尾上 愛は生きている。 作:柳川 秀@尾上 愛【新人Vtuber】
県立
生徒数は、40人×6クラス×3学年=720人くらい。
校舎は、4階建て×3棟が東西の渡り廊下で繋がり平行に並んでいる。
正門を通って右に進み、A棟とB棟を結ぶ通路へ。
通路には風除けの壁があって、そこを背にして下駄箱が設置されている。
靴を上履きに替え、A棟の階段を上った先、2階の手前から2番目が俺たちのクラス。1年2組だ。
「アイアイ! トオルっち! おっはよー!」
シュシュ……だっけ? 髪まとめるのに使うリング状のヤツ。
入った瞬間、それが巻かれた手首をわんわん振って挨拶してきたのは
ハーフツイン……だっけ? ツインテールとなんかちょっと違うヤツ。
それと、折って膝より割と上まで短くしたスカートが本人曰くチャームポイント。
テンションはいつもウザくない程度に高めだ。
「リンちゃん、おはよー!」
「おはよー」
「お前もうあの話聞いた?」
アイに続いて挨拶した俺に、おはようの一言もなしに話しかけてきたのは
皮肉屋で毒舌家だけどノリは良くて、目が細くて、一年中黒マスクをしている。
夏本番に差し掛かろうという今日この頃でもそれは変わらない。
今はリンに自分の席の机に座られていた。
「あの話、だけでわかるかよ! 俺はニュータイプか!?」
「なになに? 何の話?」
アイがこてんと首を傾げる。
「バスケ部キャプテン様のお話」
「野沢っちがまたコクられたって話! バイヤーじゃない!?」
「んあ? それこの前聞いた気がするぜ? 3年の先輩だろ?」
「違う違う! 今度は4組の子!」
「あれ? 6組の子じゃなかった?」
話しながら、
俺たち幼馴染四人組の席は、なんというか……テトリスで割と邪魔になるZみたいな、あのブロックの形で並んでいた。
リンの席の右隣がテツの席で、その後ろに俺、さらに右にアイが座る。
「あー、それは3年の前な。つまり立て続けに3人からコクられたってワケだ」
「マジか。どんだけモテんだアイツ」
「小学生の頃は同じ女子を狙った仲なのに、お前とどこで差がついたんだろうな」
「うるせーよ」
「やっぱ
「うるせーよ!」
「どうしてテツくんとリンちゃんが知ってるの?」
「ウチらは小田川が言いふらしてたから知ってんの。多分、もう知らないのアイアイとトオルっちだけだよ?」
小田川は個人の名称じゃない。小田・田川・小川の男子3人、通称バカトリオを指した呼び名だ。
デリカシーに欠けていて、おふざけとイタズラが大好きで、コイツらだけ中身が小学生で止まってる。
「小田川くんたち、いつもどうやってこういう情報手に入れてくるんだろうね」
基本誰にでもニコニコ笑顔なアイも、これには流石に苦笑いだ。
「ってか、3年の先輩のときも小田川が騒いでたから広まったんじゃなかったか?」
「6組のときもな。どれも告白の現場に
「小田川ってジーマーで変に運いいよねー。軽音部の『文化祭で新曲サプライズ披露しよう』って計画も
「そういえば、家庭科部が文化祭のために用意してたヒミツのメニューも、
「もうなんか部室棟に近づいただけで追い払われてたな、小田川……。文芸部なんか見張りまで立ててるし。多分、東城の策なんだろうけど」
当たり前のようにどこの学校でも見かけられる、生徒たちの生産性も他愛もないお喋り。
お分かりいただけただろうか?
もう一度ご覧いただ……くのは酷なのでスキップするが。
そう、誰もアイの天使コスプレにツッコんでいないのである!
テツとリンだけではない! クラスの全員、誰もツッコんでいないのである!!
「俺か? 逆に俺がおかしいのか??」
「? トオル、急にどうしたの?」
「いやお前のことだよ……ソレ、いつまで着けてるつもりだ?」
「ソレ?」
「羽と輪っか! 隣にいるとたまにぶつかって邪魔なんだよ!!」
テツとリンがこっちをじっと見てきた。すげぇ軽蔑するような目で。
「何言ってんだお前」
「フツーじゃん、どう見ても」
「いぃやフツーじゃねぇよどう見ても!?」
「フツーだよ? だってわたし、天使だもん」
左腕の包帯をさすりながら微笑むアイ。うんうんと頷くテツとリン。
「ホントどうしちまったんだよお前らよォ!?」
キーンコーンカーンコーン。チャイムが俺の怒号を遮る。
「おーい、席座れー」
同時に、教室の引き戸を開けて担任の