重い瞼を擦り時計を見る。時計は朝の6時に針を指している。
世間一般...と言うかこの時間に起きるのは働き者か自然に目が覚める体質かどっちかだろう。
私は後者に当たる。難しい小説や妖魔本を読み耽った翌日ですらこの時間に目が覚める。
本当の事を言えばもう少し眠りに耽って居たいのだがそうは問屋が卸さないらしい。
今の季節は冬真っ只中。正確に言えば春に向かっているのだろうがそうは感じさせない程
身を切る様な寒さが毎日朝の布団で火照った身体を襲う。
「本当、朝は寒いわね...お布団が恋しいわ。」
そんな独り言を呟きながら日課の散歩に出かける為、寝間着から和服に着替える。
両親はまだ眠りに着いている為、起こさない様に忍び足で靴を履き外へ出る。
外へ出るとより一層厳しい寒さが身を襲うが、澄み切った空気が心地良い。
太陽ももう朝ですよと言わんばかりに顔を出している。
ふと視界の隅に何かが目に入る。そこへ視線を向ける。
「わっ....!?ひっひと...!?」
人が寝ている。もっと表現と言うか詳しく状況を解説するなら、こんな真冬の朝に自分の家の
目の前で家の壁に寄り掛かり蹲る様にして眠っている。
「のん兵衛かしら...?それとも考えたくはないけれど...死んでいる...?」
首に手を当ててみる。脈はあるので眠っているだけの様だ。
「兎に角こんな所で眠られると凍死されても嫌だし起こすしかないわよね...」
放っておく訳には行かないので、眠り耽っているその人の目を覚まさせる事にした。
「貸本屋"鈴奈庵"の店番をしている"本居小鈴"と申します。」
突然話を変えて名前を聞いたにも関わらず彼女は丁寧に自己紹介をしてくれた。
薄々感じていたが、この本居小鈴と言う子年相応ではない落ち着きを感じる。女性に
年齢を聞くなと言うのはよく聞く話なのだが、この子が幾つなのかだけはとても疑問だった。
「そう言えば貴方のお名前を聞いていませんでしたね。」
今度は自分が名乗る番らしい。自己紹介と言うのは軽いものであっても少し緊張する。
「外の世界から来た...と言ったら正しいのかな。結月。結月
「じゃあ...結月さん?単刀直入にお聞きしますね。貴方はこれからどうしたいですか?」
どうしたいか。勿論出来る事なら現実世界へ帰りたい。ここの幻想郷の時間軸がそもそも
この子の言う外とズレがあるのかは分からないが、少なくとも数日ここに長居すれば外の世界
ではきっと行方不明者扱いだろう。ただこういう時のお決まりって帰れない物では
無いのだろうか。それとも実験台にされてしまうのだろうか。
「出来る事なら勿論帰りたい。けど可能なんですか?」
「では知り合いにその説に詳しい巫女さんがいらっしゃるので、少ししたら
一緒に巫女さんの元へ行きましょうか。」
神主さんでは無く巫女さんにお世話になるらしい。それとも巫女さんが神主なのだろうか。
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簡単な支度と言うか彼女に出掛ける支度を済ませて貰い、その件の巫女が居るという神社へ
向かう。本居小鈴と名乗るその彼女から聞く所によると、神社の名前は博麗神社と言うらしい。
その件の巫女さんの名前も教えて貰った。博麗霊夢と言うらしい。なんでもよく里に下りてきて
何度かお世話になっているのだとか。異変解決?をしているらしい。巫女さんという者はもっと
神社の管理をしたりだとかする者だとばかり勝手に思っていたが偏見なのだろうか。話を聞く限り随分アクティブな巫女さんらしい。
人里を抜けちょっとした森に入る。この幻想郷には妖怪なるものが居るらしく、彼女にこの森
は大丈夫なのかと聞いた所今は大丈夫らしい。本当に大丈夫なのだろうか。博麗神社に着く前に
肉塊と化してしまうのではないだろうか。
森を一時間程だろうか。彼女とこの幻想郷についての話を伺いながら進んで行くと、森を抜け
石造りの大階段が突然姿を現す。かなりの段数がある様で見上げると、ポツンと上の方に
鳥居らしきものが見える。
「これを登れば博麗神社に着きます。頑張って下さい。」
二つ返事で彼女の言葉を返してしまったがあまりにも高い大階段に身をたじろぐ。
登っている最中に力尽きないだろうか。
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「やっと登り終えた...」
大階段を登り終えると、それまでとは何処か違った空気感に包まれる。ピリピリする様な感覚
だろうか。下から見えた鳥居の後ろには、すぐ横に手水舎と奥にどこか神聖な空気を纏った社殿
が見える。一礼して鳥居を潜ると気のせいだろうか、環境音の値を下げられたのかと思う程
静かになる。
「すみませ~ん!!!霊夢さんいますか~!!!」
彼女が社殿へ声を掛ける。すると社殿の奥から何やら声が聞こえてくる。
「あ~誰よこんな朝っぱらから!!...って小鈴じゃない。それ...と...」
社殿から出て来たのは、失礼かもしれないが少しガサツそうな巫女だった。
その博麗霊夢と彼女から呼ばれる巫女はこちらを見るなり走って此方へ向かってくる。
「あんた外来人でしょ。」
開口一番に外来人でしょと言われてしまった。
の事を外来人と言うらしい。こちらで言う外国人と恐らく意味合い的には同じなのであろう。
「霊夢さん!この人外の世界から迷い込んでしまったみたいで...外の世界に返してあげる方法って」
そこまで彼女が説明した時、博麗霊夢と呼ばれる少女が「あ~」と苦虫を嚙み潰したような顔で溜息交じりの声を出す。心成しか物凄くバツが悪そうな顔をしている気がする。元々すんなり
帰れるわけではないんだろうなとは思ってはいたが彼女の顔から察するに、あまりにも他人事の
様な意見だが大ごとらしい。
「あ~、いや。そのあるにはあるのよ。元の世界に帰れる方法。ただ今本当に時期が悪いと言うかなんと言うか。」
かなり言葉を濁されている、余程何かあるらしい。
「今この世界の境界線、別の言葉で言うとスキマを管理している妖怪が冬眠に入っているのよね。」
妖怪も冬眠するらしい。
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「挨拶が遅れたわね、私は博麗霊夢。この博麗神社を管理している巫女よ。」
「こちらこそ、挨拶が遅れてすみません。結月東と申します。」
寒空の下で立ち話もと言うことで、社殿の中に案内される。社殿の中は想像していた物と違い本当にアパートの一室の様な部屋が広がっていた。小鈴と名乗る少女は心なしかと言うか、見るからにワクワクしていた。
部屋に通された後、ここに来た経緯を説明して欲しいと言われここまでの経緯を説明する。
電車に乗っていたはずが気付けば無人の駅に着いていた事。謎の頭痛。人里に着くまでの経緯。
一通り説明すると、
「恐らくアンタが歩いてきた森は魔法の森と呼ばれる森よ。で、これは確定では無いから何も言えないけれど魔法の森の境界線が不安定になってて、たまたまアンタが波長が合ってこっちに来てしまった。と言うのがおおよその答えだと思うわ。そしてさっきも少し話したけれどこの境界線を
管理している妖怪が居るの。''八雲紫''と言うのだけれど。その妖怪が今冬眠してて、魔法の森の調査も、アンタを元の場所へ戻す事も出来ない。これが現時点での答えになるわ。」
やはりと言うかなんと言うか、一筋縄ではいかないらしい。
「それを踏まえてなのだけれど、あなたはどうしたい?」
「では、鈴奈庵で住み込みで働かせて頂く。と言うのはどうでしょうか?」
へっ?!とそれまで若干蚊帳の外気味だった少女は気の抜けた声を出す。
「小鈴さんがダメと言うならどうにかして他に働きながら凌げそうな場所を探します。霊夢さんはどう思いますか?」
「ダメではないけれど、小鈴はどうなの?」
少女はうーんうーんと唸りながら天を仰ぐ。自分から言い出した手前、流石に急すぎたかもしれなぁと感じる。
「一旦帰って母と父に相談してからでもいいですか...?」
交渉成立?したのかもしれない。
今回少し短めとなります。
投稿の方遅れて(失踪)してしまい申し訳ございません。
またゆっくり書いていくので、拙い文章ですが見て頂けると幸いです。