尾上 愛は生きている。   作:柳川 秀@尾上 愛【新人Vtuber】

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12『佐々木 凜は収集する。』

 さらに翌日。俺とアイが登校した時点で、

 

「次は晴美っちも書いて書いて!」

 

リンは何人目かにプロフィール帳を書かせているところだった。

 

「やぁ、おはよう」

「うお!? お、おう。おはよう」

 

 いつの間にか背後に立っていた四宮にビビらされる。

 

「ってか近ぇーんだよ! 耳元で囁くな!」

「おはよー。リンちゃん、順調そうだね」

「うん、思った通りだよ。誰も訝しむことなく自然と参加し始めた」

 

 「名案だったねトオルくん」とか言ってきそう。

 

「さすが、名案だったね。トオルくん」

 

 ハイ本日最初の気持ち悪い呼び方いただきましたー。

 

「何人くらい集まったの?」

「ああ、実はまだそんなに多くないんだ。3、4人くらいかな?」

「一人一人書くのに時間が掛かるからそこは仕方ねぇ」

 

 マスクの具合を直しながらテツが近づいてくる。

 

「テツくんおはよー」

「おはよー、テツ」

 

 チラチラと周囲に聞かれていないか確認しつつ、俺は少し小声めに会話を続けた。

 

「授業間と昼休憩も使えば、クラスの女子半分くらいは集まるか?」

「多くて8人くらいだろ。対象を絞れば怪しまれる。小学校からの付き合い以外の奴も含めての8人だ」

「筆跡鑑定って時間かかるの?」

「あー、ガチでトコトンやればな。ある程度は素人でもパッと見で見分けがつく」

「今日集まったのくらいなら、放課後でわかる?」

「多分な。これ以上話してると誰かの耳に入るぞ」

「そっか、それもそうだね」

 

 書き終わるのを待ってるリンのニコニコ笑顔は、決して演技ではない。

 なんだよ。古いとかなんとか言ってたけど、周りの女子も巻き込んでフツーに楽しんでんじゃねぇか。

 まぁそういうリンの気質のおかげで捜査は続けられてるんだし、ありがたやありがたや。

 

 ともかく今は数が集まるのを待つしかない。放課後までもどかしい時間が続きそうだ。

 


 

「そして集めたものがこちらです」

「え、なに? 料理番組でよく見るアレ?」

 

 放課後。俺の机の上にプロフィール帳を広げながらリンがドヤる。

 

「もう空いてる子見境なく片っ端から書いてもらっちゃった!」

「おーおー、めちゃくちゃ楽しんでたなリンさんよぉ」

「でー、小中一緒だった子で書いてもらってないのは――」

「無視かーい」

「小春っち、ユイユイ、ミキミキくらい?」

 

 小春っちとは船橋 小春(フナバシ コハル)のことだ。

 家庭科部で、文化祭で出そうとしていた秘密のメニューを小田川にバラされて泣いた子。

 

 ユイユイは七々瀬 結(ナナセ ユイ)のこと。

 軽音部所属。ボーカルと作詞が担当で、詞には小田川にブチギレた横峯 達哉(ヨコミネ タツヤ)が曲をつける。

 

 ミキミキは三木 未来(ミキ ミライ)。「未来」を「ミキ」とも呼べるのでミキミキ。リンがつけて本人も気に入ってる。

 テツと同じ科学部だ。アイとリン以外じゃ珍しくテツが自分から話しかけられる女子でもある。

 

「えっと、その中にトオルくんを好きになりそうな子、いるの?」

「うーん……ユイユイ、横峯っちと付き合ってるんだっけ?」

「いや……前にそれ聞いたら、アイツ速攻で殴ってきやがったぜ……」

「えっ!? トオル、殴られたの!? 殴り返してないよね!?」

「我慢しました……ってかアイツおっかねぇよ……」

「うん、トオルくんのおもしろエピソードは後で聞かせてもらうとして」

「イッパイキイテネ……」

「船橋さんは?」

「小春ちゃんは……あんまり男の子と話さないかな。ちょっとニガテなのかも」

「トオルっちと接点もあんまない感じだよねー。外してもいいかもしんないよ? ミキミキは――」

「あー、ねぇもんは仕方ねぇ。とりあえず集まった奴だけ見てくしかねぇだろ。時間が惜しい、さっさとやるぞ」

 

 プロフィール帳とラブレターを自分の席に持って行って、テツがドカッと座った。

 

「やるぞー! と言っても、わたしたちはテツくんがじーっと鑑定してるの、じーっと見てるだけだけどね」

「……応援でもしてろ」

 


 

「おぉ、なるほど。とめ・はね・はらいを見るってワケか」

「よし、8切り。あとは10捨てで、ハイ上がり」

「ああー! まーた負けちゃった! ドイヒー……」

「フフ、ごめんね。勝負には手を抜かない主義なんだ」

「たしかに字の曲がってるとこって癖出やすいみたいだな」

「四宮くん強いね! なんか、手を読まれてるみたい!」

「うーん。ちょっとだけ当たってるかも」

「え、読めるってこと!? メンタリストじゃんバイヤー!」

「こうして見ると、やっぱ人によって字って全然違うんだなー」

「ああ、そこまでじゃないよ? 何回か戦って、なんとなくリンさんはこういう手をよく出すな、とか、アイさんはこれ狙ってるな、とか。勘が掴めてくるってだけさ」

「えー! それでも充分ゴイスーじゃん!」

「ハハ、照れるなぁ」

「……なぁ、お前ら」

「え?」

「ん?」

「うん?」

「応援する気、あんのか……?」

 

 仲良く大富豪をしている3人は、俺が聞くと数秒お互いの顔を見合わせて

 

「「ありまーす」」

 

そう元気よく返事した。

 

「よし帰れ」

「えー、トオルってばつーめーたーいー」

「だって応援するにしたって、見てるだけじゃ退屈じゃーん」

「うん。それに、大勢の視線があると、テツくんも集中できないかなって」

 

 まぁ……それは一理あるか。

 

「そういうワケで! 次は四宮くん、7渡し禁止ね」

「え、まさかの縛りプレイ」

「必要なハンデってヤツじゃん? ウチが勝つまでやるよー!」

「わぁ、ドイヒーってヤツだね」

 

 にしてもまぁ、随分と馴染んでんな四宮。

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