組織壊滅後色々   作:あとか

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組織壊滅後、誰にも正体明かさず元に戻ることにしたコナンの話。2024年5月に書いたものなので、安室さん基降谷さんがコナンの正体を知りませんし、新一と快斗が従兄弟って設定も考慮してません。
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”小さな名探偵“が消える時

数日前ーー

公安(ゼロ)・FBI・CIA・SIS・ICPOなどが手を組み、日本を拠点に活動していた大規模な犯罪組織は終わりを告げた

激しい銃撃戦になるところもあったが、奇跡とも言えるレベルで敵味方双方に死者は出なかった。

この案件はまさに”パンドラの箱“。

組織が壊滅すると同時に世界を震撼させた。

何か後ろ暗いものがある個人や団体は”次は我が身“と戦慄し、何も知らない彼らが守ろうとしていた人たちは裏社会の恐ろしさを知って声を失った。

その組織と関わりが深かった人物が各々表舞台から去っていくように、正義側である人間もその場を去ろうとしていた。

ーー傍目から見れば、ただの少年なのだが。

 

「今までありがとう、みんな。僕はもういなくなるよ。」

その一言で、正義側の人間全員が動きを止めた。

普通ならあり得ないことだが、彼の存在がどれだけ大きいものであるのかが良く分かる光景だった。

一拍の間の後、捜査官たちが口々に彼に問い質す。

しかし、彼は笑っているだけで何も答えない。

 

「いなくなるって……嘘だよね?」

褐色肌に金髪でおおよそ日本人とは思えない三十路の男は、彼の前に屈み肩をがっしりと掴んで流暢な日本語で問い質す。その表情は裏の顔のようでもあり、何も取り繕っていない彼本来のもののようであった。彼の後ろに控える眼鏡をかけた強面の男は上司の行動に驚きつつも何をしたらいいのか分からず、表情に出さないものの視線で不安を表現していた。

 

「本当だよ。”僕”は元々、この世界にいない―いるはずのない存在だから。僕もある意味ではあなたと同じ。だから目的が終わればいなくなるのは道理だよ。……バイバイ、―――さん。」

その言葉を聞いた彼は、呆然として少年の方から手を放してしまった。

少年はソレを狙っていたかのように、大勢の大人がいるスペースをくぐり抜けていく。

最後の一言で精神的ダメージを喰らった彼は、何もできず少年の方に手を伸ばすことしかできなかった。

 

 

 

「いいのか、ボウヤ。」

大勢の捜査官が集まっている部屋から少し離れた廊下。

壁に寄りかかっている彼は、部屋少年に声を掛けた。

強面具合でいえば、金髪の彼の部下よりもキツイ。

加えて物言いも端的であるのだから、並大抵の人間は委縮してしまう。

しかし、慣れている少年にとっては怖いものではなかった。

 

「……いいんだよ。あの薬のことは言わない方がいいから。勿論彼のことは信用してるけどさ、だからと言って上がどういうかなんて分かんないじゃん。彼は生粋の警察官だよ?あんな無茶繰り返すような人だけど正に"狗”だから。下手にバレたら、飼い殺しにされかねないもん。僕は誰かの言いなりになることも、誰かに自由を拘束されるのも好きじゃない。――夢は昔から変わってないから。」

 

そう言い切った少年の目には強気な光が灯っていて、彼はふっと笑う。

その強気な姿勢は、初めて会った時から何も変わらない。

本来知る筈のなかった社会を知り、精神的に大きく成長して、決意を新たにしただけだ。

 

「……ふっ、そうだったな。別れだな、ホームズの弟子君。」

彼は少年の前に屈みイタズラ心を込めてそう言う。少年もその言葉に少し驚くが、いつもの不敵な笑みを浮かべて同じように囁いた。

「そっちもね。ピエロのお兄さん。」

 

お互い似た表情を浮かべて顔を見合う。知っているからこその距離感。

これが互いに心地よくて、”共犯者”として過ごしていたこともある。

けれど、こっからは別れるべき。

様々な難事件を解決する名探偵を目指す少年には、必要とあらば闇に潜る存在は相応しくない。

彼の隣に立つべきは、アイリーンのように彼を一途に愛し又彼も一途に愛す、居なくなってしまった彼女に似た少女。

いつまでも彼の光で居続ける彼女がいるからこそ、彼が彼らしくいれるのだ。

 

本当に子供らしい笑みを浮かべ”本来の家族がいる場所”へ駆けていくその背中を見て、彼は小さく呟いた。

「今後の活躍を期待しているよ、世界一の名探偵(ホームズ)君。」

 


 

 捜査官たちの前で”失踪宣言”した、その夜。

少年は一人、ホテルの屋上に来ていた。ここは、少年と白き罪人が初対面した場所。普通人が来ない場所なだけあって、子供一人紛れ込もうが誰も気にも留めていなかった。

 

 

「おい、居るんだろ。」

ぶっきらぼうに投げかけた言葉は、昼間捜査官たちの前では一μ(マイクロ)も出さなかったもの。外見に不相応ながら、その実彼の素の口調であった。その言葉に応答するように返ってきたのは、何とも軽いもの。”探偵と怪盗”という相反する立場であることは意識しつつも、どこか気の抜けたもの。

 

「そういや、名探偵は解決したんだっけ。」

「あぁ、数日前にな。解毒剤も完成したから、今日で”僕”は消える。天敵がいなくなって良かったな?」

 

 怪盗の質問に淡々と答え最後にニヤッと笑って見せた少年に、怪盗は鳥肌を立てる。

”天敵がいなくなる”、彼はそう発言したがそれは全くの見当違いだ。

体のハンデを背負ってまで裏社会に潜む犯罪組織を釣り上げた大物。おまけに本来の姿は”日本警察の救世主”などと呼ばれる高校生探偵。一度お互い顔を見ずに対戦したことがあったが、計画を大いに狂わせてくれた存在だ。例えこの白き罪人の現場に出なくとも、今であれば電話やメールひとつで目の前の大胆不敵な窃盗犯を窮地に追いやることが出来るだろう。彼は目の前の少年の笑みから本気を感じ取り、望んでいないエンドが見えて戦慄した。

そんな怪盗の気持ちを知ってか知らずか、目の前の少年はサラッと言う。

 

「ま、オメーの場合秘密を隠しとかなきゃいけねぇ相手が多くてキツイだろうけど……がんばれよ、甥っ子君?」

 一瞬言われた言葉を理解できず、白い怪盗は動きを止めた。そしてIQ400という頭脳でその言葉の真意を探ろうとする。コイツはどこまで知ってるんだ?俺がコイツの事情を知り過ぎたから、コイツも腹いせに俺のことも調べたのか?っていうか甥っ子ってどういうことだ?自問自答しては無限ループに入る。これは考えちゃいけねぇ、答えを聞かねばと彼の方に振り返ればその姿はなく。その場においてあったのは、一枚のカードのみ。

 

「ったく、やってくれるぜ。」

カードに書かれた文字の真意を読み取り、怪盗は小さく笑った。

 


 

 翌日の深夜零時きっかり。この世から、小さな名探偵が姿を消した。その真相は、砂上の一粒の人間のみしか知らない。その代わりという様に、世間はこぞって彼を取り上げる。

「東の高校生探偵 ついに復帰か⁈」

「死亡説はウソ! 帰ってきた名探偵!」

 

闇をつぶして光に帰還した名探偵―工藤新一を。

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