一般的有名な物と言えば「10階以上の建物のエレベーターに乗り、特定の階のボタンを押せばこの世の者ではない人物がエレベーターに同乗しその後階数表示が10階以上を指し、異世界に辿り着く。」と言った伝承であったり
「正方形の紙に特定のワードと魔法陣の様な物を書き、その後それを握りしめ眠りに着くと起きた時には異世界に飛ばされている。」
「通勤中や通学中に突如強い吐き気に襲われ、気が付くと日本語と似て非なる言語が使われた世界に飛ばされている。」
そして最も有名であろうと思われるものが。
「電車で眠りに着くと異世界に飛ばされる。」
自分は今までこの様なネットの怪談を、誰かが作った「
こんな事が起こるまでは。
「疲れた....」
今日は日曜日。週の最後、休日を謳歌したであろう学生や今日明日も仕事で絶望している
社会人で溢れ返ったホームの人混みを掻き分け電車に乗る。日を跨ごうとしているこの時間は
大体普通車両に乗ると休日でも座れたりする。これは自分の中で生み出したライフハックである。
勿論、時期によってこの時間でも人でごった返している事もあるのであまり信用できない
ライフハックである。何もない日は大体普通に座れる。...普通車両だけに。
「発車まで時間はまだあるし少し寝ようかな...」
そんな事を考えながら持っていた携帯を鞄の中に入れ、睡魔に身を任せ目を瞑る。
幸い、明日は休みなので終点まで乗り過ごしてもタクシーで帰れば何とかなるか。お金の事を
考えると頭痛がしてくるので考えないでおこう。などと考えているとだんだん睡魔に吞まれていく感覚を感じる。
「乗り過ごしたくないなぁ。」
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「...は...郷.....」 「...は...想郷.....」
「...っ?!」
突然鈍器で殴られたかの様な強い頭痛で目を覚ます。しかし目を覚ますといってもあまりの
鈍痛に目を開けられない。自分があまりにも起きないので警察か駅員か酔っ払いに殴られたのか。
少しすると不思議と頭痛が引いていく感覚がする。だが引いていくだけで根幹の痛みは
尾を引いたままだ。兎にも角にも目を開けて状況確認する必要がある。
「...これは夢でも見てるのか?」
ついアニメに出てきそうな台詞を言ってしまう。ただそんな事を気にしていられる程、目の前に
出てきた現実は受け入れがたい物だった。
辺りを見渡しても人が居ない。車両の電気は噓の様に消えている。と言うか電球が割れている。
窓は割れ、何十年も立ち、風化してしまったかの様にツタが絡まっている。自分が座っている
席含め座席はボロボロになっている。
窓の外の風景は森が生い茂っている。ただ後ろを振り返ると田舎の無人駅の様なホームが
ポツンとある。ただ自分はこれに似た現象をネットサーフィンをしている際に見かけた事がある。
「
如月駅。それはネットで語り継がれている怪談である。
とある女性が見知らぬ駅で目を覚まし、ネットの住民に聞いてみるも特定できず。
車内の写真を撮ってもカメラに異常が出て上手く撮影出来ず、最後は線路を歩いて行き行方不明。
と言った感じのネットの怪談である。自分が直面している状況は限りなくこれに近しい、というか
間違いなくこれであった。整理されて行く目の前の状況に冷や汗が頬を伝う。が半分危険な好奇心
が自分の中で勝っていた。
「一旦写真撮ってみるか?」
鞄から携帯を取り出し、撮影を試みる。が。
「バッテリー切れ?!」
眠りに着く前は半分以上あったはずである。何故?
生憎モバイルバッテリーも置いて来てしまったので充電も出来ない。どうやら連絡すら
させて貰えない状況らしい。
「今日の朝の運勢最下位だったもんなぁ。ラッキーアイテム買っておくべきだったなぁ。」
今はそんな事を考えている場合ではない。一度駅を降りてみる。きっと表札に
が刻まれているはずである。
しかし実際に降りてみて表札を確認すると真っ白であった。...嫌、真っ白であったと言うのは
少し異なるかもしれない。実際には何か駅名が書かれていたが、今はもう風化してしまって
読み取れないと言うのが正しいだろう。
「ここで立ち往生してても仕方ないし、一か八か線路歩いてみるかぁ。」
幸い、線路上に草木は生い茂っていたが判別できない程ではないので歩いて行く事にした。
「生きて帰れると良いなぁ。」
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一時間程歩いたのだろうか。不意に線路が途切れ横一文字に人が整備した様な道が現れる。
この道を進んでいけば、現実に帰れたりするのだろうか。そんな事を考えながら整備された道に足を踏み入れると。
「...っ!?今度は何だよ...!?」
突如立っていられない程の眩暈が襲う。思わずその場にしゃがみ込む。が、少しすると頭痛と
同じで視界が次第に元へと戻って行く。そう言えば先程尾を引いていた頭痛は気が付けば
消えてしまっていた。恐る恐る立ち上がり、周囲を見渡す。と、通常ではあり得ない現象が
また視界へと入ってくる。
「線路が消えている?」
先程まで自分が辿ってきた線路が嘘の様に消えている。先程まで線路があったであろう場所は
草木が生い茂り、とても歩けるような状態ではない道へと変わり果てていた。
どうやら右か左へ進むしかないらしい。一か八か右へ進む事にした。
あれから15分、いや30分?それともまた一時間程歩を進めたのだろうか。進んでいくと何か
人工物が森の奥に見える。やった。もう帰れるんだ。自分は異世界から帰還した一人になるんだ。
ここから先誰を頼ればいい?警察?それともその辺りを歩いている人?そもそももう今の時間は
恐らく丑三つ時だろう。人なんか歩いている訳がない。兎にも角にも建物に入ろう。
そんな期待を寄せながら最後の力を振り絞って走り、森を抜けた先は期待を裏切る...
とまでは行かないが喜べる様な光景ではなかった。
「江戸時代...なのか...?」
見えてきた光景は江戸時代の時代劇か何かでよく見る様な和風建築様式の家が連なる場所。
"城下町"とでも言うのだろうか。そんな場所へ辿り着いた。
「マジかぁ.......」
縋る様な思いでここは何処か。辺り見て廻ったが。誰も居ない。居る訳が無い。
分かったのは一つだけ、此処が本当に江戸時代の城下町の様な場所だという事。
「もう何かどうでも良くなっちゃった。きっと悪い夢でしょ...」
目に入ってきた小さな古民家の壁に寄り掛かり座る。座ると同時に長時間歩いた反動が
身体と目を襲う。
「悪い夢だと良いなぁ。起きたらきっと目的地に着いてるでしょ。寝過ごしてないと良いなぁ。」
睡魔に身を委ね目を瞑る。走って熱を持った身体を冷たい風が襲う。
凍死してしまわないだろうか。いや、悪い夢なのだからしないに決まっている。きっと。
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「...のぉ~。」
「.....のぉ~!!」
「......あのぉ~!!!お兄さん!!!起きて下さい!!!」
幼い少女の様な声で目を覚ます。終点まで乗り過ごしたんだろうか。だが現実は違ったらしい。
目を覚ます前と同じ城下町の様な風景。違ったのは太陽が昇ろうとしている事くらいだろうか。
「夢じゃないのかぁ...」
「夢じゃないです!!!起きて下さい!!!ここで寝てたら凍死しますよ!!!」
声のする方へ視界を向けると、そこには明るい飴色とでも言うのだろうか。黄色い鈴の髪留めで
二つに止めているツーサイドアップの、焦色と白の市松模様の着物に深緑色の袴を着た少女が
目の前にいた。
「あの。変な事聞くんですけど、此処って何処ですか?」
自分より一回り位下であろう少女敬語で話しかける成人男性。なんて絵面なんだ。
現実ならもうとっくに警察に御用だ。いや此処だと町奉行か?同心か?
「何処って人里ですよ?もしかして酔っぱらって記憶がなかったりします?」
「あぁ...えっと、また可笑しい質問するんですけど、ここって何県ですか?」
「け....ん....?」
少女が怪訝そうな顔をする。こんなに恥ずかしい事があるだろうか。穴があったら入りたい
とは恐らく今の状況を指すのだろう。
少女は少し考えた後、突然形相を変えとんでもない事を言い放った。
「...もしかして外の世界の人ですか?幻想郷って知ってますか?」
「げんそうきょう...?外...?」
今自分が置かれている状況はやはりと言うかもう否定しようが無いと言うか。
かなりマズいのでは無いだろうか。ここから先ゲラゲラ笑う医者に実験台にされたり
してしまうのではないだろうか。
そんな事を考えていると少女が突然慌てふためき出した。走って逃げたほうがいいのだろうか。
「とっ兎に角一旦家の中に入って下さい!!話はそれからです!!」
命、大丈夫かなぁ。
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ここは俗に言う本屋なのだろうか。幾つもの巻物や本が本棚に並べられ机に散乱している。
立ち話もと言うか座って待ってて欲しいとあの少女に言われ、店内にあった丸机に二つ椅子が
向かい合って並べられている席へ案内され少女を待つ。少しすると、店の奥からパタパタとした
足音と衣擦れの音が聞こえ、少女が出てくる。丸いお盆に湯気が立ち上るコップが
二つ置かれている。こんな素性も知らぬ自分に飲み物を出してくれるのか。
「お待たせしました。緑茶を注いできたのでこれを飲んで身体を温めてください。」
凍死しそうな位凍えていた身体に熱い緑茶が染み渡る。
「それで貴方が今置かれている状況についてなのですが....」
「まず、もうお察しかと思われますがここは貴方の住んでいた世界ではないです。正確には
住んでいた世界と同じ世界ではあるのですが、断絶された陸続きの世界です。たまに貴方の様な
波長が偶然合ってしまった人がこの世界に紛れてきます。私たちは貴方達の事を"外の世界の人"
と呼びます。」
「じゃあこの人里...?には他にも自分みたいに外から紛れてきた人が暮らしているんですか?」
すると少女が突然苦虫を噛み潰したような顔をする。
「いえ...大半の方は妖怪に食べられて一生を終えてしまいます...」
どうやら運が良かったらしい。一歩間違えれば肉塊と化していたらしい。
「運が良かったのか...死ななくて良かった...」
そう言えば少女の名前すら聞けていなかったな。
「今聞くことでも無いかもしれないんですけれど、お嬢さん。お名前をお伺いしても?」
少女が突然の事にキョトンとしている。それはそうであろう。目の前で貴方死にかけたんですよ
と言われているのに名前を聞く奴が居るか。ただ自分は今、非日常の体験に興奮していた。ハイになっているのだろう。
うーんと少し考えた後、彼女は椅子から立ち上がった。
「貸本屋"鈴奈庵"の店番をしている"本居小鈴"です。」
10年ぶりに小説書いたので書きたいもの書いてたらすっごい長くなったので、少し無理やりになってしまったのですが一旦ここで区切ります。
語彙力もあまりない拙い文章ではありますがこんな感じで不定期で続けていきますのでもし宜しければ見て頂ければ幸いです。