博士と組織に関係する各所を回ってから数日。今日はあいつと出かける約束をしていた。余裕をもって準備したつもりだったが、アイツの行動は思ったよりも早かった。
「よぉ、工藤!」
「早ぇよ、服部。約束の20分前じゃねーか。」
「そんな細かいこと気ぃすんなや。善は急げやろ。」
「はっ、さいですか。」
コナンだろうが新一だろうが変わらないやり取りに心を温めつつ、アイツのバイクの後ろに乗った。人気のない裏道を進んでいく。普段電話でしょっちゅう話すせいか、こういう時に限って話すネタがない。無言で服部のバイクは目的地に進んでいく。
結局目的地―近くのビーチに着くまで終始無言で終わってしまった。服部はバイクを止め、今にも飛び込もうと言わんばかりの元気さで俺に突撃してきた。
「何考えとるんや?」
「ったく、突撃してくんな。……ほら、俺がオメーのバイクに乗ってたのは俺がコナンで専ら事件の時だっただろ?だからふと思っちまってさ。」
「何をや。」
「俺がコナンになってなかったらの事さ。確かにコナンになって色々学んだけれど、もしなってなかったら。オメーとの関係はどうだったんだろうってな。」
こいつとの初対面*1は中学の時のスキー教室だったことは知っているが、知り合って頼り頼られの関係になったのは間違いなく俺が江戸川コナンであったから。”工藤新一”は事件を解決するといっても基本都内を出なかったし、服部も同じように府内を出ていなかった。その状況がもしずっと続いていたのだとしたら、いつ知り合って今ほど仲良くなれていただろうか。普段考えもしないIFをつい考えてしまった。
そんなことを考えている俺の頭を軽く叩いて、真剣な表情であいつは言った。
「何しょげたこと言ってんねん。確かに俺等が親しくなるきっかけは間違いなくあの坊主や。けど、あの坊主が居らんからとてずっと平行線とは思えへん。工藤には一度も言ったことあらへんかったけど、工藤が東都で有名になってる時から会うてみたい思うてたんや。たとえ坊主が居らんとも、俺のオトンのお使いで東都に行く機会もあったやろし、和葉の希望に沿って東都に来てたかもしれへん。それが工藤の失踪で早まっただけの話や。遅かれ早かれ俺等は親友になっとった。それでええやろ。うじうじ考える必要はあらへんで。」
潮風を感じながらその言葉を聞き取って、服部に笑顔を向けた。
確かに、幼児化が色々な人と関わり、いろな事件に遭遇して自分を高めるいいきっかけになった。それは間違いようのない事実。俺たちはどうにもならない夢物語なんて考えている暇もない追及者だ。だから摩訶不思議なあの現象も全て受け止めて先に進まないといけない。
海に沈む太陽を見ながら、そう思った。