尾上 愛は生きている。   作:柳川 秀@尾上 愛【新人Vtuber】

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05『部の設立は認められない。』

「ダメだ」

「なんでや!!?」

 

 思わず関西弁が出てしまった。全然関西に所縁ないのに。

 職員室にいた全部の先生にシーってされて、慌てて口を抑える。

 ちなみに先生たちも当然全員がアイの格好についてはノータッチ。どうなってんのこの学校?

 

「どうして!? 5人連れてきたら顧問になってあげるって、言ってたじゃないですか!?」

 

 続けてアイが小声めに詰め寄――るときに、その羽が俺にぶつかってちょっとイラッとした。

 福原の机の上では設立申請書が保留にされている。

 

「いやなー、申請要件が厳しくなったんだよ。あまりに部活の数が多すぎて管理しきれねーって、前から先生たちの中じゃ問題になっててなー」

「じゃあ天使部、作れないんですか!?」

「そういう訳でもないぞー。要はなんか実績があればいいんだよ」

「実績……?」

「たとえばー、そうだな。カバディ部を作りたいって奴がいたとするだろ?」

 

 仮定が正気じゃねぇけど、そのくらい変な部じゃないと既存だからなこの学校。

 

「他校でも社会人相手でもいいから、試合して勝ちましたーって、そういう実績があれば『ちゃんと活動できますねー』って認められるんだよ」

 

 いや聞いたことねぇよ他校のカバディ部。況や社会人をやだよ。

 

「じゃあ……わたしたちなら、なにか事件を解決したら作れるんですか?」

「そういうことだなー。そのときは一応、事件の当事者とか、解決しましたーって証言をしてくれる第三者も連れてきてくれー」

「言質取りましたからね! 今度こそ約束守ってくれますよね!?」

「ハイハイ守ります守ります大人として子供たちに責任ある姿を見せまーす。まー書類は受け取っておくから。ほら。今日はもう下校時間来るし、なんか解決したらまた来ーい」

 


 

「もーぉ! 福原先生のバカーぁ! そんな都合よく事件や困り事が転がってるワケないのにぃーっ!」

 

 プンプン怒りブンブン腕を振るアイ。頭の上では輪っかもプリプリ動いている。

 

 職員室はC棟の2階。そこから1階に降りて、今はA棟の下駄箱へ向かって通路を歩いている最中だ。

 

「福原ナイわー。約束破るとかドイヒー」

「まぁ期限とかないんだし、まったーり探せばいいんじゃね?」

 

 そもそも俺は天使部にそんな乗り気でもない。諦めてるだけ。さっきはノリでツッコんじゃったけど。

 

 昔からアイは困ってる人を放っておけないし、面白そうな事件が起きると無関係でも首を突っ込んでいくような質だ。

 東に誰かの失せ物あれば行って捜索してやり、西に疲れた老人あれば行ってその買い物袋を負い、南に緊張しすぎな人あれば行って怖がらなくてもいいと言い、北に喧嘩や揉め事があればよくないからやめろと言う。

 そんでそれに毎度毎度俺たちは巻き込まれ付き合わされてきた。

 10年近くそうであれば、今更「天使部作りたい」とか言い出されてもやることは変わらないんだし、「あハイ」としかならないだろう。

 

「そういえば、リンはともかくテツはいいのかよ? 科学部もあるんだろ?」

「掛け持ちしてる奴なんて他にもいるだろ」

「そうだけど、お前一応部長だろ?」

「どっちを優先するかくらいその都度決めれる」

「さーすがテツっち! 冷血っぽく見えて、ジーマーで面倒見いいもんねぇ」

「うん! 同じ部長として、部長会とかでトオルのサポートしてあげてほしいんだ」

「あーそれは助か――んあ?」

 

 俺のサポート??

 

「おいアイ。申請書よく見てなかったんだが、部長欄に誰の名前書いた?」

「? トオルだよ?」

「いやなに当然でしょって顔してんだお前! なんでお前じゃねぇんだよ俺なんだよ!?」

「だってめんど――ほら! トオルの方がわたしよりしっかりしてるでしょ?」

「お前今めんどくさいって言おうとしたよなァ!?」

「だってぇ! わたしは自由に動けてワガママもそれなりに言える副部長ポジションがいいんだもん!」

「あるある! そんで、色々あった責任は全部部長が取ってくれるってヤツでしょ?」

「あー、王道だな」

「さっすがリンちゃんテツくん! わかってるぅー!」

「いぃやそれ聞いてますますやりたくねぇわ!」

「ハハハ、いいじゃない。部長ってカッコイイよ?」

「四宮まで笑ってんじゃねぇ!!」

 

 やはりコイツも俺を振り回す側の人間か、などと思いつつ、自分の下駄箱を開けたその瞬間。

 そこから、可愛らしい薄桃色の封筒と紙が、ヌルっと滑ってハラリと舞ってパサっと落ちた。

 

「……え?」

「え?」

「マ?」

「お?」

「へぇ」

 

 バネで自動的に下駄箱がピシャリと閉じる、と同時に、ピシャリと固まりつく我ら一行。

 これはまさか――

 

「ラ!?」

「ブ!?」

「レ!?」

「ター!?」

「だね。トオルくん、結構モテるの?」

「いやいやいやいや! こんなん初めてだってか、俺に!? なんで!!?」

 

 封がされておらず、中身の紙は――なんだ? 最初から開いてたのか? 別になって落ちてきたぞ?

 拾い上げて恐る恐る便箋を読もうとすると、他のみんなも我先にと覗き込んできた。

 

「え? なに? やっぱみんなで読む感じ??」

「? 違うの?」

「こんなゴイスー面白いこと、アイアイもウチらも放っておくワケないじゃん?」

「いいからさっさと開けろよ」

「あハイ」

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