卑劣サッカーここに爆誕!   作:ゲダツ

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AI と卑劣それらを混ぜるのはとても難しい


3 私と仲間そして竜巻

 

入学から、しばらく経った。

 

 結果だけを言えば―― 千堂扉間は、二軍にすら入れていなかった。

 

 

 

     ◆

 

 

 

 北陽学園の練習は徹底していた。数値。 連動。 判断速度。 ポジショニングの最適化。扉間は理論試験では上位にいた。 動きの理解度も悪くない。

 

 

 

 だが。

 

 

 

「再現性が足りないな」「動きが単独だ。全体設計に噛み合ってない」

 

 

 

 評価は、どこまでも冷静だった。必殺技の習得数も、 自主練の量も、 誰より多いはずなのに。試合形式になると、評価は落ちる。

 

 

 

(……分かってたことだ)

 

 

 

 自分は天才じゃない。 最初から、同じ土俵に立てていない。

分かっていた。 理解していた。

 

 

 

 それでも――

 

 

 

 悔しさだけは、どうしても消えなかった。

 

 

 

     ◆

 

 

 

 ある日の放課後。扉間は、これまで無茶に付き合わせたことへの整理をつけるため、 グラウンドにいた空宮征のところへ向かった。

 

 

 

「……少し、いいですか」

 

 

「ん? ああ」

 

 

 

 以前のような張り詰めた空気ではなかった。 だが、どこか気まずい。

 

 

 

「今までの無茶、すみませんでした」

 

 

 

 扉間は頭を下げた。

 

 

 

「え、急にどうしたの」

 

 

 

「焦っていました。 自分だけで何とかしようとしていた」

 

 

 

 空宮はしばらく黙ってから、小さく息を吐いた。

 

 

 

「……まあ、危なっかしかったのは事実だけどさ」

 

 

 

 それ以上は責めなかった。

 

 

 

     ◆

 

 その帰り道。扉間の頭の中では、別の思考が回り続けていた。

 

 

 

(このままじゃ、届かない)

 

 

 

 北陽学園の完成度は高い。 合理的で、隙がない。

 

 

 

 だが――

 

 

 

(王者雷門には、届かない)

 

 

 

 理想的であることと、 勝てることは、同義じゃない。扉間の脳裏に浮かんでいたのは、 かつて別の舞台で使われた戦術だった。

 

 

 

 名前は出さない。 まだ、ここで語るべきものではない。ただ一つ言えるのは。

 

 

 

(“秩序を崩すタクティクス”が必要だ)

 

 

 

     ◆

 

 

 

 翌日。扉間は数人の部員に声をかけていた。

 

 

 

「少し、付き合ってほしい練習があります」

 

 

「自主練? 何やるんだ?」

 

 

 扉間はスマートフォンを取り出し、 一つの動画を見せた。

 

 

 そこに映っていたのは―― フィールド全体を巻き込む巨大な竜巻。

 

 

 選手が吹き飛ばされ、 守備陣形が完全に崩壊していく映像。

 

 

「……何これ」

 

 

 

「いや、これサッカーか?」

 

 

 

「キーパーまで動かされてるんだけど」

 

 

 

 当然の反応だった。

 

 

 

「グリッドオメガ、という戦術です」

 

 

 

 静かに、扉間は言った。

 

 

 

「フィールド支配型のタクティクスです」

 

 

 

「支配っていうか、これ無法だろ……」

 

 

「さすがに公式戦じゃ無理じゃないか?」

 

 

 

 全員が困惑していた。北陽の理念は“再現性”と“合理性”。 こんな破壊的な戦術は真逆に位置している。受け入れられるはずがない。

 

 

 

 それでも扉間は、 一人ずつ、言葉を選びながら話した。

 

 

 

「完成されたサッカーだけでは、 完成された相手には勝てないかもしれません」

 

 

 

 押し付けない。 否定もしない。ただ、問いかける。

 

 

 

「王者雷門に勝つために、 想定外を一つも用意しないままでいいんですか」

 

 

 

     ◆

 

 その言葉に、 誰もすぐには答えられなかった。合理を貫いてきた北陽にとって、 “例外”を認めるというのは簡単な話ではない。

 

 

 

 だが同時に。

 

 

 

 その提案が、 完全な間違いとも言い切れなかった。

 

 

 

     ◆

 

 

 

 こうして。

 

 

 

 北陽学園の片隅で、 極めて異質な特訓の準備が始まろうとしていた。

 

 

 

 理論のチームに、 嵐を持ち込もうとする一年生の手で。




やばいってばよ 使ってしまえば、それが最後やばすぎるものが誕生した
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