尾上 愛は生きている。   作:柳川 秀@尾上 愛【新人Vtuber】

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06『愛の手紙は謎を呼ぶ。』

 突然の手紙ごめんなさい。

 でも、もう今しかないと思ったので、私の気持ちを伝えさせてください。

 

 あなたのことがずっと好きでした。

 

 小学生の頃は素直になれなくて、あなたのことを避けていました。

 でも、中学に上がってから、いつの間にかあなたのことが好きになっていまいました。

 

 同じ高校になれて、同じクラスになれて本当にうれしい。

 教室であなたの姿を見ていると、日に日に好きという気持ちが強くなってしまいます。

 

 他の子と仲良く話している様子を見ると、胸が締め付けられる思いになります。

 いつもリーダーシップを発揮しているあなたを、カッコいいと思っています。

 何事にも真面目に取り組むあなたの姿を、カッコいいと思っています。

 

 あなたのことが大好きです。これからも一緒にいさせてください。

 


 

 全員が俺の顔を見ているのがわかる。俺がどんな反応するか期待しているのがわかる。

 だが困ったことに、俺はなんてリアクションすればいいのか定まらず、口周りの筋肉をピクピクさせていた。

 

 ラブレターなんてもらったことがない。誰かにコクられたこともまだない。

 好意を向けられて、うれしい……気はしているのか、俺? 悪い気はしないけど、だからなんだ?

 俺はどうするのが正解なんだ? 喜べばいいのか? 照れればいいのか?

 

「なんで俺に……」

「トオルがカッコいいからだよ」

 

 恥じる様子もなくアイが言ってくるもんだから、俺の顔は急にボフッと真っ赤になった。

 

「はぁ!? 俺が!? だって俺、横峯みたいに顔いいワケでもないし、東城みたいに頭いいワケでもないし、野沢みたいに運動神経いいワケでもないし……いや足は俺のが速いけど……」

「あー、()()()()()な。腐りやすいって意味だ」

「テツっち、唯一誇ってるんだから黙っといてあげよ」

「聞こえてんぞお前ら」

「そういうことじゃなくてね? だってトオルは――」

 

 アイが腕の包帯をさする。

 

「少なくとも! その手紙を書いてくれた子にとっては、特別なんだよ!」

「特別……」

 

 俺のことをそんな風に思っている人がいるなんて――んあ? 

 

「いやそうじゃん! コレ差出人の名前がねぇ!!」

 

 封筒含めひっくり返して表裏を見てみても、どこにも誰が送ってきたのか書かれてねぇ!

 

「ジーマーじゃん! これじゃ返事しようなくなくない!?」

「なくなくなくないな。コイツかなりのうっかりさんか?」

「んー。緊張して、慌てて書き忘れちゃったのかもね。トオルくん、どうするの?」

「どうって……」

「探そうよ!」

 

 ふんす! と、アイが鼻を鳴らした。

 

「書いた人を探そう!」

「えー、でもよぉ」

「だって、せっかく気持ちを込めて書いたラブレターだよ? 伝わらないのって、絶対にかなしいもん! ダメだよ! すぐ近くにかなしみそうな人がいて、それも助けることができそうなのに、何も行動を起こさないなんて!」

「アイ……」

「そ、れ、にっ! この事件を解決すれば、実績扱いになって天使部結成☆でしょ?」

「ああうん、だと思ったうん」

 

 別にそっちが本心ってワケでもない。

 アイにとって、このラブレターを書いた人が正しく俺に気持ちを伝えられることはとっても大切なことで、それがついでに自分の利益にもなるからってだけの話。

 

 昔からそうだ。

 厄介事に首を突っ込むときは、もちろん当事者たちのためでもあるけど、それがちゃんと自分たちのためにもなることを理解して動いている。

 ちゃっかり者ってワケじゃあない。情けは人の為ならず、それを深く理解しているだけなんだと思う。

 

「んっと、トオルくんは? この手紙を書いてくれた子のこと、気にならないの?」

「そりゃあまぁ……わからないままってのもモヤモヤするし……だぁぁーーーっ!」

 

 左腕をゴシゴシ摩りながら、自棄になって叫ぶ。

 

「わかったわかった! コレが天使部第一の事件、それでいいだろ!?」

「うんうん。やっとやる気出してくれたね、トオル!」

「うっせ! で? 探し出すにしたってどうやって探す?」

 

 改めて5人で手紙を一読した。割と手掛かりは多くあるように見える。

 

「小中一緒で、『同じクラス』つってんだから、案外容疑者は多くないな」

「トオルっち……いくら『JS探偵レムリア』が好きだからって、容疑者呼ばわりはナイわー」

「え、JS探偵レムリア? 何それ?」

「あー、コイツが昔から好きな児童文学ミステリーのシリーズな」

 

 リンの代わりに説明するテツ。

 四宮が「へぇ、いい趣味してるね」とでも言いたげな笑みを向けてきたが、一旦無視する。

 

「俺たちのクラス、小中一緒だった女子って何人いたっけ?」

「ウチとアイアイを除いて、えーっと、10人くらい?」

「結構多いなぁ。他の部の子が残ってれば、もう帰った部の子って絞り込めるけど……今日はみんなわたしたちより先に帰っちゃったみたいだから、アテにならないね」

「うん。下駄箱に立ち寄ってから部活に行った可能性もあるだろうけど、もし僕だったら『何してたの?』って聞いちゃうな。その線は薄いだろうね」

「なんか理由つけて部活に顔出さず帰れば、どうとでもなるかもな。あとは帰宅部か?」

「なるほど。探偵らしくていいね、トオルくん」

「お、おう」

「あー、ここから先は聞き込みだ。ただし」

 

 キーンコーンカーンコーン。

 テツが人差し指で上を指した瞬間、下校のチャイムが響いた。

 

「明日以降な」

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