十六夜の器  -銀と緑が混ざる時-   作:幻想郷まったり書庫

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第一部:鋼の揺り籠と『不完全な双星』 第二話:銀色の雨、鉛の足枷

 翌朝のサイレンは、鼓膜ではなく骨を直接揺らすような不快な重低音だった。

 私は跳ね起きるようにベッドを離れる。

 3分。

 それが、起床から装備を整え、点呼の列に並ぶまでに許された時間だ。

 冷たい水で顔を洗う暇はない。枕元に揃えておいた制服——防刃繊維が織り込まれた重い生地——に袖を通し、太腿のホルスターに銀製のナイフを収める。カチリ、という硬質な音が、私のスイッチを「日常」から「機能」へと切り替える。

 廊下に出ると、同じ顔をしたような少年少女たちが、無言の行進を作っていた。

 誰も口を聞かない。視線も合わせない。

 ただ、胸元に刻まれた識別番号と、階級を示すバッジだけが彼らの個性を主張している。

 私の胸にあるのは『ρ(ロー)』。

 17番目という、それだけの意味。

 だがこの場所において、それは「劣化品」と同義語だ。

 

「——ρ、出頭」

 廊下のスピーカーが私を指名する。

 

 向かった先は、作戦ブリーフィングルームとは名ばかりの、冷え切った尋問室のような小部屋だった。

 鉄の机を挟んで座っていたのは、白衣を着た技術官と、軍服を着た指揮官。

 部屋には鼻をつく消毒用エタノールの匂いと、安物の煙草の煙が充満している。

「体調は?」

 指揮官が書類——私のバイタルデータが記された紙束——に目を落としたまま尋ねる。

「良好です。作戦行動に支障はありません」

 嘘ではない。昨日の傷はもう塞がっている。背中にはまだ鈍い痛みが残っているが、それは私が生きているという確認信号のようなものだ。

「結構。……今回のターゲットは『個体識別名:ジャック・オ・ランタン』。下級(グール)ではなく、一定の知能を保持した吸血鬼だ。だが、脳力は身体強化しか見受けられない」

 指揮官が写真を放るように机に広げた。

 映っていたのは、路地裏で何かを貪り食う人影。ブレた写真だが、その目が赤く発光しているのは明確だった。

「場所は第4居住区、廃棄地下施設の構内だ。生存者はいないものと推定されるが、目撃情報が多い。迅速に処理する必要がある」

「処理、ですか」

「そうだ。ただし——」

 指揮官が初めて顔を上げ、私の目を覗き込んだ。その瞳には、人間を見る暖かさはなく、精巧な機械の故障を懸念するような冷たさだけがある。

「このような脳力なし相手でも協会のドクトリンを忘れるな。『生け捕り(キャプチャー)』だ。脳髄および心臓への致命的な攻撃は禁止する。四肢の破壊は許可するが、再生可能な範囲に留めろ」

 喉の奥が引きつる。

 生け捕り。

 言うのは易しい。だが、相手は人間の数倍の筋力と、痛覚の麻痺した怪物だ。それを殺さずに無力化しろというのは、暴走する蒸気機関車を素手で止めろと言うに等しい。

 特に、私のような劣化能力者にとっては。

「……了解しました」

「ρ。お前の能力値は不安定だ。昨日のテストでもタイムロスが目立つ」

 技術官が口を挟む。彼は私の身体ではなく、私の脳内に埋め込まれた『資産』を心配しているのだ。

「『時間希釈(タイム・ディレーション)』の維持限界を超えると、脳へのバックラッシュが起こる。貴重な検体を壊すなよ。お前自身も、ターゲットも含めてな」

 私は短く頷き、部屋を出た。

 背中で扉が閉まる音。

 それが、私を外界へと押し出す号砲だった。

 

 ◆

 

 協会が保有する装甲馬車に揺られ、私は地上へと出た。

 鉄格子のはまった小窓から、街の明かりが見える。

 ガス灯のオレンジ色の光が、霧雨に滲んで揺れている。石畳を叩く雨音が、馬蹄の音と混じり合い、不協和音を奏でていた。

 

 外界。

 この壁の向こうには、普通の生活があるという。

 家族がいて、温かいスープがあって、誰にも命令されずに眠る夜がある。

 だが、私にとっての外界は、いつだって狩り場(フィールド)でしかなかった。

「現場到着。降車せよ」

 御者の声と共に、後部の扉が開く。

 雨と共に湿った冷気が車内になだれ込んでくる。

 私はフードを目深に被り、石畳の上へと降り立った。

 

【挿絵表示】

 

 そこは都市の陰部。廃棄された地下施設の入り口だ。

 かつては文明の象徴だったであろう赤煉瓦のアーチは崩れかけ、黒い口を開けて地下へと続いている。

 そこから漂ってくるのは、カビと汚水、そして微かな鉄錆(ち)の匂い。

「……行くぞ」

 独り言ちる。

 パートナーはいない。

 通常、吸血鬼狩りはツーマンセルで行われるのが基本だ。前衛(ヴァンガード)と後衛(リアガード)、あるいは囮と狙撃手。

 だが、今の協会は人手不足——いや、正確には「適合者不足」だ。

 更に言えば私のような『劣化品』に割く人員はない。単独での任務遂行能力を示せなければ、次は私が実験台(モルモット)として解体される番になる。

 地下への階段を降りる。

 光が届かない闇。

 私は腰のランタンに火を灯さない。光は標的になる。

 代わりに、感覚を研ぎ澄ます。

 

 ——拡張(エンハンス)。

 能力の一部を解放し、知覚速度を上げる。

 完全な時間操作ではない。脳内の演算を上げ、情報の処理速度を加速させるだけの、予備動作。

 

 ピチャリ、ピチャリ。

 

 水滴が落ちる音が、スロー再生のように間延びして聞こえる。

 風の流れが肌の産毛を撫でる感覚が、鮮明な情報として脳に流れ込む。

 

 いた。

 

 奥。百メートルほど先の、崩落したホームの影。

 闇に溶け込むようにして、何かが蹲っている。

 これだけ離れているのに心音が聞こえる。

 ドクン、ドクン、という人間のそれではない。もっと速く、不整脈な鼓動。

 獲物を前にした興奮と、飢餓感に満ちたリズム。

 私は呼吸を殺し、壁伝いに接近する。

 靴底が砂利を踏む音すらさせない。

 私の身体は、この瞬間のために調律されている。

 

 あと二十メートル。

 ナイフの射程圏内。

 だが、殺してはいけない。

 無力化。四肢の腱を断つか、意識を奪うか。

 その時、闇の中で二つの赤い光が灯った。

 

「——!!」

 

 気付かれた。

 思考よりも速く、影が膨張する。

 蹲っていた男が、バネ仕掛けの人形のように跳躍したのだ。

 天井の配管に張り付き、蜘蛛のように這い回る。

 

「ハンターか……! その臭い、協会(イヌ)の臭いだなぁッ!」

 しゃがれた声。言われた通り知性がある。昨日とは、違う。

 私はナイフを抜き、構える。

 

「……投降しなさい」

「投降ォ? 殺戮の間違いだろうがッ!」

 男が天井を蹴った。

 重力に従って落下してくるのではない。明確な殺意を持って、弾丸のように私へ突っ込んでくる。

 速い。昨日の実験体とは比較にならない。

 

(——時間制御(クロック・アップ)!)

 私は奥歯を噛み締め、世界の色を反転させる。

 視界から色彩が失われ、灰色の静寂が降りる。

 音のピッチが低く下がり、男の咆哮が地底の唸りのように変わる。

 

 私の主観時間の中で、世界は水の中に沈んだように重くなる。

 空中に舞う埃の一つ一つが見える。

 迫りくる吸血鬼の、歪んだ表情の皺までが見える。

 

 避ける。

 

 私は半歩、横へ滑る。

 通常の時間軸なら、瞬きする間の出来事。

 だが今の私には、数秒の猶予がある。

 男の爪が、私の残像を切り裂く軌道が見える。

 

 チャンスだ。

 すれ違いざま、無防備になった脇腹へナイフを——

 

 ——ガギィッ!

 硬い。

 手首に走る痺れ。

 ナイフが、肋骨に阻まれた。いや、筋肉そのものが鋼鉄のように硬化している。

 

「——なに、をしたぁ!」

 声が、近い。

 私の加速についてきている?

 違う。彼もまた、反射速度を極限まで高めているのだ。

 吸血鬼の動体視力は、私の不完全な時間鈍化(スロー)に食らいついてくる。

 

 拳が飛んでくる。

 見えているのに、躱せない。

 咄嗟に相手の腕にナイフを突き立てるが、慣性の法則までは消せない。

 ドガッ。

 

 腹部に衝撃。

 私は吹き飛ばされ、線路の砂利の上に転がった。

 

「がッ、は……」

 

 肺が痙攣する。

 集中の糸が切れ、世界が元の速度を取り戻す。

 色彩と騒音が、暴力的に雪崩れ込んでくる。

 

「ハハッ! なんだその急な加速は……さては『移植(パク)』ったな? 俺たちの同胞から、その力を!」

 男がゆらりと着地する。

 その腕には、私のナイフが刺さったままだが、やつは痛みを感じないのか。

 

「気持ち悪いんだよ。人間風情がァ! 高貴な夜の眷属の真似事をするんじゃねぇ!」

 腕のナイフを乱暴に抜き、男が再び地面を蹴る。

 今度は直線的ではない。

 壁、天井、床。

 三次元的な跳躍を繰り返し、残像を残しながら迫ってくる。

 

 どこだ。どこから来る。

 

 焦るな。焦りが思考を濁らせる。

 再び時間を鈍化させなければ。

 けれど、連続使用は脳を焼く。

 頭の芯が熱い。鼻の奥から、ツツッと熱い液体が垂れてくるのがわかる。

 

 まだだ。まだ、死ねない

 

 私は生きることを選択した。

 スカートのスリットから、銀のナイフを三本引き抜く。

 指の間に挟み、扇状に構える。

 

 来い。

 

 左。

 風圧を感じた瞬間、私は左へ向かってナイフを投擲した。

 純粋な予測射撃。だが、確実に当たる軌道。

 

 ザシュッ。

 

「グアッ!?」

 

 悲鳴。当たった。銀はやはり有効。

 だが、致命傷ではない。肩口にかすった程度だ。

 男の動きが止まらない。

 怒りでさらに加速した暴力が、私を襲う。

 

 私は防戦一方になる。

 ナイフで爪を受け流すが、重すぎる。

 一撃ごとに骨がきしみ、筋肉が悲鳴を上げる。

 

 ——『生け捕りにしろ』

 

 指揮官の言葉が呪いのように脳裏にこびりついている。

 殺してしまえば、楽になれる。

 心臓を狙えば、この銀のナイフなら殺せる。

 けれど、それは「失敗」だ。

 失敗すれば、私は——

 

(利用価値のない道具は、捨てられる)

 

 その恐怖が、私の最後の一線を縛る。

 躊躇ってしまった。

 その一瞬の隙を、こいつは見逃してくれない。

 

「死ねぇッ!!」

 

 大振りの一撃。テレフォンパンチ。

 だが回避するには距離が近い!

 私は咄嗟に腕をクロスさせてガードする。

 

 バキッ。

 

 嫌な音。左腕の骨が砕ける音が体の奥底から耳に響く。

 そのまま私はコンクリートの壁に叩きつけられた。

 

「あ、が……」

 

 視界が明滅する。

 激痛で息ができない。

 地面に崩れ落ち、泥水が開いた口に流れ込む。

 冷たい。汚い。

 自分の危機とは別の情報が幾つも入ってくる。

 

 男がゆっくりと歩み寄ってくる。

 その口元が、三日月形に裂けて笑っている。

 

「人間は脆いな。さて、捥(も)いで観賞用にでもするか、喰うか。まずはその鬱陶しい右腕からだな!」

 

 鋭い爪が振り下ろされる。

 

 ——止まれ。

 

 私は心の中で叫ぶ。

 お願いだ、止まってくれ。

 一秒でいい。いや、一瞬でいい。

 完全な静止を。

 

 脳血管が切れそうなほど念じる。

 魔力が暴走し、周囲の空間が歪む。

 

 重苦しく、泥ように遅くなり、更に深く遅くなる。

 だが、迫り来る鋭いその爪は着実に近づく。

 止まりそうで、止められない。

 

 右腕を狙う爪が、ゆっくりと、しかし確実に迫ってくる。

 止まってくれない。

 私には、決定的な何かが欠けている。

 

『劣化品ρ』

 

 その刻印が、熱を持って疼くようだった。

 ああ、そうか。

 私はここで死ぬのか。

 名前も、過去も、未来もないまま。

 ただの部品として砕け散るのか。

 

 恐怖よりも先に、深い諦念が胸に広がった。

 それは冷たい水のように、私の熱を奪っていく。

 

 爪が、肌に触れるのがわかる。

 皮膚がゆっくり裂け、血が滲む。

 自分の脳力が死の時間を思い知らすように引き延ばしてくる。

 

 その時。

 

 不意に、男の動きが不自然に固まった。

 まるで、見えない糸で縛られたかのように、ピクリとも動かなくなったのだ。

 

「……え?」

 

 停止した? 時間が?

 そう思うのも束の間、男の瞳が、驚愕で見開かれていることに気付く。

 爪から滴る血液が時間の停止ではないことを告げる。

 どうなっているんだ?

 私の魔力は空っぽで視界すらぼやけている。

 なのに私の腕を引き裂く寸前で、目の前の脅威が停止している。

 

 男は金縛りにあったように硬直し、脂汗を流している。

 

「な、なんだ……身体が……動か、ねぇ……」

 

 理屈はわからない。何が起きているのかも理解できない。

 けれど、これは私が生き残るための、唯一の蜘蛛の糸。

 

 私は残った右手にナイフを握りしめ、地面を這うようにして踏み込んだ。

 痛みは無視する。

 後で泣けばいい。今は、このナイフを突き立てるだけだ。

 

 狙うは心臓。

 全体重を預け、その一撃に全力を乗せる。

 

 ザシュッ!

 

 一閃。

 男が絶叫を上げ、崩れ落ちる。

 そして、焼けるような熱と共に体が崩れ落ちて灰になっていく。

 

「はぁ、はぁ……」

 

 失敗。

 終わった。

 

 私はその場に膝をついた。

 左腕が燃えるように熱い。

 静寂の地下に荒い息が響く。

 

 今のは何だったのだろう。

 男は何を見て、動きを止めたのか。

 

 私は恐る恐る、振り返った。

 

 そこには、誰もいなかった。

 ただ、崩れかけたアーチの上に、黒い猫が一匹、座っているだけだった。

 金色の瞳が、暗闇の中で光っている。

 

 私はふらつく足で立ち上がり、信号弾を取り出した。

 失敗したとしても回収班を呼ばなければならない。

 

 空を見上げると、分厚い雲の切れ間から、蒼白い月が顔を覗かせていた。

 その光は、私の血に濡れた銀髪を照らし、冷たく輝かせている。

 

「……綺麗」

 

 無意識に、そんな言葉が漏れた。

 血と汚物に塗れたこの場所で、月だけが潔癖なほどに美しかった。

 それは、決して手の届かない場所にあるもの。

 私のような『泥』には相応しくない輝き。

 

 胸の奥で、何かがきしむ音がした。

 それは折れた骨の音ではなく、もっと深い、魂の渇きのような音。

 

 ◆

 

 回収班が到着したのは、それから一時間後のことだった。

 私はタンカに乗せられることを拒否し、自分の足で馬車に戻った。

 また弱みを見せてはいけない。

 まだ「使える道具」と思われなければいけない。

 帰りの車内、私は左腕の激痛に耐えながら、窓の外を流れる景色を見ていた。

 先ほどの戦闘の興奮が冷め、代わりに寒気が這い上がってくる。

 

 私は今日、生き残った。

 失敗というレッテルは貼られるが、生きながらえた。

 あの奇妙な硬直——偶然の幸運がなければ、今頃私は肉塊になっていただろう。

 

 次は?

 その次は?

 いつまで、この綱渡りは続くのだろう。

 

 私はポケットから、小さな懐中時計を取り出した。

 支給品ではない。瓦礫の中で拾った、壊れた時計だ。

 針は動かない。

 永遠に止まったままの時間。

 

「……私も、止まりたい」

 

 それは、死にたいという意味ではない。

 流され、消費され続けるこの加速した日々を、誰かに止めてほしい。

 私の時間を、私の手に取り戻したい。

 

 指先で、ひび割れたガラスをなぞる。

 その冷たさが、今の私には唯一の救いだった。

 

 ◆

 

 施設に戻ると、直様医務室に放り込まれる。

 

「左腕、尺骨骨折。全治三週間」

「脳力の過負荷による魔力の乱れ、レッドゾーン寸前だな」

「そして結果はダストのみ。コストパフォーマンスが悪すぎる」

 医師たちの会話が、カーテン越しに聞こえる。

 私は治療台の上で、天井のシミを見つめていた。

 麻酔が効いてきて、意識が朦朧とする。

 

 ——ρ。劣化品。

 

 その言葉が、子守唄のようにリフレインする。

 けれど、麻酔の波が私を飲み込み、意識は闇へと沈んでいった。

 夢を見た。

 とても静かな夢だ。

 鉄格子も、血の匂いもない場所。

 窓辺に、緑の花が咲いている。

 名前は知らない花。

 でも、とても懐かしい匂いがする。

 

 向かいの席には、誰かが座っている。

 顔はよく見えない。

 でも、その人は紅茶を淹れてくれている。

 カップから立ち上る湯気が、穏やかな時間を象徴していた。

 

『……お茶にする?』

 

 その声は、驚くほど優しかった。

 私は手を伸ばす。

 その温もりに触れたくて。

 

 だが、指先が触れる直前で、世界はガラスのように砕け散った。

 

 ◆

 

 目が覚めると、そこはいつもの独房だった。

 左腕はギプスで固定され、首からは三角巾で吊られている。

 

 現実。

 重苦しい空気が、胸を押しつぶす。

 

 私は体を起こし、壁にもたれかかった。

 夢の残滓が、胸の奥で燻っている。

 あの夢の人物は誰だったのか。

 私の失われた記憶の一部なのか、それとも願望が見せた幻なのか。

 

 ドアの下から、朝食のトレイが差し入れられ、その音で現実に戻る。

 固いパンと、味の薄いスープ。

 まるで家畜の餌だ。

 

 私はパンを齧りながら、壁の傷跡を数えた。

 正の字が、いくつも刻まれている。

 私がここに来てからの日数。

 私が「道具として使われた」数だ。

 

 死にたくない。

 生きてどうするかなんてわからない。

 でも、生きたい。

 

 その矛盾。

 その螺旋。

 

 私はいつか、狂ってしまうのだろうか。

 それとも、何も感じない「完全な道具」になるのだろうか。

 

「……いやだ」

 

 声に出した瞬間、涙が溢れた。

 誰にも見せない涙。

 誰にも届かない声。

 

 私は膝を抱え、小さくか震えた。

 鋼鉄の揺り籠の中で、私はひとりぼっちだった。

 

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