ホシノに依存するまで 作:匿名
また来週投稿しようを繰り返してたら四月が終わってた……
「二人とも、ここが新しい校舎だよ!」
「新しいって……ただの別館じゃないですか」
「それはそうだけど……」
黒服との邂逅からしばらく経って。
いよいよこれまでの校舎が使用不可になり、別のところに生徒会を移転することになった。
あの日以降、俺とホシノの距離は縮まった……と言うより、避けなくなった、の方が正しいのだろうが。
まあ、これまでよりも会話が増えたことは事実だ。
そして。
「もう、私たちだけになっちゃったね」
ホシノとの距離に反比例するように、元々いた他の在校生はいなくなってしまっていた。
(良い人たちだったのに)
嘘だらけの俺にも親身に接してくれる人たちだった。校舎で会うことは無くなっても、街で会う度に話しかけてくれて……。
今思うと、彼女たちもユメ先輩に一種の憧れでも抱いていたのだろうか。損得勘定抜きで人を助けられて、地元愛の強い先輩に。
誰だって生まれ育った故郷は去りたくないもので、それでも現実はあまりに非情だった。進行する砂漠化、去っていく住民、衰退する経済。
そんな中でも、希望を抱いて、それを周囲に魅せ続けている先輩の姿はあまりに鮮明だっただろう。
「いなくなった人たちのことは忘れましょう。期待するだけ無駄だったんです」
「そういう言い方は良くないと思うの。だって、悪いのは砂漠化でしょ?」
「………………」
だけど、そんな彼女たちを嫌うホシノの気持ちだって理解できてしまうんだ。
(あぁ、優柔不断だな。俺)
どちらかを嫌うことも、どちらかに肩入れすることもできない。
「でも、結局みんなアビドスを捨てたじゃないですか!」
「みんなじゃないよ、ホシノちゃんも、レミちゃんもいる」
「三人いれば何とかなるさ。三人寄れば文殊の知恵っていうだろ?」
そんな今の俺には、目の前にいる同級生を慰めることで精一杯だった。
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「ねぇねぇ二人とも。昔のアビドス生徒会が、アビドスの大オアシスにすっごいものを埋めたらしいの!」
「すごいもの、ですか?」
「金銀財宝とか?」
「うん、昔のアビドス生徒会がね────」
校舎移転から一月程経ち、新校舎にも慣れた頃。
先輩が唐突に「宝探しをしよう!」と言ってきた。
具体的に言うなら「大オアシスに埋まってる過去のアビドス生徒会の遺産を探そう!」だが、大体宝探しである。
「ユメ先輩は、自分がいま何を言っているのか分かってますか?」
普通の生徒会なら、こんな提案一蹴されて然るべきだろうが。
「こうしている場合じゃないですよ!今すぐ探しに行きますよ!!」
「倉庫からスコップとツルハシ取ってきます!」
俺たちは普通の生徒会じゃなかった。
普段は真面目なホシノさえも、宝探しという言葉のワクワク感には抗えない。
そんなこんなで、大オアシスへと向かったのだが──
(…………普通に考えて、水着に着替える必要あったか?)
砂を掘り続けて一時間ほど。
大オアシスに埋まっているのは分かっているとは言え、それでも掘る範囲が広すぎる。
というか、オアシスが干からびてその上に何層も砂が積もっていった後の砂漠から宝物を掘り当てるなんて無理難題に決まってる。
「……金属探知機でも持ってくるべきだったかな」
「こんなに広いと焼き石に水な気はしますけど、無いよりはマシでしたね」
「ひぃん……」
掘って、掘って、石に当たったらツルハシに持ち替えて。
黙々とそうしている間に、気づけば日が落ちていた。
「……先輩、ホシノ、これはそろそろ…………」
「も、もうちょっと頑張ってから……!」
「……ごめんねホシノちゃん。これは詰んじゃったよ……」
希少鉱物の入った花火も、その他に何か有用なものも見つからず。
「ねぇ……私たち、どこから間違えたんだろ……」
「先輩が変な計画を持ち込んだところからじゃ無いですかね」
「その割にはホシノもはしゃいでたけどな」
「そ、それは!」
結果、宝探しは無為に終わったわけだが。
「……ふふっ」
「何ですか、何笑ってるんですかレミ!」
「ホシノちゃん、照れてる?」
「先輩まで!?」
こうやって一緒に色んなことしてると、俺もアビドスの一員に成れてる気がして。
俺にとっては、これ以上ない有意義な時間だった。
◯◯◯◯◯◯◯◯
「ユメ先輩!今日はホシノがいないんだから無茶しないでって言いましたよね!あいつらが
「ひぃん、ごめんねレミちゃん────」
「何で!学校に!襲撃が来るんだよ!?」
「知りませんよ!寝床が欲しいのか何なのか、一ヶ月に一回は来るんです!さあ、銃を取って!」
「分かったよ!」
「このラーメン美味しっ!?」
「ふふん、柴関ラーメンは美味しいでしょ!」
「他の自治区からも人が来るほどですからね。アビドスの名物です」
(すごい誇らしげだ。……やっぱり、アビドスのことが好きなんだな)
「あ、見て見て二人とも!あのお店、写真を撮ってロケットペンダントに入れてくれるんだって!」
「そんなものにお金を使う暇があったら、借金に……」
「いやでも、あの張り紙見る限り滅茶苦茶安いぞ?」
「うん!三人分作って貰おうよ!」
「ちょっと、私はっ!」
「ユメ先輩!どうしてそんなに騙されるんですかっ!」
「アビドスに残るのもいよいよ限界でね。レミちゃんには悪いけど、引っ越し会社はもう畳むことにしたんだ」
「どうもこうも、アビドスなんかでそんな簡単に人を信じる方がいけねぇ」
「アビドスの環境改善なんてどうせ……」
「アビドスは」
「アビドスなんて」
「アビドスじゃ」
「砂祭りのポスター、ですか?」
「うん!やっと手に入れたよー!」
たった数ヶ月。されど数ヶ月。
流れた時間は環境を変えて、人の心を変えて……余裕も平静も何もかも、奪い去ってしまった。
だけれど、そんな中でも常に明るい先輩は確かに救いになっていた。
だから、だからこそ。
「ホシノちゃん、最近元気ないし……これで、元気出してくれるかも!」
「それは、見せない方がいいかもしれないです」
死んでもらう訳にはいかない。
俺の知る知識は断片的なものだが、それでもユメ先輩の死のトリガー自体は知っている。
砂祭りのポスターをホシノが破って、喧嘩別れをしたまま死別する。
だから、それさえなんとかすれば先輩は死なないはずなんだ。
「え、どうして?」
「最近切羽詰まってるみたいですし、下手なことをしたらまた怒られますよ?」
「うぅ……そ、それでも何もしないよりは!」
「それなら賞金稼ぎの名目で観光に行くのはどうです?ちょうどD.Uの方でスケバンの集団が指名手配されてますし」
「でも、学校を空けるのは……」
「それなら俺が残ってますから、気にしないで。ホシノの暗さには俺も困ってたんですよ。だから、なんとかしてきてください」
「うん……分かった。ありがとうね、レミちゃん!」
そうやって先輩を説得した後、後から来たホシノに「D.Uの方に割りの良い指名手配犯がいるから先輩と行って来て」と仕事を押し付けた。
そうして全部解決した、そう思い込んでいた。
「あ、お帰り!二人とも……って、え?」
・転校したアビドス生
アビドスへの思い入れは強かったし、ユメ先輩に脳を焼かれてはいるがしっかりと現実を見ていた。
めちゃくちゃ強い同級生/後輩(ホシノ)がいたのも辞めた理由の一部。
一年生にとっては遅く入学した同級生、二年生にとっては後輩だった記憶喪失のレミのことが心配で、結構世話を焼いていた。
ただレミがホシノやユメ先輩と仲良くなって、「私がいなくてもなんとかなる」と判断したのが最後のきっかけ。
廃校寸前の高校にわざわざ残ってて、ユメ先輩の輝きを見てる人が善人じゃない訳がない(確信)
・ロケットペンダント屋
普通にぼったくりで、作った後に張り紙の数十倍の値段を請求された。
ホシノがボコボコにして解決した。
・ロケットペンダント
呪いのアイテム化が確定している。
この世界では写真立ての代わりのユメ先輩の写真。