尾上 愛は生きている。 作:柳川 秀@尾上 愛【新人Vtuber】
……いやまぁ俺ら天使部(仮)5人中4人も今はそうなんだけど、それはさておき。
あの東城ですら文芸部という仲間たちがいるのに、真中はなんというか、群れるのを嫌う。
そりゃあ授業の上でのグループ活動なんかはちゃんと参加してくれるけど、中学の修学旅行では自由時間に単独行動して先生から怒られていた。
読書中の宝生はたしかに近寄りがたい雰囲気を出しているけど、話しかければ普通に応えてくれる。
でも真中の場合はハッキリと嫌悪感を示してくる。ハブられてるワケじゃあなくて一匹狼だ。
……え? そんな一匹狼ですらツッコまないアイの天使コスプレ、どうなってんの?
言えよキレ気味に、「なにその格好、ふざけてる?」とかさぁ!?
今更言い出してももう仕方ないのでそれはさておきパートⅡ。
真中は小学5年生のときに俺たちと同じ学校へ転校してきたので、一応条件には合う。
けどなぁ……俺は東城とは違うけど、そんな奴がこんな文章を書くとはとても思えな――。
いやでも、「素直になれなくて避けていた」とも書いてあったな? まさかね?
「昨日は今くらいの時間に下校しとったで?」
と、月原が言うので、道中四宮に先述の彼女の説明をしながら下駄箱に戻ってみたところ、
「あっ」
「ん?」
ちょうど帰ろうとしていた当人と出くわすことができた。
真中は帰るときいつもセーラー服には不釣り合いな黒のキャスケット帽を被っている。
いつだったかなんかのキャラに似せて小田川が紙で作った猫耳をくっつけたことがあって、本人はそれに気づかず被って帰ろうとして、ギリギリで他の奴に教えられて。
で、バカトリオが翌日ボッコボコにされたっていう事件もあった。
そのとき止めたのはアイだ。いやアイっていうかアイに指示された俺だ。
そんな風に容姿はまぁ、カワイイ系なのにな。こちらを認識するや否やツリ目で睨み返された。
「なに? なんか用?」
こっちは「あっ」しか言ってないのにめちゃくちゃ不機嫌そうである。
んあ? 待てよ? これどう聞けばいいんだ?
「君がこのラブレターを、俺にくれたのかい?」
キラッ。とか? いやナイナイナイナイ。
ってかそれで違ったらどうすんだよ。俺殺されるぞ。まだ死にたくないです。
「ええっと……真中ちゃん、あのね……」
「なんていうかさ、アハハー……」
アイもリンもそこんとこ考えていなかったようで口籠ったが、それが良くなかったらしく
「用があるならハッキリして」
余計に機嫌を損ねてしまった。
これは、リンの口癖を借りるならジーマーでズイムーだ。
実を言うと、この手のタイプ――あまり人に心を開かない女子の扱いはテツが一番慣れている。
どんな言葉をかければ距離が縮められるのか、好感度が上がるのかは一番よく知っている。彼は数々の女子をオトしてきた。
ただし……ギャルゲーの中に限りな!
バッ、一応テツの方を向いてみる。
サッ、顔を背けられる。
そういえばうん、さっきの文芸部ででもだけど、コイツ、現実に存在していて話せる女子ってかなり限られてるんだったわ。
となるといよいよ……どうする!?
「ねぇ、帰っちゃっていいの? まだ部活途中でしょ?」
逡巡している間にサラッと話しかけたのは、四宮だった。
いやお前も真中が帰宅部なのは知ってるだろ? なんだその質問?
「私は部活入ってない」
「へぇ、そうなんだ。じゃあ、すぐ帰らずに何をしてたのかな?」
「……アンタには関係ないでしょ」
「当ててあげようか」
左手の人差し指でこめかみをリズムよくトントンし始める四宮。
「うん、そうだな……図書室?」
「……なんでわかったの?」
「ハハ、ただの勘だよ。昨日も図書室に?」
「ええ、まぁ」
「何か書いてたとか?」
そこで、ちょっと目を丸くしてた真中の表情が元に戻った。
「なに? 誘導尋問のつもり?」
「あれ? うまくいったと思ったんだけど」
「惜しかったね探偵さん」
キャスケット帽のつばを持って、彼女は勝ち誇ったように笑う。
「まぁ、話してもいいけど。このままだと私が書いた犯人に間違われそうだし」
「! 知ってるのか!?」
「ああ、入れられてたのアンタ? ラブレター? それとも、不幸の手紙?」
「んあ? ら、ラブレター……。差出人が書かれてなくてさ」
「フフッ! それでウキウキで探偵団ごっこ? おめでたいね。それを入れたの、あのバカトリオなのに」
……え? 小田川?
「昨日帰るときアイツらがここで何か読んでいて、私に気づいたら慌ててそれを下駄箱に入れて逃げて行った。手紙みたいなものを下駄箱に、って言ったら、ラブレターか不幸の手紙くらい。まさかラブレターだったなんてねぇ」
マジか……。いや、なんでちょっとガッカリしてるんだ、俺?
読んだ直後はどうリアクションしていいかもわからずにいたのに、やっぱり、自分に好意を向けてる人がいるってことに浮かれてたのか?
「ねぇ、見せてよ。バカが一生懸命考えて書いて、もっと哀れなバカが騙された愛の手紙ってヤツを」
嗤う真中の声が、ぼぉっと真っ白になった頭に響き続けている。