メスガキがBackroomsにざーこ♡ざーこ♡する話 作:聖剣エクスカリバー
階段を降りた先には、薄暗いコンクリートの階層が広がっていた。
「おー、キタキタ!」
一つ伸びをして気合いを入れたチカは、スマホを内カメに変え、辺りの様子を映しながら歩き始める。
コメント:
【チカたん、配信URLバグってるからやり直した方が良いよ〜】
「あ〜……それね。万が一のために意図的にそうしてるの。スクショ、画面録画とかもできないようになってる。アーカイブは残さないけど、代わりに後で動画化して出すよ♡」
コメント:
【??】
【そんなことできるの?】
【マジやんけ】
【え、そんな設定ないよね確か】
視聴者が困惑に包まれる中、一つのコメントによって事態は大きく動いた。
コメント:
【え、ちょっと待って、カメラでの直撮りができないんだけど】
【いやいや……え??】
【うわ本当だ画面が黒塗りになる】
【なにこれ】
【…マジやんけ】
【嘘だろ】
【なんだよこれ】
【もしかして、Backroomsって本当にあるの?】
「うん、あるよ」
笑いながら当たり前のように頷いたチカは、また歩きながら話す。
「ここはLevel 1 “The Habitable Zone"(生存可能領域)、倉庫のレベルだよ。ちょっとだけ霧が立ち込めてるけど、害は全然ありません♡ これが結露してよく水たまりが出来るの♡ 喉が渇いて無様にこれを啜るおじさん達が、ありありと目に浮かんでくるね♡」
コメント:
【いや待てよ】
【サラッと流すな】
【ごめんた耐えられないから抜ける】
【正直ワクワクしてきた】
【ヌルッと解説始めんな】
【怖すぎて逆に視聴停止できない】
「それで………ほら、これ! ここには色んな所に物資入りの段ボールがあるんだよ♡ アーモンドウォーターから食料、日常品まで♡ でも、よくネズミとか髪の束みたいな変なのも入ってるから気を付けて♡」
コメント:
【髪の束て】
【おいちゃんと説明してくれよバックルームってなんなんだよ】
【え、ガチで言ってんの?】
【お腹痛い】
「もう忘れちゃったの? 何回か言ったと思うけどなあ…。Backroomsっていうのは、色んな階層がある異世界みたいなものだよ」
そう言いながらチカは箱を開いて、少し眺める。
「あ、これ映せないかも」
そのまま歩き出した。
コメント:
【いやいや】
【なんだったんだよ…】
【ほんとに異世界から配信してたのか】
「で、上の蛍光灯なんだけど、ちょっとチカチカしてるでしょ? これがたまに、数分から数時間完全に消えちゃうんだけど、その時は結構危険♡ エンティティ湧くし、床とか壁のモノがちょっと変化したりするの♡ でも光を持ってたり多人数で行動してたりすると安全だよ〜♡」
コメント:
【こんな異世界嫌すぎる】
【大人しく視聴続けて情報集めるしかないか…】
【チカたん1人じゃん】
【普通に気をつけてくれ】
【何も知らされずにここ行ったら死ぬ気しかしない】
歩いている途中で、壁に落書きの様なものを見つける。何かを表しているようだが、全く意味不明なのでチカは首を傾げる。
「こんな感じでよく絵があるんだけど……まぁ、殆ど意味わかんないのばっかだよ」
コメント:
【意味なんてないんじゃないかな】
【だから怖いって】
その時、ププッとほんの少しだけ上の明かりが点滅する。誰も気が付かない内に、その落書きは消えてなくなっていた。
「あ、停電の特徴出たね♡」
コメント:
【停電はランダムってのが怖いな】
【ねぇホントにチカたん大丈夫なの?】
「てことで、いきなりだけどお昼ご飯食べま〜す♡ Level2は論外だしLevel 3は結構危険だから、タイミング的に今しかないんだよね♡」
コメント:
【お弁当あるの?】
【俺も今食べてる。もう喉を通らなくなったけど。】
「お弁当じゃないよ、ここで料理するんだよっ♡」
コメント:
【料理?!】
【えぇ…】
【失敗しそう】
【メシマズと予想する】
「むっ! 馬鹿にしない方がいいよ〜、私結構上手いもん♡」
チカはおねだりをする様に口元を丸めた手で隠し、上目遣いを披露する。
「そういうことだから……お金……欲しいなぁ…♡」
コメント:
【都合いいなぁ】
《まあ本当のことなら見捨てられないよな ¥500》
《仕方ないにゃあ… ¥1000 》
「はい、ありがと〜♡ 私のためにお金使えて良かったね♡ 独身中年人生無味無臭おじさん1人でしょうもない浪費するより、よっぽとマシにお金使えて良かったね♡」
コメント:
【メスガキィ…ッ!】
【くぎゅううううううぅぅぅ】
【ひどい】
【wwwwww】
【草】
【何故スパチャした人間が罵倒されるのか】
【俺、借金してでも投げたくなってきた】
まずビニールシートらしきものが手元に出現し、3×3mほどのそれを広げる。
木製のカゴがパッと現れたかと思えば、暫くチカが目を瞑っていると、ポンポンと食材がその中に湧き出して来た。粗方の食材を購入し終わった後には、調理器具らしきものも並べられた。
コメント:
【手際が良いね】
【こんな感じで料理したいわ】
【何作るんだろう】
「今から作るのは、チカたんスペシャルシチューで〜す♡」
食材や器具を挟んで反対側に置いたスタンドにスマホを設置し、あぐらをかいて料理の様子を映し始めた。
まな板の上で玉ねぎ、にんじん、じゃがいもを素早く切っていく。
コメント:
【普通に上手い】
【包丁さばきスゲェ】
【調理器具とかは元々あったの?】
【床で料理するの…?】
「ふふ〜ん、凄いでしょ♡ うん、調理器具とかは昔拾っ…うん、元々あった奴だよ。あと机は容量圧迫するし、別にシートでいいかな〜って♡」
コメント:
【思ってたより沢山は持ち運べないんだね】
【拾?】
【うん、俺も床で料理するのは合理的な選択だと思うよ…(画面下半分を凝視しながら)】
【キショ】
【通報した】
「キッモ……」
コンロに取り付けられた謎の注ぎ口に瓶の中から粉らしきものを入れ、スティックを回して火を付ける。鍋にオリーブオイルを軽く敷いてから、肉や野菜を味付けしながら炒める。
コメント:
【既に美味しそうだな】
【お腹空いてきた】
【スペシャル感あるかこれ?】
【こっちもシチュー作ろうかな】
【チカたんママの手作り料理が食べたいよう】
【それ何の肉?】
「あ、このお肉は………元々、あったやつ……。」
汗を流しながら言い淀むチカに、コメントの流れも凍り付く。
コメント:
【…………え?】
「だって、余ってたから勿体なかったもん……な、何の肉かは分かんないけど取り敢えず大丈夫! 絶対安全だよ!! あはは……♡…」
照明が時折、瞬きの様に点滅するだけの時間が過ぎる。
コメント:
【あっ】
【なるほどなー】
【チカたんスペシャルってそういう……】
【安全なら大丈夫だね!うん】
【もしかして、ヒトの、、、】
「人肉じゃないよっ!! お肉が湧いて手に入るレベルがあってぇ……そこで手に入るのが凄く美味しくてぇ……その……とにかく変なものじゃないのっ!! 絶対っ!!!」
コメント:
【ふーん…】
【肉が手に入るレベルまであるのか】
【それおじさんの皮下脂肪だよ】
【ネズミ肉かもね】
「やめてやめて!! 美味しくなくなっちゃうじゃん!!!!」
チカは謎肉を色々な実験から信じてはいるのだが、それが何由来なのかという疑問は心の奥底に仕舞っているのだ。
視聴者もこれ以上の追求は逆に自身のメンタルを破壊すると考えたのか、ネタ方向に一頻りイジった後は話を流すのだった。
そこから暫くの間、だらだらと雑談を繰り広げたり後から具材を投入したりして。
「そろそろ良いかな……」
ほかほかの湯気を出す、とろみがかったシチューが完成していた。
スプーンで少しだけ口に含んだチカは、塩や胡椒で仕上げに味を整える。
もう一度スプーンでかき混ぜてから、口に運び入れた。
「……美味しい……♡」
その珍しいぽかぽかとした柔らかい表情に、配信を視聴していた44人中41人の視聴者はハートを撃ち抜かれ悶絶した。(残りの3人は、あまりの危うく意識が飛びかけた)
極度の緊張下にある彼等に、その可愛さは深々と染み渡る。
コメント:
【かわいい】
【かわいい】
【かわいい】
【ガチで美味そうやん】
【かわいい】
【反則級】
【萌え死ぬぞ?】
【コンビニ行ってきます】
【かわいい】
「なに、そんなに美味そうなの? お腹くるくるさせてて可哀そ〜♡」
左手で口元をおさえて、チカはくすくすと生意気げに笑う。
コメント:
【あわいい】
【かわいい】
【あぁ^~心がぴょんぴょんするんじゃぁ^~】
【かわいい】
【俺はロリコンじゃない俺はロリコンじゃない俺はロリコンじゃない】
【画面舐めてるけどシチュー美味しいね】
恐怖と萌えの過剰供給で情緒が壊れてしまったおじさん(とお兄さん)達を他所に、チカはもにゅもにゅと美味しそうにシチューを食べ進めた。
本来ではSCPみたいに○○団体とか特定のレベルに住み着く放浪者達の組織とかもあったりするんですが、本作はそういう団体や組織が一律で存在しないことになっております。気になる方は本家サイトで調べることをおすすめします。