私は男が苦手だった
別に女が好きという訳じゃない、ただちょっと嫌な思い出と言うか何というか、学園に居た男が悪かっただけなのだ
ただでさえ男性というだけでチヤホヤされるのに魔法の才覚まであるのだから、奴が傲慢になるのも仕方ないと思うが、奴のその知性なき振る舞いは男という存在に幻滅するには十分だった
学園を卒業した後、魔法使いとして世界を見て回るという家訓に従い様々な地を旅した、どこに行っても男は貴族の庇護にあり、内気なお飾りか威張り散らす声と態度のデカいクズしか居なかった
とある高名な騎士が治める荘園に立ち寄った時だ、騎士様の「魔法を切りたいという」訳のわからん要望の為に放った雷光の魔法、中型の魔獣なら一撃で倒せる威力の魔法を難なく切伏せ何事も無かった様に立っている、人の形をした怪獣か何かかこの人?
荘園での日々も怪獣との立ち合いという非日常以外は変わりなかった、そうあの子に出会うまでは
ある日騎士様との立ち合いを隠れて見ていたあの子、私の魔法を見て目を輝かせながら純粋で無垢な笑顔で魔法について聞いてくる、なんだこの可愛い生き物は?
魔法使いという性分故に教会連中の言う神は信じて居なかったが、神の眷属たる御使が居るのならあの子様な完成された存在なのだろう
礼儀正しく、所作の一つ一つが洗練された立ち振る舞い、好奇心を隠そうともしないその無邪気さに私の心は揺さぶられ続けた
あの子はこの荘園の主たる騎士様の溺愛する一人息子らしく、手の届かない存在なのだと再度認識した
しかし私の頭にはいけない感情が湧き上がっていた、欲しいただ欲しい、魔法の理を解き明かすより、弱者の為には魔力を振るうと言う高潔な魔法使いの使命よりも、ただ純粋にあの子が欲しい
彼に魔法と見てきた世界の話を聞かせる穏やかな時間
無邪気な顔で私の話を聞く彼に申し訳なさでいっぱいだった、こんな天使に良からぬ感情を抱きながら下卑た妄想を広げ、平静を装い説法を繰り広げるなど冒涜に等しい
しかし止められない辞められないずっと側に居たい、叶わぬ夢と知りながらも私は自分を抑えるだけで精一杯だった、ある日そんな愚かな私に彼は絶望を贈り物として渡して来たのだ
一本の白い花、とても珍しく希少な薬草として魔法薬としての価値も高い花、それを異性に渡すという行為は世間一般的には求婚を意味する
あの子と私が結婚する、しかしあの騎士様が許す筈がない
つまり私にあの騎士様を倒し、自分をこの荘園から救い出して欲しいと言うのだ
そんな事出来る訳が無い、私は嘆いた自分の非力さに、あの子の期待に応えられない自分の弱さに、純粋に私を求めてくれたあの子に対して良からぬ妄想しかしなかった私を、私自身が許せなかった
私は再び旅に出た、あの子をいつか貰い受ける為に、誰よりも魔法を極め、偉大な魔導師の称号を頂き、斬れない魔法を作り上げ、あの騎士様をいつの日か倒すのだと
そう思い立ち、旅に出てから長い年月が経った
街外れに工房を創り、街の治安を守り自らの研鑽を続ける毎日、最近は国境がきな臭い雰囲気なのでこの辺りにも魔物が出る、そろそろ研究に使う薬草が底を尽き始めるが、組合に依頼した品は一向に届かない
仕方ないので見回りついでに自ら採取に向かう事にした
そこで再び彼に出会った
間違いない、幼かったあの頃と違い少年と呼べる程の年頃になってもあの完成された美しさは変わらない、むしろ合法な背格好になったせいで色気まで持っている
そんな彼に襲い掛かる不埒な魔獣は速攻で加減無く消し炭にしておいた
なんと彼はあの荘園を抜け出し、単身でこの街に来て真っ先に私の出した依頼を受けたと言う
彼は感謝の言葉ともう一つ
お待たせしました、そう言うとあの花を差し出してきた
待たせたのは私の方だ
私が君を待たせ続けたのに、私が迎えに行く筈だったのに、なんてズルい、なんてカッコいい
私では不釣り合いにも程がある、しかし彼の覚悟と真っ直ぐな瞳で突き付けられた告白、断れるメスが居る訳ねぇでしょう?アタシ悪くないよね!!!
「不束者ですが、よろしくお願いします」
本当に気分屋なので
更新おっせーなコイツ
まっ温かく見守ってやるか、くらいの気持ちでお待ち下さい