸らせば、路地裏に別のカード達が転々と落ちているのを見つけた。

 

 

「えっと、おとしもの……ひろわないと!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あつまった!」

 

 

ずっと拾っていくと、自然とデッキ40枚+EXデッキ15枚がそろった。どうやら落とし物の主はデッキ全部落としてしまっていたらしい。

 

 

落とし主を探すために見渡すと、誘われるように拾ってきた場所は路地裏の奥まった場所、建物間の空き地が広間になったデッドスペース、ついでに言うと行き止まりである。残念ながら、ここからの足取りを追えそうにない。

 

 

「………はっ!?」

 

 

ここでアン、痛恨のひらめき。そう、例え小学生であっても、自然と路地裏の袋小路に誘い込まれた今、こんな状況になれば少しは危機感が…

 

 

「もしかして逆のほうだった!?」

 

 

そっちか~~。そっちに気付いちゃうか~~。

 

アンは気付いてしまった。ここが袋小路なら、ここがゴールではなくここがスタートだったのではないか。実は元の持ち主はここからカードを落とし始めて、出入り口から普通に出て行ったのではないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うーん、ちょっと違うね。そのカード、僕のだよ』

 

「ほえ?」

 

 

突如、誰もいない路地裏に声が響く。アンとそこまで歳が変わらないくらいの少年の声だ。

 

だが、アンが見渡しても声の主が見えない。不思議に思って首を傾げると、まさかの頭上から再び声が響いた。

 

 

 

『こっちこっち』

 

 

「……ねこさんがしゃべった!?」

 

 

建物の上から声をかけてきたのは、まさかの黒猫だった。その黒猫は建物のパイプの上に悠々と座り、尻尾を揺らめかせながらこちらを見下ろしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねこさんのだったんだ。じゃあかえすね!」

 

拾い集めたカードがまさかの黒猫さんの所有物だった。普通なら声をかけられたら大仰天ものであるが、アンは色んな意味で大らかな性格だった。持ち主がいるなら幸いと集めたカードを差し出す。

 

一方、持ち主を名乗り出た黒猫は不可解そうに首を傾げていた。

 

 

『キミ、そのデッキ持ってても平気なのかい?』

 

「へーき? なんのこと?」

 

『ふむ……不思議だね。正気を擦り減らした様子がない。元から狂人な訳でもない。理解できていないだけ? いや、元々耐性が強いのか』

 

 

黒猫はブツブツ独り言を呟きながら、壁から壁を跳ねて降りてくる。音もなく着地したのはアンから少し離れた位置だった。

 

 

『ちょうど良い。僕は……ニャルと呼んで欲しい。君は?』

 

「天音アンです!」

 

『名乗れて偉いね。そのデッキを使って、僕とデュエルしてくれない?』

 

「ニャル君と? いいよ!」

 

 

黒猫ニャルが上空に視線を遣ると、そこには妙なデザインのデュエルディスクとカードがぷかぷかと浮かんでいた。どうやらニャルが何かをして作り出したようだ。

 

 

「どうやったの!?」

 

『新型のデュエルディスクさ(大嘘)』

 

「すごーい!」

 

『人除けの結界を張って、っと……これで邪魔は入らないね』

 

 

ニャルが足をトンとして結界を張る。当然だがアンは感知できていない。

 

 

『付き合ってくれたお礼に、勝敗に限らずそのデッキをプレゼントするよ』

 

「いいの!?」

 

『いいよ、どうせ余ってるし。僕のデッキも全く同じなんだ』

 

「ありがとう! でも負けないよ!」

 

 

1人と1匹が対面に立ってデュエルディスクを構える。一方は無垢な笑みを、もう一方は思惑まみれの邪悪な笑みを浮かべて対峙した。

 

 

 

「『デュエル!』」

 

 

先攻 黒猫ニャル LP4000

 

後攻 天音アン LP4000

 

 

 

 

 

『僕のターン。基本的なルールは分かるんだよね?』

「うん!」

『ならこのデッキ特有の動きを教えよう。永続魔法【グラーキの黙示録】を発動』

 

 

 

【グラーキの黙示録】

永続魔法

このカード名の⑴⑵効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。

⑴発動時の処理として「腐敗した湖のグラーキ」「貪り喰らうイゴーロナク」のカード名を宣言する。

⑵自分メインフェイズに発動できる。デッキから儀式魔法カードを1枚選んで手札に加える。

⑶フィールドの邪神獣族モンスターが破壊される場合、代わりにこのカードを墓地へ送ることができる。

 

 

 

『このカードは発動時、【腐敗した湖のグラーキ】【貪り喰らうイゴーロナク】のカード名を宣言するよ』

 

「カード名をせんげん?」

 

『そう。まずは彼らのことを知ってもらうんだ。そしてこのカードは、相手がこのカードを知ってしまえばすぐさま現れる』

 

 

黒猫が首を上げると、一枚のカードがデッキから抜け出して、自然と浮き上がる。

 

 

『デッキから【貪り喰らうイゴーロナク】を特殊召喚!』

 

 

 

【貪り喰らうイゴーロナク】

儀式モンスター

星9/闇属性/邪神獣族/攻2900/守2300

「邪神招来の儀式」により降臨。

このカードは儀式召喚または以下の方法で特殊召喚できる。

●デュエル中に1度、このカード名が宣言されたターンの自分メインフェイズ時、このカードは手札・デッキから特殊召喚できる。

⑴このカードが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に発動する。ダメージ計算を行わず、その相手モンスターを破壊する。

⑵このカードが効果で破壊された場合に発動できる。自分フィールドのモンスターを1体選んで破壊して、このカードを特殊召喚する。

 

 

 

現れたのは頭がなく首元と両手の掌に口がある異形の巨人。まともに目視したら正気を擦り減らしそうなモンスターだが、アンはびっくりして首を傾げるのみだった。

 

 

「ほえー?」

『イゴーロナクは自分の名が宣言されたターン、デッキから特殊召喚できるのさ』

「すごい!」

 

 

どれだけ異質なことかは当然分かっていない。

 

 

『【グラーキの黙示録】の効果でデッキから儀式魔法を手札に加える。僕は今しがた手札に加えた儀式魔法【邪神招来の儀式】を発動』

 

 

 

【邪神招来の儀式】

儀式魔法

このカード名の⑵効果は1ターンに1度しか発動できない。

⑴レベル合計が儀式モンスターのレベル以上になるように自分の手札・フィールドのモンスターをリリースして、邪神獣族の儀式モンスターを手札から儀式召喚する。

⑵このカードが墓地に存在し、邪神獣族モンスターのカード名が宣言された場合に発動できる。このカードを手札に加える。

 

 

 

『僕は手札のレベル9【飛翔するビヤーキー】をリリースして儀式召喚を行う。現れよ【腐敗した湖のグラーキ】!』

 

 

 

【腐敗した湖のグラーキ】

儀式モンスター

星9/水属性/邪神獣族/攻2600/守3100

「邪神招来の儀式」により降臨。

このカード名の⑴効果は1ターンに1度しか発動できない。

⑴相手モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターのコントロールを得る。そのモンスターの効果は無効化され、アンデッド族となる。

⑵自分フィールドのアンデッド族モンスターをリリースして発動できる。自分のLPを1000回復する。

 

 

 

『これでターンエンド。さあ、君のターンだ。』

 

 

ニャル

LP4000

手札2

貪り喰らうイゴーロナク(攻撃表示)

腐敗した湖のグラーキ(守備表示)

グラーキの黙示録(永続魔法)

 

 

 

「はーい! わたしのターン、どろお! えっとえっと、青いカードはぎしき? ってやつなんだよね」

 

『そう。儀式召喚は儀式魔法がないといけないんだ。普通に出すなら、ね』

 

「じゃあてふだを1まいすてて【かるときょーだんのぼうきょ】をはつどう!」

 

 

【カルト教団の暴挙】

通常魔法

このカードの⑴⑵効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。

⑴手札を1枚捨てて、相手モンスター1体を対象として発動できる。対象をリリースして、そのモンスターよりレベルが高い邪神獣族モンスターをデッキから1枚選んで手札に加える。

⑵このカードを墓地から除外して発動できる。邪神獣族モンスターのカード名をひとつ宣言する。ターン終了時まで、宣言したモンスターの特殊召喚時に相手は効果を発動できない。

 

 

「あいての場の、えっと、ぐらあきをりりーす!」

 

『おやおや、僕のカードがリリースされちゃった』

 

「それよりレベルが高いモンスターをてふだにくわえるね! このカード!」

 

 

【外なる煽動者 ニャルラトテップ】

 

 

『……へえ』

 

 

「えっと、名前を知ってもらわないといけないから……ぼちのかるときょーだんのぼうきょをじょがいして、【あうたーメッセンジャー ニャルラトテップ】をせんげん! なまえを知ってもらえたから、てふだからとくしゅしょーかん!」

 

 

 

外なる煽動者(アウターメッセンジャー) ニャルラトテップ】

効果モンスター

星11/闇属性/邪神獣族/攻?/守?

このカードは通常召喚できない。

このカード名の⑴効果による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、⑵⑶⑷効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。

⑴このカード名が宣言されたターンの自分メインフェイズ時、手札から特殊召喚できる。

⑵邪神獣族モンスターのカード名をひとつ宣言する。手札・デッキから宣言したカードを公開する。このカード名は宣言したカード名と同じとなり、同じ攻撃力・守備力となる。

⑶このカードをリリースして発動できる。邪神獣族の儀式モンスターを手札・デッキから儀式召喚扱いで特殊召喚する。

⑷墓地のこのカードをデッキに戻して発動できる。融合素材として決められたモンスターを自分フィールド・墓地からデッキに戻して、「白痴の魔王 アザトース」を融合召喚する。

 

 

 

 

 

『僕自身を出してくれるなんてね』

 

「にゃるくん?」

 

『僕の持つ千の姿のヒトツ。つまりそのカードも僕自身さ』

 

「ほえー」

 

 

当然ながらよくわかっていない。

 

 

『さて、僕の効果は自分をリリースして邪神を呼び出す効果だ。何を呼び出せばいいかわかるかい?』

 

「わかんない!」

 

『ヒントをあげよう。僕の場に残る【貪り喰らうイゴーロナク】は戦闘する相手を問答無用で破壊する効果を持つ。攻撃力が高いだけじゃいけないよ』

 

「うーん」

 

 

アンは悩むが、そもそもデッキの中身をよくわかっていないのである。解決策がすぐさま出ることはなかった。

 

 

「やってみよう! にゃるくんのこうかをはつどー!」

 

 

 

ニャルラトテップの効果は自身をリリースすることで邪神を呼び出す効果。矮小なる人間では、例えデュエルモンスターズのカードに封じ込めた分け身であっても儀式と贄を必要とする。だが、ニャルラトテップにそのようなものは不要。やろうと思えば口先ひとつで招来させることすらできるのである。

 

 

 

「【ぐれーとおーるどわん はすたー】!!」

 

 

 

黄衣の王(グレートオールドワン) ハスター】

儀式モンスター

星11/風属性/邪神獣族/攻4000/守4000

「邪神招来の儀式」により降臨。

このカード名の⑶効果は1ターンに1度しか発動できない。

⑴このカードはカードの効果の対象にならない。

⑵このカードを儀式召喚した場合に発動する。このカード以外のフィールド上のカードの効果を無効にする。

⑶このカードが相手によってフィールドを離れた場合に発動できる。「黄衣の王 ハスター」のカード名が記されたモンスターをデッキから2枚まで選んで守備表示で特殊召喚する。

 

 

 

 

 

 

 

『やるね!』

 

 

最適解の登場に思わず感嘆する。ハスターの効果は永続的な無効効果。イゴーロナクの破壊効果は勿論使えなくなるが、フィールドにあった【グラーキの黙示録】の持つ破壊を肩代わりする効果すらも封じ込めた。この場において最適であると言えるだろう。

 

 

それに何より、アンの状態に着目した。

 

 

「すごーい! おっきい!」

 

 

ハスターをコントロールして尚、正気を保っているのだ。

 

 

彼ら邪神は強大な力を持つが、コントロールするプレイヤーの正気度を奪う。実際、これまで声をかけてきた者達は皆、グレートオールドワン1体を降臨させるだけで、致命的な錯乱を引き起こしていた。

 

 

発狂した上で呼び出すことは可能であろう。発狂せず中途半端な顕現をすることも可能だろう。しかし、グレートオールドワンの降臨で正気を保ち、且つ平然としている。この上なく最高の逸材である。

 

 

 

「じゃーバトル!はすたーでいごーろなくをこうげきー!」

 

『ハスターの攻撃力4000に対して、イゴーロナクの攻撃力は2900。イゴーロナクの強制効果が発動するけど、ハスターの効果で無効になっている。グラーキの黙示録の破壊代用効果も無効にされて使えない。このまま戦闘破壊されて1100のダメージを受けるね』

 

 

ニャル君 LP4000→2900

 

 

「これでたーんえんど!」

 

 

天音アン

LP4000

手札4

黄衣の王 ハスター

 

 

『ふむ』

 

 

こちらのカードを封じ込めて、グラーキは効果で処理。イゴーロナクを戦闘破壊してボードアドバンテージを獲得。悪くない動きだが、このデッキはもっとやれる。

 

 

『君、実は今勝ててたことに気付いてる?』

 

「ほえ?」

 

『君と僕のデッキは同じ。つまり僕が出したモンスターは君も出せる。ほら、僕の化身の効果をもう一度読んでごらん』

 

 

外なる煽動者(アウターメッセンジャー) ニャルラトテップ】

効果モンスター

星11/闇属性/邪神獣族/攻?/守?

このカードは通常召喚できない。

このカード名の⑴効果による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、⑵⑶⑷効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。

⑴このカード名が宣言されたターンの自分メインフェイズ時、手札から特殊召喚できる。

邪神獣族モンスターのカード名をひとつ宣言する。手札・デッキから宣言したカードを公開する。このカード名は宣言したカード名と同じとなり、同じ攻撃力・守備力となる。

⑶このカードをリリースして発動できる。邪神獣族の儀式モンスターを手札・デッキから儀式召喚扱いで特殊召喚する。

⑷墓地のこのカードをデッキに戻して発動できる。融合素材として決められたモンスターを自分フィールド・墓地からデッキに戻して、「白痴の魔王 アザトース」を融合召喚する。

 

 

 

「……あっ、カード名をせんげん! イゴーロナクをよべるんだ!」

 

『そゆこと。攻撃力2900だから、ちょうど勝ってたんだよね』

 

 

ニャルラトテップの名称宣言は攻守をコピーするが、真価はそこではない。カード名の宣言が重要なこのデッキにおいて「とりあえず宣言」ができる効果の希少価値は高い。当然、名前を呼ぶだけで出てくる連中との相性はバッチリだ。

 

 

 

『じゃあ僕も彼らを呼び出そうか。ドロー……フィールド魔法【深海都市ルルイエ】を発動』

 

 

 

【深海都市ルルイエ】

このカードはフィールドに存在する限り「海」として扱う。

このカード名の⑵⑶効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。

⑴発動時の処理として「深き海に眠るもの クトゥルフ」のカード名を宣言する。

⑵自分メインフェイズに発動できる。このターン中にカード名が宣言された邪神獣族モンスターをデッキから1枚選んで手札に加える。

⑶このカードが相手によって破壊された場合に発動できる。自分の手札・墓地から「深き海に眠るもの クトゥルフ」を召喚条件を無視して特殊召喚する。

 

 

 

 

『発動時の処理として【深き海に眠るもの クトゥルフ】のカード名を宣言。これは宣言するだけなんだけど、⑵の効果に繋がるんだ。このターン宣言した邪神をサーチする効果を持っているよ』

 

「ほえー」

 

『その前に、クトゥルフの名が宣言されたことで、墓地の「邪神招来の儀式」の効果を発動。このカードを手札に戻すよ。更にルルイエの⑵効果を発動。当然、「深き海に眠るもの クトゥルフ」を手札に加える』

 

 

あっという間に儀式召喚に必要なパーツが集まっていく。儀式召喚は必要なリソースがどうしても多くなってしまう。名前を呼ぶたびにリソースを貯めることこそ理想的なムーブである。

 

 

『邪神招来の儀式を発動。手札のレベル11【玉虫色の眷属 ショゴス】をリリースして儀式召喚を行う。星辰ここに揃えり。【深き海に眠るもの クトゥルフ】を儀式召喚!』

 

 

 

 

深き海に眠るもの(グレートオールドワン) クトゥルフ】

儀式モンスター

星11/水属性/邪神獣族/攻4000/守4000

「邪神招来の儀式」により降臨。

このカード名の⑶効果は1ターンに1度しか発動できない。

⑴このカードはフィールドに「海」が存在する限り、他のカードの効果対象にならず、効果で破壊されない。

⑵このカードを儀式召喚した場合に発動する。「海」を除くフィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。

⑶このカードが相手によってフィールドを離れた時、フィールドに「海」がある場合に発動する。「海」を破壊して、このカードを特殊召喚する。

 

 

 

 

 

「よ、4000!」

 

 

攻撃力4000の超大型モンスターが現れ、アンは驚愕する。今しがた出したハスターと同格の能力を持っていたからである。

 

 

『クトゥルフの効果により、海を除くフィールドの魔法・罠は破壊される。効果を無効にされて置物になった【グラーキの黙示録】を破壊するよ。深海都市ルルイエは「海」として扱うため破壊されない』

 

 

幸い、アンの場にはセットカードがなかったが、本来であれば伏せカードという対処手段を奪う高ステータスカードということだ。その強さは疑うまでもない。

 

 

 

『いくよ。クトゥルフでハスターを攻撃!』

 

「やっちゃえはすたー!」

 

 

攻撃力4000、超大型モンスター同士の戦闘。アンは知らない事情だが、クトゥルフとハスターは本体同士が敵対する因縁持ちのカードでもある。容赦のない激突を行い、互いに余波をまき散らしながら粉砕される。

 

 

『破壊されたことでクトゥルフの効果を発動。ルルイエを破壊して、自身を蘇らせる』

 

「あっ! わたしもはすたーのこうかをはつどー! 2たいのビヤーキーをデッキからとくしゅしょーかん!」

 

 

【飛翔するビヤーキー】

レベル9/風属性/ドラゴン族/攻2700/守1800

このカードの⑴効果による特殊召喚は1ターンに1度しかできない。

⑴自分フィールドに「黄衣の王 ハスター」が存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

⑵このカードは1度のバトルフェイズに2回までモンスターに攻撃できる。

 

 

 

クトゥルフは自身の住まいを破壊して尚、再び地上へと姿を現す。

一方、ハスターは自身の眷属を後続として呼び出した。2体のモンスターは十分強力だが、クトゥルフを相手取るには物足りない。

 

 

『蘇ったクトゥルフで再び攻撃。ビヤーキー粉砕!』

 

「でもまだのこってるよ!」

 

『僕はターンエンド。クトゥルフは場に「海」が存在しなくなったことで耐性を失っている。さあ、突破してみなよ』

 

 

ニャル

LP2900

手札1

深き海に眠るもの クトゥルフ

 

 

 

「わかった! わたしのたーん、どろお!」

 

 

アンは勢いよくドローする。手札は未だ潤沢。耐性のない攻守4000相手なら十分な手札であろう。

 

 

「【きょうしんしゃのしゃほん】はつどー!」

 

 

【狂信者の写本】

永続魔法

このカードは1ターンに1度しか発動できない。

⑴発動時の処理として、邪神獣族モンスターのカード名をひとつ宣言する。

⑵1ターンに1度、以下の効果からひとつを選んで発動できる。

●宣言したカードを墓地から手札に加える。

●宣言したカードを手札から捨てて1枚ドローする。

●宣言したモンスターと同じレベルを持つ生贄トークン(効果モンスター/魔法使い族/闇属性/攻0/守0)を特殊召喚する。このトークンは攻撃宣言できず、邪神獣族モンスター以外の融合・S・L素材にできない。

 

 

「えっと、名前をせんげんするよ。わたしがせんげんするのはー……このカード!」

 

 

 

空に蠢く炎(グレートオールドワン) クトゥグア】

 

 

 

 

『おっと…』

 

 

想定外の名前が宣言されたことでニャルはたじろぐ。そのカードを作った覚えはなかったが、どうやら知らぬ間に干渉があったらしい。

 

 

『あやつめ、いつの間に混ざり込んでたんだ。まあいいか…』

 

「もひとつこうかで、くとぅぐあとおなじレベルのトークンをだす。【じゃしんしょーらいのぎしき】はつどー!」

 

 

再び発動された邪神招来の儀式。邪神の名前を宣言されることで繰り返し使えるこのカードは本デッキのメイン儀式である。

 

 

「トークンをリリースしてぎしきしょーかん! ぜーんぶもえちゃえ! 【ぐれーとおーるどわん くとぅぐあ】!」

 

 

 

空に蠢く炎(グレートオールドワン) クトゥグア】

儀式モンスター

星11/炎属性/邪神獣族/攻?/守?

「邪神招来の儀式」により降臨。

このカード名の⑶効果は1ターンに1度しか発動できない。

⑴このカードは戦闘・効果で破壊されない。

⑵このカードを特殊召喚した場合に発動する。フィールドのカードを全て破壊する。このカードの攻撃力・守備力は破壊したカードの数×1000となる。

⑶このカードが相手によってフィールドを離れた場合、自分フィールドに他のカードが存在すれば発動できる。このカードを特殊召喚する。

 

 

 

 

『ファーwww』

 

 

その効果を見たニャルは笑うしかなかった。このカードはニャルが作ったものではないため初見である。仮にも己の敵対者、それが秘めたパワーはよく知っている。

 

これらのカードはあくまで写し身。すでに存在する魔法カードの拙さに憤って己で作ったカード達である。ようはオリカである。やりたい放題になるのは仕方ない。

 

 

「フィールドのカードをぜんぶはかい! ふぁいあー!」

 

ビヤーキー『えっ?』

 

 

空に顕現した偽物の太陽が全てを焼き尽くす。アンのフィールドにあった「ビヤーキー」「狂信者の写本」、ニャルの場にあった「クトゥルフ」の3枚を薙ぎ払った。実は己も巻き込んでいるがセルフ破壊耐性で耐えている。

 

 

空に蠢く炎 クトゥグア 攻?→攻3000 守?→3000

 

 

「くとぅぐあでだいれくとあたーっく!」

 

『うん、見事だ。良い収穫だったよ』

 

 

ニャル LP2900→0

 

 

 

 

 

「やったー! かったー!」

 

 

勝負はアンの勝利だった。ニャルがあまり本気ではなかったのもあるが、アンは初心者かつ何のデッキか分からないままでのデュエルである。これで勝てるのならば、十分な逸材と言えよう。

 

また、ニャルは別視点でアンが待ち望んでいた人物と確信した。あれだけグレートオールドワンをコントロールして尚、消耗した様子がない。彼女はまさにニャルの遊びにぴったりの人材だった。

 

 

『これでキミはまた戦える。勝ちたい人がいるだろう?』

 

「ほえ?……あっ!」

 

 

ニャルを抱えてぐるぐる回っていたアンはニャルに指摘されて思い出す。そうだ、自分は元々アンティルールでカードを奪われて悲しい思いをしていたのだと。だが、新しくカードを得た。これで元の持ち主にも勝った。それなら、また奪い返せるかもしれない。

 

 

「いこうニャル君! りべんじするよ!」

 

『僕も行っていいのかい?』

 

「もちろん!」

 

アンはニャルを抱えて意気揚々と飛び出す。その腕の中でニャルはほくそ笑む。

 

 

 

『さて、キミはどれだけ退屈しのぎになってくれるかな』

 

 

 

 

 

 

後日

 

デュエル中にアンの対戦相手が突如として錯乱した事件が発生

 

 

めでたく学級閉鎖となった。

 

 

 





ニャル「やりすぎちった」


●デッキ名「コール・オブ・クトゥルー」
レベル9・11を中心とした邪神獣族の儀式召喚デッキ。ほとんど最上級モンスターでクソ重い。事故るわこんなん。
カード名の宣言をトリガーにした効果が多い。宣言するのはなんでも良く、デーモンの宣告とかでもOK。特にニャルラトテップとイゴーロナクはサクサク出てくるので重要。
優秀な永続魔法が多いが、その分どいつもこいつも自分フィールドを巻き込んだ破壊効果を使うので使い切りになりやすい。

今まで登場したカードの解説ページいる?

  • いる
  • いらない
  • 分からない、我々は雰囲気で遊戯王している
  • ネフィリム返して
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