尾上 愛は生きている。 作:柳川 秀@尾上 愛【新人Vtuber】
突然の手紙ごめんなさい。
でも、もう今しかないと思ったので、私の気持ちを伝えさせてください。
あなたのことがずっと好きでした。
小学生の頃は素直になれなくて、あなたのことを避けていました。
でも、中学に上がってから、いつの間にかあなたのことが好きになっていまいました。
同じ高校になれて、同じクラスになれて本当にうれしい。
教室であなたの姿を見ていると、日に日に好きという気持ちが強くなってしまいます。
他の子と仲良く話している様子を見ると、胸が締め付けられる思いになります。
いつもリーダーシップを発揮しているあなたを、カッコいいと思っています。
何事にも真面目に取り組むあなたの姿を、カッコいいと思っています。
あなたのことが大好きです。これからも一緒にいさせてください。
騒ぎ立てなくて、天使部と文芸部だけの話に留めることができて本当に良かったと思う。
これが月原の目撃証言なしで他の生徒に聞いて回っていたら、それが小田川に知られていたらと思うとすっげぇゲンナリする。
人の噂も七十五日とか言うが、そんなんじゃあとても済まされない。きっと卒業するまで延々と擦られ続けていただろう。
怒りとか悲しみとかはなくて、ひたすら「俺は何でこんなことに時間と気力を割いていたのだろう……」という、ドッとした疲れが襲ってきていた。
アイは「つまんなーい」という感じにブスーと唇を尖らせている。
リンもテツも「そんなオチぃ?」「くっだらねぇ」という感じに呆れ返っている。
ってかこの場合、福原が言ってたような実績にはなるのだろうか?
事件解決では一応ある。福原ならまぁ、ブフッと笑ってくれそうな内容ではある。
でもなぁ……こんなんで「部結成!」ってのもなぁ……。
「へー。アイツらにしてはよく書けてる」
真中がラブレター、でもなくなった騙さレターを一読し、感心したという風に呟いた。
「うん、本当に。僕はまだ2日しかこの学校で過ごしていないけれど、粗暴に見えて彼らこんな可愛らしい字を書けるんだね」
「……んあ?」
一緒に再読していた四宮のセリフに、何か引っかかりを覚える俺。
バカトリオではあるが成績は下の上くらい。幽霊部員だけど軽音部に入っている。昔から字は汚くてカクカクしてる。
3人の中でも特にバカ。テストは毎度赤点。中学までは柔道部に入っていた。昔から字は汚くて所謂ミミズ文字。
記憶力はいいが頭の回転は鈍い。陸上部に誘われる程度には運動神経がいい。昔から字は汚くて読めない。マジで読めない。字なのかアレは?
「そうだ……小田川がこんな字を書けるハズがねぇ! あとこんな巧く女子エミュして文を書けるワケがねぇ!!」
「なに? じゃあ私が嘘吐いてるって言いたいワケ?」
「あ、いえあの、そういうワケではなくてですね……」
めっちゃいい点に気づいたと思ったのに、瞬時に真中に睨まれ委縮してしまった。伸びた鼻を一瞬でボキィっとへし折られた気分。
「そういうワケじゃないなら、どういうワケ?」
しかもその上追い打ちまでかけてくるんですけどこの人!
「ひぃん」
思わず後ずさって、下駄箱に背を打ったとき
「? トオル、それ……」
アイが俺の左手あたりを指さしてきた。
視線を向けると、小さなハートのシールが下駄箱の枠に引っ付いている。
ハートのシール、ラブレター、開いていた手紙――。
ピキーン! 桐村 徹に電流走る。
「
俺の一言に、アイもリンもテツもピキーンしたようだ。
「クマのぬいぐるみ?」
「それはプー」
「太平洋にあった大陸?」
「それはムー」
「ジュースか?」
「Qoo」
「カレー?」
「ルー。よくノれたな四宮。じゃなくて!!」
気圧されることなく真中からラブレターを取り返し、その封筒をみんなに見せつける。
「俺が手に取ったときから封がされてなかったし、中身は別になってた! このシールと、ほらここ! 1回剥がした跡があるぜ!!」
封筒の毛羽立った感じの部分を指差すと、全員が顔を近づけてそこを確認してきた。
「この手紙は小田川に1回開けられてるってことだ!」
「あー、ラブレターを入れるとこをバカトリオが
「封を剥がして、読んでるところを真中っちに見られて、慌てて逃げ出したときにシールをポイしたってこと!?」
「そっか! それなら、封がされてなかったことも、小田川くんたちがラブレターを読んでたことも、真中ちゃんがそれを見たことも、文字や文が女の子らしいことも」
「うん、全部に辻褄が合うね。やるじゃない、トオルくん」
おう気持ち悪いな四宮。
「つまり! 月原が目撃したっていう、もう片方の女子! それが俺に、俺に……」
「アンタに恋してる女子。そこ、言い淀むとこ?」
仕方ねぇだろ、とはとてもとても言い返せませんハイ。
「で? アンタたち、その女子をどうやって探すつもり?」
「あれ、真中さんも興味出た? 天使部、一緒にやる?」
四宮はすげぇや。転校生だからか? よくもまぁこんなヅケヅケと一匹狼の毛を逆撫でできるな。
「本気で言ってる?」
「うん、楽しそうじゃない?」
「……ふっ、冗談でしょ。こんな愉快な奴らと一緒にされるなんて」
真中はキャスケット帽を深く被り直し、下駄箱からローファーを取り出して履いて、校門に向かう前に見返って俺たちを嗤う。
「死んでもイヤ」