IS 進化のその先へ   作:小坂井

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夏休みが終わってしまいましたが、グダグダとやっていきましょう。


32話 試合開始

「教官の授業をさぼるとはいい度胸だな」

 

午後、瑠奈が授業をさぼり、屋上の芝生で寝そべり、読書をしていたら、背後から苛立ちと怒りが混じった声が聞こえた。

 

「何をそんなに怒っているんだい?井上麻里奈さん」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ!何度も間違えるな!」

 

冗談でラウラの気をなだめようとしたんだが、どうやら火に油を注ぐ結果になってしまったらしい。

 

「まあ、そう怒んないで、座りなよ」

 

瑠奈は、自分の隣をパンパンを叩き、ラウラを自分と同じように座るように促す。

 

「教官からお前を連れ戻して来いと言われているのだが・・・・・・」

 

「私を連れ戻すことなんていつでもできる。私は君とはこうやって一度ゆっくり話してみたいんだ。君を知りたい。時間を無駄にはさせない。どうかな?」

 

「そ、そうか・・・・・じゃあ、失礼して・・・・・」

 

『君を知りたい』と言われ、少し戸惑った様子をしながら、ラウラは瑠奈の隣にゆっくりと腰を下ろした。

 

瑠奈はIS学園では『授業をさぼっていて、自分勝手な不良学生』と言われているが、ラウラには、そう思えない。

確かに、いい加減なところはあるが、人との約束は守るし、ISという大きな力を持っているのに、うぬぼれることもない。

 

不思議な人間だ。

 

「授業には出なくていいのか?」

 

「今日は久しぶりにこんなにいい天気なんだ。こんな日に教室なんかにこもってちゃもったいない」

 

「出席日数はどうなる?」

 

「何とかなるさ。それよりラウラ。君はどうして代表候補生になったの?」

 

「我が祖国の栄光のためだな」

 

考えるような間もなく、ラウラは答える。

それは、瑠奈も分かっていた。

代表候補生という立場からすると、国のことを思ってなる人間がほとんどだろう。

だが、鈴のように大切な人と会うためにわざわざIS学園に来る人間もいるぐらいだ。

一括にはできない。

 

「そんな顔も見えないもののために頑張れるの?」

 

「それもそうだな。言い方を変えよう。教官のためだな」

 

「君は本当に千冬がすきだな」

 

「私を救ってくれた方だからな。感謝もするし、何らかの形で礼もしたいと思うのは当然だろう。お前は何のために戦っているんだ?」

 

「それは・・・・・・・」

 

その質問に瑠奈は黙り込んでしまう。

瑠奈には戦う理由がない。

ラウラのように尽くす国もなければ、セシリアのように守りたい場所(オルコット家)のなく、鈴のように大切な(一夏)もいない。

ただこの世をさまよっている死人に過ぎないのかもしれない。

それでも、強いていうなら

 

「償いかな・・・・・・」

 

「え?」

 

「何でもない。そろそろ教室に戻らなくてはいけないんじゃない?」

 

それを言うと、瑠奈は呼んでいた本を持ち、ゆっくりと立ち上がり、近くにあった屋上の手すりに足をかけ

 

「なにをしている!!危ないっ!」

 

思いっきり足で地面を蹴り、屋上から飛び降りた(・・・・・・・・・)

ラウラがあわてて下をのぞき込むが、そこには血だまりの死体はおろか、血痕一つない綺麗なコンクリートが広がっている。

 

不思議がりながら教室に戻ったラウラだったが、『瑠奈を連れてくる』という肝心の任務を忘れていたラウラに最愛の人物である千冬が脳天チョップが炸裂するのだった。

 

ーーーーー

 

六月も最終日に入りIS学園は週初めから学年別トーナメント一色になる。

なんとか、今日行われる学年別トーナメントまでに、エクリプス・(フェース)の調整は何とか終わり、こうしてベストコンディションで挑むことができる。

それとはほかに、セシリアの特訓やISをねだる箒への対応があったが。

 

「それにしても・・・・・すごい人ですね・・・・・」

 

隣にいたセシリアが驚嘆したかのように声をあげる。

会場は企業や政府関係者の人間で埋め尽くされていて、IS学園の会場係の生徒たちが忙しそうに東奔西走しているが、瑠奈も同じような苦労があった。

 

政府の関係者とらしき、人間が瑠奈を自分の管轄下に置こうと勧誘して来たり、脅迫らしきことをしてくる人間がたびたびいるからだ。

もちろん、全てお帰り願っているが、中にはしつこく食いついてくる人間もいるから迷惑している。

 

「とりあえず、トーナメント表を見せてくれる?」

 

セシリアは当日に配布されたプリントをポケットから取り出し、瑠奈に見せつける。

このプリントは、今朝、教室で配られたものだが、瑠奈は出席していないため、まだプリントを見てないのだ。

 

「へぇ・・・・面白い組み合わせだね」

 

Aブロックに瑠奈・セシリアペアとラウラの名前があったが、そのラウラのペアに箒と書かれていた。

おそらく、瑠奈に専用機のねだりに夢中になり、肝心のペアを探す時間を亡くしてしまったのだろう。

浅ましく、愚かな末路だ。あの曲者のラウラのペアを担うことになるとは。

 

「初戦からラウラと戦うことになるとはね・・・・・」

 

瑠奈にとっては好都合だ、不安の種は早めに摘んでおきたい。

その一方、一夏・シャルロットはBブロックで瑠奈と当たるのは決勝になりそうだ。

 

『それでは、第一回戦を行います。選手は第三アリーナに出場してください』

 

代表候補生のプライドと瑠奈の純潔をかけた、大会が始まった。

 

 

 

 

 

「昨日、わが軍にお前が妻になった時の要望をランキング形式で聞いてきた」

 

「ドイツ人ってのは気が早いね」

 

瑠奈・セシリア対ラウラ・箒の試合開始まで、20分ほどになり、アリーナの中央で各々がISの最終調整をしているとき、ラウラが思い出したかのように瑠奈に話してきた。

口調からすると、ラウラ自身は勝つ気満々だ。

 

「三位から順次に言っていくぞ。三位、自分をお兄ちゃん呼びにさせる、二位、裸エプロンで朝食作り」

 

この時点で、吐き気を催すぐらいに気持ち悪く、今すぐラウラの舌をねじり切りたがったが、肝心の一位を聞いていない。

正直聞きたくなかったが、好奇心というものだろうか、自然と耳を傾けてしまう。

 

 

 

 

 

「一位はご奉仕(尻で)だ。これはどうゆう意味だ?」

 

それを聞いた瞬間、頭をハンマーで殴られたような衝撃を瑠奈が襲った。それはもういやになるほど。

近くで話を聞いていたセシリアと箒は顔を真っ赤になっていた。

それはもちろん、ただの人妻だったら、どんなに甘い日々を送ろうと構わないが、瑠奈のようにいわくつきで、訳ありの人間がご奉仕(尻で)なんてして、正体がばれたらどうなるか。

 

間違いなく心と体に消えない傷を負い、部屋に引きこもる。そんなので喜ぶのはゲイぐらいだろう。

それだけにとどまらず国際問題になるかもしれない。

とにかくこの話のおかげで瑠奈の中に一つの譲れない夢ができた。それは

 

「ラウラ」

 

「なんだ?」

 

「絶対に負けないからなっ!!」

 

 

 

 

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

試合が始まるまで、あと、数十秒。アリーナが静かな緊張感を包み込む。

セシリアや箒も決して小さくない緊張感を感じていたが、お互いのペアであるラウラと瑠奈が放つ闘志と殺気は異常だ。

近くにいる人間だけでなく、アリーナにいる人間の誰もがそれを感じていた。

 

一年生最強のIS操縦者(ラウラ)VS未知の機体の操縦者(瑠奈)

学園の中でもどちらが勝つかの予想が行われていたが、結局五分五分で結論が出なかった。それほどまでに、この2人の実力が未知数なのだ。

 

何が起こってもおかしくない。

 

「すぅぅ・・・・・はぁぁ」

 

アリーナの中央で立っている瑠奈が大きく深呼吸をする。

今、身にまとっているのはエクリプスではなく、原型のエクストリームだ。勝負前から、自分のISの姿を見せていいことなど一つもない。

 

試合開始まで五、四、三

 

「全力をだそう・・・・・」

 

二、一・・・・・

 

ビィーーーーー!!

『試合開始!!』

 

その言葉を合図に、ラウラは砲口を瑠奈に向け、箒は訓練用ISの『打鉄』のスラスターの最大出力で一気に前に飛び出し、セシリアは相手と距離をとるため後方に大きく下がり、浮上する。

瑠奈は

 

「エクストリームっ!!!」

 

エクリプス・(フェース)へのチェンジを始める。

胴体、腕、肩に赤い追加装甲が出現し、ゼノンの眼帯とは違い、目元に覆い隠すかのように黒い装甲が追加される。

 

「消えろっ!!」

 

砲口から弾丸が発射されると同時に

 

「進化発動・・・・」

 

目元を覆い隠した装甲の隙間から赤い光が発せられた。

 

 

ーーーー

 

先制攻撃を成功させたのはラウラのシュヴァルツェア・レーゲンだった。

試合開始の合図と同時に瑠奈に向けた砲口から、大火力の砲弾がされる。

 

これはかわせる攻撃だ。

 

会場の人間はおろか、攻撃した張本人であるラウラもそう思っていた。

世間は瑠奈の機体の性能を注目していたが、瑠奈の戦いを近くで見ていた人間は瑠奈の圧倒的な身体能力を危険視していた。

 

射撃特化のISを操るセシリア戦で、被弾率0%という偉業を成し遂げたこともあるが、状況把握に、戦術予報、戦況把握などを瞬時で行う思考力。

 

ラウラやそれを知っているだからこそ、戦術より戦略で瑠奈を倒そうとしている。だが

 

「え?」

 

次の瞬間、会場に大きなざわめきが起こる。

命中した。

先制でラウラが放った砲弾が瑠奈に命中し、爆発が起こった。

 

しかも、命中してから数秒経つが、一向に反撃がない。

それはつまり

 

「勝ったのか・・・・」

 

ラウラの右前方の位置で佇んでいる箒が小さくつぶやく。

確かに、これだけ経っても攻撃がないのは終わってしまったと考えるのが普通だ。

アリーナの観客席にも、そう感じているらしく、失望の目を向けてくるものや、ため息を放つ者もいる。だが

 

「まだ終わっていない」

 

「まだですわ」

 

ラウラとセシリアは周囲とは真逆の思考をしていた。

この2人は瑠奈と戦い、セシリアは戦いを教えてもらった、だからわかる。彼が何かすると。

そう思った、次の瞬間。

 

「あぶないっ!!」

 

黒煙の中から、一筋のビームがラウラに向かって発射されてきた。

 

「ちぃっ!!」

 

いきなりの不意打ちで、若干の反応が遅れ、右足にわずかながらかすれるが、何とか横に跳び、かわす。

警戒していたからかわせたものの、箒のように完全に油断していたら、間違いなく直撃していた。

 

「まだ勝ったというには早いんじゃない?」

 

煙がはれると主武装らしきバスターライフルを構えた瑠奈が何事もなかったかのように佇んでいた。

それと同時に

 

「なんだ・・・これは・・・・」

 

ラウラのISのシールドエネルギーがかすったにしては多すぎるほど減っていることに気が付く。

その時、兵士であるラウラは気が付いた、前回の装備と今回の装備の相違点を。

 

ゼノンの装備は脚や腕などを中心に装備され、接近戦と機動性の二つの能力を重点的にあげていたのに対し、エクリプスは真逆の遠距離攻撃と装甲の防御力が高められている。

 

現に、前回砲弾が直撃した装甲は、わずかばかり傷ついていたのに対し、エクリプスの装甲は傷一つついてなく、赤い綺麗な装甲が広がってた。

 

圧倒的な射撃性能と強固な装甲、一見して無敵のように思えるが、当然弱点はある。

それはその強固な装甲だ。

装甲が強固になり、厚くなれば、当然のごとく重量は増えていく。

 

先ほどの先制攻撃もゼノンなら必ずかわすことができたが、瑠奈は攻撃をくらった(・・・・・・・)

いや、くらう方を選んだ(・・・・・・・・)と言った方がいいのかもしれない。

エクリプスはゼノンほどの機動性はない。

かわしきれる可能性はあったのかもしれないが、かわそうと横に飛んだ瞬間に、攻撃が直撃したら、大きく後方に吹き飛ばされ、態勢を崩して、出遅れる。

 

一夏だったら『やってみなくちゃわからない』といい行動に移るか、反射的にかわすだろうが、瑠奈はしなかった。

この機体(エクストリーム)の性能を理解し、適切な状況判断を下したからだ。

けして見くびっていたわけではない。それでも

 

「相手にとって不足はないな・・・・・」

 

そう来なくては面白くない。

今までの愉悦で歪んだ笑みではなく、純粋に、瑠奈との戦いを楽しむ戦士としての笑みをラウラは浮かべ

 

「行くぞ!man of valour(猛者)!!」

 

「全力で来い!proud soldier(誇り高き戦士)!!」

 

手の甲からプラズマ手刀を装備し、ラウラは恐れず、猛者(瑠奈)に突っ込む。

 

 




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