ホシノに依存するまで   作:元ポリスメン少佐

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前話の最後を変えました。
主人公が御守(みもり)レミと名乗った以外は、ユメ先輩についての描写を少し変えただけなので確認せずとも大丈夫です。


ヒーロー

 

 無事にアビドス生になった今日この頃。想像した以上に楽しく生活できている。

 

 シロコという例こそあれど、こんな身元不明不審者の入学手続きは大丈夫なのか心配になったが、ユメ先輩曰く特に問題ないとのことだ。

 意外とその辺りは緩いのだろう。

 

 住居は仮として学校に住まわせてもらうことになった。将来的には使われなくなった家をリフォームするつもりだそう。

 

 そんなこんなで。砂の入り込み始めた校舎や、街を駆ける引越し業者のトラック、収支報告書に描かれるアビドスの自転車操業など。

 少しずつアビドスの現状を理解しつつも、先輩の手伝いをしながら楽しく過ごしていた。

 

 一つ驚きだったのが、この学校に先輩と小鳥遊ホシノ以外の在校生がいたことだ。

 全員二年生か一年生で、三年生は見当たらなかった。

 

 会うことは少ないが、話をしてくれるし、記憶喪失なことを心配もしてくれる良い人たちだ。

 ただ、ユメ先輩を見る度に気まずそうな、気の毒そうな顔をしていたのが忘れられない。

 

 何か聞こうにも、何故か皆んな悲しそうな顔をしていて……できなかった。

 

 

 さて。そんな風に、色んな人と交流したり、校舎を探索したり、ユメ先輩のお手伝いをしてた訳だが。

 

 ついさっき、朝に署名活動をしていた時だ。

 なんと、小鳥遊ホシノと出会ったのだ!ショートヘアに防弾ベストと、あまり見覚えのない感じだったが、あの髪色とオッドアイはホシノ以外ないだろう!

 

 なんだか、知っているホシノと比べてなんというか……ボーイッシュでかっこかわいい感じだった。

 

 

 とはいえ、話しかけようとした先輩を無視してどっかへ行ったのは許さない。

 

 

 それにしても、ユメ先輩とホシノは仲が良いイメージがあったが……違ったのだろうか。ポスターを破って決別してしまった以外は仲良しで、二人で宝探しをしていたはず。

 

 まだ溜飲は下がっていないが、流石に先輩の仲を引き裂く様な真似はしたくない。今度ユメ先輩とホシノをくっつける方法を考えなくては。

 

 

 

 

 

 ◯◯◯◯◯◯◯◯

 

 

 

 

 

「ユメ先輩、朝会ったホシノって……どんなやつなんですか?」

 

 事務作業をしながら、先輩に問いかける。先輩は書類に集中していたのか、少し遅れてから答えた。

 

「ホシノちゃん?ホシノちゃんならね、喧嘩を止めてくれたり、パトロールをしてくれたりしてる、とっても良い子なんだって!」

「とてもそんな人には見えませんでしたけど」

 

「……う〜ん、確かにまだまだよく分からない子だけど。きっと、悪い子じゃないと思うんだ」

 

 本当にそうだろうか、良い子は先輩を無視なんてしないだろう。

 そう思っても、先輩にこれ以上不満をぶつける事はできず。

 

「……わかりました。今度あったら、ちょっと話をしてみます」

「うん! ありがとう」

 

 また今度、ホシノと会った時にどうにかしようと、後回しにしたのだった。

 

 

 

 

 

 ◯◯◯◯◯◯◯◯

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと!?めちゃくちゃに撃たれてるんですけど!?」

「ご、ごめんレミちゃぁん!だって、困ってるのかなぁって!」

「こんな夜にあんなとこ居る時点で関わるべきじゃないでしょ!クソっ、こうなるならホシノの忠告通り早めに帰っときゃよかった!」

 

 絶賛銃弾の雨の真っ只中。雨と言うにはあまりに横ぶりだが、そんな事を気にする暇はない。

 

 死を覚悟するほどの銃声がする。これまで遠くから聞こえる銃声こそあれど、自らに向けられたことなんてない。

 

 パシュンと弾丸が耳元を掠める音にめちゃくちゃビビり散らかしながら、今日の事を思い返す。

 

 

 

 今日は、期限が迫っていたから暗くなる時間まで署名活動をしていたんだ。

 その途中でホシノと出会って、無視されず会話ができたことに驚いたのは良く覚えている。

 

 そうして署名集めに歩き回ってたら、路地で座り込んでいる奴らを見つけた。

 スルーすればいい物を、「大丈夫ですか?何か困ってますか?」なんて先輩が話しかけに行った。

 

 そのあとは「うちら金なくてさ〜」「貸してくんない〜?返すつもりはないけど」などと。テンプレ不良仕草をしてきたので先輩の手を引いて全力で逃げたんだ。

 そしたら案の定すぐに乱射されて、遮蔽物から動けない状態になっている。

 

 

 

 今隠れているコンクリート塀はなんとか弾丸を受け止めているが、それもいつまで持つか。

 ユメ先輩が肩に掛けている盾を使えば、どちらかは逃げられるだろう。でも、俺も先輩も他者犠牲は大嫌い、それは無しだ。

 

 ならばと抵抗しようにも、俺には銃がない。そういやこの世界じゃ必須品だったな! 

 

 先輩も銃を持ってはいるが、ハンドガン。対して相手はアサルトライフルが二名に、スナイパーが一人。最後にガトリングガンが一人と人数でも装備でも負けている。

 

 いや、撃つ弾丸をセーブしてるように見えるあたり、物資がないのも資金不足なのも事実なのだろう。

 

 それでもハンドガン一丁とは比べ物にならないが。

 

「ユメ先輩! このままじゃどうしようもない! 一回作戦を聞いてください!」

 

 銃声に負けじと大声を張り上げる。逃げるにはあまりに開けていて、背中を撃たれるだろう。だが銃で抵抗しようにも、こちらにはハンドガン一丁のみ。こんな中、俺が思いついた最後の案は──

 

 

「盾を貸して! それで突っ込むから拳銃で援護してください!」

 

 脳筋特攻である。逃げられない? 拳銃一丁では抵抗できない? 

 ならば最後にあるのは拳のみだ。盾を使って近づいて、それでぶん殴る。

 そうやって囮になって、先輩に撃ってもらってフィニッシュだ。

 

 正直無茶苦茶な作戦だ。それでも、この作戦が成功することを疑っていない。

 それは、主人公気分なのか、なんなのか。

 

「え!?む、無茶だよ!それに、戦うなんて……というか、それなら私が盾使う方がいいよ!」

「拳銃の練習なんてしたことないです!分かりますか!これが最も合理的なんです!」

 

 そう言うと、渋々と言った感じで盾を展開し、渡してくれた。

 

(うっ、意外と重い……)

 

 体感30kgはあるだろうか。ゲームでは軽々と使っているイメージしかないし、先輩だっていつも持ち運んでいるから勘違いしていた。

 

 弾丸を止めれる鋼鉄の盾なんて重いに決まっている。

 そもそもライフル弾やなんならビナーの光線すら止めれる盾にしては、軽すぎると言っても遜色ない。

 

 それでも、訓練などしていない俺にはとても重い。道理で無茶という訳だ。

 

 だとしても、ここで役割を先輩と交代した所でどうしようもない。

 拳銃というものは意外と当たらないものだ。素人が使った所で、一撃当てられれば御の字だろう。

 

 それに……俺にも、見栄がある。

 

 気合いで持ち直し、相手側へと面を向ける。

 

「うおおぉぉお!…………──っ!?」

 

 掛け声だけは勇敢な兵士のように、確かな一歩を踏み締めた。だが、それもそこまで。

 ガキンと、鋼鉄と弾丸が衝突し、弾ける。持つだけで限界だと言うのに、そんなエネルギー量を受けてなお走り続けられるほど、俺の体幹は強くない。

 

「レミちゃん!?」

 

 ズサっと倒れ込んだ。盾を下敷きに、前方へ。背後でユメ先輩が叫んでいるような気がする。

 

 世界が、妙にスローモーションに見える。前方から、銃口がこちらを向いている。倒れ込んだ俺の顔に照準が合う。

 

 最後に見えたのは、マズルフラッシュと──

 

 

 

 

 ──その背後に見える、ピンクの残影だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いっっっった!ドンピシャ額狙いやがって……」

 

 結局、作戦は成功することもなくホシノに助けられる結果となった。最後に頭に一発銃弾を喰らってしまったが、気絶せずに済んでいる。

 それでも、酷い時の天気頭痛のような、鈍い痛みが残り続けている。

 

(駄目だった……か)

 

 痛みが、主人公気分を少しずつ抜いていく。俺は主人公をするには些か力不足だったようだ。

 張った見栄の分だけ、羞恥が湧いてくる。

 

「だから言ったじゃないですか! 早く帰ってください、って! なんで帰らなかったんですか? バカなんですか!?」

 

 痛みに喘ぎながら、ホシノからの説教を聞く。先輩からは良い子と聞いていたが、実際その通りなのだろう。説教されるのは勘弁願いたいが、心配されているのは身に沁みて伝わってくる。

 

 横で先輩が謝っているのを聞きながら、素知らぬふりをする。

 

「そもそもレミ! どうしてあなたは銃を携帯していないんですか? 今のアビドスは無法地帯なんですよ!? 自衛手段も持たずに無事にいられる訳がないでしょう!」

 

 素知らぬふりは失敗した。

 

「だって……銃がここまで必需品だなんて知らなかったし」

「知らない?知らない訳はないでしょう。一体これまでどんな所にいたんですか」

「記憶喪失だし……」

 

 記憶喪失という言い訳はそんなに使いたくないが、仕方ない。というか悪いのはアビドスの治安であって俺じゃない。

 

「記憶喪失? そんな言い訳が通ると思って──」

「そ、そうなの!レミちゃんは記憶喪失で……最近入学してもらったの」

「そんな怪しい人物を受け入れたんですか!?……こほん」

 

 ホシノは、目の前にその怪しい人物がいることを思い出したのか、咳払いをした。

 誰が怪しい人物だ誰が。そりゃあ論理的にはそうなることは理解できるが、感情が納得しない。

 

「それはそうと、せめて自衛用品は携帯してください。戦わないと、今のアビドスでは無事じゃ済みませんよ」

 

 

 正論だ、耳が痛い。

 

 正しさを受け止めきれず、つい、横の先輩に視点をずらす。すると、なんだか先輩が複雑そうな表情をしていた。

 それは治安の悪化したアビドスを憂う様で、それとはまた別の何かを考えているようで。

 

 俺には、その表情の裏まで察することはできない。

 それを察するには彼女と過ごした期間はあまりに短いし、原作知識だってそんなにないのだから。

 

「レミ!聞いてますか!?少なくともグレネードくらいは持ち歩いてください!」

 

 そうだとしても、悩みを共有してもらえないことにモヤっとしながら、少し燻った気持ちをホシノに向けながら、説教を聞き流すのだった。

 





主人公症候群だったレミちゃんは、主人公(ホシノ)に嫉妬して、拗ねています。それだけです。


モチベが上がったおかげで一週間で出せたので、これからもドシドシ評価お気に入り感想待ってます!
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