メスガキがBackroomsにざーこ♡ざーこ♡する話 作:聖剣エクスカリバー
「ふぁ〜ぁ……」
ホテルの一室で目を覚ましたチカは、ぼーっとしたままにカーテンを開いた。明るい陽光が差し込み、部屋を鮮やかに照らす。常に昼間のレベルであるので、朝日ではないのだが。
そしてゆっくりと洗面台に向かった。温かいお湯が出てくるまで待ってから顔を洗って、お気に入りの化粧水や美容液にクリーム、最後に日焼け止めも忘れない。鏡の前でしっかりと髪の毛をセットしてから、チカはよしっと気合いを入れた。
着替えた後に椅子に腰がけて、配信を開始する、
「おはよ〜、チカたんだよ♡ 今日も元気に配信していきます♡」
コメント:
【おはよう】
【相変わらず朝が早い…】
【かわいい】
【待っていました =)】
【チカたんのお陰で健康的になりつつある】
【かわいい】
Level10"The Field of Wheat" (小麦畑)の100km移動耐久配信は日を跨いでしまっため、今日で初配信から五日目となる。動画化されるとはいえ生で見たい視聴者が多いため、この早い時間からでも同接数はそこそこあった。
軽く雑談をしながらホテルから出て、外に繰り出す。
目の前に広がるのは、異国情緒のある都会の街並みだった。普通のビルが立ち並び、道路と街路樹が伸びて行く。様々な国の言語や建築様式が用いられていることに気が付かなければ、ただの外国の都会だと説明されても気付くのは難しいだろう。
しかしその風景は、まるで時が止まっているかのようだ。人影はどこにもなく、世界全体が静寂に満ちている。
コメント:
【やっぱただの都会に見えるなあ】
【旅行行った時ああいう信号機あった】
【やっぱりここ現実世界じゃないですか?】
「残念ながらbackroomsです♡ 昨日は『帰ってこれたの?!』って驚いてるおじさん達が沢山いて面白かったなー♡」
道路には車も走っておらず傍に放置されているのみであり、チカはぶらぶらと車道を横切ってコンビニに入った。
コメント:
【自動ドア開くんだ】
【なんか不気味だな】
【ヒャッハー!! 物資漁り放題だぜ!!】
チカはビニール袋を取ったあとに、無人のコンビニを適当に見て回る。
「昨日も言ったと思うけど、ここの物資は誰も見てない間に何度でも補充されるんだよね♡ エンティティもゼロだし、ここならよわよわなおじさん達でも生きられそうだね♡」
コメント:
【マジで漁り放題なんか!】
【このレベルだけ生存難易度低すぎだよな】
【普通に仕事やめてLevel11で暮らしたい】
【このレベルまで安全に来る手段はあるの?】
「そうだね〜……Level2まで行ったら、Level3じゃなくて4に繋がってる扉を探して。で、Level4にたまーにある“守衛室”って書かれた部屋の奥はLevel25っていうゲームセンターのレベルに繋がってるんだけど、橙色のアーケードゲーム機を起動すればLevel11、つまりここに来れる筈だよ♡」
コメント:
【な、なるほど!】
【唐突な超有益情報?!】
【神】
【たすかりすぎる】
【絶対忘れない】
【メモしなきゃメモしなきゃメモしなきゃ】
「あはは♡ せーぜー、Level0で餓死しないように頑張ってね♡」
結局見たことのない外国の菓子を何個かと懐かしい日本の菓子を沢山頂戴したチカは、にこにこと笑いながらコンビニから出た。スリルが大好きではあるものの、ここまで楽で安全かつ様々なものがあるLevelなら大歓迎だ。
「ふっふ〜ん♡ 折角だし、菓子パ配信してみよっかな〜♡」
コメント:
【かわいい】
【いつになく上機嫌だね】
【そういえばなんでしまわないの?】
【容量が足りないんだっけ】
指先でくるくるとビニール袋を回しながら、チカは唇を尖らせる。
「うん。はぁ、そろそろもちもの整理しなきゃ……」
チカの収納空間は、その9割5分は自由に使用することができない。その残りも、約40%が非常用の足場類、約10%がアーモンドウォータータンクに割かれているため、更に半分しか武器・道具や小物入れとして使うことができないのだ。
ちなみにアーモンドウォータータンクにはLevel10に存在する『アーモンドウォーターを無限に分泌する石』が幾つか入れられているので、補充の必要はない。
「あ。よく考えたら、足場系削れるじゃん♡ 足りなかったらおねだりすればいいんだし…♡」
コメント:
【またよからぬことを考えておるな?】
【いつでも税込0¥で足場になれますッ!】
【いやそういう意味じゃな……アリだな】
【チカたん専用の椅子としてネットに自身を出品してもいい?】
「うわ、きもちわる〜♡ マジで買えちゃうから、出品するならちゃんと覚悟しとけ♡」
コメント:
【え……】
【そ、そうなんスか…】
【こ…今回は辞退という形で…】
「あはは! 意気地なしばっか〜♡」
チカはルンルンと誰も居ない街を歩き、なんとなくで行き先を決める。
ドアを開いて入ったのは、オシャレな内装の喫茶店だった。僅かにコーヒーの匂いが漂う店内で、座りながらビニール袋からお菓子をデスクの上にばら撒く。
「よしっ♡ まずは、このよく分かんないお菓子から食べてみよっかなー♡」
スマホを専用のスタンドに立てかけたあと、カラフルなタイヤのような菓子を手に取って、はむっと頬張る。
「ん♡ これ、マシュマロなんだ♡ ちょっと甘すぎるけど美味しいね♡」
コメント:
【海外のは味が濃いからな】
【おいしそう】
【かわいい】
【でもそんなに食べて大丈夫なの?】
「子供だから……はむっ……ひひもん♡」
コメント:
【かわいい】
【かわいい】
【俺は3つで限界になりそう】
【まあその分動いてそうだもんね】
【かわいい】
それから一頻り雑談を続けながら満足するまでお菓子を食べたチカは、最後の一本にしたチョコinクッキー棒の菓子を咥えながら天井を仰ぐ。
(とりあえず、クソ長連結梯子は必要だよね。デカ机は下にもモノ入るからコスパ良いし、Y岩盤もお気に入りだしやめとこっかな。あとは……ま、テキトーに半分くらい捨てちゃお♡)
そのまま手を後ろ側に伸ばすと、背後でミシミシと音を立てて別のデスクが押し潰された。巨大な大理石に破壊された店内に一瞥もせず、残った菓子を“回収”してスマホを手に取り立ち上がる。
コメント:
【?!】
【うわぁ!】
【石が】
【?!】
「もぐ……あははっ♡ びっくりしたー? ごめんなさ〜い♡」
クッキーを飲み込んでから、チカは全く心の籠もっていない謝罪をする。
コメント:
【も、もちもの整理か…】
【びっくりしたよそりゃ】
【確かにアレは容量食うな】
喫茶店の外に出てて、相変わらず静寂に包まれる
「でも、ただポイ捨てするだけじゃつまんないな……そうだ! 丁度スリル足りなかったし、パルクールでもしよっかな♡」
コメント:
【え?】
チカは瞬時に、スマホを胸元に装着した。
丸太を高層ビルの壁際に立てかけると、スタタタッと勢いよく登る。そしてガラス張りの境目に取り付けられた意匠に飛び乗ると、そのまま止まることなく跳んで突起に手をかけ、更に上へと登っていく。
コメント:
【ちょ、展開が速すぎる】
【いつもながらの急展開】
【チカたん、パルクールまでできるのか】
【やっぱ運動神経バケモンだな…】
足場も所々で取り出して利用しつつ、チカはたった数分で7階建てのビルを登り切った。屋上の縁際でポケットからスマホを取り出すと、地面までが映るような高いアングルに掲げて泣き真似をした。
「うぅ、高くてこわいよ〜♡ おじさん、助けてー♡」
コメント:
【わざとらしすぎるw】
【心臓に悪い】
【あざとかわいい…】
【高所恐怖症だから見てられん】
【大丈夫だ、この映像を見てヒヤヒヤしない人間はほぼ居ない】
そしてもう一度スマホをセットすると、今度はフェンスに長い板を立てかける。その先にあるのは、隣のビルをぐるりと回るように取り付けられた階段だ。
コメント:
【おい、もしかして】
【嘘だろ…?】
【やめとけって!?】
【ちょ】
「チカたん、行きま〜す!♡」
クラウチングスタートで助走をつけて、板の上を爆走したチカは大きく跳んだ。
そして4mほど宙を舞ったあと、手すりの合間を縫って階段に転がり込むように着地する。壁との僅かな隙間で完璧に速度を殺しているのは、流石というべきか。
「ふぅ♡」
満足そうに息を吐きながら立ち上がる姿に、視聴者は最早呆れの感情すら抱き始めていた。
コメント:
【もうだめだこの子】
【チカたんって、やはりドーパミン中毒者…?】
【メスガキならぬドパガキ】
「よーし、このビルも踏破しちゃうよ♡」
チカは階段を二段飛ばしで、タッタッと駆け上り始めた。その足音には一切の躊躇が感じられない。
──ところで、超芸術トマソンという概念がある。
例えば何もない場所で止まる梯子や、ビルの側面に取り付けられたドア。天井と地面を繋ぐだけの螺旋階段や、奥にはただの壁があるシャッターなど。
概ねの意味としては、そういった建築として破綻している、意味不明な建造物のことである。
backrooms全体としてトマソン的な構造が見られるものだが、このLevel11の特徴としてそれが顕著であることが挙げられる。
それを、宙に舞いながらチカは思い出していた。
(うひ……情報、おさらいしとけばよかった……♡)
ビルを囲むように設置されているように見えた階段は、なんと角を曲がった先で完全に途絶えていたのだ。
(まあ──)
咄嗟にワイヤーのようなものを投げ、突起物に巻きつけたチカはグイッと弧を描いた。
「これくらい、よゆーだけど♡」
コメント:
【?!】
【?!】
そして道路を挟んで反対側のビルのガラスを割って、華麗に着地。
余韻に浸ろうとしたのも束の間、レベルを移動したことを察知する。
Level11は様々なレベルへのハブのような性質も持っており、建物の中に入ることが移動の引き金になるケースが多い。別のレベルと内装が似ている建築物の中に入るのはできるだけ避けるというのが、このレベルで長く過ごすのに重要な心構えなのだ。
(あちゃー。どこに飛ばされちゃったん──)
「…………はぇ?」
顔を上げたチカの前に広がるのは、見たことのない光景だった。
ショッキングピンクが目に痛い。
それ以上に、狭い部屋中に散らばる『アダルト』という文字がチカの脳をフリーズさせた。
コメント:
【うおっ】
…………該当する記憶が見つからない。
少し寄り道します
R18な内容は含みません