尾上 愛は生きている。   作:柳川 秀@尾上 愛【新人Vtuber】

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13『事の真相は明かされる。』

「わかったぞ」

 

 テツが何の動揺も見せず、静かにそう言ったのは、四宮が5連勝したそのタイミングだった。

 

「コイツだ」

 

 手紙とプロフィール帳を一緒に渡されて、アイたちも一緒に覗き込んでくる。

 

「! トオル、この子って……」

「バイヤー……、こんなことあるんだ……」

 

 ――小学生の頃は俺のことを避けていて、中学に上がってから好きになってくれた子。

 ああ、なるほど。判明すれば腑に落ちた。この相手からってんなら納得もいく。

 だからか、名前を見た瞬間は俺もテツと同じように動揺がなくて、冷静だった。

 

「差出人は、苅部 晴美(クサカベ ハルミ)……」

「ああ、一番前の席にいるバスケ部の子だよね。トオルくん、どういう関係?」

「トオルが……。トオルが、昔告白した子なの」

「へぇ! そうなんだ! ……詳しく聞かせてもらえる?」

「ああ、まぁ……同じ小学校出てる奴は知ってる話だからな……」

 

 『三中の雷神』。

 中学時代に起こした()()()()()()()()のせいで、そんなクソダセェ異名がつけられるよりも前の話。

 小5のとき恋をした。その相手が苅部だった。

 

 ガキの頃の話だ。惚れた点も至って単純、可愛いから。

 茶色のショートボブにくりっとした大きな目。身長は、小学生のときは低かったけど、中学でバスケ部に入ってからぐんぐん伸びて、今ではアイより大きい。

 性格も、バスケ始めてから明るくなったように思う。昔はもっとおっとり系で、前に前に出る感じのタイプじゃなかった。

 つまるところ誰が見ても可愛い系の女子、それが苅部。

 

 同時期に彼女を狙ってたのが今やバスケ部キャプテンの野沢だ。

 少し色黒な肌は活発なイメージを与える一方、どことなく脱力感のある目は「アンニュイ」らしく、女子ウケがいい奴。

 しかし、当時は俺の方が運動できたので、圧倒的に俺有利――というワケでもなく、苅部は俺にも野沢にもノーを出し続けた。

 

 中学に入ってからは恋愛ってのが……恋人になるってのが何を意味するのか深く理解できるようになって、俺も野沢も苅部にアタックすることはなくなった。

 

 アレは終わった恋ってヤツだ。

 だから、

 

「俺、断ってくるわ」

「えっ! だってトオル、好きだったんでしょう!?」

「昔の話だろ? 別に今はなんとも思っちゃいねぇーよ」

「そう、なんだ……」

 

 なに、ちょっと安心してんだよ……。

 

「でも、晴美ちゃんはすっごい勇気を出してその手紙を書いてくれたんだと思う。だから……傷つけるような断り方は、しないであげて」

「そりゃあわかって――るけどもだ。じゃあどう断りゃいいんだ?」

 

 俺が人生で告白したことがあるのは、小学生の頃の苅部相手だけ。

 そのときの彼女の断り方は「今はその……私、そういうのわかんないから……」っていう風に、やんわりとした感じだった。

 人生で告白されたことはまだないし、相手が昔好きだった女子なので断り方もなんか気を遣う。

 

「トオルっち、だいじょぶそ? なんて言うか、一緒に考えたげよっか?」

「あー、文芸部にでも相談しに行くか?」

「あぁー、えぇー……? んー、手を借りたい気もするし借りたくない気もする……東城がいなけりゃ……」

「東城くん、100%いると思うよ」

「デスヨネー」

「そうか……!」

 

 こめかみをリズムよくトントンしながら、

 

「トオルくん、その手紙、君宛じゃないんだよ」

 

四宮が突然そう呟いた。

 

「俺宛じゃない!?」

「うん。まず、小田川くんについてだけど……誰かがトオルくん宛にラブレターを送ったと知っているなら、どうしてまだ何も騒いでないんだろう?」

「あれ? たしかにそうだね? 晴美ちゃんに言わないのは、ちょっと前に小春ちゃん泣かせて大事になったからだろうけど……いつもなら『お前ラブレターもらってたろー!』って、次の日にはトオルに絡んでくると思う」

「そう考えるとジーマーで変かも! なにかそうできない理由があるってこと?」

「まさか……アイツら、誰の下駄箱から取ったか覚えてなかったのか!?」

「あー、あのバカトリオなら有り得るわな。下駄箱はバネで自動的に閉まるし、ノータイムで取り出してどこから取ったかわかんなくなったか」

「うん。真中さんに見つかって適当に入れたのが、トオルくんのところだったんだ」

 

 どんだけバカなんだアイツら!?

 

「け、けどよぉ! そりゃお前の推測であって、証拠にはなんねぇだろ!?」

「『もう今しかないと思ったので、私の気持ちを伝えさせてください』」

「んあ!?」

「トオルくん宛なら、()()()()()理由って何かある?」

 

 たしかに、そう考えると変な一文だ。

 

「それに、天使部部長も嫌がるトオルくんが、『いつもリーダーシップを発揮している』も、少し変だよね」

「そう言われれば、まぁ……俺、班長とかもやんねぇし……」

「苅部さんは相当慌てていた。自分の名前も相手の名前も書き忘れるほど、急がなければならない理由があった。『他の子に取られちゃうかも』、そう思ったんだろうね。彼、モテるから」

「モテる……?」

 

 コイツ……既に真相が見えてるのか!?

 

「ほら、もう一人いるじゃない? 苅部さんのことを好きだった、そしてリーダーを……キャプテンをしてる男の子」

 

 夏風がカーテンを乱暴に押し退けて、そのまま俺たちの髪を無造作に撫でていった。

 

「想い人が立て続けに告白されたと聞いて苅部さんは『もう今しかないと思った』。6組の子から告白され、3年の先輩から告白され、4組の子からも告白された、野沢 洋太くん。彼が本来の宛先だ」

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