メスガキがBackroomsにざーこ♡ざーこ♡する話 作:聖剣エクスカリバー
「──っと……みんな、昨日ぶり♡」
コメント:
【キタ──(゚∀゚)──‼︎】
【かわいい!】
【安定の美少女】
【昨日までの分、動画化お疲れ様!】
【Level 4の副題適当すぎない?】
椅子に腰掛けながら配信を始めたチカが居る部屋は、ある一点を除いて何の変哲もないリビングの様に思える。その一点とは、部屋全体の床が足首程度まで浸水しているというあまりにも巨大な違和感なのだが。
「てことで、改めて……」
椅子から立ち上がり、窓際まで歩いたチカはそのカーテンを開ける。その先には一面の海──それも何故か90度傾いた光景が広がっていた。
「Level 7 “Thalassophobia”(海洋恐怖症)を紹介していくよ〜♡」
コメント:
【なんか傾いてて草】
【おかしいって】
【昨日の配信が終わる前にチラ見せされてから、ずーっと気になってる】
人差し指で床に溜まった水に軽く触れたチカは、口元に運んでペロリと舐める。
「〜ッ、しょっぱ! 部屋に溜まってる水は全部海水だよ♡ どこから湧いてくるか分かんないし、なんで一定の高さなのかも分かんない♡」
コメント:
【嫌がらせだろこれもう】
【こんなんでどうやって寝たの?】
【そんな得体の知れない水、舐めない方がいいと思う……】
【解説への熱量が毎度の如くヤバい】
「ん〜、私って基本どこでも寝れるんだよね♡」
長靴を鳴らしながら、階段の反対側に設置された扉に近づいて行く。その床との隙間をズームすると、海水の流れが僅かに見えた。
コメント:
【流れ出してる?】
【隣の部屋は浸水してないの?】
【いや、これもしかして】
慎重に扉が開かれる。その先には、枠一杯の海の壁が広がっていた。4.5m程離れた先で、そよ風に紺色の水面が揺蕩っている。何もかもを吸い込み引き摺り込んで行くような。
慎重にその手だけを扉の外に出して、カメラをくるりと回す。その光景に僅かな違和感を覚えるのは、“地球の丸み”が考慮されない地平線に淡い青色の空と海の境界が広がっているからだろうか。
コメント:
【うわー、俺これ無理や】
【え、どういう位置関係?】
【海しか見えない…】
【ガチで海洋恐怖症の奴は絶叫モンだろ】
【重力の方向が違うのか】
海面に向かって真っ直ぐ伸びていく水の流れを、扉を閉めて堰き止める。
「あはは! ザコばっかで笑えるんですけど〜♡ そうだよ、この“部屋”と海で重力の方向が違うんだ〜♡」
コメント:
【浜辺で水着大会すると考えてた俺が馬鹿だった】
【え? こっからどうすんの?】
【他の家も見えなかったし…】
「てことで、スキューバダイビングします♡」
コメント:
【?!?!】
【はい?】
【えぇ……】
【やめとけ】
【流石に無茶だろ】
【????】
「だって、この次のレベルに行くにはそれが必須なんだもん。んひひ、大丈夫だよ♡ あんまり深くまでは経験ないけど、スキューバダイビングは海系レベルでよくやってるし♡」
そう言いながら、椅子に座って目を瞑る。
「えっと、今回の深さだと追加でアレとコレと──────…とすると……え?! 30万円もかかる!!」
微妙な顔になったチカは、むにむにと口を動かす。チラッとカメラを見て目を瞑り──もう一度、チラッと見る。
コメント:
【チラッチラッ】
【流石に高すぎるからなぁ】
【投げたいけど俺ニートだし…】
【どなたかお石油王様は居らっしゃいませんか〜?】
「も〜、みんなケチ!う〜ん ……あ♡ そういえばおじさん達、チカたんの水着見たかったんだよね♡」
いかにも良い事を思い付いたというように、ニマニマと笑いながら唇に人差し指を当てる。
「今から貰ったお金の割合でルーレットしよ♡ それで当たった人が指定する水着、後でどっかのレベルで着てあげる♡」
瞬間。
コメントの流れが凍りつく。
数秒。
氾濫。
コメント:
《 フリフリしたやつ ¥2,000 》
《 スク水 ¥10,000 》
《 ワンピース ¥35,000 》
《 マイクロビキニ ¥50,000 》
《 手ブラ ¥10,000 》
《 スク水 ¥20,000 》
《 絆創膏 ¥10,000 》
《 男の子用 ¥3,000 》
《 自分で選ぶ ¥10,000 》
《 旧スク。これ指定ね /https──── ¥150,000 》
「……………………ふぇ………」
楽に5万ぐらい稼げそ〜♡と甘く考えていたチカは、その“ガチ”さに絶句する。思わず数十秒間固まりながらコメントを眺めた後、顔をかぁ〜っと赤く染める。
「はッ……な、何これ?! 『マイクロビキニ』とか『絆創膏』とかッ……お、『男の子用』なんて、見えちゃうじゃん?!」
コメント:
【お、丁度30万だ】
【約束は守れよ〜^_^】
【ガチ勢多くて草】
【手ブラはそもそも理解してなさそう】
【旧スクの奴やべぇ】
【これが“大人の力”だ】
【男装すれば恥ずかしくなくない?】
「〜〜〜〜〜ッッ//////!! もう、2度とやらない!!」
プンッとそっぽを向いたチカは、少ししてから恥ずかしそうな顔のままカメラに目線を向ける。
「と、とりあえず……ダイビングと…ルーレットの準備するから。配信一旦閉じるね?」
コメント:
【wktk】
【まだ決めるだけだぞ】
【楽しみすぎる】
【当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ】
配信が再開されると、ネット上で出来るルーレットと、画面右下に映るチカ(頭以外の装備を既に着込んだ)が映された。
「うぅ…い、今からでもなかったとことに…」
コメント:
【ダメです】
「もう、分かったよ! やればいいんでしょ、やれば!!」
コメント:
【さてさて】
【来いッ!!】
【うおおおおおおおおおおお】
【頼む俺の2000円】
「じゃあ、始めるから……えい!」
▷START
[旧スク 50.0%]
[マイクロビキニ 16.7%]
[ワンピース 11.7%]
[スク水 10.0%]
[手ブラ 3.3%]
[絆創膏 3.3%]
[自分で選ぶ 3.3%]
[男の子用 1.0%]
[フリフリしたやつ 0.7%]
「お願い! 変なのだけはやめて!」
【6割方何らかのスク水になるのか】
【さーて、パチプロの実力見せますか…w】
【頼む】
【ビキニ来いッ!!】
【ワンピースぅぅうゔう】
【ぎゅぅおぉぉぉおぉ】
【旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク旧スク】
▶︎[自分で選ぶ]
「お゛っ……」
コメント:
【きちゃあぁぁぁぁぁぁあああああ】
【畜生ォォォォォおおおおおおおおおおおおおおおおお】
【マジかぁぁぁぁぁぁぁあ】
【ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬ】
【大穴wwwwwwwww】
【ちょっと汚い声出てて草】
【俺もこれ良いと思ってたんだよ!】
【何だこりゃ】
「こ、これって……」
コメント:
【チカたんが一生懸命選んだ“自分に似合う水着”を見せて欲しいなって】
【神】
【天才】
【有能】
【孔明】
【IQ9999】
【俺の負けだ】
「あぁ、もうッ! ………し、調べとくから……せーぜー、おじさん達は可愛いすぎてショック死しないように気を付けてよねッ////♡♡」
コメント:
【既にしかけてる件】
【かわいい】
【楽しみすぎる】
【いつになるかな〜】
【若干メスガキからツンデレにジョブチェンジしてない?】
【一生でも待つよ俺は】
【ああもう大好き】
ぷんすか文句を言いつつもチカは、少し嬉しそうな顔が時折覗いてしまう。
コメント:
【ちょっと嬉しそう?】
【かわいすぎる】
【こんな生き物存在していいの?】
「……も〜、みんな褒めすぎだって」
コメント:
【照れてる?】
【キタコレ】
【うわぁぁぁぁあキュン死】
【かわいい】
【最高】
【幾つの心臓を撃ち抜けば気が済むんだ】
「……半分準備済ませてるし、もう行くからね」
話を逸らすように、撮影用のヘルメットにスマホを取り付けた。そして、ゴーグルやボンベなど残りの装備を順番に付けていく。
「ここを、こうしてっと……うわ、重っ……」
経験のない酸素ボンベの重量に顔を歪めながら、着用した装備の最終確認を進める。
(……これ、地味に今までで一番……もしミスったら──)
チカはブンブンと首を振った。
「じゃ、いくね♡」
レギュレーターを慎重に口に取り付ける。これからは喋れない。
非常用に垂らした縄で少し開いたままのドアを完全に開き、出来るだけ姿勢を低くして──落ちた。
重力の急激な変化を感じつつ、チカはちゃぷんと小さな音を立てて海に入水する。
コメント:
【うわ、やっぱ重力の方向が変わってんのか】
【これどこの海?】
【別世界】
暗い海へ潜っていく。あっという間に光が少なくなり、底なしの闇の中に深く…深く吸い込まれていく。
コメント:
【これキツイわ】
【孤独感やばい】
【大丈夫なのかな】
【まあチカたんなら余裕やろ】
【空がそんなに明るくないせいか海が暗いな】
ゆっくりと石灰岩の海底近くまで到達したチカは、ライトを付けて辺りを見渡す。何もないことを確認すると、ふよふよと酸素ボンベと足ヒレを頼りに泳いで行く。
コメント:
【綺麗】
【何を探してるんだろう…】
【俺の予想は沈没船】
【海中神殿だと思う】
【ここまで室内の要素を必ず含んでたから、その路線はガチであるよね】
【もしくは閉鎖空間繋がりで洞窟とか?】
【なんか皆コメントしてて草】
【落ち着かないんだよね】
……5分。
何かを発見したチカが、海底のとある一点を指で指す。そこに泳いでいくと、ギザギザとした縦穴が広がっていた。そして、躊躇なくその中に入っていく。
コメント:
【洞窟だ】
【ん? これって次のレベルに入ったの? それともまだレベル7の一部?】
【洞窟はヤバくない?】
【大丈夫かな…】
暫く続く細い穴を抜け降りた先、そこは大きな水中洞窟だった。暗闇から照らし出されるのは、上下に生えるつららと硬い岩肌。その光景の全体を少し映したあとに、チカは奥へと向かって泳ぎ出す。
少しずつ狭くなる闇の中を、装備が引っかからないように気を付けながらライト一本を頼りに進んでいく。
……12分。
細い空洞と広い空洞を何度も通り抜ける中で、チカは疑念を抱いていた。
本来ならば、既に何らかの他レベルに達する程には泳いでいる。しかし、未だその様な気配はない。どうやら偏った場所を引き当てたらしい。
安全のため、引き返し始めたとき──予想外の事態を悟った。
「……!」
今通ってきた狭い空洞が、巻き上げられた粉塵で満たされている。
ただでさえ先の見えずらい視界は、そこからは完全に何も見えなくなるほど遮られていた。
チカは逡巡する。
壁を伝って記憶を元に手探りで移動することもできるが、それは装備が引っ掛かるリスクがあまりに高い。今まで通った狭い空間の多くに粉塵が上がっているとしたら、自殺行為に等しいだろう。それに比べれば、次のLevelの入り口を探す方がマシだ。
幸い、替えの空気なら幾らでも補充できるのだから。
そう判断したチカは、直感に従いより“深く”へと潜って行く。
……15分。
少し、楽しくなってきた。
……20分。
身体が凍て付くように冷たい。
それでも、何故かあたたかい感覚が胸の中に広がっていた。
1人じゃないという安心感のおかげだろうか。
(……えへへ……たのしいなぁ)
チカは気分よく鼻歌を歌いたいのを我慢しながら、また勘に頼ってふよふよと覚束ない泳ぎで進んでいく。
画面が揺れている。
……25分。
見つからない。
……30分。
見つからない。
……32分。
光が差し込んでいる場所を見つけた。
近づいてみれば、緑色の光がキラキラと水面に漂っている。
どうやら、次のレベルへと繋がる場所を発見したようだ。
(……あれ、なんだろ?)
コメント:
【おー!】
【多分あれが次のレベルだよね?】
《 長時間お疲れさま! 体調は大丈夫? ¥5000 》
【なんか時間かかりすぎな気してたけど、見つかったようでよかった】
【次はどんなレベルなんだろ?】
《 おめでとう! ¥2000 》
だが、チカは首を傾げてぼんやりと光を見つめる。
あそこに行けばいいのだろうか。
そもそも、どうして自分は水の中に居るのか。
聞いてみようと、口を動かす。邪魔なものを感じたので取り外した。
「ねぇ、みんな」
窒素酔いによる意識混濁の末、溺死
〈チカたんデスカウント〉228 +1