pixivはこちらから。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19240541#2
休日の午前六時。普段ならまだ寝ている時間だが、今日は荷物も整えて隣家の前にいた。
「博士!」
「おぉ、新一。早いの。」
「まぁな。」
体が元に戻ってからの初の外出だ。それにはやはり馴染みのある博士の車が良かった。幼少期から知っているこの車の雰囲気が好きなんだ。
「で、どこ行くんじゃ?」
「坏土シティホテル、西多摩市ツインタワービル、東都タワー、東都水族館併設の遊園地。」
「お、おい新一……。」
博士が狼狽えるのも無理はない。どこも組織が関係したところだから。けれど、元に戻ってから最初に行きたいと思っていた場所だから。
「博士にしか頼めねぇんだよ。特に坏土シティホテルとツインタワービルは博士しか知らねーからな。」
そう言って笑うと、博士は仕方がなさそうに笑い返した。
発進してから数分、車内に無言の空間がある。それがどうしても寂しく感じてしまった。
「なぁ、博士。なんかあいつらがいないと静かだよな、この車。」
「そうじゃなぁ。それだけ新一が繋いだ絆が深いということなんじゃろう。」
「……確かにな。新一としての記憶だったらそんなに変わんねーのに、コナンになってからこの車でしょっちゅうキャンプに行ってたからか、この車にアイツらの声が無いとなんか足りねぇ気がするんだ。……”江戸川コナン”はもういねーのにな。」
幼少期、この車には三人が乗っていた。俺と蘭、そして運転手の博士。
俺も蘭も騒ぐほどじゃなかったから、比較的静かな車内に三人。コレが日常だった。
けれどコナンになって仮初ながら”現役の時”よりも信頼できる仲間ができた。そしてその仲間とこの車でよく外出―特にキャンプをすることが増えた。その度に俺と灰原が保護者的な役割を果たして、本当の小学生三人を見守っていた。けれど、楽しそうな三人の声がいつの間にかこの車のイメージになっていたようだ。……そんなことを思っても、もうあいつらとは”無関係”なのに。
「そう無理に割り切る必要はあらんよ、新一。”江戸川コナン”も新一の一部じゃ。仮初の姿だったからこそ、奴らを倒すことができたんじゃろう?確かにあの子たちからしたら”新一”は部外者かもしれんが、心優しいあの子たちが新一のことを否定するとは思えん。遠慮せず関わっていいと思うぞ。」
”無関係”だと割り切ろうとしていたことを見抜かれた上に、適切な言葉を貰った。やっぱり博士は年上だけれども、信頼できる友人だ。
「ありがとな、博士。」
その一言で広がった雰囲気はあいつら三人には敵わないけれど、それでも暖かいものだった。